連載小説
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蠅典『蟲翅魅ノ晩餐』
『わた……わたしは…………わ、わ私は間違っていたのだ……
 そうだ正気を失っていたんだそうにちがいな  
 何もかも全て、初めか 間違っていたんだ……
 ど、どどどうしよう。とんでもないこ  してしまった……もう手遅
 あれは何だ。何なのだ。何だ  うのだ。あの化け物は。
 あの蝿は。あの蛆の波は!!何なのだ!!
 私はあんな物を呼び寄せたかったわけじゃない。
 ただ、そう、幸せだ。皆の幸  願って呪文を唱えた だ。
 そしたら…………あんな化け物が召喚  るなんて……おおおお恐ろしい…………体が震えて  らない……
 地獄の底から這い上がるかのような極悪の瘴気、汚物を吐き散らかす身体、従える蝿の化身、蛆の大群……思い出すだけで吐き気が催してくる……
 あの化け物は一   のだ!?
 まさか最終章は化け物の召喚呪  ったとは思……
 こんなことになるなんて……わ、私は悪くない。悪くないぞ。知らなかったのだから悪くない。悪くない……うぅ……
 儀式の場に居合わせた大半の者は蛆と蝿の大群に飲み込まれ、二度と戻ってはこなかった。帰ってくるのは叫び声と嬌声のみであった。恐らく地上の者はもう全員…………』



『運良く逃れられた我々数名は教会の地下にあると言われている避難通路へと足を進めている。
 ジェイド司祭曰く、エクロ  教会が建築された頃は戦時中であり、もしものとき    難通路が作られたらしい。その話を聞くのは初めてだった。ジェイド司祭も使用した とはないという。
 マリーも無事であったが、マリーの彼氏は足がないのでなすすべなく……
 しかし我々にはマリーを慰めてやる気力も体力も尽き果てていた。召喚の儀式で皆の力をほとんど消耗してしまったからだ。もう我々はろくに術も使  いし、体力も残ってはいない。
 今はただ逃げるしかなかった』


『連中の進行は思った以上に速い。早く地下通路を見つけ奥へと逃げなければ我々は全     うだろう。
 私は。私達は完全に間違っていたのだ。
 主神は悪魔などではなかった。神は何もしていなかった。ただ見ていただけなんだ。
 間違っていたのは私たちだ……いや、私そのものが間違っていたのだ……
 興味本位で解読を始めたあの書物が魔の書物と知っておりながら……己の探究心に負け解読し続けた……もうそれは立派に聖職者の道から外れた行為だったことになぜ気が付かなかったのだ…………
 もういやだ…………地位も名声も全て捨てても構わない。ただひたすらに生き延びたい……皆と一緒に再び地上の  

        』


『昨日は日記を書いている途中にいきなり奴らの襲撃があった。
 五十名ほどいた者たちは過半数が奴らに飲み込まれ帰って来ること   った。
 マリー……まりぃは…………ごめん……
 蠅の化身に襲われそうになった私をマリーは庇ってくれた。この身盾にしてでも大神官である私を守りたかったのだろう……
 結果としてマリーは…………くそ……一瞬にしてレベル5   到達 救助は不可能と判断し……私は逃げた。逃げるしかなかった……
 何が大神官だ。何が…………人を導く賢人だ。私が導いていたのは堕落への道の他ならないも   ないか。私が一番の諸悪の根源だったのだ……
 私が  』


『頭が熱い。先刻の強襲で奴らに傷をつけられてしまたみたいだった。
 蠅の化身の魔法を弾き返すこともできぬほど私は疲 しきってしまったみたいだ。蛆の弾丸が皮膚をかすめて傷をつけた。
 いたくはない。けど、とてつもなく疼く。
 なにかが体の中から出ていっているような、そんな感覚がする』


『私は悪くない?ふざけうな、悪いのは初めから私だっ   。
 私がせいてんの解読をし ければこんなこと起こるはずもなか た だ。わたしが道を誤っ なければここまで堕落するこ もなかったんだ。
 私が…………』


『いまさら神に救いを乞うたとこ ですでに意 はない。
 けれど未だに神に救いを乞  いるとは、私はつくづ 聖職者だたみたいだ。
 しかしいまはもうせいしょく なんてものではな 。大しんかんでもない。ただのヒトだ。
 わたしはただの罪人となんらかわ  ない。神を批判し、ぼうとくして、悪魔だとののし  てしまた。後戻りはできない。
 皆にはわることした』


『あたまが熱い。からだあつい。
 私の身体が魔におかされ  のがわか 。わたしもあの蠅の化身みた   しまうだろか。こわいよ……
 うずく。かゆい。たりない。お腹すいた。聖典はおいてきたのでたべものも出せない。
 みんなおなかすいて   
 じぇーむずはリサとやって  ミックはエイミーとやっ  みだれ て
 みんなおかし   なってきた
 ああ、わた もミハイルたべた  』


『また襲撃きた。もういやだ、皆がきえていくのは嫌だ。
 また魔法くらってしまた。カラだがあついあつ  
 じぇいど司 たちは結界をはってもちこた  いる。大神官であるわたしは先に逃げてください  いってる。
 やっぱりココでも、わたしが優先  だ。そんなのいやだよ。
 私がいるから皆はにげら ないんじゃないか。私のそんざいが枷だ
 だいしんかんてなんだよ』


『にげた。というより、きょうせいてきに逃げらされた。
 じぇいどしさ たちはとびらをしめ   蠅が入っ こなくなるよう した。
 わた 逃がすため  犠牲になっ 。
 あうあう、だれもいな   かなし  おなかすい
 もう逃げるしかない。にげ にげてにげまくろ 。それし できな 』


『ひとりだ。たったひとりで私は   なに している  
 こんなうすぐら   地下で なにし  て
 だれも ない。孤独  さびし  
 いや……
 私は初めか ら 孤独だたんじゃな か。
 だいしんかになて、ともだ あまりいなく 。皆、とおくからわたし 見てるだ  親身になれな  た。
 ふつ に遊びたか 。
  つうに恋  したかっ 。
 後悔 ても遅す  じかん どらない。くやし   』


『おなかすいた。
 からだかゆい。 あたま……うず 。
 背中も  とて ても疼く。
 おしりも ずく。
 ああああああ熱いあついあついあつい。カラダが  燃 よう。くるうしい
 欲しい。アレがほし  ミハ  のアレがほ  
 あついのがほ い』


『ミハイ はまだつかな  かな。早くあいた   
 だきしめ  い   セック  たい
 こど  欲しい
 おなかすいたすたいたすいたすいたすい』



『あたまメリメリ いてる 
 せなかなんか開いてる  きもちわ
 おしりから   生え
 ああうあう、気持ちよく  書くのめんど  さ』



『蛆が迫って  たいぐ  波だ  
 カラダに入る  きもちわる  きもちいい
 カラダ食われ   でもいいきも  
 にげにげる  にげげ
 にげなきゃ   ミハイルこっ  キテ』


『ああ……道ふさがっ  岩くず  てた
 たぶ  前の地震で  れたんだろ  いきどまるだ。
 もうだめだ
 から おかしいし  何か 生えはじ       し
 あたまあたまままままま  つの たいな    うえ
   どく   ろ』


『カラダが食われ  てる  
 ばりば   むしゃ
 でもきもち    濡  
 おなに   止まら  セッ
 たり   ない           みはいるじゃな   熱い        
 ハヤクキテ』


『うしろか   羽根のおとが  き える
 ヴゥゥー……ン
 ってきこ  る
    もうすぐ   らが来る
  進めない   もど ない
 もう終   奴らが来 
   せなか どくろ   うす   』




『蛆  蠅        い
 かこまれ    た
  終わ
    私は 何がしたかっ』





『たすけ  
  りせいが   きえ』










『虫なる   ミハ ル
   ほし   熱いせい き ほし  種
  ミハ   まだ 』







『 ミハイ  きも  ちい
   しに  た       ない』












『   はらへ   
        たべ』











『       
   
           』










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――

























・?月?日
『今日も教団の奴らが私たちを討伐しに来たらしいので返り討ちにしてやった。百人はいたのかな、まぁ今となってはどうでもイイや。
 私たちの繁殖の時間を邪魔する不届きな奴らはみんな罰を受ければいい。
 気を失うほどの責苦を受け続け、理性が擦り切れるほどの快楽を味わうがいい。それが私の信じる神の意図なのだから。
  
 やり方は簡単だ。
 まずは男にタップリ魔力を注入してやる。抗魔の術式を練りこんでいる小癪なヤツにはそうだね……虜の果実を凝縮した汁を無理やり飲ませてあげるといい。すると最初は粋がっていた気質も次第に発情すると共に消えていく。
 剣を構えて今にも切りかからんとしていた勇ましさが、目の前の女達を襲いたいと思考が摩り替わっていくんだ。その葛藤を見守るのは格別に面白い。ミハイルとのセックスの次くらいに面白いね。
 今まで信じ込んできたものが一瞬にして塗り潰されるその背信感。
 己の内なる欲望が込み上げる背徳感。
 「魔物よ成敗してくれる!」とか言っちゃってるくせにチンポはギンギンに勃たせてるもんだから説得力ないっての。笑えるでしょ。
 そしたらね、女兵士とか女僧侶を襲いたくなってくるのを必死に我慢してるんだ。我慢汁垂らしながら我慢してるんだよ。もうそれ、我慢できてないよね。
 女のヒトは当然抵抗するさ。そりゃそうだよ、今まで同僚だと思ってたヒトから発情されて犯されそうになるんだもんね。ヒトの感性だったら抵抗するのは当たり前。
 でも、大抵の女は力では男に敵わない。あ、いや、男尊女卑とかジェンダーとかそういうことを言っているわけじゃなくてね、体格的に、ってこと。日頃鍛えているヒトとか勇者とかじゃない限りまず敵わない。
 だから犯される。
 魔性の気に当てられた男は女を犯すただその一心で肉の穴に自らの分身をねじ込む。その時の女の悲鳴といったらもう…………最高の子守唄になるほど気分の良いものだね。
 絶望感と喪失感を一片に織り交ぜたその悲鳴はあちらこちらから聞こえてくる。大コーラス隊の出来上がりさ。そうなる頃にはもう乱交による乱交が眼前に繰り広げられることになる。
 ヒトの言葉で表すなら阿鼻叫喚ってとこだろう。だけど私たち魔物にしてみれば酒池肉林が相応しい。肉と汁と快楽のみが存在する夢の宴。生物の本能のままに剥き出しになる性欲、そして原初より受け継がれてきている種の存亡をかけた営みが行なわれる。
 それはそれは素晴らしいことだよね。
 そうなれば私たちも次第にヒートアップしてくるもので、精液風呂を作り出す者や空中セックスを始める者さえいる。
 あ、私はそんなアブノーマルなプレイはしないよ?私はいたって正常に365日結合しっぱなしなだけなんだから、普通だよね♪
 まぁそういうことで日記を書いている今もミハイルにバックで突かれているわけだから、正直ペンを持つのも辛いのが事実さ♪♪

 とまぁおいといて……と。
 続きを書くね。
 魔力を孕んだ精液を胎内に出された女はそのあまりの気持ちよさに恥じらいや絶望感なんてものはどうでもよくなってきちゃう。だってそうだよね、気持ちいいのに耐えられるヒトなんていないんだもの。
 初めは抵抗していたのに次第に自ら求めるようになってきちゃう。
 精液を飲みたい。
 入れて欲しい。
 もっと突いて。
 孕ませて。
 チンポ美味しい。
 汗美味しい。
 全部美味しい。
 騎乗位。屈曲位。座位。対面座位。側位。正常位。
 もうどんな体位でもかまわないから入れて欲しいと希うようになる。
 私もそうであったのだから。他のヒトだって間違いなくそう思うはず。
 そうなったらもう、主神を捨てたも同然♪教団の奴らってどうにも頭がカタイのが多いから困るわぁ。こうでもしないと堕落してくれないんだから。カタイのはチンポだけにして欲しいよねまったく。
 男女とも良い感じに魔力が蓄積されてきたらここで私の出番ね♪
 このままだと放っておいたら女のほうはレッサーサキュバス一直線になっちゃうから、そうならないために私が一工夫するの。

 この新しい私の神である聖典の改訂版【蟲翅魅ノ晩餐】。
 私の血と魔力と9としたらリリム様の特別な魔力を1の比率でブレンドさせた禁忌のインク。そのインクで綴った新たなる聖典。これが私の……新たなる神。魅了する蟲の翅は全てを蝕む。
 意識も理性も朦朧とした女の目の前でこの聖典に綴られている転魔の魔法をかけてあげるだけで……はいオシマイ♪
 魔法の鎖が女の体を縛り付け、魔蠅が女の体を貫くの。千や万ではくだらない、億の蠅が女を蝕み、兆の蛆が女の体を覆いつくす。その悲鳴……あぁ……なんたる甘美……賛美歌のようにも聞こえてくる。
 虫が嫌いであればあるほどその身にまとわり付く蟲の数は増える増える、際限なく増える。そして体の穴という穴から蟲は入り込む。
 耳。
 口。
 目。
 鼻。
 膣。
 肛門。
 そして臍からも。爪の間からだって入るかもね。ゾクゾクしちゃうと思わない?
 痛みはないよ。その代わり身体を走るのは快感でいっぱい。自分の身体が造り替えられているというのに、思考は得体の知れない多幸感で満たされているの。
 あまりの気持ちよさに大抵のヒトはここで思考が魔に上書きされるの。今までヒトであった倫理だとか理性だとか社会性だとかはぜーんぶここで消滅してしまう。男のヒトも同様にね。
 
 そしたら……そしたらね。
 女に変化が起こるの。
 がくがく身体を震えさせてね。汗水垂らして錯乱し始める。半狂乱に目を霞めて、迫り来る未知なる恐怖に恐れを抱くの。
 決して逃れられない自らの変化に恐れを抱きつつも、心の奥底ではそれを待ち望んでいる矛盾、葛藤。相反する感情に惑わされのた打ち回る。
 その姿はまるで羊水の中で今か今かと出生の時間を待ち望む胎児のようにも見える。……生命の神秘を感じさせる瞬間ね。
 やがて頭からは頭皮を突き破り、二対の触覚が生え始める。臭いや感覚を敏感に感じ取ることができる私たちベルゼブブにとってなくてはならない感覚器がメキメキと頭骨を割って生えそろう。
 この触覚があればいつどこでも男の臭いを感じることができるし、男の状態すらも感じ取ることができる。汗の臭い、唾液の臭い、精の臭い。中でも特に精の臭いはサキュバス種や獣人型の魔物よりも鋭敏に感じることができるわ。
 そしてその臭いを感じた私たちは誰よりも速く俊敏に男の元へたどり着くことができる。そのために必要な翅が生え始めるの。
 背中がぱっくりと開いてね……まるで羽化するかのように背中が大口を開けると体内から翅が押し出されてくる。その翅はとても薄く、繊細なガラス陶器のようで……乱暴に扱えば容易く壊れてしまうほど儚げなもの。
 そしてその翅に刻まれる髑髏の紋様は用意に触れてはならないという注意を表すという意味もあり、同時に暴食を司る存在として他者に威圧し知らしめる印としての意味合いもあるわ。あ、つがいの男性は特例として触れてもいいことになっているのだけどね。
 そして最後に、蟲として体現するための胴体部分が臀部より発生する。無数の蠅と蛆が臀部に集合し、皮膚と結合し始めるの♪蟲の耐性がない者はこの光景を見るだけで嘔吐してしまうかもね。でも魔物化している当の本人はもう快楽のままなすがままにしているだけだから、そんなことは関係ない。
 皮膚に結合し女と融合することにより無数の存在はひとつの個として新たに転生する。これこそが私の信じる神のおもしべしの他ならない。
 胴体部分だけじゃない。より蟲らしく、蟲であるために手足にも蠅や蛆が結合し始めるんだ。手なんて三本指の鉤爪みたいになるけど、日常生活には何の支障も来たさないから大丈夫。
 そうして全ての工程が終わるとそこにいるのはひとつのベルゼブブとひとつのオトコだけ。ベルゼブブとして生まれ変わった者は当たり前のようにオトコと交わり始め、互いが快楽を満たすままに営みを行ない続ける。

 これが私たちの性活。これが私の望むもの。私が目指していたもの。
 わたしは大神官になってこういう光景を望んでいたんだ!!魔物になってやっとわかった気がする。
 人々が幸せになるために必死に勉強し、術の腕も研き、神学を学び……
 やっとの思いで大神官になれたというのに、私は人々を守り幸せにさせるどころか逆に不安と絶望の渦中へと導いてしまった。
 けれど今は違う。そう確信できる。
 見て御覧なさいこの素晴らしい光景を……
 床、壁、天井に埋め尽くされんほどの卵。
 愛液と精液の塗れた大聖堂。
 横行跋扈する蠅と蛆の楽園。
 嬌声響き渡る賛美歌。
 ああ……なんと美しい光景でしょうか。私の神はこの世界を望んでいたのです。生命が生命たりえる繁殖の光景。肉欲に溺れ貪欲に感覚を啜る邪さ。幸せが満ち溢れている!!
 この幸福感はヒトであったころでは決して味わうことのできないものであったに違いない。だから私は魔物を神聖なる者として崇め奉ろうとしたんだ。
 私はここの責任者となって食糧の配給を行なっている。日夜行なわれる肉の宴も取り締まり、産卵される卵は日に日に増えていっている。
 物好きな者もいて、わざわざ胎生で産もうとする者もいるのだけれど、それは個人の自由だから勝手にする方針ということにしている。我が子が産道を通る快感を味わうのもまた趣がありそうだね。
 
 教団は私たちのいる場所を【魔蠅の巣窟】だとか【堕ちたる都市:旧エクロン】とかいい広げてS級禁忌区域にしたらしいけど……ちゃっかり私的にはそれで良いと思ったりしている。
 実を言うと……毎日みんなが卵を産みすぎちゃうものだから、人口が増えすぎてもうまともに住める土地がないんだよね。これで更に旅人とか商人とか来られちゃうともう人口が溢れて大変なことになっちゃう。
 だから制限をかけてもらった方が何かと便利なわけだ。私たちはつがいになっていればそれだけで生命維持ができるのだからね。
 それに……これも個人的意見なのだけれど、誰もが生物として本能を全うできる素晴らしい場所なんだから、そう易々と入ってこられるのもなんだかありがたみがないような気がしてね。
 もっとこう……容易に足を踏み入れることのできない神聖な場所として崇められるのを望んでいるんだ。

 ん…………あ……
 もうミハイルったらまた何も言わないで中で出しちゃって♪
 産むの気持ちよすぎて毎回失神しちゃうんだから、ちょっとは孕む方の気持ちにもなってよね!
 まぁアナタの子供が産めるのは何よりも嬉しいからいいんだけどさ♪
 え、マリーたちには負けたくない?
 彼女達シスターは産むのが仕事みたいなものだからね、対抗意識を燃やすもの無理はないかぁ♪
 それじゃ……愛するダーリンの為に今日も頑張って孕んでみようかな♪大丈夫、私たちの神はいつも見てくれているよ。
 それに私たちにはリリム様から授かった【子宝宝樹の杖】があるんだから。元大神官の私にはピッタリの道具だよね。
 

 あ、そうこうしている間にまた教団の援軍が来たみたいだ。
 さて、これから一仕事しに行こうかな。頭のオカタイ教団の連中の頭を快楽漬けにしてふにゃふにゃししちゃおうじゃないか。
 ミハイルも、兵士諸君も装備は大丈夫?剣はもちろん純魔銀剣だよね。
 今日は何人同胞が増えるだろうか。楽しみだ♪』





 ―杖と本を手に取り彼女は戦場に赴く。闇の書物は今日もヒトを喰らい続け蟲を輩出し続けるのみであった―





※※※





「オヤ……誰かと思えば【巍然たる惡喰の聖典】を授けた方ではありませんか。
 噂はかねがね聞いておりますよ……ええ……それはもう素晴らしい……
 これで私の宿願にも一歩近づいたというものでしょう。いえ、こちらの話です……
 聖典を返却して下さるというのですか。新しい書物ができたので……そちらはもう必要なくなったっと……そうですか。
 やや……これは……やはりそうなってしまいましたか。聖典の魔力が完全に抜けてしまっています。これではもはやただの紙屑同然ですね。恐らくは聖典の魔力は全て貴女に乗り移ったのでしょう。全てを解読した貴女ならばあり得る話です。
 後ろにつれているのは貴女のお子さんですか?おお……とても貴女に似て可愛らしいですね。子どもとはいいものです。きっとこの子たちもいずれは大人となり貴女の繁殖の手伝いをするようになるのでしょう。受け継がれしその思いをどうか大切にしてください。
 人間という者は信じるものがなければ生きていくことはできません。それがたとえ善であろうと悪であろうと構わないのです。
 要は己の行動を肯定して欲しい。誰かに認めて欲しい。そういうささいな想いからなっているのです。
 善を選べば善を突き進み、悪を選べば悪を突き進むもの。そういう風に人間は出来ているのです。
 貴女の信じた者は人間からしてみれば最も信じてはならない悪そのものでしたが、魔物から見てみればそれは喜ばれることであった。たとえ悪の道に足を踏み外してでも貴女は生きたいと願ったのです。それは決して悪いことではありません。
 実に人間らしい行動でしょう。
 善と悪は表裏一体。
 死と生もまた同じようなもの。
 過去に善と悪に苦悩した者、死を超越した者を見てきましたが貴女もまた似たような者なのでしょうね。
 善でも悪でもなく己の信じるがままに生を産み出し続ける。それもまた魔物のあるべき姿だと思っております。
 ……では私はそろそろ去るとしましょうか。良い町ですが私は少々虫が苦手なもので……いえいえすみません。
 ではまたいずれどこかで会いましょう。そのときはもっと今以上に淫らで素敵な町になってることを願っております」
17/02/26 14:16更新 / ゆず胡椒
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■作者メッセージ
日記体小説まがいな魔物化シリーズ:5これにて終了でございます。
久しぶりの微エロだったのですが、やはり本エロでないと若干消化不良ような気がします。
いつもエロありでしたのでたまには微エロくらいでいいかな……と思っていたのですが、完成してみると予想以上に微エロでもなかった!微エロとエロなしの境界線ぐらいですがそこはどうぞ脳内保管でお許し下さいませ。
なおこのSSには元ネタ……のようなものがありまして。某2DMMORPGをやりこんだことがある方なら理解できると思います。
悲しいお知らせになりますが、わたくしリアル事情で半年ほど筆を休める所存です。どうかまた秋ぐらいになりましたらお会いしましょう。それまですこし息を潜めることになりそうです。
それではここまで読んでくださりまことにありがとうございました。

蛇足のキャラ紹介
【エレミヤ=ペルセスカ】
性別:女
種族:人間→ベルゼブブ
職業:大神官→魔蠅妃
性格:勤勉、生真面目→過激、色欲、悪食
特技:聖術、退魔の学問→魔術(いずれも生々しいもの)、演説、信仰、ホバリングからの急発進
好きな物:読書、自分の信じる神、昆虫型の魔物、ミハイル、子、繁殖、食事、不潔
嫌いな物:魔物→教団、主神、断食、清潔
趣味:魔物化を観察する、魔物化させること、蠅の飼育、家庭菜園
・最年少で大神官となった二十五歳の女神官。期待と不安を胸に抱き新たな配属先であるエクロンで勤務を行なっていた。ある日手に入れた書物『巍然たる惡喰の聖典』にいつしか見入られ、人知れず道を踏み外していくが本人はそれに気づかず(気が付いていたが現実を否定し気が付いていないようにしていた)解読を進めてしまう。
・突如として起こった大地震によりエクロンは半壊滅。人々を救うことのできぬ悔しさと不甲斐なさが彼女の堕落をより加速させる。結果として人々をも堕落の道へと誘い、古の召喚術により禁じられた存在を召喚してしまう。
・ベルゼブブとして魔物化した彼女は他の仲間と共に救援部隊を襲いミハイルと本能のままに交わりつくし、次々と同胞を増やし続ける。エクロンが堕ちると元大神官であった彼女はエクロンの代表者となり現在の魔窟を構成するように先導する。
・赤目の旅のリリムからの援助により新たなる聖典『蟲翅魅ノ晩餐』を作成。同時にエクロンを魔王軍のキャンプとして発展させるよう勅命が下ったのでより魔界らしさを出すためにも日夜営みに精を出している。人口の増えすぎが最近の悩み。

主な技
●乱反射の複眼(Evil Prism)
魔蠅をいたるところに配置し常に監視させる。魔蠅の視界は全て使用者の脳内に送り込まれるので一度に無数の視界を確認することができる。使用者の周囲半径500mまで有効。
コマンド:↑↓←→ABCD
●蝕みの皇(Flying eat)
蠅典『蟲翅魅ノ晩餐』に綴られている強制転魔の術。魔力に耐性のない者ならばこの呪文を聞くだけでベルゼブブへと魔物化してしまう。紙に綴られたインクが鎖状になって紙から飛び出ると対象を捕縛、その後召喚された魔蠅と魔蛆により体中を蹂躙され精を喰い尽されてしまう。
虫が苦手な人は見ないほうが吉。
コマンド:↓↓+CB
●蛆界(Maggotic field)
魔界の深淵部より禁じられし存在を召喚する。全ては蠅と蛆に埋め尽くされ、召喚者はおろか、近隣の全ての者を魔へと染め上げる。そこに慈悲などはなく、機械的に魔物へと身体を造り替えられてしまう。
天地は蟲で染まり見渡す限りのおぞましさに正気は消え失せるだろう。
コマンド:↑A←B↓C→D×2


【モブの皆さん】
ミハイル:教団兵士→蠅騎士団長。最初っからエレミヤのことは気にはなっていたが、接し方がわからず逆にエレミヤに嫌われる行動を取ってしまっていた。地震の途中隣国へと救援を要請しに行き、エクロンへと戻ってきた際に変わり果てた町の姿を見て唖然。街中を捜索するもベルゼブブとなったエレミヤに襲われそのままインキュバスへと魔物化してしまった。
蠅騎士団を結成し、全てのベルゼブブを護衛し障害を排除することを目的とする。
365日膣の中に突っ込んでいるので自分のイチモツがふやけるのが悩み。
マリー:シスター→慰安蠅。エクロンでエレミヤと一番初めに友人となった人物。彼氏ができたが地震のせいで彼氏の両足はなくなってしまったことを深く悲しむ。大神官であるエレミヤを守るために召喚されたベルゼブブたちの攻撃を庇い、あえなくベルゼブブへと魔物化してしまった。
今では日夜夫を騎乗位で搾取しながら子を産み続ける魔物らしい魔物となる。
ジェイド:司祭→開発担当。旧エクロン教会の代表者であり、人々のよき理解者。温厚かつ厳格な性格は人々の支えとなっていた。地震で妻と娘を失いかけるも、召喚されたベルゼブブの手により二人とも魔物化。自身もエレミヤを守るために結界を張りつづけ、最後には蠅の波に飲まれてインキュバスとなる。
今では妻と若かりし日を思い出しながら営みに励み、娘もまた彼氏を見つけ種付けを頑張っているらしい。
魔王軍のキャンプ地としてどう工夫すれば良いかをエレミヤと思案中。


【巍然たる惡喰の聖典】
危険度:A
希少度:C
魔力:D
司るは「蟲」、「豊穣」、「繁栄」
食と豊穣について事細かに綴られている書物。
一冊の辞典ほどの厚さがあり、表紙には煌びやかな装飾が施されている。
章ごとに書かれている内容が異なっており、食とはなんなのか、豊穣するための技術、あらゆる食物の作用など人知ならざることまで書かれている。異世界の農耕技術や気候までもが記されており、その技術を活用すれば文明すら変えられてしまうほどである。
その実態は旧魔王時代、魔界の領主の一柱として崇拝されてきた大悪魔バアルゼブルの記した偽召喚術式簡易スクロール兼洗脳呪文である。無限に食材を召喚できるとされているが、実は別の世界から食物を転移させてきているだけであり決して無から有を生み出しているわけではない。また召喚する過程で全ての食物には微量ながら魔界の魔力が蓄積されており、食すたびに快感と性欲が溜まってくるという。
自らの思想を塗り替える呪文が込められており、魔力を込めて詠唱することによりその効果は広範囲へと拡散するだろう。
魔を体に蓄積され、性欲の溜まった者たちはみな聖典の教えのまま繁栄しようとするため、よりたくさんの子孫を残せる身体へと変化するだろう。汚物さえも食物とし、栄養へと変えられる肉体へと。遠いところへ食の文化を伝えるために羽を生やして。

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