連載小説
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(9)デビルバグ
村から伸びる道を歩かされている男は、正に満身創痍というべき出で立ちだった。
全身にはいくつもの打撲痕が刻まれ、口の端からは血がにじんでいる。
抵抗する意思はなく、腕をつかむ左右の二人に身体を預けていたが、二人には一部の隙も憐憫もなかった。無理もない、男は村の農作物を盗もうとしたからだ。
そして、盗みをしなければならないほど困窮していたのが分かるほど、彼の身体は土埃や垢にまみれていた。
あまり使われていない、背の低い草の生えた道を、三人の男が進んでいく。
村から離れ、周囲に人家は無いが、左右の二人の表情に迷いはなかった。
やがて三人は木々の間に入っていった。
すると三人の前方に、木々の間から小さな屋敷が現れた。
窓を板切れでふさいだ、廃屋と言った装いの屋敷だ。
雨どいからは草が生えており、壁の煉瓦もいくらか抜けている。
二人は真ん中の男を玄関前まで連れて行くと、扉を開き、中へと男を放り込んだ。
無抵抗な男の身体が床板に叩き付けられ、衝撃と痛みが一瞬走る。
彼は、顔を上げると、日の差しこむ薄暗いホールを見やった。
嗅ぐには埃が積もり、蜘蛛の巣が幾重にもベールを掛けている。床の絨毯も擦り切れ、床板やその下の黒々とした穴をところどころ覗かせていた。
そこまで見たところで、不意に辺りが闇に包まれた。
男を連れてきた二人が、扉を閉ざしてしまったからだ。
少しの間を挟んで、扉を何かが擦る音がした。閂を外から掛けたのだろう。
だが、男には立ち上がって扉を開けようとする力はなかった。
闇の中、男は力なくうつぶせで横たわっていた。窓をふさぐ木板の隙間から差し込むごくわずかな日光が、夜空の星のように闇を彩っている。
全身に残る鈍い痛みに、男がぼんやりと闇を見つめていると、不意に小さな音が彼の耳に届いた。
床板の軋む、何者かが歩いたかのような音だ。
音の方に顔を向ける気力はなかったが、彼は音の方に意識を向けた。
床板の軋みは、みしりみしりと間を置きながら、男の側に至った。
生きている者が放つ微かな熱と、呼吸の音が男の側から発せられ、ついに何かが彼の身体に触れた。
硬く、生暖かな、鎧に包まれた指のような感触だった。
硬い指は男の身体をひっくり返すと、男の股間を覆う布をどける。直後、柔らかな感触が男の肉棒を包んだ。
根元を肉の輪が締め付け、濡れた柔らかな肉が押し付けられる。
まるで、肉棒を根元まで咥え思い切る吸われているかのような感触に、男の肉棒は屹立した。
男根が硬さを帯びてきたところで、闇の中にいる何者かは口の中の逸物をほお肉で揉み解し、舌を絡めた。
唇で締め、頬裏でしごき、舌を絡めるその動きは、まさに食われていると言ってもいいほどの勢いを帯びていた。
男の全身を覆う打撲痕が、男に鈍い痛みを与え続けているが、股間から背筋を伝わる快感は着実に男を高まらせつつあった。
舌がカリ首の段を擦り、幾度も殴られた腹の痛みが紛れる。
頬肉が亀頭に唾液を塗りたくり、殴られて折れた歯が気にならなくなる。
窄められた唇が上下して肉棒をしごき、先走りとともに興奮が搾り出されてくる。
柔らかさが、温もりが、男に快感を注ぎ高ぶらせていった。
そして、全身の鈍痛が男根の快感に飲み込まれ、男の意識が肉棒の感触に塗りつぶされた瞬間、彼の肉棒の奥から熱い体液が迸った。
数日間貯め込んでいたせいか、白濁は指でつまめるほど固く、闇の中の何者かの喉奥に絡み付いた。
喉奥に貼りつく精液を嚥下すると、ようやく肉棒が解放される。
男自身の興奮と何者かの唾液により、闇の中でもホカホカと湯気が立ち上るようだった。
だが、男根は屹立を維持したままで、白濁を抱え込んだ睾丸の上で力強く揺れていた。
すると、男の耳に床板の軋む音が届いた。
肉棒を舐めしゃぶった何者かが立ち上がった音だ。
闇の中、仰向けになった彼の身体を何かがまたぎ、ゆっくりと腰を下ろしてくる。
そして、硬い何かに包まれた暖かな指が肉棒を掴み、挿入すべく角度を整えた。
まっすぐ天井を差す肉棒に、濡れた肉の亀裂が触れ、押し開きながら肉洞に挿し込まれていく。
愛液に滑る肉壷は、男を受け入れつつも追い出さんばかりに圧迫する。
だが、何者かの重みをどうにかできるほどの力はないため、結果屹立ぎゅうぎゅうと締め付けてくることとなった。
肉壁に刻まれた襞が、圧迫に合わせてにゅるにゅると肉棒の表面を擦り、唇やほお肉、舌では成し得ない刺激と快感を男に与えた。
真っ暗な闇の中、微かに鼻にかかった甘い吐息が響き、膣が上下に動き始めた。
埃の舞う廃屋に、濡れた音が響く。
膣壁が屹立の凹凸に合わせて襞を絡み付かせ、締め付けが緩急を付けながら男を責める。
肉襞越しに、幾本もの指が肉棒を揉みたてているかのような蠕動に、男は再び体内で興奮が燃え上がっていくのを感じ取った。
何者かの腰が浮かべば、肉棒から何かが引き抜かれそうな感覚が彼の背筋を走り、腰を下ろせばさらに奥へ挿入せんばかりに男の腰が浮く。
ぬるつく肉壁と屹立する肉棒が、疲弊した男の身体を突き動かしていた。
やがて、体内の昂ぶりが腹の奥で渦を巻き、睾丸に詰まった粘液とともに尿道を駆けあがった。
脈打つ屹立の感触に、何者かは深々と腰を下ろし、男の亀頭を胎内の奥深くに押し当てさせた。
コリコリとした弾力のある何かが鈴口に吸い付き、膣全体がきゅっと引き締まる。
直後、尿道が大きく広がり白濁が迸った。
注ぎ込まれる体液は、コリコリとした何かに啜り取られ、肉洞はさらに搾り取らんと屹立全体を揉みたてた。
襞と蠕動の織り成す快感が興奮を強め、男を更なる絶頂へ誘っていった。
やがて、肉棒から出るものが無くなり、数度の空打ちを経てから絶頂が止まる。
脈動が収まったことを確認すると、膣を締めて尿道に残る残滓を搾りながら、腰を上げた。
少し萎えた男根が解放され、廃屋の埃の舞う空気が絡み付いた。
冷たいわけではないが、体温より低い空気が心地よかった。
だが、絶頂の余韻に浸る男の耳に、床板の軋む音が聞こえた。
すぐそばにいるであろう、つい先ほどまで愛を交わした相手ではない。
闇の奥から、いくつも、さまざまな方向から聞こえてきたのだ。
床の穴から出てきた何かが、床の上に立つ音。
奥へと続く扉を押し開き、何かが部屋に足を踏み入れる音。
吹き抜けの天井から壁を伝い、木板を軋ませる音。
屋敷に潜んでいた何者かが、集まりつつある音だ。
外傷と二度の絶頂でいくらかにぶった男の頭に、ある魔物の話が浮かび上がった。
デビルバグ。
洞窟や廃屋に住み、本能のまま男と交わる。
そして一匹いる場所には、必ず数十匹存在する。
男は理解した。村人が何のためにこの場所に男を放り込んだのか。
直後、闇の中からいくつもの興奮の気配が溢れ出し、音が男の下に殺到した。
かさ かさ かさ かさ

11/12/11 21:46更新 / 十二屋月蝕
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■作者メッセージ
愚か者は筆を握り直した。
ドヤ顔で描きはじめた長編が詰まったが故に。
もう少し、もう少しなのだ。
そう愚か者は言い訳した

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