連載小説
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シロナルート2「甘えてください」
デートから帰ってきたあと、皆と夕食を済ませて部屋へ戻ってきた


「まさか皆からあんなに質問攻め食らうとはなぁ」


姉たちから半ば避難するように部屋へ戻ったのだ、まぁ家事は済ませたしこのまま就寝してもいいだろう


「今日は疲れたし…もう寝るか」


寝ようと思って布団を敷いたところで、ドアがノックされた


「げっ、まさか部屋にまで押しかけてきたんじゃ…」


質問攻めする姉たちを思い出し恐る恐るドアを開ける


「だ、誰やー…?」


「はぁい、お姉ちゃんですよ♪」


なんとシロ姉だった


「あれ、シロ姉?どうしたんや、わざわざ部屋に来るなんて」


「えぇ、たくまちゃんがそろそろ眠る時間かなと思いまして」


「え、まぁ確かに疲れたから今から寝るとこやったけど…」


なんで寝る時間と知って部屋に来たんだろうか


「ふふ、昨日はダメでしたけど…今日から一緒に寝ましょうね♪」


自分の枕を出して笑顔でそう言うシロ姉…え、ちょっと待って


つまりあれか、シロ姉と同じ布団で二人きりで寝るということか?


「え、えっと…し、シロ姉?俺らはもう子供やないんやし寝るのは一人で…」


「たくまちゃん、私と一緒に寝るのは嫌ですか…?」


嫌、なわけがないんだけども…皆と一緒に仲良く寝るのとはわけが違う、姉弟とはいえ女性と二人きりで床に着くというのは…


「い、嫌なわけじゃ…ないで?ただ年頃の男女が…」


「何言ってるんですか、姉と弟ならこれくらい当たり前ですよ?」


あ、当たり前…なのか?


どうしてかシロ姉の言葉には無条件に丸め込まれてしまう


「さぁ、今日はお姉ちゃんが抱きしめてあげますよ♪」


布団をめくり、ポンポンとこちらに催促してくる





(な、何もしなきゃ良いわけやからな…今日くらいは大丈夫やろ、明日から…明日からは一人で寝ればええんやで)


そう自分に言い聞かせて布団に入るとシロ姉の胴体が俺の身体に巻きついてくる、決してキツくなく包み込むようなラミア種特有の抱擁だ


あぁ、昔もこうやって寝ていたなぁ


「シロ姉の身体、暖かい…」


「たくまちゃん…可愛すぎますよ、もう♪」


どうにもシロ姉の前では甘えてしまう、このままではダメ人間になってしまいそうだ


「たくまちゃんは立派になりましたけど、それでもたくまちゃんは私の可愛い弟ですから…もっと甘えてくださいね」


「シロ姉…」


頭を撫でられながら、シロ姉の甘い声を聞き身体を包まれると俺の意識はすぐに深い闇へと飲まれてしまった


朝起きても、シロ姉はそこにいた


美しい寝顔で安らかに寝ている


「朝か…家事やらんとな」


布団から出ようとして気付く、シロ姉に抱きしめられてるので出れないのだ


「ん…しまったな、シロ姉はまだ寝てるし…」


こんなに安らかに寝ているので、無理に起こすのもかわいそうだ


「ん…しょっと、どうにか…抜け出せへんかな…!」


もぞもぞ動いて絡みつく胴体から抜け出そうと試みた


「ん…たくまちゃん…?」


「あ、すまへん…起こしてもうた?」


「ふぁ…朝、ですか…?」


可愛い欠伸をしてキョロキョロするシロ姉にドキッとする、いやときめいてる場合じゃないよ


「家事しなきゃいけないんや、身体解いたら寝ててええから…」


「はいぃ…」


スルリと身体が自由になる


「ありがとう、起こして悪いなぁ…おやすみシロ姉」


「ふぁい…」


寝起きのシロ姉を尻目に俺はキッチンの方へ行く


「…おはようたくま」


「おはようねぇちゃん」


シルクねぇちゃんが既に起きて準備をしていた、まだ大分早い時間だ


「…早起きできていい子なの」


「いやぁ、まぁこれくらいはね」


並んで料理をする、簡単な朝ごはんとはいえ人数が多いから大変だ


「皆起こしてきた方がええんか?」


「…朝ごはんの匂いを嗅いだら皆集まるよ」


流石魔物、嗅覚が優れているようだ


「おはようたー坊、シルク!朝からご苦労!」


玄関の方からシャクヤ姉さまが来た、姉様は確か朝走り込みを日課にしていたはずだ


「朝ごはんもうちょいでできるから少し待ちや」


「あらぁ、今日の朝は和食ねぇ?嬉しいわぁ」


「わぁー、お魚だー!」


そして起床してきたユウ姉さんとエルねぇねぇも来た


「まぁ、私が最後ですか?のんびりし過ぎました…」


最後にシロ姉が来た、全員集合だ


「おはようシロ姉」


「はい、おはようございますたくまちゃん!ちゃんと朝から家事をしてたくまちゃんは頑張り屋さんですね」


「いや、それ程でもないで…」


「…皆、ごはん出来たから運ぶの」


全員集合したところで朝ごはんができたのでさっさと飯にしよう、皆は俺みたいに暇じゃないんだ


「たくまちゃん、あーん♪」


「あ、あーん…」


「ふふ、美味しいですね。流石姉さんとたくまちゃんの料理です♪」


って、何自然に食べさせてもらってるんだよ俺!


「い、いや…シロ姉?わざわざ食べさせてくれなくてもいいんだけど」


こういうことを皆の前ですると…


「シロナずるい!私もあーんしたい!」


「…抜け駆け」


「いいわねぇ、昔みたいよ?」


ほら、こうなるから…


てゆーか昨日よりシロ姉との距離が近くなってる気がする


「シロナよ…たー坊ももう子供ではなかろう?そのような真似はどうなのか」


「姉さん、これくらい最近じゃ普通ですよ?」


「む、そうなのか…最近のことは分からんな…」


年寄りくさいことを言うシャクヤ姉さまはそのまた飯を再開した


「シロナばっかりずるいよ!私も!あーん!」


「…あーん、して?」


「せっかくだから私も、あーん♪」


三人が箸をこちらに向ける、そんな一辺に食えないって…


「たくまちゃん、ほらこれくらいでいいんですよね?あーんしてください♪」


「いやシロ姉、そもそも普通に自分で食べられるから…」


「いいですから…はい、あーん」


こんな感じでまた甘やかされてしまった…


そんなずっと甘やかされる日常が続いてしまっている


何をするにしても大体シロ姉が一緒で、気がつくとそれが普通になってしまっていた


「はーいたくまちゃん、今日も1日頑張りましたね…えらいえらい♪」


「シロ姉…」


そしてまたシロ姉と一緒に寝床につく


こんな爛れた生活でいいのだろうか…というより前から疑問だったんだがなんでシロ姉は俺にこんな優しくしてくれるのだろう?


他の姉達に比べてシロ姉は何か違う、シロ姉に甘やかされてしまうたびに俺はシロ姉に依存してしまっているのだ


「シロ姉は、なんで俺にここまでしてくれるんや?」


「それはですねー、お姉ちゃんがたくまちゃんのこと大好きだからですよ♪」


シロ姉が俺を好いてくれるのは知っている、シロ姉は姉で俺は弟だから


「俺もシロ姉は好きやで、だって家族だから…でも違うんや、そういうんやなくて…」


「たくまちゃん、愛に理由なんかいりませんよ?姉と弟なんですから…」


「でも…俺、このままやとシロ姉に甘えっぱなしになってまうよ」


「いいんですよたくまちゃん、お姉ちゃんは甘えてくれた方が嬉しいですよ」


シロ姉はそういってまた俺を甘やかそうとする


「…」


「たくまちゃん、どうしたんですか?…何か、あったんですか?」


「お、俺…不安なんよ、このまましっかり大人になれるかって」


「たくまちゃんなら余裕ですよー、私よりしっかり者で働き者じゃないですか」


「でも、俺…自分のことは自分でできるようになってもシロ姉に甘えてるし…」


10年、不本意でも姉と離れて色々できるようになったのに…色々勉強もしてきてこれでは意味がない


「…たくまちゃん、甘えることはいけないことなんですか?法律でそう決まってて、甘えたら犯罪になるんですか…?」


「…そうやないけど」


「甘えたい時は好きなだけ甘えていいんですよ?それで、しっかりする時にビシッとしていればいいんです」


それができるかが不安なのだ


「大丈夫ですよー、辛い時や苦しい時はお姉ちゃんが支えてあげますから」


「…それじゃあ、全部甘えてることになるやん」


「姉が弟を助けてるだけじゃないですか、当然のことですよー?」


「俺、しっかりと自立できるんかな」


「できますよ、たくまちゃんなら…」


シロ姉が俺の頭を胸に埋めるように抱きしめる、不安がかき消えていく…


「…たくまちゃんは、長い間お姉ちゃんと離れてしまっていましたよね。だから、その分甘える権利があるんですよ?」


「シロ姉…」


「小さい頃に愛情が注げなかったんです、ならその分を注ぐのは当たり前なんですよ。たくまちゃんはそれを、姉が弟に与える愛情を知らなかったから少し戸惑っているだけなんですよ…」


優しく俺を諭しながら頭を撫でてくれるシロ姉…このままシロ姉に浸かってしまいたい、なんていう感情が胸から湧き出てくる


「うん…、シロ姉…シロ姉ぇ…!」


「そうです、そうやってお姉ちゃんに甘えてください…たくまちゃんはお利口さんです」


あぁ…心が満たされていく、枯れていた心がシロ姉の愛情で潤っていく


「そう、そのままたくまちゃんは…私だけを見て、私だけに甘えてくれればいいんですよ…」


シロ姉の深紅の目がぼんやりと光る、透けるような白い髪と色白の肌の姿は妖しくも美しい


人間ではあり得ない、魔物娘の姿だ


「ふふ、たくまちゃんは…お姉ちゃんのものですよー?」


シロ姉の手が俺の頭から離れて、服の隙間から素肌をなぞる


「シロ姉…?」


「たくまちゃんはじっとしてていいですよー…お姉ちゃんに任せてください♪」


手がさらに下の方へ、蛇のように這っていく


「し、シロ姉…あ、あかんよ…」


「怖がらなくて大丈夫です…気持ちいいことですから、ふふっ…」


「ふぁ…っ、ぁ…!?」


シロ姉が指で胸付近をなぞる、くすぐったい感じがする


「シロ姉…こ、これ以上は…!」


俺も子供ではない、魔物のシロ姉が何をしようかというのも分かっている


頭がドロドロに溶けそうな感覚に陥りながらも、シロ姉に落ち着いてもらうために声を上げた


「たくまちゃん…?」


シロ姉が俺の声に手を止めた、優しいシロ姉はいつも俺のことを考えてくれている…魔物娘の本能のスイッチが入ってもちゃんと話しを聞いてくれた


「こ、こういうのは…ちゃうって…ダメやと思う」


「っ…ご、ごめんなさい!私ったら…たくまちゃん、大丈夫ですか?痛くなかったですか?」


「大丈夫…やから、そんな泣きそうにならんでもええよ」


「た、たくまちゃんを無理やり襲おうとしてしまうなんて…わ、私は何をしているんですか…」


魔物の白蛇としてのシロ姉から、お姉ちゃんのシロ姉に戻る…魔物娘はスイッチが入ると交わるまで戻らないというがシロ姉の愛の前ではそんなものは関係ない


「ごめんなさい…お、お姉ちゃんはそんなつもりはなかったんですよ…?」


「あ、あぁ…大丈夫やから落ち着いて」


「…き、嫌いになったり…してませんか?」


「…せぇへんよ、嫌いになんて」


だからそんなら悲しい顔をしないでほしい


「よ、良かったぁ…!」


しゅるしゅるとシロ姉が巻きついてくる、目尻に涙を浮かべているので舐めとってあけた


「きゃっ、も、もう…たくまちゃん…!」


「ん、甘露甘露」


「もぅ…」


「…俺、別にシロ姉にああいうことをされるのが嫌なわけやなかったんよ…ただあのまま欲に任せるのはなんか違うと思ったからさ」


「たくまちゃん…」


「だから、謝るんは俺の方やでシロ姉…ちゃんと俺、シロ姉に気持ちを伝えるから…もう少し…時間をちょうだいな」


今の俺の精一杯の本心を言葉に紡いだ


「たくまちゃんがそういうなら、私待ちますよ…何年も、何十年何百年って…待ち続けます」


「ありがとう…おやすみ、シロ姉」


「…おやすみなさい、たくまちゃん」
15/04/01 04:57更新 / ミドリマメ
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■作者メッセージ
あぁ〜^シロ姉に甘やかされたいんじゃあ〜^


少しは魔物娘要素を入れられたと思うんですが、いかがだったでしょうか?難しいものですが、頑張りたいと思います。

次でシロ姉ルートはおそらく最後になります、どうかお付き合い下さいませ。


挿絵を追加してみたのですがいかがでしょうか?そんなに自信があるわけじゃないのでご不快に感じた方は仰ってください。

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