連載小説
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俺が信じていたモノってこんなにもクソッタレだったんだな
ハーリストクは結局ドラゴンを退治せずに支部までの長い道のりを歩き、行きと同じ1週間で帰り着き神官長に事態を報告するために神官長の部屋に急ぎ向かっていた。大きめの扉の前に立ちハーリストクは静かにノックをする。

「誰だ?」
「特攻討伐部隊兵ハーリストク・シュタイナー、任務の報告に参りました」
「入りたまえ」
「失礼いたします」

扉を開き中に入ると、あの時と同じ態勢で豪華な椅子に座りふんぞり返った小太った神官長がハーリストクを待ち構えていた。

「待っていたぞハーリストク・・・無事に帰ってきたということは任務を達成できたということなのだな?」

ハーリストクが無事な姿を見て、にやりとほくそ笑む神官長。

「その事についてですが・・・」

ハーリストクは今回の任務で起こった事の詳細を全て伝えた。

「つまりキミは任務を放棄したと・・・そう解釈していいのかね?」
「結果的にはそうなってしまいますが・・・ドラゴンとはいえあのように無力な存在をむやみに退治する必要は無いと判断したからです」
「しかし、魔物とは狡猾で残忍な存在だ。キミを騙しているとは考えられないかね?」
「仮にもドラゴンと呼ばれる存在です。騙す暇があるなら実力を行使して潰しにかかるはずです」
「では本当にそのドラゴンは・・・」
「はい。間違いなく無力でドジで駄目な存在の残念なドラゴンです!」
「・・・いくら魔物とはいえ言い過ぎでは?少し不憫だぞ」

思わず神官長が擁護してしまうほどの発言をするハーリストク。その表情にためらいの文字はなかった。

「コホン、まあよい。とにかく報告ご苦労」
「神官長一つだけお聞きしたいことがあります」
「なんだね?」
「今回の件で一つだけ疑問が生まれてしまいました・・・・・・魔物とは本当に悪なのでしょうか?」
「何故そう思うのかね?」
「今回出会ったドラゴンはどう考えても悪とは言い難い存在でした。思い返せば他に出会った魔物たちも実力こそ脅威であれ、人間に対して害を成しているものはいませんでした」
「・・・・・・」
「私は今まで魔物が悪だと思い戦ってきました。ですがあのドラゴンはその考えとはまったく正反対な存在でした。教えてください神官長!魔物とは本当に悪といえる存在なのでしょうか!?」

今まで目をつぶり話を聞いていた神官長はゆっくりと目を開きハーリストクを見据える。

「ハーリストク・・・キミには失望したよ」
「失望!?」
「キミは利口な兵士だと思っていたのだがね、まさかあの男と同じ発言をするとはやはり親子ということか」
「親子?それは私の父ということですか?」
「その通りだ。キミの父親はそれは勇敢で立派な兵士だったよ。何せ100人以上いた兵士に囲まれても最後まで抵抗したのだからね。勇敢すぎて涙が出てくるよまったく」
「!?兵士に囲まれたってどういうことですか!父は魔物に囲まれて殺されたのではないのですか!」

驚愕の事実を聞かされ声を荒げるハーリストク。

「ある日のことだ、キミの父親は我々教団に対して反逆行為を働いたのだ。君と同じ疑問を持ち、我々の魔物を浄化する作戦に一人だけ反対したのだよ。彼には当然頭を冷やしてもらうために支部に待機してもらっていたが彼は支部を抜け出し、作戦当日に我々を待ち伏せをして襲い掛かってきたのだ」
「父が・・・反逆・・・」
「おかげで浄化作戦は失敗した。よってキミの父親は我々の手で処分させてもらったというわけだ」
「そんな・・・では、私の村が燃やされ、残虐の限りを尽くされたことは・・・」

震える声で質問をするハーリストク。

「ああ、キミが考えているとおりだ。我々が手を下したことだよ」
「っ!?何故だ!」
「反逆者が生まれた村だぞ?不穏分子全て排除するのは当然のことだろう」
「ならば、何故俺を生かしたんだ!」
「キミは反逆者とはいえ有能だった男の息子だ。本来なら真っ先に殺すつもりだったのだが唐突にいい案が浮かんでね。キミに魔物を恨ませて使い捨ての兵士として活躍してもらおうという素晴らしい案がね」
「っ!?ふざけるなー!!!!!」

ハーリストクが怒りに身を任せて神官長に剣を抜いた瞬間だった。
後ろの扉から一斉に衛兵が突入し、有無を言わせずにハーリストクを押さえ込む。

「ぐっ!?いつのまに・・・」
「ふっ・・・何のためにあんな長話を聞かせてやったと思うのかね?時間を稼ぎ、部下に通信をするためだよ」
「通信魔法か・・・」
「それと先ほどのドラゴンの事だが不甲斐ない君に代わり我々で浄化してやろうと思う。何、心配する事はない。そのドラゴンは君と一緒に公開処刑にしてやろう。だから安心して牢で待っているといい」
「なっ!?てめえ!人の話を聞いてなかったのか!あいつは無力だって言っただろうが!!!」
「だからこそだよ。無力とはいえそのドラゴンを我々教団が討ち取り処刑したと伝われば、さらに我が教団の名声は広まり、その勢いを強める事ができるはずだ」
「あいつを教団の名声なんてもののために処刑するって言うのか!?ふざけるなよ!俺達はあくまで神の名の下に悪を粛清するために存在する組織!その大義名分は悪だと断定できれば粛清する権利を行使できるもののはずだ!その規則を破るというのか!!!」
「キミは何か勘違いしているようだね・・・たしかに神の名の下に悪を粛清するのが我々の仕事だ。その我々が悪事も働いていない人間を裁くのはたしかに禁止されている。だが・・・魔物とは存在自体が悪なのだよ。魔物である以上我々は神の名の下に粛清しなければならない。例えそれが無垢で悪意のかけらも無い存在だとしてもだ」

神官長が話を終えると視線で衛兵に合図を送る。
ハーリストクは衛兵に縛り上げられ、特別牢に連行されてゆく。
ハーリストクは激しく暴れ抵抗するが、完全に縛り上げられているためその行為はほとんど意味を成していなかった。

「くそ!くそ!!マーディブルック!!!絶対に許さねえからな!!!」
「衛兵そいつをさっさと連行しろ。五月蝿くてかなわん」

ハーリストクの怒声がどんどん小さくなっていきそして静かに扉は閉まる。

「やっと静かになったか・・・さて、ドラゴンが弱いことはわかった。あいつの処刑は後回しにして、まずはドラゴンの捕縛するための準備をするか」

パチンと指を鳴らすと扉が開き数名の部下と思わしき人物が入ってくる。
マーディブルック神官長が何か指示を出すと数人の部下は一礼をして部屋から去っていった。
残ったマーディブルックも戦支度を整えるために部屋を後にするのだった。


  −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「入ってろ!」
「ぐわっ!」

衛兵に牢の中に押し込まれ不安定な体制で前のめりに倒れるハーリストク。
その後ガチャリという音が聞こえ振り向くとすでに扉は閉ざされた上体になっていた。

「くそっ!ふん!」

直ぐに立ち上がり扉にショルダータックルをかますが肩が扉に触れたとたんに何かにはじかれ激しい激痛に襲われる。

「ぐあっ!・・・け、結界か・・・」

苦しそうなうめき声をあげるが、それでもかまわずにショルダータックルをかますがさっきと同じように結界にはじかれるハーリストク。
何度も弾かれては、何度も体当たりを繰り返していると突然後ろから声を掛けられる。

「そんなことをしても無駄よ。無駄に体を痛めるだけだからその辺にしておきなさい」

ハーリストクが後ろを振り向くとそこには裸で体育座りをしているサキュバスがいた。
その姿を以前どこかで見た覚えがあり少し記憶を探るとすぐに思い出す事ができた。

「お前は・・・あの時捕縛したサキュバス!何故ここに・・・たしか公開処刑されたはずじゃ」
「ふん!おあいにく様こうして生きてるわよ・・・といいたいところだけど。この様じゃ堂々と生きてるとは言いにくいわね」

皮肉を言ってツンケンな態度を取るがすぐにしょんぼりしてしまったこのサキュバスは、以前ハーリストクが激戦のすえに捕縛する事に成功した魔物であり、名前はレイナ・キュバスレイその実力は高く、強力な淫気を撒き散らしながら魔法を連発する姿は今でも脳裏に焼きついている。

「何故こんなところに」
「あの腐れ神官に気に入られたからよ・・・性欲処理係としてここに閉じ込められてるのよ」
「閉じ込められてるって・・・お前の力ならこの牢をやすやすと突破できるはずだ!」
「そうでもないわ・・・この首輪が取れない限り魔力は制限されてしまうわ」

そう言ってレイナは自分の首を指差す。そこには黒い首輪がはめられており首の真ん中には赤い宝石がはめ込まれていた。

「これはたしか魔力の高い囚人用に開発された魔力封じの首輪か、たしかある一定の魔力を超えない限りは確実に押さえ込める首輪だな」
「その通り、あの時の私はかなり魔力を消費していたからこの首輪の許容範囲内だったためにそれ以来この首輪が認める魔力までしか回復しなくなってしまったの。本来ならもっと魔力を保持できるのに、本当に忌々しいわ・・・・・・それはともかくあたしを捕まえた英雄様が何故こんな牢屋に放り込まれているのかしら?」

レイナが首輪を忌々しげに見た後皮肉を込めた台詞と共にハーリストクを見る。

「俺は反逆分子として投獄されたんだ・・・・・・今まで魔物を悪だと信じて戦ってきた。それは俺の親父を殺し、村を破壊しつくした存在だと思っていたからだ。だけど真実は違った・・・神官長、いやマーディブルックはとんでもない大嘘付きだった。俺の親父を殺し、なおかつ、罪もない魔物を悪だと決め付けるとんでもない野郎だった。俺が信じていた物は全部嘘で塗り固められていたんだ。くそ!どうしてもっと早く気づけなかったんだ!くっそー!!!」

ハーリストクは怒りと悔しさに涙を滲ませ歯を食いしばっていた。

「ふん。今更気づいても遅いのよ・・・」
「ああ。そうだな、今更気づいたところでもう遅い。だが・・・今ならまだ間に合う事が残っているんだ!それを成し遂げなくちゃ、俺は死んでも死に切れない!だから、俺は最後まで抗うぞ!絶対にアイツを助けるんだ!」

そう言うと再び扉に体当たりを始めるハーリストク。
ぶつかっては弾かれ、何度挑んでも傷一つ付けられない扉を前にしてもハーリストクは一歩も引かなかった。
激しい激痛に歯を食いしばり何度も、何度も・・・
何度も弾かれた所為で体のあちこちに傷を作り、血を流し続けた。
レイナは初めは呆れた表情で見ていたが、次第に怪我が増えていくハーリストクを見ているうちにだんだんと見ていられなくなり、気がつけば再び声を掛けていた。

「もうやめなさい!何故そこまでして抗うのよ!こんなに傷だらけになって、このまま続けたら、あなた出血多量で死ぬわよ!」
「俺はまた一つ罪を犯したんだ・・・あるドラゴンのことをマーディブルックに報告してしまったんだ。このままじゃアイツは間違いなく殺される!それだけは阻止しなくちゃならない!これ以上何かを失うのはもうたくさんなんだ!」
「あんた・・・」
「頼むから放っておいてくれ、俺は意地でもここから脱出しなくちゃならないんだ!」

そう言って再び体当たりしようとするがそこを強引に止められてしまう。

「あんたはそのドラゴンを助けるためにここから抜け出したいのよね?」
「そうだ」
「だったらそんな闇雲にぶつかるよりももっと確実な方法があるわよ」
「あるのか?そんな方法が」
「ええ・・・本当は不本意だけどね」
「どうすればいいんだ?」

腕を組み、ちろりと舌なめずりをして獲物を捕らえるかのような目つきに変わりこう宣言した。

「簡単な話よ・・・あたしとエッチしましょ」

さらりと爆弾発言をしたレイナの言葉が木霊した。
それに対してハーリストクは・・・

「・・・・・・はぁ?」

脳の処理が追いつかずに素っ頓狂な声を上げて?マークを飛ばすのだった。


次回は桃色展開?

つ・づ・く♥
12/07/25 19:33更新 / ミズチェチェ
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■作者メッセージ
というわけで第3話です。
今回はドジっ娘はお休みです。
その代わりちょっとツンデレなサキュバスが登場しました!
そして、とうとう神官長が本性を現し始めました!
ハーリストクの過去も大暴露、完全にフラグが立ちましたね。
このあとは桃色展開に突入予定!お楽しみに♪

さて今回の感想返信です!

>zio様へ
感想ありがとうございます!
ほう誘われるまま食されるとな・・・いや意外とガードが固い気がするな・・・よしちょっとシュミレートしてみよう。

・誘ってみる→知ったかぶりをするサラナ→徐々にリードを奪う→食すことに成功!

あれ?意外と簡単・・・サラナ逃げてー!!!

>dog様へ
感想ありがとうございます!
ああ・・・脳内で麺類全てをフーフーしながら食ってるのが想像できた。熱かろうが冷たかろうがフーフーして食ってそうだ。

pixivの小説はあやクルVSアミティというタイトルであります!作者名もチェチェのままです。タグであやしいクルークで調べればすぐ見つかるかな?

>バーソロミュ様へ
感想ありがとうございます!
まあ何個も陥没を作ったがために村人が改築したのでしょうね(笑)
お使いに行けば確実に迷子になってそうだな〜

>ノワール・B・シュヴァルツ
感想ありがとうございます!
サラナがこければ地面が陥没し、壁に穴があく・・・
危険なドンガラガッシャンの出来上がり!
やばいズッコケが最終兵器だよコレ!

というわけで次回もよろしくお願いします!
何故エッチをするのかは次回で明かすぜ!
まあ感のいい人ならわかると思うけど・・・
ではでは〜!

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