読切小説
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私がリアルに見た悪夢?を、文章にしてみました。 - 03 〜白蛇さん、暴挙に出る〜
「これで帰りのホームルームを終了します」
「起立! 礼!」

今日も一日が終わった。
すると、斜め後ろの席の、紫色のリボンでポニーテールにした白蛇が、ささっと歩み寄ってきた。

「柿村君、今日も一日お疲れ様です」
「......白峰さん、ありがとうね、いつも気を使ってくれて」

彼女は、白峰ユキホさん。
人魔共学の高校に入学してからの付き合いで、3年生になった今も、よく会話する女子である。

「柿村くん、今日は部活はなかったですよね? 一緒に帰りませんか?」
「......ごめんねぇ、文学部仲間と一緒にマスクドナルドに行って駄弁ろうぜって予定になるから、また今度でいいかな?」

白峰さんは、シュンと肩を落としてしまった。

「......そう言って、10回に1回くらいしか、一緒に帰ってくれませんよね...」
「......本当にごめんね...」

彼女は美人である。
だが僕は、もう他に好きになってしまった人がいる。
今ここで彼女を選ぶようなことをすれば、ある意味、二股になってしまう。
そんなことは、お天道様も、白蛇の白峰さんも、魔物娘全員も許さないだろう。

「じゃあ、また明日...ですね」
「うん、また明日」

そう言って、白峰さんはしょげた様子で、教室を出て行ってしまった。
かわいそうだとは思うが、自分のことと秤に掛けると、どうしても自分の方を優先してしまう。

そんなことを考えていたが、頭を横に振って、現実に帰還する。
そして、毎日の日課となっていること...想い人の委員長(人間)に声を掛けに行った。

「委員長、お疲れさま。手伝おうか?」
「あぁ、柿村君、お疲れ。大丈夫よ、手は足りてるから」
「そうかー? ならいいけど...。なんかあったら、僕を頼ってくれよ?」
「分かってるよー。じゃあ、また明日ね」
「うーい、また明日ー」

そう言って、友人との待ち合わせ場所の、ファーストフード店・マスクドナルドへ急ぐのだった。




3日後。

「柿村くん、今日も一日お疲れ様です♪」
「おー、白峰さん。お疲れ」
「で、柿村君......今日は一緒に帰ってくれますか?」
「えー.........いいよ、一緒に帰ろう」
「...『えー』のあとに肯定ですか」
「ちょっとからかってみたくってね」
「もうっ!!」

ポカポカ叩いてくる白峰さん。

「痛い痛い、叩かないで。ほら、帰ろう?」
「......そうでしたね、帰りましょうか」

白峰さんと僕は、二人で教室を後にするのだった。



「柿村君って、夏休みの予定とかあるんですか? やっぱり部活?」
「うーん...部活って言っても、僕、文学部だよ? 前半は家に篭って、新作を書くくらいしかないけど」
「そうでしたか!! じゃあ、私の家でアイディアを練ったり、作品を書くのはどうでしょう?」
「......深い意味はないよね?」
「深い意味なんてありません!!」

うーん、と唸る僕。
たしかに僕は、いったところのない場所ほど、インスピレーションが沸いてくる質である。
彼女の家には行ったことがないし、もしかしたらこれは、いい作品をかける天啓かもしれない。

「...じゃあ、お言葉に甘えて」
「まぁ!! では、終業式は半ドンなので、その日の午後からにしましょう!!」
「......日帰りでね?」
「分かってますよ!!」

こうして僕は、白峰さんの自宅で小説のアイディアを練ったり、書いたりする約束を取り付けられたのだった。
これが、あとであんなことになるとは、この時点では欠片も予想できなかったのであった。





終業式が終わり。

「ようこそ、私の家へ!!」
「お邪魔します...」

玄関に通されて気づく。家の人が出てこないのだ。

「ご家族は?」
「両親は、毎年夏になると、『〜回目の新婚旅行に行ってくる』と言って、家を留守にするんです」
「...妹さんやお姉さんは?」
「姉は、別府に温泉婚活ツアーに行きましたし、妹は想い人のところへ押しかけている最中です」
「.........ってことは」
「はい♥ この家には、私と柿村君の二人っきりです♥」

やばくなーい? すごくなーい?
マジでやばーばばいやいやい。やばい。

ここで初めて、自分が嵐の中にダイブしてしまったことに気づいた。

「やっぱり、この話はなかったことに...」
「もんどー無用です♥ はーい、一名様ごあんなーい♥」

既に靴を脱いでしまっていることもあり、背を押され、家の奥に連行されてしまったのだった。




「粗茶ですが...どうぞ♥」
「お気遣いどうも...」

僕は白峰さんの部屋に通され、お茶を出されていた。
テーブルに、ボールペンと白紙のコピー用紙(アイディアを絞り出すときは、いつもこのスタイルである)と、ノートパソコンを置き、いつでも作業に入れるようになっていた。

お茶の匂いを嗅いで、何も入っていないことを確認する。
...うん、大丈夫なようだ。

「匂いを嗅がなくても、何にも入れてませんよ?」
「いやぁ、ははは...」

そして、ほんの一口だけ口に含む。
本当に何も入っていないようだ。
...そして、猫舌である僕を考慮して、適度にぬるくされており、味も文句なしに美味しいお茶だった。

疑い深い僕を見て、ぷくーっと膨れる白峰さん。

「もうっ、そんなことしなくても何も入れませんよ...」
「ははは、申し訳ない」

笑ってごまかしながら、お茶を飲む。
あとでどこの茶葉が教えてもらおう。

結局、あっという間にお茶を飲み干した僕。

「あぁ、本当に美味なお茶でした」
「ふふっ、ありがとうございます♪」

白峰さんが湯呑を下げるのを見ていると、部屋の隅に、ハムスターなどを飼うためのケージを発見した。

「あれ? 白峰さん、ハムスターかなんか飼ってるの?」
「今は飼ってませんよ?」
「今は? 昔飼ってたの?」
「ははは、どうでしょうね」

変な言い方をする白峰さんに疑問を持ちつつ、ケージに近づく。
近づいて中身を見て、疑問が湧いた。

巣箱や回し車・水飲みボトルといった、あって当然のものはいいのだが、なぜか小さな鏡が備えられていたからだ。

僕は『なんで鏡があるの?』と口に出そうとしたのだが、急に猛烈な眠気に襲われ、床に崩れ落ちた。

...おい、睡眠薬を入れてたんじゃないか...。

崩れ落ちる寸前、黒い笑みを浮かべた白峰さんが目に入ったのだった。
なぜ、そこまで黒い笑みを浮かべられるのか、全くわからなかった。




どれくらい時間が経ったのだろうか。
僕が目を覚まして最初に飛び込んできたのは、さきほどのケージの中らしき景色だった。

「えっ、どうなってんの?」

立ち上がろうとして、ゴロンと転がってしまう。

「なんで立てない...なんで...えぇぇぇっ!?」

ケージの中の鏡を見て、愕然とする。

僕の体は、白ネズミになっていた。

「僕ぅ!? 僕ぅ!?」

パニックに陥り、ケージの中をゴロゴロと転がって暴走する僕。
その時、ガチャッ、バタンと音が聞こえた。
次に、ズルッズルッと蛇体が這う音。

「お目覚めですか?」

声のした方向......頭上を見上げると、巨大な白峰さんの顔が見えた。

「おっ、僕に何をした!?」
「最初に睡眠薬で眠らせて、次に柿村くんを白ネズミに変身させてもらいました」
「なっ、なんでだ!?」
「柿村君にアプローチをしても、柿村くんは委員長のことしか頭にないじゃないですか。だったら、それを私で上書きできるまで、監禁しちゃおうと思いまして、このような手段を取らせてもらいました」
「......なんでネズミなんだ!?」
「それは私の趣味です。蛇に追い詰められるネズミ......ソソるじゃないですか...」

やっべぇ...こいつ、モノホンの変態だ...。
人生最大の戦慄を覚えた瞬間だった。
白峰さんを見上げて、プルプル震えている僕。
そんな僕を白峰さんは、ウットリした表情で見つめている。

「あぁ、柿村くん...いつもはカッコイイけど、こういうカワイイ柿村くんもなかなか...」

白峰さんの半開きになった口から、唾液が垂れてくる。
その唾液の雫は、白ネズミの体の勝手がわからず、逃げ遅れた僕に直撃した。

「おわっ!」
「あぁっ、柿村君......いま拭いてあげますからね♥」

白峰さんはケージの蓋を開けると、そっと僕を掴んで持ち上げた。
そして、タンスからタオルを取り出すと、優しくサワサワと拭き始めた。

「ふふふふふ......可愛い柿村君...大丈夫でちゅかー♥」

赤ちゃん言葉で話しかけてくる白峰さんに、更なる戦慄を覚える。
白峰さんは1分ほど、僕とサワサワ拭いていたのだが、急に物騒なことを言い出した。

「あぁ、可愛い柿村君......食べちゃいたい......♥」

やめてー!! それは洒落にならないですから!!
恐ろしすぎる冗談? に、身をよじらせて逃げようとする。
だが、結局逃げられず、白峰さんの掌のなかで、ジタバタしていただけだった。

「もぅ...おとなしくしていられない悪い子はこうです」
「ひぇっ!!」

白峰さんはタオルを床に置くと、僕の全身をペロペロ舐め始めた。
白い毛が舌につくのもお構いなしに、長い舌で文字通り、全身を舐めまわす。

「れろっ、れろっれろっ、れろっ...」

ひぃぃぃぃ!! 誰かー!! 助けてー!! 食われるー!!

食われると思った瞬間、舐めるのが止んだ。
見上げると、ぶすっとした表情で白峰さんが見ている。

「.........自分で食べちゃいたいとかいいましたけど、柿村くんに言われるとなんか引っかかるのはなんででしょう...」
「口に出してないよ!?」
「......思ったんですね」
「あっ」
「だったら、アソコも舐めちゃいましょうか...」

そう言って、僕を一度両手で包むと、左右の手をひっくり返して、上下逆にする。
当然、中身の僕は仰向けに、ネズミは短足なので、ジタバタするしかない。
白峰さんは上になった手を除けると.....。

「そーれ、ぺーろぺーろ♥」
「ヒィィン!!」

ネズミの玉を舐めてきただと!?

「ぺーろ、ぺーろ...♥」

あぁぁぁぁ、なんか出そう...もう出そう!!

その瞬間、口を離す白峰さん。
えっ、やめちゃうの!?

「おっとっと、これ以上やったら、虐待になっちゃいますね」
「そんなー!?」

白峰さんはタオルを拾い上げ、手際よくサワサワ僕を拭くと、ケージに戻すのだった。
......生殺しにもほどがあるでしょう...。

「さっ、柿村くんの晩御飯を用意しませんとね♥ 今はネズミさんだから、なんにしましょう?」

そう言って、フンフンと鼻歌を歌いながら、部屋を出て行く白峰さんであった。
まさか、一生このまま...?
頭を抱えようとしたものの、ネズミの姿では、頭を抱えることすらできないのであった。






これが一週間続いた。
全身を舐り、引っくり替えして舐り、絶頂しそうになるとやめてしまう。
僕の精神は、限界が近かった。

今は、ケージの中の巣箱に篭っている。
おそらく、白峰さんがケージを凝視しているからだ。

いつまでも巣箱から出てこないためか、白峰さんから仕掛けてきた。

「かきっむっらクーン。そういえば、言ってなかったことがあります」
「...何? 家族は9月まで帰ってこないとか?」
「さすがにそれはないですけど......。単刀直入に言います、委員長さんのことです」
「委員長に何かしたのか!?」

バババッと凄い勢いで巣箱から飛び出してくる僕。
ネズミの体にも、慣れたものだった。

「いえいえ、そんな無粋なことはしませんよ。これを見てください」

と言って、数枚の写真を取り出した。
それには、委員長と見たことのない男が、仲よさげに手をつないでいる姿が写っていた。

「えっ、えっ、えっ、これは!?」
「委員長さんには、とっくの昔に恋人がいたんですよ? 柿村くんは、ただの横恋慕していただけだったんです」
「そんなっ、嘘だっ!!」
「嘘なもんですか、よーく二人の手を見てください」
「手...だと...!?」

二人の手は、指を絡めあう握り方...恋人繋ぎで手を繋いでいた。
それを見て、ネズミの目から、本来なら溢れるのか分からない涙が溢れてきた。

あははっ...あははははははは......。
僕がやっていたのは...一体...なんだったっていうんだ...。

白峰さんは続けた。

「知り合いの調べによると、幼馴染らしいですよ? 幼稚園から一緒だったとか」

だが、それは耳には入ってこなかった。
委員長への思いで維持されていた僕の心を、この写真を見たことで、完全に破壊されてしまっていたからだ。

力無く木のチップの上に這いつくばる僕を、ケージを開けて、優しく掬い上げる白峰さん。

「だいじょーぶ、だいじょーぶ......柿村くんには、私がいるじゃないですか...。柿村くんは、私だけ見ていればいいんです」

そう言って、ベッドに横たわり、腰掛ける白峰さん。
その胸には、白ネズミ状態の僕を乗せている。

「白峰くん...? 私は、絶対に、ほかの男性になびくようなことはしませんから......私と付き合ってくれませんか...?」
「.............................うん......」
「わぁ♥ よかった♥」

白峰さんが、1節の魔法を唱えると、僕の体は人間の体へと戻った。
あらかじめ服を剥かれていたようで、戻った僕は全裸だった。

「でしたら、私と誓いの儀式を行いましょう...永遠に、永遠に私のものになってくれると、誓ってください」
「うぅ...誓う、誓うよ...」
「よかった♥ でしたら、ここに生殺しにされていた欲棒を差し込んでください♥ そして、中に出して頂ければ、誓いは完了です♥」

彼女の言葉で誘導されるまま、僕は白峰さんに襲いかかるのだった。








「夏休みを挟んだとたん、ガラッと作風と雰囲気が変わったけど、なんかあった?」
「いえ、特には」

リャナンシーの文学部顧問の先生が、僕の小説を読んで硬直している。
それもそのはず、

・夏休みになってから付き合い始めた、愛する白峰さんのために、詩を書く
・見ている方が恥ずかしくなるような惚気た純文学を大量に書く
・挿絵を付けたいと絵を書き始めた結果、
 美術部でもないのに美術コンクールで優勝するまでになる
・文学コンクールを総ナメにする
・いまや、コンクール荒らしとして、その手の業界では有名になる

始末である。

「いえいえ先生、私と付き合い始めたからですよー♥」ドヤッ

加えて、白峰さんが文学部に入部したのも大きいだろう。
夏休み始め、何かを失ったような気がするが、今はとても幸せである。
そんな幸せをもたらしてくれた白峰さんは、僕にとって『勝利の女神』と言えるだろう。

「柿村くーん、部活が終わったら、帰りにどっかよって行きません?」
「そうだねぇ...マスクドナルドでも行く?」
「わぁ♥ 一回、ハンバーガーを食べてみたかったんです♥」

彼女の嬉しそうな顔を見せられると、僕も一段とやる気が出る。

僕は、今度はア○タ○ワ賞に応募してみようかな、と思いながら、彼女をぎゅっと抱きしめるのだった。
15/09/13 21:13更新 / 妖怪人間ボム

■作者メッセージ
ドーモ、妖怪人間ボムです。
第三弾『私がリアルに見た夢を、文章にしてみました。』シリーズ。

序盤〜中盤で雲行きを不安に思った方も多かったのでは?
救いが無いオチで夢が終わったので、エピローグもどきをつけてみたのですが、いかがでしたか?

そして、ここでこの夢に関係するお話を。
この夢を見たあと、とても金運が良くなった、再就職が出来た、という豪運に恵まれております。

調べてみたところ、
白い蛇  → 「運気が大幅にUP」 「経済的に恵まれる」の前触れの吉夢
白いネズミ → 「片思いの成就や素敵な出会いを意味する」
        「特に金運の急上昇による利益を期待できる」、大吉夢

...という、とんでもない夢だったことが分かりました。
まさに白蛇様様です。

なお、次回作は、いつになるか分かりませんが、割とぶっとんだものになると思います。
それではここらで退散させてください。
それでは〜。


追伸
感想欄でご指摘があったことと、チャットで「連載じゃなくてもいいのでは?」という意見をもらいましたので、感想欄で、

「連載の方がいい」
「連載じゃない方がいいのでは?」

という意見を募集しております。
任意でかまいませんので、ご助言いただけると、本当に助かります。

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