読切小説
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魂喰らいと人狼
「・・・また、か?」

「らしい。これで10人目だ・・・ナーウィシアの連中もシェングラスも・・・賞金目当てに切りかかった奴は皆魂を持っていかれやがった・・・」

シェングラス、イーゲル領郊外の市街地。その家にお尋ね者のポスターが貼られている。ここ最近、世間を騒がせている「魂喰らい」、あるいは「暴風剣客」の姿だ。

広場で2人の傭兵が噂話をしている。その張り紙にかけられた賞金は相当なものだが、顔も解らないため斜めに「Unknown」の文字が書かれているだけだ。

「捕まえるか?」

「やめとけ。相手の姿も解らねぇんだ・・・」

「だが、14歳くらいの少女だったという話もあるぞ?まさかそいつが・・・」

「俺が見た感じでは22歳くらいの青年で、すさまじい剣術の使い手だ。叶う気がしねぇよ、あれは・・・」

姿形も一定せず、どういう人物かもはっきりとわからない。ただ1つの共通点といえば黒い刀身に白銀の文字が描かれた剣を持っていたというだけ。

正規軍の鎧ですら一撃で切り裂かれ、その剣術は圧倒的。術も扱いこなすというなんとも曖昧な特徴だ。

そして切り裂かれた相手は何も言ったり感情を示さず、魂をなくしたような雰囲気で発見されているらしい。中央の高名な学者がフェルアの命令で魂を修復させているが、それに数ヶ月はかかるということ。

そして、その情報を聞きまわっている少年が居た・・・ナイフを服のベルトに挟み、軽装をしている茶髪の少年。身長は大体140cmくらいだろうか?

「やっぱり無理か・・・」

ノーチェ・ヴィルシェーア・・・彼もまた、魂喰らいに幼馴染を殺されたとされる1人である。もっとも彼女の死体は見つかっていない。

だが、彼女は魂喰らいが出てきた頃に失踪。捜索部隊を出したのだがその一団が魂喰らいに襲撃され、無数の犠牲を出した末に退却した。

それ以降、彼女の捜索は行われず失踪して1ヶ月も経っている。両親はいないため単身でナーウィシアまで出かけて隣町で情報をあさったが、彼女は来た形跡すらなかった。

「魂喰らいから生還した剣客でも、やはり特徴もわからない・・・」

自警団から依頼は出ているが、捜索しようという人はやはり皆無だ。行方不明になった場所はナーウィシア領との国境の森。魔物も多く出る場所だ。

普段なら自警団の一団だけで突破も出来る。だが魂喰らいのいる今ではおびえて町から出ようともしていない。

「行こう・・・かな?」

自分で探す・・・それはアリかもしれないが、魔物に襲われるのも怖い物がある。ノーチェには襲われるという概念がまだわかっていない。

自警団に聞いたらあるものは少しうつむき、あるものは顔を赤くして笑っていたり部隊長はがたがたと震えていた・・・どういうことなのかファズも知らないが、とりあえず怖いことだとしか思っていない。

「・・・行こう。」

彼は町外れへと向かい、そこから林道へ通じる町外れへと向かっていく・・・はずれに行くにしたがい町並みも閑散としていくのがはっきりとわかる。

今はまだ朝、出発して野営をすれば探す時間は増える。魂喰らいと相打ちになってでも彼女の居場所を聞く用意は出来ていた。

 

「・・・魂喰らいねぇ、噂なんだか本当なんだか。」

屋根の上でクリスは相棒である黒のハーピー・・・リネットと共にのんびりと噂話を聞いて魂喰らいにどう対応するかを考えている。

「いるの。けどその姿がわからないってだけで・・・」

「探すの面倒じゃねぇか。つーかシェングラスだとやばいっての。」

「まーね、否定しないけど。」

シェングラスでもハーピーの運送屋くらいは入っていることがある。フェルアの部隊にも伝令や偵察要員にいるとされているほどハーピーはなじんだ種族でもある。

が・・・ブラックハーピーは刺客や強盗などが殆ど、リネットもその類なのであまり歓迎はされていない。魔物と同じような扱いを受けることも少なくない。

「・・・どーすんだ?」

「確かに面倒よね。探すの・・・じゃあ、偽装して何か買い物でもする?今日の依頼も達成したから、お金だけならたくさんあるし。」

「・・・ま、そうすっか。」

リネットがうなずくと、宙返りしている間に術を発動させハーピーから黒髪の少女の姿に変わる。身軽で露出の多い服装も黒いローブへと変わっている。

2人がうなずくと、屋根から路地に飛び降りさりげなく商店街の方に向かっていく。

 

 

「・・・」

夕方になってもノーチェは市街地に近い周辺の森を入念に調べたが何も成果を上げることは出来なかった。

襲撃されたと思われる場所は入念に調べたし、道から少し外れた場所も入念に探索したが何も見つかる気配は無い。

「まずいなぁ・・・」

市街地まで戻るにも時間はかかる。出来ることなら建物に泊まりたい・・・野営の準備はもちろん出来ているが、どうせなら建物に泊まったほうが良い。

建物ならまだ安全だし、魔物が夜襲してくる事も考えられるため人が近くに居ればなお安全だ。

「行って見よう。」

そういってノーチェが見つけたのは古びた建物・・・修道院らしい外観をした建物だ。人探しに協力してくれるかもしれない。

ノックをして入ると、1人のシスターが出迎えてくれる・・・深々と彼女は礼をすると、ノーチェに話しかける。

「どうなさったのです?」

「人探しをしてたけど集落まで遠くて・・・一晩だけでも部屋を貸して欲しいんだ。」

「解りました・・・」

シスターが部屋へと案内し、ノーチェもついていく・・・石造りの窓もある、少し狭い部屋でテーブルもある。

もう夕暮れになろうと言うときでもあり、随分と日も沈んでいる。明日当たりに調べたほうがよさそうだ。

「食事の用意をします、お待ちください。」

「うん。」

気前がいいなとノーチェが思い、念のために腰に挿したナイフを抜いて確かめる。夜盗に襲われて相打ちになった唯一の形見だ。

翼の民の数少ない生き残りである名匠レティシアが打った物で日用品として使っていても全く刃こぼれしていない、ノーチェが気に入っている一品だ。

「・・・出来ました。」

「うん・・・って、こんなに!?」

ノーチェがびっくりするほどの量もある食事が運ばれてきた・・・シスターが大きいテーブルを持ってくるとそこに山盛りの料理を置く。

一日中探し回って疲れていたため、ノーチェは結構な勢いで料理をほおばる。どれもかなり美味しいが、聖職者には不釣合いなほど多い量だ。

「・・・こ、こんなにいいの?」

「探し物なら、お疲れでしょうから。」

そうかなと言ってノーチェは料理を一気にほおばり、殆どを平らげてしまう。少々嫌いなものは残してしまったが、シスターは仕方ありませんねと言って皿を持っていく。

平らげたノーチェは気分が良くなり、眠気も出てきたためにそのままベッドに入り眠ってしまう・・・それを見て若いシスターがにやけるが、先ほどノーチェを出迎えたシスターはそれを制する。

「まだ消化されてません。6時間くらいしてから起こしましょう。」

「そうね・・・いけない。ここ最近ご無沙汰だからちょっとあせっちゃって。」

2人がそのまま部屋の外へと出て行く・・・ノーチェは静かに寝息を立てて、疲れを癒すかのように明るい部屋で寝ているだけだった。

 

「・・・ん!?」

雷雨に驚き、ノーチェは眼を覚ます・・・外はいつの間にか豪雨が降り大荒れの天気になっている。

ランプをつけたまま寝ていたらしいが、外はかなり暗い。すると何か聞きなれない音が聞こえノーチェはナイフを構える。

「・・・そろそろですね。」

「そうね、そろそろ美味しく頂こう?人の食料もいいけど・・・やはり人そのものが一番よ、ね?」

「ですね。」

何があったんだと思ってノーチェは冷や汗を流しながらその会話を聞く・・・先ほどのシスターらしいが、明らかに会話の内容がおかしい。

人そのもの?美味しく頂く?何を意味するのか解らないままノーチェがナイフを後ろに隠して待っているとシスター2人が入ってくる。

が、その足が解けていることに気づく・・・ノーチェは警戒しながらシスターへと向き直る。

「き、君達・・・?」

「警戒してるよ、この子。ちょっとまずかった?」

「襲ってしまえば同じでしょう・・・さて、覚悟願いましょうか?」

いきなりシスターのローブ部分から触手が伸びてくる・・・ノーチェはそれを見て恐怖心すら感じてしまう。

明らかにまずい。これからあの触手に絡まれるか締め付けられて、殺されて食われるのではないか・・・そう思うと居ても立っても居られず窓を突き破って逃げる。

「あ、逃げるよ!」

「逃しませんよ?」

とっさにシスターが触手を伸ばして絡め取ろうとするが、ノーチェはとっさにナイフを振るい触手を切り落とす。

そしてすさまじい勢いで逃亡していく・・・触手を切られたシスターはちょっと残念そうな顔をする。

「気持ちよくしようと思ったんですけどね?殺さないのに・・・」

「あーあ、これでまたご無沙汰。せっかく精力がつくような食事をいっぱいしてあげたのに・・・どうする?」

「・・・気長に待ちましょう?今までの私たちみたいに。耐えられなくなったら集落に行って・・・」

そうね、と若いシスターも答える。そして今度から窓も頑丈にしておこうとはっきりと決めてうなずいたのだった。

 

「・・・ま、まずい・・・!」

街道沿いは必ず追ってくる。ノーチェは雷雨のせいでいもしない追撃者の影におびえ、とっさにわき道に入る。

あのシスターたちが自分を食い殺しに来る・・・そう思い、近くの洞穴に身を隠し一息つく・・・もっともそんな真似はすることは無いのだが。

「・・・あ。」

「え?」

誰かの声がした・・・先程のシスターとは違うと思い、ノーチェが洞穴から少し出てみるといきなり飛びつかれる。

そして洞穴の奥にまで引きずられていく・・・ノーチェはその顔を見て驚く。

「き、君は・・・リムル!?」

魂喰らいに襲われたとばかり思っていたリムルが無事な姿・・・いや、無事かどうかは良くわからない。

服装などは失踪当時のまま。だが狼のものと見られる耳と尻尾が生えている。魔物になった・・・そう思いノーチェは目の前が真っ暗になっていくようだった。

「・・・も、もういい・・・君に食われるなら・・・さっきのよりは・・・」

完全にノーチェは諦めた様子だ・・・力が強すぎるし、幼馴染をナイフで殺せるほどの非情さも彼には無い。

だから諦めて、顔を近づけたときも最後まで見ていようと目を見開いていた・・・が、リムルの取った行動は意外なものだった。

「・・・んっ!?んー!?」

突然のように唇を押し付けられ、ノーチェが混乱する中リムルはそのまま服を脱がせていく。やけに丁寧だ。

「・・・やっと会えた。」

リムルは曇りの無い笑顔を見せて自らも服を脱ぐと、わずかに膨らんだ胸を何度もこすりつける。

「や、やっと・・・?」

「そう、ようやく来てくれた・・・ノーチェ、嬉しいな。」

「な、何するの!?これは・・・」

「後ではなすから・・・」

有無を言わさず、ノーチェの顔が赤くなっているのを確認するとリムルはズボンと下着も外していく。

そそり立ったノーチェの位置物をリムルが下の口に結わえこむ・・・ノーチェはその行為がようやくわかると押し話そうとする。

「り、リムル!ダメだ、こんなこと・・・!」

「・・・そんなぁ、ノーチェ。私のこと嫌いなの?」

「そ、そういうことじゃ・・・」

「・・・ね、お願い・・・」

返答を待たずに馬乗りになったリムルが結構な勢いで腰を降り始める・・・ノーチェはわきあがる快感からか喘ぎ声しか上げられなくなっていく。

初めての相手がリムルと言う戸惑いもあり、さらにいつも弱気な彼女がここまで積極的であること、彼女の今の姿・・・数多くの疑問を抱えながらも自分を抑えられなくなっていく。

「ダメッ・・・あっ・・・ぅぁっあぁぁ!!」

「きゃん・・・・!」

一気に締め付けが激しくなり、ノーチェもリムルに精を放ちそのままぐったりとしてしまう・・・リムルは離れると、服を着てノーチェの傍に寝る。

「・・・なんで・・・?リムル・・どうしてこんな・・・?」

「・・・私・・・え、ノーチェを?」

ようやく状況の飲み込めたリムルはいきなりわっと泣き始めノーチェにしがみつく・・・ノーチェは落ち着いて撫でると、そっと顔を寄せる。

「・・・どうしたのか、聞かせて。怒らないから。」

「えっと・・・1ヶ月くらい前、薬草取りに出かけて・・・でも、魂喰らいが討伐部隊と戦ってて・・・近づいてきて怖くなったから逃げたら崖から落ちて・・・」

「それで?」

「・・・目が覚めてたら、あのおねえちゃんが・・・「手の施しよう無かったから、こうするしかなかった・・・悪いね」と言って・・・」

何だろうと思っていると、リムルがすぐにノーチェに口を当てる・・・誰か着たことを察知したらしい。

解ったと呟きノーチェも息を潜めるが・・・足音は近づいてくると洞穴に無遠慮に入ってくる。

「・・・貴方は・・・!」

「あら、失礼しましたわね。」

年齢14歳くらいの金髪の少女が入ってくる。服装もゴスロリという、そのような服装を着ている。

リムルが彼女を見て警戒しているが落ち着いてちょうだいなと彼女が言うと、そのまま洞穴の中にある石に座る。

「・・・どうしたの?リムル・・・」

「た、魂喰らい・・・」

「え!?」

思わずノーチェがナイフを構えるが、笑みを浮かべて彼女は首を振る。どうやら敵意は全く無いらしい。

「何をおびえてらっしゃるんですの?わたくしは何もするつもりはありませんわ。」

「・・・で、でも!見境なく人の魂を喰らうって・・・」

「誰がそんな野蛮な真似をすると?わたくしは狙ってくる人の魂しか喰らいませんわね。貴方達の魂は強さにかけますもの。」

拍子抜けした様子で2人が彼女を見ている・・・すると、「魂喰らい」は2人の様子を見て話を進めていく。

「あぁ、わたくしはライム。魂喰らいなんて呼ばれるのはちょっと嫌ですの。それより、話は大体の見込めましたわね。」

「え?」

「貴方、ワーウルフにかまれて伝染したのよ。」

ライムの言葉を聴いて、リムルとノーチェは首をかしげている・・・どうやら何のことかさっぱりわからないらしい。

あぁもうと面倒そうにライムは記憶を手繰り寄せるとワーウルフのことや自分の推測を話し始める。

「要するにワーウルフにかまれればその人もそうなるのですわ!だから貴方も感染して・・・まぁ、感染源が噛んだのは純粋に人情でしょう。自然治癒力が高いから、崖から落ちた貴方を救うために。」

「そういう性質が・・・」

「貴方達、全く知らないんですの!?」

何故怒っているかわからないというように2人も同時にうなずくが、ライムはあぁと天井を仰ぎため息をつく。

「これだからシェングラスはやってられませんわ。いちいち会うたびに説明やら何か・・・」

「え・・・」

「・・・で、でも。わたくしが原因なら悪かったですわね。わたくしが苛烈に戦わなくては落とす原因も無かったんですし。」

一応謝ってみせるライムに、リムルは首を振って貴方のせいじゃないと短く呟く・・・すると、今度は複数の雑踏が聞こえる。

「な、何!?」

「あのワーウルフの少女を殺してきたようですわね。貴方を噛んだという・・・」

「え!?」

2人とも驚きを店、リムルは思わずまた泣いてしまう・・・が、その雑踏は次第にコチラへと近づいている。

「泣いている場合ではありませんわね。貴方達、戦えて?」

「え・・・」

「わたくしが見てきますわね。ノーチェ、貴方も来なさい。リムルはここで待って、わたくし達の戦い振りをとくと御覧なさい?」

ライムがノーチェだけを引き連れて豪雨の降りしきる外へと出て行く・・・そこにシェングラスの白銀の鎧をまとった兵士と、数名の猟師が居る。

いずれも剣や槍を構えている・・・最後尾の一人がワーウルフの串刺しの死体を掲げているのがおぼろげに見える。

「人・・・だと?お前達、ワーウルフがこの辺にもう1匹逃げてきたはずだ。」

「・・・」

ノーチェが黙っていると、先頭に居る兵士が槍を突きつけてノーチェにすごんでみせる。

「隠すとためにならんぞ!」

「・・・1ついい?その・・・人が噛まれてワーウルフになったらどうなるの・・・?」

「当たり前だ、増殖される前に殺す!」

有無を言わさずシェングラスの兵士が洞穴の奥に向かおうとするが、ノーチェがそれを引きとめようとする。

「僕の幼馴染なんだ!だから・・・殺さないで!」

「黙れ、魔物は消え去ったほうがいい・・・それが肉親であっても殺さなくてはならない!シェングラスの民ならわかるだろう!」

「わからない!幼馴染だから、迷惑かけないって誓うから!」

「いいから黙れ!」

シェングラスの兵士がノーチェを突き飛ばすと、ライムがいきなりのように剣を突きつける・・・白銀の文字が描かれた黒い刀身の剣だ。

「な・・・!?」

「感心しませんわね・・・そんな態度。貴方も切って差し上げますわね?」

一瞬でシェングラスの兵を深々と切り裂き、わき腹に致命傷を与える・・・ライムはその実に不釣合いな剣を両手に1ごんずつ持つと、構えなおす。

「・・・た、魂喰らい!?」

「もう遅いのですわね。貴方達は皆わたくしの糧になりなさいな!」

部隊長が倒され、猟師がひるんでいる間にライムは見えないほどの速さで剣を振るい猟師をまとめて2人切り裂く。

残りの猟師が剣を振りかざして向かって来るが、ライムは鮮やかに剣をはじき返すと飛び上がりつつ剣を振るい真一文字に斬撃を浴びせる。

致命傷を負った猟師が倒れこむが、もう1人が鋭く槍を突き出す。

「っ・・・危ない!」

とっさにノーチェがナイフを投げつける・・・ナイフが腕に突き刺さり、ひるんだ隙にライムは剣を腹に突き刺す。

「・・・な・・・何故、お前が・・・」

「・・・僕は・・・僕は、幼馴染を魔物だからといって殺せない・・・」

数秒後にはその猟師も致命傷だったのか、倒れこむ・・・ライムはふぅと一息つくと、剣をいつの間にか消滅させナイフの血をぬぐいノーチェに返す。

「頑張りましたわね、ノーチェ・・・リムルも出てらっしゃいな。」

「・・・う・・・うん・・・」

リムルはほぼ全員が死んでいた光景を見て少しショックを受けたが・・・さらし者にされていたワーウルフを見て涙ぐむ。

「・・・ごめんね・・・お礼、言えなくて・・・」

「近くの修道院で弔ってもらいなさいな。まぁ、この兵員達はいいとして。」

ライムがこともなげに言うが、ノーチェはあそこはダメだと思い首を振る。

「あ、あそこは・・・」

「ローパーでも弔いはちゃんとしてくださいますわ。さては貴方、そこに迷い込んだのかしら?」

その一件を思い出すだけでノーチェはがたがたと震えている・・・よほどの恐怖体験だったらしくリムルがそっと慰めるように肩に手を置く。

が、ライムは笑って否定する。おそらくどこか勘違いしているのだろうと思って。

「彼女達は・・・そりゃあ、男を見れば襲い掛かってきますがやることはやってくれますわね。」

「え、でも食べるとか・・・」

「・・・貴方達は何も知らないのですわね。普通に一晩犯すだけですのに。」

それも酷いんじゃないかとノーチェは思ったが、とにかくワーウルフの少女を運んでそこで弔うべきだろう。

そっとノーチェが抱えると、彼女のむくろを修道院まで運んでいく。

 

「どうか、神の御許に逝かれる事を願います・・・彼女はリムルさんの命を救いました。慈悲を持って・・・」

先のシスターが祈りの言葉を捧げ、深々と祈っている・・・一体何の神に祈っているのだろうとノーチェとリムルは思っているが、彼女達は真剣だ。

2人のシスターが棺おけに土をかぶせていくと、ノーチェが改めて御礼を言う。

「・・・ありがとう、弔ってくれて。」

「いや、コレもお仕事だから・・・それよりお金は?」

「・・・え?」

「当たり前じゃない、タダでやってるわけでもないの。普通に香典とか・・・まさか無いの?」

うん、とノーチェがうなずくと2人のシスターはいきなり触手を出してノーチェを拘束する。

「・・・な、何するの!?」

「ノーチェをどうするつもり・・・?」

リムルとノーチェが慌てているが、シスターの2人は笑みを浮かべて答える。

「当たり前じゃないですか。足りないなら体で支払ってもらいますよ?」

「今日は思いっきり頂くからね?」

「え・・・ちょっと、そんな!?ま、待っててば!!」

無理やり修道院内部に連れられていくノーチェをみて、リムルは慌てた様子で追いかけていく。

 

イーゲル領市街地、ノーチェは行方不明ということで処理され討伐部隊も全滅という最悪の結果を迎えていた。

魂喰らいのいる森、そこでノーチェとリムルを見たという証言もあるのだが詳細は一切謎とされている・・・魂喰らいに追われている途中に見ただけなのだから。

 

終わり
09/10/20 18:07更新 / スフィルナ

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