連載小説
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旅37 旅のレシピ〜とある淫魔(リリム)の交差録(コラボリスト)
「魔界抜けちゃったね」
「ああそうだな。それであの遠くにちらっと見えるのが森の手前にある町か」
「あーあの町かー。結構大きいんだな」

現在12時。
私達はミリアさん達と別れた後、ずっと歩きつづけた。
その間に数人の魔物とすれ違ったりしたが、ユウロがおもち帰りされるなんてハプニングが起こる事も無く無事に魔界を抜ける事が出来た。
魔界を抜けた証拠に、頭上には太陽が燦々と輝いている。

「あーあ魔界ぬけちゃったね…大丈夫フラン?」
「一応ね…まあこの日がさがあるからまだ大丈夫だけどね…」

魔界にいた間は問題無かったが、魔界を抜けたのでフランちゃんは黒い日傘で日光を遮っている。
それでも少しは力が抜けてしまうようだ…と言っても歩けない程ではないが。

「うーん…魔界ならおうちに住んでるだれかがいてもおかしくなかったんだけどな〜……」
「でもいなかったからまだ旅をつづけられるし、あたしとしてはどっちでもいいかな」
「そう言ってたおれられたらアメリがイヤなの……」
「うん……ごめんね……」
「でも…たしかにフランと旅が出来てたのしいよ」
「うん。たのしい!」

だがそれを心配するアメリちゃん。
やはり親友には倒れてほしくないのだろう…だからこの旅には連れて行かなかったとも言ってたしね……
魔王城に住んでる人、早く見つかるといいけど……それはそれでフランちゃんとお別れだから少し寂しいな……

「まあそれは前決めた通りでいいとして、これからどうする?先にご飯食べるか、あの町まで我慢するか」

とりあえずフランちゃんの事は今あれこれ考えてもどうしようもないので置いといて、時間も時間だしお昼にするか皆に聞いてみる。
あの町に到着するまで見た感じでは1時間とちょっとあれば到着するが、朝も遅くは無かったのでおなか空いてると言えば空いてるからどうしようか悩んでいるのだ。

「そうだな…アタイはどっちでもいいけど……」
「俺もどっちでもいいぜ。腹減ったと言えば減ったけどな」
「あたしは…おなか空いてきました」
「アメリも……まだ大丈夫だけどおなか空いてきた……」
「そっか……」

聞いてみたところ……大人組はまだちょっとは持ちそうだが、子供組が危なそうだ。

「それじゃあお昼ご飯にしよっか。アメリちゃん『テント』だしてね」
「うん!」

という事で町に行く前にお昼ご飯にする事にした。
そろそろ食料の残っている量が危なくなってきているが、お昼ご飯の分はいくらなんでもあるし、それにあの町で食料を買えばいいだろう。
だから……今から何作ろうかなぁ……




…………



………



……








「着いたね」
「だな。ここでしっかり準備してから森に行こう」

現在15時ちょっと前。
お昼ご飯を食べ終えた私達は、予定通りに町に辿り着いた。
見た感じ人と魔物の割合は半分ずつってとこかな……ただエルフやフェアリーがいるのがちょっと気になる。
もしかしたら森から町に移り住んだのかもしれない…そうすると、その森にはエルフやフェアリーが生息しているという事になるわけで……

「これは本当にきっちりと準備しておかないといろいろと怖いね……」
「そうだね……」

魔物が多い森…それは人間の男、つまりユウロにとっていろんな意味で危険な場所。
だからといって私達魔物が安全かと言えば…そうでもないだろう。
だからしっかりと準備をしてから森へ向かわなければ。

「それじゃあまずは食料の確保だね。ラスティで買った分はまだあると言っても、その前に買った分がほぼ無くなってるから買い足しておかないと」
「そうだな…それから森の地図とかあったら買っておこうぜ。迷子になればなるほど危険は増すからな」
「アタイはどんな魔物がいるか楽しみだけど…そうは言ってられないか」

なのでまず私達は食料を買いに行く事にした。

「それで店は…この付近には無さそうだな」
「それじゃあまずは適当に町の中を歩こうか」

と言っても……食料品売り場がどこにあるかパッと見ではわからないので、まずはお店自体を探す事にした。


……………………


「さてと…とりあえず野菜や果物を買わないとな……」
「サマリ、これ……」
「……スズ、お肉もいいけど野菜も見てね」
「……わかったよ……」

適当に歩く事数十分。私達は様々な物を売っている市場に着いた。
まずは一番少ない野菜を買う事にしようとしたのだが…スズが嫌そうにしている。
野菜が嫌いだからって食べないと身体壊すから無理矢理食べさせているが…私がワーシープである事を差し引いたって野菜おいしいのに。

「いらっしゃい。何をお求めですか?」
「そうだなぁ……ピーマンと人参これだけとキャベツとレタスそれぞれ3玉、あとタマネギも袋詰めされてるやつ3袋買っておこうかな……あ、パセリもある…パセリも2つ、それから芋…はあるからいいや…それと椎茸一袋に……トマトも一箱下さい」
「おお、結構買うね……大家族?それとも旅人かい?」
「旅人です。砂漠越えをしたので新鮮な野菜が無くなっちゃったのでいっぱい買おうかと」
「そうかい、じゃあこれだけいっぱい買ってくれるし、キャベツとレタスもう1玉ずつおまけしてあげよう」
「ありがとうございます!」

金欠という訳ではないし、どうせすぐに無くなってしまうので多すぎるかなと思うぐらい買っておく。
アメリちゃんの『テント』にある食材を保存・保冷する事が出来る箱(ユウロ曰く冷蔵庫というものらしい)のおかげで数日から1週間弱は鮮度を保てるので、買い過ぎて結果消費しきれず腐って無駄になる事も無くていい。

「さて…結構買ったけど次どうしようか……」
「サマリ、これ……」
「……わかった。買ってあげるよ……」
「やったー!」

次は何を買おうか考えてたら、スズがまた肉類を…性格には脂が程良いおいしそうな牛肉を指差してきた。
お肉もまあ少ないので買う事にした……途端にスズが喜んだが、そんなにお肉が好きなのか。
ジパング人ってお肉より野菜や魚の方が好きなイメージがあるんだけどな……そこはウシオニだからだろうか?

「らっしゃーい!何買っていきますか?」
「そうですね…じゃあ牛肉と鶏肉と豚肉をそれぞれ500グラム、あと…合挽きの挽肉300グラムのものとそこの袋詰めされたウインナーを5袋下さい」
「はいよー!まいどありー!!」

とりあえずスズが指差した牛肉を始め鶏肉やウインナーなど目に入ったものを買う。
結構な量になってきたな…もうちょっとぐらいは持てるけど『テント』の中にしまうべきか…
と言ってもその『テント』を持っているアメリちゃんは今フランちゃんと玩具を売っている店を見に行ってるからな…もう少し、持てる分だけは買い物しておこうかな…

「あ、なあサマリ、あっちに調味料売ってる場所があるんだけど……」
「え、ホント?胡椒やコンソメ、あと砂糖も少なくなってたから買っておかないと……」

なのでユウロが発見した調味料を買う事にした。
塩は砂漠越えで結構重要だったのでまだあるのだが、砂糖の方がたまに作るお菓子の材料とかに大量に使うせいでほとんど無くなっていたから買い足さなければ。

「いらっしゃいませー。何にしますか?」
「えっと…胡椒とコンソメと砂糖で…あと食用油も下さい。コンソメと砂糖は多めでお願いします」
「かしこまりましたー!ありがとーございまーす!!」

これで目的のものを粗方買えたので、手に荷物を持ったままだと観光するのも大変だからアメリちゃん達を呼んで町の外で『テント』を出してもらって買ったものをしまう事にする。
あまり森の中で何泊もする気は無いが、これだけあれば食料的には迷子になっても大丈夫だろう。
あとは…魔物対策の何かが売ってないか……そういうのって反魔物領はともかく親魔物領にあるかなぁ……

「これ…かわいいね」
「そうだね…」
「おーいアメリちゃん、フランちゃん!」
「「ん?」」

とりあえず『テント』に買った食材を入れる為に、玩具屋の前でウサギ(ワーラビットでは無い)のぬいぐるみを見ている二人に声を掛けた。

「買い物終わったから『テント』出してほしいんだけど……その前にそのぬいぐるみ買ってあげよっか?」
「え、いいの?」
「うん。そもそも食材はアメリちゃんのお金から出してるし、これくらいは私が買ってあげるよ。フランちゃんも同じの欲しい?」
「え、いいのですか?」
「うん。じゃあ決まりね。このウサギのぬいぐるみ2つ買います」
「まいどありー」

二人して欲しそうにウサギのぬいぐるみを見ていたので、二人にお揃いのウサギのぬいぐるみを買ってあげた。

「ありがとーサマリお姉ちゃん!」
「ありがとうございますサマリさん!」

二人とも笑顔で私にお礼を言ってきた……
可愛過ぎて私はどうにかなってしまいそうだ……

「どういたしまして。それじゃあ行こうか」
「うん!」

どうにか平常心を保ちながらそう言って、私達は郊外に向けて歩いていこうとしたのだけれど……

「……あれ?」
「ん?どうしたんだアメリちゃん?」

何かを見つけたらしく、突然アメリちゃんが足を止めたのだ。
アメリちゃんが何を見つけたのか、視線を追ってみると……



「ん〜…次はどんなメニューにしようかしら……」



長袖長ズボンを着た、ブラウン色の髪の美形女性が、食材を見ながら何か呟いていた。
少し聞こえた事から考えると…飲食店でも開いている人なんだろうか?
でも……あの女性がどうかしたのだろうか?アメリちゃんの知り合いか?
顔は美形ではあるけど…どう見ても普通の人間だと思うのだが……旅先で出会った…は多分無いよね……

「やっぱり……!」
「あ、ちょっと!」

あの女性がどうかしたのか考えていたら、アメリちゃんはその女性に向けて駈け出して行ってしまった。

そして……




「ロメリアお姉ちゃああああああああんっ!」
「ん?あ、アメrうわったあっ!?」




その女性の名前だと思われるものを叫びながらその女性にダイビングアタックをかました……もとい飛び付いた。
まあ相手は吹き飛んだのでは無く、少しよろめきつつも普通にアメリちゃんを受け止めたので問題は無いだろうが……

「知り合いなのアメリちゃん……っていうかなんでいきなり飛び付いたの?」
「うん!ロメリアお姉ちゃんだむにゅ!?」
「しーっ!」

いったい誰なんだろうとアメリちゃんに聞いてみたのだが……女性……もといロメリアさんがアメリちゃんの口を塞いでしまった。

「えっと…どうしました?ロメリアさんはアメリちゃんの知り合いですか?」
「え、ええまあ……」

どうやらアメリちゃんの知り合いではあるらしいけど…いったいどうしたのだというのだろうか?

「えっ何ロメリアお姉ちゃん?」
「えっと…ちょっと人気の少ないとこまで来てもらえる?」
「え、は、はい……」

何か聞かれるとマズい事でもあるのか、ひそひそと小さい声でそう言ってきたロメリアさん。
どちらにせよ人気の少ない郊外に行く予定だったので、ついて行く事にした。



………



……







「ふぅ…ここならいいかしら」
「えっと……どうしたのロメリアお姉ちゃん?ここ魔物にやさしい町なのに……」
「というかやっぱり気付くものなのね……」

ロメリアさんと一緒に人気のない場所まで来て、ようやく話し始めた。

「えっと……どなたですか?」
「私は…」
「ほら、前によいのみやってとこでごはんたべた時に言った『びしょくひめ』って呼ばれてるお姉ちゃんだよ」
「え……ってことはこの人……リリム?」

そういえば宵ノ宮で狐の薬膳を食べてる時にそんな話題になった事があった気がする。
なんでも料理が大好きなうえに得意で世界中を周っている美食姫と呼ばれるお姉さんがいるとか……じゃあこの人がそうなのか?
でもロメリアさんからはリリムから感じる魅了が全くないどころか、髪の色すら違うと思うのだが……

「……まあバレちゃったしいいか……」
「へ?ああっ!」

なんて思っていたら、人化の術でも解除したのだろう……髪の色がリリム特有の白色になり、翼と尻尾、それに角も生えてきて、服装はともかく見た目はリリムそのものになった。
たしかにロメリアさんはリリムだった……しかも、アメリちゃんが知っているお姉さんであった。

「あ、そうだお姉ちゃん。よいのみやで聞いたんだけど……ナーラってお姉ちゃんのこと?」
「ああ…そういえば宵ノ宮の狐路に寄ったって話だったか……そうよ。それは私の事」

どうやらロメリアさんと宵ノ宮で聞いたナーラさんは同一人物であるらしい。

「えっと…何故偽名なんか使っているのですか?」
「あ、そうそう…その事なんだけど……」

何故偽名をわざわざ使ってるのか聞いたら、ロメリアさんは私達全員を見た後、真剣な表情で……

「お願いだけど、その名前は絶対に出さないでほしいの。私を呼ぶときはナーラの方で呼んでね」

そうお願い…というか口止めをしてきた。

「えっ?なんで?」
「あのさアメリ…私が魔王城に住む人達に色々言われているのは知ってる?」
「えっと……お店開くとか?」
「そうそれ。いい加減料理店開けだの婿見つけろだの性感メニュー作って欲しいだの高望みはよせだの忠告じみた手紙を位置探知されて外にまで送ってこられるのが面倒なのよね……」
「あーだから魔力もへんだったんだ。たいへんなんだねロメリ…ナーラお姉ちゃんも」
「そうそう、他の人達もそんな感じでお願いね」
「了解です」

どうやらロメリア…もといナーラさんは料理上手であるが故に周りの人達に色々言われて大変との事らしい。
やはり王女ともなると色々あるのだろう……って事でもないかな?
今まで会ったリリムは基本自由そうだったし、アメリちゃんなんか8歳で旅してる程だもんな……だからナーラさんの場合はまた別、どちらかと言うとフランちゃんに近い悩みなんだろう。

「あ、そういえばあなた…もしかしてフランちゃん?」
「はい、あたしはフランですが……ロメリ……ナーラさまはあたしのことご存じで?」
「もちろん。前にアメリと一緒にいたじゃない。アメリと幼馴染みの側近でしょ?」
「あ、おぼえていらしたのですね。かなり前だったと思いますが……」

で、そんなフランちゃんとナーラさんも知り合いらしい。
そういえばナーラさんは魔王城に住んでいるって話だったっけ……なら知り合いでもおかしくは無いか……


……あれ?という事は……


「あ、そうだナーラお姉ちゃん。今もおうちに住んでるよね?」
「おうち……そうね。住んでるけどどうしたの?」
「あの…帰る時にあたしをおうちまでいっしょにつれていってもらえませんか?」

『おうちに住んでいるだれかにぐうぜん出会ったらフランもいっしょにおうちに転移魔法で送ってもらう』時が来たと言う事か

……

「あら?旅は続けなくていいの?」
「はい…元々おいて行かれたからこっそりとおいかけたはいいのですが…やっぱりヴァンパイアに旅はきつかったので…」
「なるほど…たしかにフランちゃんには辛いだろうね…わかったわ。帰りに一緒に送ってあげる」
「ありがとうございます!」

つまり……フランちゃんとはここでお別れか……
ちょっと寂しくなるな……

「ところで…いつ頃帰宅予定で?」
「うーん…今度、というか数年後にとある店で出す新メニューをどうするか悩んでいたから…一泊ぐらいして帰ろうと思ってたのよね…」
「そうですか……」

一応1泊はする予定らしい。
フランちゃんとは今日の夜が最後の夜になっちゃうのか……じゃあとっておきの夜ご飯を作ってあげたいな……


あ、そうだ。

「あの…ナーラさん。泊まる場所って決まってます?」
「いや、特に決まってないわよ。ただフランちゃんの事もあるしなるべく同じ宿にいたほうが良いわね…」
「なら…アメリちゃんの『テント』に泊まっていきませんか?」
「……へ?何故?」
「それは…ここでフランちゃんとお別れなら、私の得意料理を食べさせてあげたいなって……」

フランちゃんにご飯を作ってあげるなら、宿に泊まらず『テント』のほうが良い。
そう思って、私はナーラさんにこう提案した。

「へぇ……旅の間はあなたが料理を?」
「はいそうですが…」
「ナーラお姉ちゃん、サマリお姉ちゃんのごはんはおいしいんだよ!」
「ほぉほぉ……なるほどね〜…」

どうやら私が料理を作っている事に何かしら興味を持ったようだ。
何か考えた後、ナーラさんは……

「いいけど、そのかわり私にもあなたの……サマリさんでしたっけ?サマリさんの料理、私にも食べさせて」
「え……あ、はい…お口に合うかはわかりませんが……」
「それは食べてみないとわからないでしょ?」
「そ、そうですね……わかりました」

私の料理をナーラさんに食べさせるという条件で了承してくれた。

しかし…美食姫と呼ばれるような人の口に私の料理は合うのだろうか……


「じゃあもうちょっと町の外に行ってからアメリのテント出すね」
「そうだね…買い込んだものも仕舞わないといけないしね」

何気なく言った一言で結構な事になってしまったが、そうなってしまったものは仕方がない。
フランちゃんに振舞うもの、そして美食姫相手に何を作ろうか考えながら、私は町の外に向けて歩いた……



====================



「へぇ…そんな旅をしてたんだ……姉妹に会いに行く為に旅してるだなんて珍しいと思ったけど、思ったより楽しそうね」
「うん、楽しいよ!というかロメリ…ナーラお姉ちゃんもいろんなもの食べてるんだね」
「まあね。全部が全部おいしいってわけじゃないけど……しかしねぇ……」
「ん?どうしたのロメ……ナーラお姉ちゃん?キョロキョロしてるけど……」
「いや……このテント、見れば見る程私が持っていたものより豪華になってるなと……」
「へぇ……ナーラさんってアメリちゃんより何歳年上なんです?」
「私は第二三王女……とだけ言っておくわねユウロ君」
「……了解です。肝に銘じておきます」

現在18時。
ナーラさんとアメリちゃんの『テント』で自己紹介をしてから、長々と互いの旅の話をしていた。
ナーラさんの食い道楽の旅の中で一番衝撃だったのは……何と言っても小豆抹茶スパなる理解の範疇を越えた存在だろう。
魔界の片隅にある喫茶のメニューらしいのでおそらく私が口にする事は無いと思うけど……ナーラさんの話を聞いただけでも食べたくないと思えるものだから逆に食べてみたくもなってしまう。

「ところでスズちゃん…記憶喪失って本当なの?」
「はい……アタイには1年ちょっとの記憶しかない……親の事も、アタイ自身の事も何も覚えてないんだ」
「そうなんだ…私じゃ力になれそうにもないわ…ゴメンね」
「いえ…以前の記憶もたしかに気になるけど、こうしてスズという名前で皆と旅して得た記憶だってアタイの事なんだし、気にしてないから別にいいよ」
「そう……」

もちろん私達がした旅の話もナーラさんにした。
どうやらスズの記憶の事も気になっているらしい……『も』というのは、大体ナーラさんが大きく反応した話題は食べ物の事だからである。
やっぱり美食姫と呼ばれるだけあって『食』というものには興味津津である…

「さて……ではそろそろ夕飯を作ってきます」
「うん、楽しみにしてるわねサマリさん」
「はい…頑張ります……」

で、そんなナーラさんが今興味を示しているのが私の料理なわけで……
今から夕飯を作る事になるのだが……かなり緊張する……




「さて、作り始めますか……」

キッチンに立った私は、覚悟を決めて夜ご飯を作る事にした。
メニューは何にするかは話をしている最中に考えた……

「まずは材料だな……」

それは、ちょうど材料が揃っていて、なおかつ私が最も得意とする料理……

「ウインナー、キャベツ、ニンジン、タマネギ、じゃがいもを取り出してっと……」

そう……ポトフを作る事にした。


「さてと……まずはっと……」

とりあえずは材料を食べやすいサイズに、特にニンジンやじゃがいもは火が良く通るように少し薄く、それでいてじゃがいもの方は食べ応えがきちんと残るように大きく切る。

「次はっと…」

じゃがいもとニンジンを全部鍋に入れて、浸かる位に水を入れて煮始める。

「コンソメそろそろかな……」

しばらく煮ているとじゃがいもに火が通り始めたので、先に切っておいたタマネギとコンソメを鍋の中に入れてまたしばらく煮込む。

「ん〜……そろそろウインナーを投入してもいいかなっと……」

じゃがいもが柔らかくなってきたので、ウインナーを思い切っていっぱい入れる……ユウロにスズにアメリちゃんとウインナー好き多いから沢山入れてもいいだろう。
そしてウインナーを入れ終わった後、キャベツを鍋に入れる。
このタイミングでキャベツを入れればしっかりとしたキャベツの感触を残しつつも蕩けるように、そして味もよく染みるはずだ。

「さてと…そろそろ仕上げかな……」

味付けというか…味を調える為に塩を軽く振る程度に加えて……あとほんの少し胡椒も入れて……

「……よし、味付け完璧!」

味を確かめてみたが……今までの中でも特にいい感じの味になっている。
野菜も硬くなく蕩け過ぎずと、茹で加減も丁度良さそうだ。

「あとは……」

お皿に盛りつけて、パセリを振りかけて……完成!

自分で言うのもなんだが、おいしそうなポトフを人数分用意できたので、早速振舞う事にしよう。



………



……








「出来ました。私の得意料理の一つ、ポトフです」
「わーいおいしそー!!」
「お、きたきた!アタイウインナーが一番多いやつで!」
「ちょっと大きさとかは違うかもしれないけどなるべく全部均等に入れてあるからね。もっと欲しかったらまだ鍋に残ってるからあとでおかわりしてね」

現在19時。
調理も終わり、私は皆が待つテーブルにポトフを持って行った。

「うん…いい匂いね」
「ありがとうございます」

今日はナーラさんも居るから、自然と緊張してしまう……
ナーラさんの性格からして流石にボロクソに言われる事は無いだろうけど、はたして美食姫の舌に合うかどうか……

「さてと……じゃあ食べよっか。フランちゃんもいっぱい食べてね」
「はい!いただきます!!」
『いただきまーす!!』
「……いただきます」

まあ不安がっていても折角のポトフが冷めてしまうので、早速食べる事にした。
皆で一斉にいただきますと言って、暖かいポトフを食べ始めた。


「はむはむ……やっぱりサマリお姉ちゃんのポトフおいしー!!」
「たまに出てくるけど、やっぱ得意料理って言えるくらいおいしいもんな」
「これだと野菜も美味しく食べられるんだよな〜。ニンジンとか苦手だけどサマリの作ったポトフなら躊躇せずに食べれるんだよ」
「ん〜♪じゃがいもがとろけておいしいです!」
「はは、ありがとうね皆……」

一緒に旅をしてる皆は変わらず絶賛してくれるけど……問題は……


「ふむ……」
「……」


静かに一口一口を噛みしめるように食べているナーラさん……
おいしいのか、それとも口に合わないのか……どう思っているか聞きたいが、食べ終わるまで話しかけ辛い雰囲気が出ているので聞けない……


「……」

気になって仕方がないが、とりあえず私も完食目指して食べる事にした。



……………………



「ごちそうさま!」
「ごちそうさまでした!おいしかったですサマリさん!!」
「はい、ありがとね」

アメリちゃんとフランちゃんが食べ終わっていつものように絶賛してくれるが、今日はまだ喜べない。
ナーラさんの感想が気になる……後一口で食べ終わるようで……今その一口をスプーンで口まで運び……良く味わうようにして食べて……




「……ふぅ、御馳走様」



私の特製ポトフを、ゆっくりと完食した。


「えっと……どうでしたか?」
「……」


何とも言えない緊張感が、私の身体を駆け巡っている……


そして……ナーラさんがゆっくりと口を開いて……



「……美味しかったわ」


シンプルな賞賛の言葉を、はっきりと言葉として口にしてくれた。

「ほ、本当ですか!?」
「ええ……そうね、感想聞きたいならもの凄く簡単に言うけど……」
「ぜひお願いします!!」
「わかったわ……このポトフ、材料はありふれたもの、それでも舌先に触れた時や噛んだ時に感じた食感、コンソメや食材の持

つ味や風味、これらが見事に調和していた……こんなに美味しい物をほぼ毎日食べられるアメリが少し羨ましく感じるわね」

そして、簡単にではあるが、私が作ったポトフを評価してくれた……
それも、かなりの高評価で……


「ありがとうございます!!」


自然と私は……ナーラさんにお礼を述べていた。
それほど嬉しかった。
美食姫と呼ばれているようなグルメな人においしいと言われて、料理を作っている側が嬉しくないわけがない。


「そうだ、お礼と言ってはなんだけど、簡単に作れて工夫のしがいがあって美味しいレシピ教えてあげようか?」
「え、いいのですか!?」
「ええ。朝ご飯には向いていないから、明日のお昼用に、明日帰る前に実際に作って教えてあげるわね」
「あ、ありがとうございます!!」

しかも何かレシピを一つ教えてくれるらしい。

本当に今日はなんと幸運な日なんだろうか……
嬉しさを噛みしめながら、私は食後の片づけを済ませたのだった。



====================



シャアアアアア……



「ふぅ……さっぱりするわ……というかなんでこんなに広いのかしら……」
「ん?ロメ……ナーラお姉ちゃんのはこんなのじゃないの?」
「日々ぎじゅつはすすんでるってことですね……」

現在20時。
私達はお風呂に入っていた。もちろんナーラさんも一緒にだ。

「まあこんなに広いお風呂だからゆったりできるけどな〜」
「そうだね〜」

今日の夜ご飯が高評価だった事の嬉しさを噛みしめながらも、落ち着いてきた私は……

「えっと……ところでサマリちゃん?」
「はいなんでしょうか?」
「なんだかさっきから視線が痛いんだけど……何か気になる事でもあるの?」
「へ?何の事ですか?」

さっきまでは見えていなかったものを見ていた。

「いや…気のせいじゃないよね?」
「だから何の話です?別に私が何を見ていようがいいじゃないですか」
「あ、これは……マズイマズイ……」

スズがこっそりと私から離れて行くが…まあいい。今日はそれよりも大事な事がある。

「あのさ……具体的に言うと、私の胸見てない?」
「はあっ?やだなぁ私はその綺麗に整い過ぎてる醜い脂肪の塊を観察してただけですよ」
「何その悪意のある言い方!?」

そう……ナーラさんに付いている脂肪の塊を……

「いやぁなんでそんなものが付いているのかなと……私が潰してあげましょうか?」
「いやそれはお断りさせて……」
「断る!!」
「いやなんで!?」

無くしてやる!!


「かくごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…………!!」

私はナーラさんの巨乳をもぎ取る為に飛び付いた……




……のだが、相手はリリム……


「ちぇいっ!」
「あぷっ…………」


私はいつの間にか後ろに回り込んでいたナーラさんによって、首に手刀を受けてしまい……


「ぁ………ぅぁ………」


私は気絶してしまった……



=======[フラン視点]=======



「は、はわわ……」
「あーあ……ついにアメリのお姉ちゃんにも手を出したんだサマリお姉ちゃん……」

今のやりとりを終始見ていたけど……サマリさんこわかった……
あたし自身がされたわけじゃないけど……おふろの中にいるのにふるえが止まらない……

「ね、ねえアメリ、サマリさんって……」
「うん……大きなおっぱい見るとたまにこうなっちゃうんだ……」
「へぇ……」
「あのサマリは恐怖以外の何ものでもないよ……痛いだけでなく変に感じちゃうもん……」

スズさんがこっそりとこっちににげてきた理由がわかったけど……ああも人ってかわるものなんだな……
そんなにサマリさんおっぱい小さくないのに……まあロメリアさまと比べたら小さいけど……


「さて……サマリさん運ばないとね……ワーシープ特有のもふ毛が眠気を誘って大変だわ……」

そう言いながらロメリアさまはサマリさんをもち上げた。
たしかにサマリさんはワーシープの中では毛が短いけど、みっちゃくしてるとねむたくなるのには変わりないもんな……

「じゃああたしたちも出ようかアメリ」
「そうだねフラン。サマリお姉ちゃんをベッドにはこばないと……」

だからあたしたちはおふろからでた。
サマリさんの身体から水分をしっかり吸い取って、ふくをきせてベッドまではこんだ。

このときユウロさんがあきれ顔していたことから、ユウロさんもわかっているのだろう……
あたしやアメリも大きくなったらおそわれそうでこわいな……
というか……おっぱい大きくなるかなぁ……
アメリはリリムさま全員大きいから大丈夫だろうけど、あたしのお姉ちゃんはサマリさんより少し大きいだけだからなぁ……



………



……







「ねえフラン……旅おもしろかった?」
「うん!つらかったけどそれ以上におもしろかったよ!」

サマリさんをベッドにねかせて、あたしたちはまたおしゃべり中。
明日になったらアメリとお別れだから…今のうちにいっぱいおしゃべりしておかなきゃ。

「うんうん……でもやっぱりフランにはムチャだったよね……」
「だね……まさかこんなにつらいとは思わなかった……」

アメリとの旅は、短いきかんだったけどたのしかった。
さばくはさすがにつらかったし、さばくじゃなくても日光に当たるとたいへんだったけど……それでもたのしかった。
それに……

「でも一番は……アメリとなかなおり出来たことかな……」
「……そうだね……」

あたしが原因できらわれてたけど……アメリとなかなおり出来たことが、この旅に来て一番よかったと思えることだ。


「そういえば前会った時はフランちゃんはアメリに敬語使っていかにも従者って感じだったけど…今はそんな事無いのね。仲良くて良い事だわね♪」
「はい……」

と、あたしたちでおしゃべりしてたら、スズさんとおしゃべりをしていたロメリアさまが話しに入ってきた。

「従者としてれいぎ正しくしないとダメ、アメリも困るからと言われて……」
「アメリはけいごきらいなのにね!!」
「なるほどね……礼儀か……」

たしかに従者としてアメリにれいぎ正しくないとダメだろう……
でも……今考えたら、アメリ本人がそれを心からイヤがっていたのだから、従者としてもけいごは使うべきじゃなかったんだなって思う。

「ロメリ……ナーラさま、こういうのってダメですか?」
「そうねえ……」

でも、そんなあたしのたいどを、他の人はどうみるのか……
場合によってはアメリの従者をやめさせられるかもしれない……そんなのはイヤだけど、不安だからロメリアさまに聞いてみた。

「私は良いと思うわよ。というかむしろガチガチになるよりは今の方が微笑ましくて良いわよ」
「ほ、本当ですか!?」
「ありがとーロm……ナーラお姉ちゃん!!」
「まあ私自身が身分とかの礼儀に関してはあまり褒められたものじゃないからねぇ……注意しろって言われても無理」

ロメリアさまはいいと言ってくれた。

「じゃあアメリ…もうあたしはだれに言われてもこうやって話すね!」
「当たり前だよ!!だってアメリたちは……」
「「しんゆうだもんね!!」」
「ふふ……微笑ましいわね……」
「だな……」

これほど心強い味方はいない…あたしはこれからもアメリと変わらずせっして行くことをちかった。

そしてあたしたちはねることにした。
今日はサマリさんがさいしょからねてしまっているので、アメリはロメリアさまにだかれながら、あたしはいつもどおりにスズさんにだかれながらねた。

スズさんの温もりも今日でさいごになると思うと……さみしいな……
明日かえった後、久しぶりに母さまといっしょにねようかなぁ……



=======[サマリ視点]=======



「おはようございます……昨日はごめんなさい……」
「いやいや、私こそ咄嗟に気絶させてごめんね」

現在8時。
昨日お風呂場でナーラさんに気絶させられてから今までずっと意識を失っていた私。
もちろんぐっすり寝たわけだから身体の調子は快調だ。

しかし…本当にどうにかした方が良いかもしれないなぁ……他人の巨乳を見ると我を忘れる癖。
結構迷惑掛けちゃうし、アメリちゃんとスズ…それとおそらくフランちゃんも怖がるしな……

「朝ご飯まで……ありがとうございます」
「いいのいいの。私だって料理作りたいしね!」

そして遅くなったけど朝ご飯を作ろうとしたが…もう食卓には色とりどりのサンドイッチが並んでいた。
しかも中の具はただ食材を挟んだだけでは無くきちんと調理されているものだ……

「あ、おはよーサマリお姉ちゃん!早く朝ごはんたべよ!」
「そうだね……それじゃあいただきます」

早速近くにあったサンドイッチを一口食べてみた……シャキシャキ野菜にしっかりと味の付いた卵……凄くおいしい。

「ナーラさんの料理、美食姫って呼ばれるだけあっておいしいなぁ……」
「あら、ありがとうね」
「うーん、チーズ美味い!」
「ハムサンドも美味いな」

とても満足な朝ご飯だった……
やっぱ私はまだまだだなぁ……もっとおいしいものを作れるように頑張らないとな……



………


……






「ねえフラン、このウサギのぬいぐるみ……フランがもってて」
「え……なんで?」
「このウサギ、アメリだと思って大事にしてね!」
「……うん!じゃあアメリ、あたしのウサギちゃんもアメリがもってて!!大事にしてね!!」
「うん!!」

現在10時。
いよいよフランちゃんとお別れの時間……ではない。

「おまたせ。じゃあ早速教えてあげるわね」
「はい!おねがいします!!」

今からナーラさんに、昨日約束してくれた簡単に作れて工夫のしがいがあって美味しいレシピを教わるのだ。
その為にナーラさんは「材料取ってくるわね」と言って一旦魔王城まで帰ってまた来てくれたのだ。
ちなみにその間にアメリちゃんとフランちゃんはお別れを済ましている……明るい笑顔がまた微笑ましい。

「今から教えるのはロコモコって言ってね……それじゃあ作っていくわよ。まずはフライパンを熱して……」
「ふむふむ……」

ナーラさんが教えてくれるのはロコモコというものらしい。
事前に白米を炊いておいてと言われていたので、おそらくご飯系の何かだろう。

「野菜を切って、肉を捌いて……」
「ふむふむ……」
「味を調えたひき肉を成形して、油を敷いたフライパンで焼き、焼き色が付いたらひっくり返して赤ワインを垂らし蓋をして……」
「なるほど……ハンバーグですか……」
「そうよ。あとは輪切りにしたオニオンも焼いて……」

手際良く作られていく料理。
たしかにやっている事一つ一つは簡単だ……それでいてまだ途中であるのにもかかわらずこれはおいしいと確信を持てる……

「……お米をどんぶりに乗せて、レタスを乗っけてその上に焼けたハンバーグを乗せて、最後に目玉焼きを置いて……はい完成!」
「おお……!!」

そして作られたロコモコ……
程良く焼けたハンバーグに、ふっくらした白米、新鮮なレタスに透明なタマネギ、それに輝く目玉焼き……なんともおいしそうである。

「ハンバーグに下味を付けたり、チーズを乗せてみたり、目玉焼きを温泉卵なんかにしてみてもおいしいわよ」
「なるほど……たしかに工夫のしがいがありますね……」
「で、これがレシピを書いたメモね。わからなかったとこがあったらこれを見ればたぶん大丈夫よ」
「ありがとうございます!」

詳しい材料や作り方の手順が書かれているレシピも貰えた。
これは今日のお昼ご飯に早速作ってみようと思う。


「それとこれ…楽しかったお礼のおみやげみたいなもの。受け取ってね」
「はい……これは?」
「これは私とサバトの娘達が汗水垂らして作った無魔力畑で生産したもの。魔界にある貴重な普通のお野菜ってとこだけど、鮮度や質は保証するわ!」
「そうですか……ありがとうございます!!」

しかもナーラさんが畑を耕して育てた野菜や穀物の詰め合わせを貰ってしまった。
本当に感謝してもしきれない……また今度会う事があったらぜひまた私の手料理を食べてもらいたいな……



……………………



「それじゃあ帰るけど……フランちゃんはお別れを済ませた?」
「はい!もう大丈夫です!!」

そして現在11時。
ナーラさんは本格的に魔王城に帰る……もちろんフランちゃんを連れてだ。
つまり、フランちゃんとお別れの時間がやってきた。

「じゃあフラン、アメリのいない間、おうちでおるすばんまかせたよ!」
「うん!まかされた!」

互いに互いが買ってもらったぬいぐるみをもって、笑顔で挨拶をしているアメリちゃんとフランちゃん。
そんなフランちゃんの手には、もう一つ握られているものがある。
それは……

「サマリさん。お弁当ありがとうございます!!」
「いやぁ…練習で作ってみただけだからね。家に着いたら食べてね!」
「はい!おいしくいただかせてもらいます!!」

私がフランちゃんの為に作ったロコモコ弁当だ。
初めて作ったけど、結構な自信作だ。おいしく食べてくれたらいいな……


「ナーラさんも色々とありがとうございました!!」
「いえいえ、こちらこそ楽しかったわ……じゃあ行くわねフランちゃん」
「はい……」


そして、ナーラさんが転移魔法を使い始めたようで…二人の足元に小さな魔法陣が浮かび上がり、光り輝き始めた。


「それではみなさん、アメリをよろしくおねがいします!」
「まかせてよ!フランちゃんも元気でね!!」
「俺達の事忘れないでくれよな!」
「もしフランにアメリに対して敬語を強要する奴がいたらアタイを呼びな!そいつをぶっ飛ばしてあげるからな!!」

だんだんとぼやけて行く中で私達は最後に言葉を交わし……

「じゃあフラン、またね!」
「うん、またねアメリ!!」
「……えへへっ!」
「……あはは……」

アメリちゃんと短い言葉を交わして、ナーラさんと一緒に転移してしまった…………



「……行っちゃったな」
「うん……でもさみしくないよ。だって今度はおうちでしんゆうのフランがまっていてくれるんだもん!!」
「だね……それじゃあこのままお昼ごはんの準備しよっか。もちろんフランちゃんにあげたのと同じロコモコだからね!」
「やった!ナーラさんとサマリが作ってる間いい匂いが漂ってきてたから楽しみだ!!」

少しの間だけだったけど、フランちゃんとの旅は楽しかった。
アメリちゃんもフランちゃんの事は避けていたけど、これからはきっと二人のもっと幼かった頃の話とかもしてくれるのかな。


「えへっ、アメリおなか空いてきちゃった」
「そうだね…今から急いで作ればフランちゃんと同じタイミングでご飯食べれるかもね!」
「あ、アメリも手伝う!!そしてフランといっしょの時間にたべるんだ!」

とても嬉しそうな、そしてちょっぴり寂しそうなアメリちゃんと一緒にお昼ご飯を作り始めた……


そしていよいよこのお昼ご飯を食べたら、魔物が多く棲む森に向かう……
そこではいったい何が起こるのか、どんな魔物と遭遇するのか……




まさかあんな意外な、それこそ予想だにもしてなかった人物…というか魔物に出会うだなんて、この時は微塵も思っていなかった。
12/10/15 20:42更新 / マイクロミー
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■作者メッセージ
はい、という事で今回は初ヶ瀬マキナさんの作品『孤独のレシピ〜とある淫魔(リリム)の食事録(レシピリスト)』とのコラボでした。
この作品ではナーラさんが食い道楽の旅をしており、様々な料理が出てきます。美味しいそうな物から、どこぞの喫茶店が出す仰天メニューまで。
未読の方はぜひ一回読んでみて下さい…ですが、マキナさんの書き方が素晴らしく、その料理の感じが伝わってくるので、空腹時は避けた方がいいかもしれませんw
マキナさん、どこかおかしな点や変な部分がありましたら感想欄かメールで遠慮なく指摘して下さい。

それで以前旅23で名前のみ登場したナーラさん改めロメリアさん。
基本魔王城に住んでいるという事で、フランを送ってもらいました。
なのでフランの旅はここで終わりです。が、アメリとの友情は永遠に続きますので安心して下さい。

それで次回は、いよいよ魔物が大勢棲む森でのお話。
あんな魔物やこんな魔物まで登場!……の予定。

ちなみに旅裏を更新しました。
今回の話でナーラさんが食べたサマリのポトフの感想、実は事前にきちんとしたものを貰っています。
だけどナーラさんに長文を喋らせるのは何か違うので本文に載せませんでしたが、全文そのまま旅裏のナーラの項目に載せてあります。

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