読切小説
[TOP]
バブハウンド
「絶対に服従させられない最強の存在を考え抜いた結果、この形に行き着いたんだ!」

「最強を求めた結果、最弱になるってなかなか皮肉が効いてるね」

「そういうわけだから、よろしくパパ」

「よろしくされても困る」

「子育ての予行演習だと思えばいいだろ!」

「俺より二回りも大きい赤ん坊とか世話したくないわ」

「赤ちゃんにそんな理屈が通用すると思ってるのか!さっさとあたしを育てろッッ!」

「前々から頭おかしいと思ってたけど今回はマジで頭おかしいんだけど」

「とりあえずは、乳だ、早く吸わせろ」

「やだ、断固として嫌」

「毎日あたしのを吸わせてやってるだろ、たまにはあたしにも吸わせろよ!」

「さ、どうぞ」

「お前も損切りの判断早くなったよな」カプッ

「・・・(天井のシミを数えているうちに終わらないかな)」

「わふ、これはなかなか楽しい食感!
 お前が必死でおっぱい吸うのも分かる気がするぞ」

「コロシテ・・・コロシテ・・・」

「乳首は固くなったが、肝心の母乳が出てこないな」

「体の構造的に無「噛めばいいのか?」 いぎぃ」

「それとも思いっきり吸うとか」チュゥゥゥゥ

「あ、や、伸びる!伸び「そして噛む!」 ぴぎゃ!」

「ウ〜・・・やみつきになりそうだけど、母乳が出ないんなら噛んでても仕方ないな
  
 いや、もっと赤ん坊そのままに無心に吸ってみよう。何かわかるかも」

「君が馬鹿犬だってことだけは、はっきりとわかるんじゃないかな!」

「・・・・・・・・・」チュぅチュぅ

「真顔で俺の乳首吸うの怖いからやめろ」

「・・・・・・・・・」チュパチュパ

「ねえ?聞いてる?」

「・・・・・・この吸っているときのあたしとお前とが融合するような感覚・・・

 これが母と子の宇宙の対話・・・」

「言ってる意味が本気でわかんないんだけど」

「ショゴスじゃなくてもな、1つにはなれるんだよ・・・なあ、


 (そうだろ松ッ!!!)」キュイーーーン

「俺は松じゃないし、ネタが分かりにくいし」

「しかし、出ないんじゃ意味がないな」

「やる前に気付いてくんないかな。
 おかげで右乳首だけ形変わったんだけど、どうしてくれんの?」

「なら、こっちも吸ってバランスとるか」ガプッ

「俺の精神のバランスもとって欲し・・・もっふ」

「やっぱり、下から母乳を吸うとするか」ニュポッ

「母でも乳でもなくなって おほぉ」


「今度からこっちで」

「二度とやらせねえよ」

「何言ってるんだ、授乳は1日8回が目安だぞ」

「残りの7回は粉ミルクで十分だね」

「完全母乳に決まってるだろ!」

「もし君が子供を産んで、母乳が出づらい体質だった判明としたら、
 その言葉を目の前で言い放つから覚悟しとけよ」

「シチュエーションが限定的なうえに、ゲスすぎるぞ・・・」

「無自覚真性ゲスの君には言われたくないな」

「やかましい!この際1日8回と言わずに、あたしが吸いたくなった時に吸わせろ!」

「つまり、いつも通りだね」

「ということは、あたしは既に母乳の極意を身に付けていた・・・?」

「赤ん坊から成長してないってことじゃないかな」

「母乳はもうこれくらいでいいとして、今度はオムツだな」

「おむつよりおつむをどうにかして」

「さ、着けさせろ」

「俺の前に下半身素っ裸のヘルハウンド居るんだけど不思議なことに勃起しない」

「さすがに産まれたばかりの赤ん坊に欲情したらヤバいと思うぞ」

「もう産まれてきてから何年も経っているのに赤ん坊コスしてる方がヤバいと思うよ」

「コスプレじゃない。今この場ではあたしは赤ん坊そのものだ。そういうつもりでやれ」

「赤ちゃんポストにぶん投げられるのと、
 ダンボールに詰まって街角に捨てられるのどっちが良い?」

「このままヘルハウンドの赤ん坊を育てるのと、
 ヘルハウンドに徹底的に犯されて精神崩壊してお前が赤ん坊になるのどっちが良い?」

「紙おむつと布おむつどっちが良い?」

「わふふん、それでいいんだ。そうだな、試しに紙オムツからやってみるか」

「ほんと、魔界の技術は凄いね。これだけの綿みたいなのでしっかり吸収するんだから」

「ちゃんとベビーパウダーもまぶせよ?」

「俺がいつの時代に生きているのかわからなくなるよ」ポフポフ

「よし、準備できたら着けさせるんだ」

「さっきも言ったけど、赤ちゃん姿のヘルハウンドにおむつを着けさせてる現実に、
 そろそろ耐えられないかもしれない」

「がふっ、なんだ?それなら一回抜いとくか?」

「どんな思考の結果その結論になったか分からんけど、
 今抜いたら魂まで抜けそうだから遠慮しとく。

 ・・・じゃ着けるから、腰浮かせて」

「ほら、これでいいか?」

「あと足通して。後は前で端の部分を折りたたむとくっつくのか、すごいな」

「思ったより簡単だったろ?」

「確かに、もっと複雑に織り込むんだと思ってたよ」

「布の方はやり方が少し変わるから、布の方も練習しておくか」

「うん、簡単そうだしいいよ」

「わふっ、それならちょっと待ってろ、紙おむつの方使っちまうから!」

「ちょっと待て、使うって何「くふぅ・・・」ショワァァァァァァ・・・


 SAN値チェックしときますね」

「よし、いいぞ」

「よくねえよ、目の前でおむつに失禁されるとか頭おかしなるで」

「がう!何言ってるんだ、子育てってのは綺麗なもんじゃないんだぞ!」

「うるせえ!小便たれ!」

「その小便たれを愛するのが子育てだろうが!!」

「貴様はいつ俺の子供になったんだ」

「!?」

「驚いてるけど、普通の事だからね?」

「まったく、親としての自覚が全然なってないぞ!」

「この惨状に母性見出せるのはどんな良妻賢母でも無理だと思うんですけど」

「がう?あたしはお前がオムツつけてようがおっぱい吸おうが平気だぞ?」

「賢母より犬母か」

「さ、いいから取り替えろ。オムツがべっとりして気持ちが悪い」

「そうします。おむつパンパンに膨らませた君をいつまでも見ていたくないしね」

「取り替える前にちゃんと拭きなおせよ?」

「毎度キミの尻拭いさせられてるけど、股拭いまでさせられるとは思ってなかったよ」

「尻拭いか・・・そうだな。この際だから尻の方も風呂場でしてもらうか!」

「神様・・・この犬に羞恥心をお与えください・・・」

「あたしだって少しは恥ずかしいと思ってるぞ。
 ただ、お前にだったら恥ずかしい姿を見られても構わないってだけで」

「夫婦間での恥じらいの消滅は浮気や離婚の原因になることを肝に銘じててほしい」

「わふふっ、夫婦か・・・改めて言われると照れるな♥」

「違う、恥ずかしがるとこ違う」

「まあしかしだ、今は夫婦ではなく父と子だからな。
 あたしの服を脱がせて風呂場に連れていくんだ」

「いや、風呂場までは歩こうよ」

「ここまでやってそんな妥協すると思うのか?」

「マジで担ぐの?」

「風呂場までなんて余裕だろ?」

「君、自分の体重身長いくらあるか分かってる?」

「わからん!そんなの気にするの人間くらいだぞ」

「確かに、数値に捕らわれてしまい本質を見失ってしまうのは人間の悪い癖だけれども、
 そういう話じゃないんだよね」

「やってもいないのに最初から無理と決めつけるなと、何回も言ってるだろ!」

「無理なものは無理とも何回も言ってるはずなんだけどなぁ・・・
 そこまで言うなら持つだけ持ってみるけど、途中で叩き落としても文句言わないでね」

「わふふ・・・落ちないようにしっかり掴まっておくだけだ。さあ行くぞ!」ギュッ

「ちょい待ち、ちょい待ち」

「どうした?」

「抱き付き方おかしくない?」

「前側で抱っこした方が腰に腕をまわせて運びやすいだろ?」

「理屈は分かったけど、その結果俺は君の胸の谷間しか見えないんだけど」

「がう♥おっぱい見て発情しちゃうのかこのスケベ♥」

「脳天から叩き落とすぞアホ犬」

「おまっ!赤ん坊になんてことを、恥を知れ恥を」

「まず君が一般的な恥の概念を知っていれば、こんな異常事態になってない」

「知ってるぞ。聞く『耳』と『心』がないと書いて『恥』と読むんだ。

 まるで今のお前そのものじゃないか、なぁ?」

「急に知能指数上げて反撃するのやめろ」

「まあ、そこまでいうなら背中の方におぶさられてやるぞ」

「それでも普通に重っ・・・」

「愛の重さだ、頑張れ!」

「こんなに苦しいなら愛など要らぬ!」

「要らなくても渡し続けるのが魔物娘だぞ。

 お前の拒否権はもちろんない!」

「ある意味本質かもね・・・よいしょっと」

「今日はシャワーだけでいいぞ」

「どうやってお湯が出るのか、こんな辺境の山奥に水道が通ってるのかとか、
 我が家だけどもうツッコまない」

「赤ん坊の肌はデリケートだからな、タオルやスポンジじゃなくて素手で洗えよ」

「マグマの中に落っこちても平気な癖に何言ってるんだ」

「ヘルハウンドの表面温度は9千まで保証するぜ」

「こいつら化け物か」

「それよりもっと体全体擦りつけるように洗えよ、
 そんなんじゃ赤ん坊は満足できねえぞ?」

「赤ちゃんはソープランド行かねえよ」

「体の表面が終わったら次はこの膣内(なか)だ!」くぱぁ

「どうせこの流れだし言うだろうな、って思ってたから良いけど
 その前にまだ髪洗ってないじゃん」

「いや、髪の方はいい」

「君はただでさえ髪が長いんだから良く洗わないと」

「これ終わったら後で洗っとくって!」

「・・・痒い所はございませんか〜」ワシャワシャ

「ぎゃいん!?」

――――――――


「くぅん・・・目が沁みる・・・」

「ほとんど洗ったり手入れしてなかったみたいだね」

「そんなんしなくても死なないだろ!」

「シャンプーが目に入ったって死なないよ。
 クセっ毛なんだから人一倍気を遣わなきゃいけないのに」クシクシ

「ぐぅぅ・・・じゃあ今度からあたしの毛づくろいはお前がやれよ」

「え、いいの?」

「わう?なんでそんなに嬉しそうな顔してるんだ?どう考えてもめんどくさいだろ」

「髪の手入れしてサラサラストレートにしようかなと」

「なんでそんななおさら面倒くさいことするんだよ」

「俺の趣味だよ」

「ふーん・・・まあいいや。またお腹減ったから飯くれよ」

「重い者運んだり風呂場で重労働したからちょっと下半身というか体を休ませて」

「飯ってそっちの方じゃねえよ。離乳食ってやつも食べておきたいんだ」

「作ったことないけど、ここまで来たら作ってみるよ」

「おう!楽しみのしてるぞ」


―――――――

「出来たよ」

「うぇ!?なんだこのドロドロしたヤツは!?」

「離乳食だよ」

「こんなのが離乳食なのか!?」

「最初の方はこんなもんだよ、後はだんだん硬めにしていくみたいだね」

「そうなのか・・・じゃあ早速、ア〜」

「涎掛けつけるからちょっと待って」

「わん、準備がいいな」

「もうご飯作れと言われた時点で予測がつくよ。ほら、口開けて」

「がう、どんなのか楽しみだ・・・あぐっ


 ・・・なんだ、ほとんど何の味もしないぞこれ?」


「そりゃそうでしょ、乳児用だから超薄味だよ」

「そうだったのか・・・なんかがっくりだ」

「飯なんて食えれば何でもいいんじゃないの?」

「それとこれとは別だろ、味がまるっきりないから食べてる気がしないぜ」

「まあ、そういうと思って普通の雑炊も作っておきました」

「わふん♥さすがあたしの夫!さあ、どんどんあたしの口に放り込め!」

「冷まさないと熱・・・いや、ヘルハウンドなら平気か」

「さっきのと違って味があるな!」

「もう少しちゃんとした感想言ってくれるとありがたいんだけど、まあいいや」

「全然足りないからもっとどんどん食わせろ!」

「はいはい・・・でも、ちゃんと噛んで口からこぼさないように・・・

 って言ったそばからこぼしてるし」

「細かい事は気にすんなよ!」

「やばい、さっきの失禁もダメージでかかったけど。
 涎掛けと顔中にご飯粒くっつけてる姿も精神的苦痛がデカい」

「なんでそんなに暗い顔してるんだ?大丈夫か?おっぱい吸うか?」

「そういう台詞はせめて自分で顔拭いてから言って」

「赤ん坊に求めすぎだぞ、それは。

 それより、食べたから昼寝するぞ」

「勝手に寝ろ」

「バカっ!赤ん坊は寝かしつけないと簡単には寝ないんだぞ!」

「オーケー、わかった。寝るまで金槌で頭を殴り続ければいいってことね」

「それ永遠に寝るぞ」

「なら起きられる程度に殴るから大丈夫」

「がう!?ストレスを与えすぎてマズい所まで来ている!
 これが育児ノイローゼってやつだな」

「与えている自覚があったのか」

「赤ん坊は可愛いだけじゃないからな、育児ってのは大変なんだ」

「赤ん坊が、じゃなくて君が与えてるんだけどね」

「わふっ!なら寝る前にストレス解消しておくか♥」ヌギヌギ

「そういうとこなんだよなぁ・・・ひぎぃ」










「zzz・・・・・・」スピー スピー

「今日はやたら疲れた・・・育児って本当に大変だったんだな・・・

 ご飯作って

 お風呂に入れて

 おむつ取り替えて

 寝かしつけて

 


 汚物の処理させられて

 屁理屈を聞かされて

 重い体でのしかかられて

 合間にセクハラされて

 っていうよりセクハラの合間に家事して


 ・・・ ・・・ ・・・ ・・・









 ・・・・・・これ育児じゃない、介護だ」
17/06/03 21:22更新 / ヤルダケヤル

■作者メッセージ
こんなこと言ってるけど、本当に心の底からヘルハウンドさんの事を愛しているのがこの夫です。




読んでいただきありがとうございました。

最初は小じゃなくて大にしようかと思ってたのですが、あまりにもヤバいので
小にしました。
そもそも魔物娘って排泄したかどうか定かではないのですが、
まあしてもいいんじゃないかなというおおらかな気持ちで見ていただけたら幸いです。

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33