連載小説
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(8)ブラックハーピー
ふと気が付くと、僕は空に浮かんでいた。
ぼんやりしていたわけではない。本当に一瞬のうちに、空に浮かび上がったのだ。
遥か眼下に広がる地面を呆然と見ていると、不意に肩に痛みが走った。
見ると、大きな鳥の足が僕の両肩をがっしり掴んでいた。
悪さをした時によく聞かされた人さらいワシかと思ったが、顔を上げてみれば僕を掴んでいたのはワシではなかった。
すらりとした鳥の足に、簡単な布を巻いただけの人の胴体。そして左右に広がる黒い翼。
人の身体に鳥の羽根を備えた魔物、ハーピーだ。
黒い羽や羽毛からすると、ブラックハーピーのようだ。
魔王交代以前の時代を生き抜いた村のおじいさんの話によれば、ブラックハーピーは特に危険なハーピー種だったらしい。
魔王の交代によって魔物の性質は穏やかになったというが、少なくとも僕を空中散歩させて元の場所に返す、ということはないだろう。
なるべく痛い目にあいませんように、と主神に祈りながら、僕ははるか下方を流れて行く地面から目をそらした。
やがて、眼下に広がる地面はいつしか鬱蒼と生い茂る森へと変わっていた。
ブラックハーピーは、どちらに進めばいいのか分からぬほど広い森の一角に向けて、下降を始めた。
一部の隙間もないほど生い茂っていたように見えた木々の、以外と広い枝葉の間を通り抜けて、太い枝が行き交う以外と広い空間に出た。
空中からは村の近くの森ぐらいに見えていたが、実際は比べ物にならないほど巨大な木々が生えていたようだ。
「あらー、お帰り―」
不意に横から、女性の声が響いた。
顔を向けると、枝の一本にブラックハーピーが止まっており、こちらに向けて翼を片方振っていた。
「お帰りー」
「お帰りなさーい!」
枝の隙間を通り抜ける間に、左右からブラックハーピー達の声が掛けられる。
僕を捕えるブラックハーピーに向けてのものだった。
やがて彼女は、枝の一本に近寄り、その上に拵えられた大きな鳥の巣に僕を下ろした。
懐かしい足場の感触が足に触れ、肩の痛みが消え去る。
だが、そのことに喜ぶ暇はなかった。地面までの高さと、ブラックハーピーへの恐怖があるからだ。
「ふふふ」
ブラックハーピーは巣の縁、ちょうど僕の向かいに降り立つと、真っ黒な翼を折りたたみながら微笑んだ。
肩にかかるかかからないか程の黒髪の下にあったのは、整った女性の顔だった。
僅かに頬を赤らめているのは、僕を抱えてここまで飛んできたからだろうか。
「…意外と怖がらないのね」
ぼんやりと彼女の顔に見入っていた僕に向けて、ブラックハーピーがそう言った。
「ここが高くて私が気にならないから?それともハーピーなんて怖くないから?」
真っ黒な瞳で僕を見つめながら、彼女は屈み、顔を近づけてきた。
後ずさろうにも、ここは樹上の枝の上。下手に落ちれば、地面までまっさかさまだ。
高さという物理的な恐怖と、迫るブラックハーピーという未知の恐怖に、僕は完全に身動きが取れなくなった。
そして彼女の顔が視界いっぱいに広がった瞬間、唇に何か柔らかい物が触れた。
彼女が、僕と、唇を重ねたのだ。
「!?」
身動きの取れぬまま混乱する僕を、彼女はいくらか愉悦の浮かんだ瞳で見つめながら、キスを続ける。
いや、それどころか羽の生えた両腕を僕の肩へ回し、抱き寄せるようにしながら体を擦り付けてきたのだ。
飛行によるものか、彼女の身体は熱を持っており、衣服越しでもそのぬくもりが伝わるほどだった。
誘拐とキスと抱擁と、もはや彼女が何をしたいのか混乱する俺の頭では思いつくこともできなかった。
やがて彼女は、翼に生えた指でもって僕の衣服を徐々に脱がし始めた。
硬直する僕のシャツが胸までまくられ、尻がむき出しになって巣の材料によってチクチクする。
そこまで脱がされ、彼女の胸元を覆う布を押し上げる二つの突起に気が付いたところで、僕はようやく彼女の目的に思い至った。
投げ出した僕の両足を彼女がまたぎ、両脚の付け根を露にする。
魔物とはいえ、初めてみる女性のそこは、正に肉の亀裂としか形容しようのない印象を受けた。
しかし、内側からあふれ出す粘液に濡れ、僅かに左右に開くその様子から、なぜか目を離すことができなかった。
「あらあら、怖がってたのにここは元気ね…」
彼女の視線がふと下に落ち、ほほえましげに細められた。
彼女の目を追って視線を下ろすと、いつの間にやらガチガチになった僕のアレがそこにあった。
「我慢しなくていいわよ、ふふ…」
彼女はそう微笑むと、ゆっくり腰を下ろし始めた。
勃起したアレと彼女の股間の距離が徐々に狭まる。
僕の脳裏を、魔物と交尾するんだという意識が掠めた。だが、拒絶のために体を動かすどころか、僕はどこか彼女との交わりに期待していた。
魔物とはいえ、顔や胴は美しい女性のそれだ。無理もない。
やがて、無理やり納得する僕のアレが、ついに彼女の股間に触れた。
最初に感じたのは柔らかさ。
そして押し広げるような感覚と共に、ぬるぬると濡れた肉穴と温もりが僕を包み込んだ。
いや、実際に彼女の胎内に入り込んだのは、ごくごくほんの一部なのだが、興奮と緊張によって鋭敏になった感覚は、まるで全身を包まれているかのように錯覚させた。
「うあ…あぁ…!」
濡れた肉襞が僕の屹立を締め上げつつ、ゆっくりと飲み込んでいく感覚に、僕は思わず喘ぎ声を漏らしていた。
身体のごく一部から注ぎ込まれる快感が、全身を震わせ、僕の意識を塗りつぶしていく。
先端からカリ首までが亀裂に飲まれたところで、ここが樹上だということに対する恐怖が消えた。
張り出した裏筋の半ばまでが締め付けられていく感覚に、彼女が魔物だという怖れが無くなった。
そして、アレが根元まで彼女の中に入り込み、何か弾力のある物が先端に当たった瞬間、僕の忍耐が限界に達した。
高所と魔物に対する恐怖を乗り越え、興奮と欲望が腹の奥から尿道を伝って迸った。
おそらく、つまめばそのまま持ち上げられそうなほど凝り固まった濃厚な精液が、彼女の体奥に注ぎ込まれ、膣壁の奥に叩き付けられる。
「っ!…ふふ」
突然注ぎ込まれた熱い体液に、彼女は一瞬驚きを顔に浮かべた。
だがすぐに笑みを浮かべると、彼女は動きを止めて胎内に広がる熱を味わう。
「うぅ…」
一瞬で達せられてしまったことに、僕は屈辱のようなものを覚え、彼女の表情から軽蔑を感じ取った。
だが、彼女の口から紡がれたのは嘲りでも侮蔑でもなかった。
「一回出したのに、まだこんなに硬いわね…」
腰をゆっくりと回して、一度の射精を経た肉棒の形を味わいつつ、彼女は優しげな眼で僕を見つめる。
「今度はもう少し、頑張れるわよね…?」
彼女の励ましの言葉と、うねり、絡みつく胎内の肉の感触に、僕のアレは硬さを増した。
柔らかな肉の感触がもたらす快感が興奮を煽るが、一度射精したおかげかたちどころに追い詰められることはなかった。
だが、それでも彼女の温もりや体の感触、柔らかな羽毛が、じわじわと僕の意識を蝕んでいく。
「ふふふ…」
形を確かめる程度だった腰の揺れが、次第に僕のアレを味わい、楽しむような大きい動きになっていく。
屹立を包み、くすぐっていた程度の襞肉が、絡みつき、滲み出す愛液擦り付けてくる。
与えられる快感は、一度はなった精液を補い、興奮を膨らませてくる。
興奮が腹の中で渦を巻き、再び絶頂へと僕を押し上げて行く。
「う、うぅ…」
僕は歯を食いしばり、こみ上げてくる欲求をこらえた。
頭の中を塗りつぶしつつあった快感が微かに薄れ、射精が少しだけ収まる。
「…我慢してるの…?」
必死に快感を押さえ込む僕に向けて、彼女が囁いた。
「初めての男の子が、魔物との交尾で我慢できるわけないじゃない」
腰を動かすのを止め、彼女は僕の頬に両手を添えた。
「我慢せず、たくさん気持ちよくなって…」
直後、彼女の膣がきゅっと締まり、屹立を刺激した。
動きが止まっていたせいで油断しきっていた意識に、強烈な快感が注ぎ込まれる。
心地よさを感じた瞬間に、僕は達していた。
「ふふふ…また出た…」
どくん、どくんと脈打つ屹立と、胎内に広がる温もりに、彼女は囁く。
「これで孕んだかしら?私とあなたの子…」
彼女の言葉に、膣肉と射精の快感に蕩けていた意識に、微かな冷静さが戻る。
「あなたの熱くてどろどろの子種…たっぷり注ぎこまれたんだから当然よね…」
言葉と共に彼女が腰を揺すり、濡れた音を響かせる。
それは彼女の体液だけでなく、僕の精液も加わった水音だった。
「でも、念のためにもう2、3回注いでもらおうかしら…?」
粘液にまみれた襞が絡みつき、精液をねだる様に締め付けた。
「うぅ…」
魔物に犯され、二度も射精してしまった事実に、僕は興奮しつつも後悔の念を抱いていた。
「明日も明後日も頑張って…私が孕んだら、産んで、二人で育てて…その間に二人目を孕んで…ふふふ」
彼女は囁きながら腰を揺すり続けていた。
「頑張ってね…あなた…」
彼女が笑みを浮かべながら大きく腰を揺すり、僕は三度目の絶頂へ追いやられた。
11/07/02 15:33更新 / 十二屋月蝕
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■作者メッセージ
猫よ。贈られし猫よ。
君とその贈り主への感謝として、鳥を捧げる

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