読切小説
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ストーカー少年の末路
 一目惚れ。それは誰しもが人生で一度は経験するもので、決して珍しいことではない。しかし、大抵は遠くから惚れた相手を眺めるだけで、話すことすらなく終わってしまい、いつしか記憶からも消えていく。
 だが、時としてそれは足を踏み外すきっかけになる。

 僕の名はユウ。街の小さな料理屋で下働きをしている。まだ子供の僕だが、一人暮らしをするには働くしかないのだ。それがたとえ、どんなに大変な仕事でも。

「バカヤロウ! なんだこの盛り付けは! ったく使えねーガキだなテメーは!」
「す、すみません!」
 僕は蹴飛ばされた。こんなことは日常茶飯事だ。

 外食店ははっきり言ってしまえばブラックだ。給料も安く、それでいて労働時間は長い。それにこの業界は頑固な職人がもてはやされる。それについて行く弟子は、殴られたり蹴られたりは珍しいことではない。
 この仕事で唯一の楽しみは、いつも三人ほどで一緒に来るうちの一人のアマゾネスだ。名前はマーシャというらしい。こっそり盗み見た私物に名前が書いてあった。黒髪のポニーテールに凛とした瞳と顔。そして豊満な胸に、引き締まった芸術的な体。僕はマーシャに一目惚れしてしまっていた。最も、向こうはそんな僕の気持ちも知らなければ、僕の名前も知らない。

 この国は親魔物国の大国で、この街は端にある。街の外には広大な森や山、もっと遠くへ行くと海が広がっている。そのため、様々な魔物娘が生息しており、街中にもサキュバス種やラミア種、エルフ種やアルラウネ種や、獣人種などが生活している。
 しかし、街で暮らしている魔物娘も、街と外を行き来したり、あるいは専業主婦になっていたりと、仕事に就いている魔物娘はまだ少ない。
 そもそも、魔物娘は時間に縛られるのが嫌いで、人間のように決まった時間に起きて、決まった時間に学校や職場に行き、決まった時間に帰り、決まった時間に帰るという概念がない。

「いらっしゃいませ! 三名様ですね? こちらへどうぞ!」
 やった! マーシャ達といつものアマゾネスの3人だ!

「何にしましょう?」
「豚骨ラーメン3つで。あと餃子3セットも。」
「かしこまりました! 豚骨ラーメン3つ、餃子セット3つですね!」
 僕は伝票を置いて、オーダーを料理長へ伝えた。

「おい! おまえ! 皿洗い入れ!」
「はい。」
 僕は調理場に入り、溜まった洗い物を洗おうとしたが、そこでは先輩の料理人が自分と同期の料理人をおたまで殴っていた。
「バカヤロウ! オメーなに味見もしないで洗ってやがるんだ!?」
「あ、味見!?」
「そうだよ! お客様が残した物を味見して味を覚える! この業界の常識だぞバカ!」
「す、すみません!」
 これは酷い。客の残り物を味見させるのもどうかと思うが、何よりも洗剤のついた物を味見させるなんてひどすぎる。
 そんな同期の料理人を、僕は心の中で同情しながら、目を背け、皿洗いを開始した。

 ようやく仕事が終わって家についたときには、時計は夜の10時になっていた。

 さて、ここでちょっと、どうして僕がこんな暮らしをしているか説明しておこう。
 僕は元々中立国の街で生まれた。僕は母子家庭に生まれ、父親は母親が妊娠をしたことを知ると別れを切り出し、出て行ったそうだ。
 その後、母親は水商売で家計を支えていたが、僕はあまり母親に構ってもらえなかった。初めのうちはさみしかったが、気づいたら慣れっ子になってしまっていた。
 ご飯とかは自分で川で魚を釣ったり、母親が仕事帰りに適当に食材を買って来ていたので、適当に作って食べてと言われた。母親の手料理を食べたことは恐らく指で数える程度だろう。
 
 そんな中、母親に新しい彼氏ができて、再婚することになった。しかし、新しい父親は子供が嫌いな人で、僕と一緒に住むなら結婚しないと言い出したため、僕は養護施設に預けられることになった。

 養護施設では職員は子供へ愛情を注ぐことなく、事務的に仕事の一環としてしか接しておらず、愛情を受けることはできなかった。退屈な勉強の時間や細かい決まりごとなど、窮屈な暮らしを強いられた。
 小学校へは通わせてもらったが、勉強についていくことができずに脱落し、気づいたら不登校へなっていた。施設の職員には、学校へ行くと嘘をついて、公園で時間を潰していた。
 その後、施設での窮屈な暮らしと、学校の勉強に嫌気が差していた僕は学校へ行くフリをしてそのまま施設を脱走し、魔物国のこの街へ来た。

 しかし、学校も出ておらず、まして子供の僕に、まともな仕事が見つかるわけがなかった(一応、この国では未成年の就労は禁止されてはいないが、基本的に仕事をするのは16歳になってからアルバイトのみという暗黙のルールのようなものが存在していた)。
 そのため、人々が嫌がるような仕事しか見つからず、この料理屋にアルバイトとして入ることになった。
「おまえの代わりはいくらでもいる」
「嫌ならとっとと辞めろ」
「雇って給料とまかないをもらえるだけありがたいと思え」
 など、心無いことを言われ続け、家ではよく布団の中で泣いていたが、今ではすっかり慣れてしまった。

 物件も、まともな物件が見つかるはずもなく、刑部狸の怪しい物件を貸してもらえることになった(刑部狸の物件は違法物件や事故物件ばかり扱っているわけでもなく、ちゃんとした物件や企業用のテナントなども扱っていた。しかし、まだ子供な僕がまともな物件を借りれるわけがない)。
 今住んでいる家は木造の小さな家で、四畳半の風呂なし、トイレなし、台所もない家だった。そしてこの部屋にあるのは布団だけだ。
 不思議と、刑部狸がいい人に思えてしまうこともある。というのも、仕事でミスをして給料を2か月もらえず、家賃を2か月滞納してしまったこともあったが、刑部狸は「全然いいよ。その代わり、ちゃんと3か月後はしっかり払ってね」と許してくれた。まぁ、大した収入源じゃないから特に気に留めてないだけかもしれないが・・・。ちなみに、滞納分はまだ返済できていない。

 僕は朝早くに職場へ行き、夜遅くに家に帰り、夜周囲が寝静まったときに、公園の噴水で体を洗い、トイレは公園の公衆便所を使うという生活をしている(ちなみにこの公衆便所はラブホと貸しており、イカくさい)。
 そんな生活も、続けていればそれが当たり前と考えるようになっていた。人間の慣れとは恐ろしいものだ。

 日に日に、僕はマーシャのことばかりを考えるようになっていた。暇な時があればマーシャのことばかり考え、最近では仕事にも集中できなくなっていた。
「おいユウ! 何ボケっとしてるんだ!」
「す、すみません!」
 僕はボウルを頭に投げつけられ、たんこぶができた。
「やる気がないならいつでも辞めちまえ!」

 マーシャ達がやって来た。僕は洗い物をしているときも、厨房の掃除をしているときも、ずっとマーシャのことを眺めていた。ちゃんと仕事をしていないことを料理長が見逃すわけもなく、僕は腹に蹴りを入れられ、うずくまった。

 そんなある日。
「おい、ユウ。おまえ今日限りでクビだ。」
「え!?」
「高校生のアルバイトが入ることになったんだ。だからおまえは用済みだ。ほらよ。今月分の給料だ。」
 そういうと、料理長はそそくさに厨房へ戻り、僕は無言で店を後にした。

 どうしよう・・・失業してしまった。収入が得られない。家賃が払えない・・・。だが、そのことよりも、もうマーシャのことを見られない。そのことに対する不安感の方がはるかに強かった。

 僕は公園のベンチに腰を掛け、これからどうするべきかを考えていた。そんな中、マーシャ達3人のアマゾネスの姿を見かけた。

(あ! マーシャさん! そういえば、マーシャさんってどこに住んでいるんだろう・・・?)
 ここでマーシャを見失えば、二度と見れなくなる気がする。僕は彼女たちのあとをこっそりと追うことにした。

 気づいたら森の中へ入っていた。そして、アマゾネスの集落にたどり着いた。
(ここにマーシャさんが住んでいるんだ・・・)
 僕は高いところから集落全体を見渡し、マーシャの家を特定した。これでいつでもマーシャの姿を見ることができる。それだけで、胸の不安が一気になくなった気がする。
 そういえば街から随分と離れてしまった。街へ戻っても仕事はない。僕はこの森でしばらく暮らすことにした。
 まぁ、なんとかなるさ。子供の僕は楽観的にとらえていた。

 それから数日、僕は森での生活を続けた。運がいいことに、きのこが道端に落ちて居たり、ウサギやイノシシ、熊の死体が転がっていることもあった。僕は死んだ動物を調理し、肉やきのこを食べて飢えをしのいでいた。

 さらに数日後。僕はついに内なる欲求を抑えきれなくなった。
「マーシャさんの・・・マーシャさんの家を覗きたい!」
 幸い、今は村に誰も見当たらない。考える前に、僕は行動していた・・・。

 僕はマーシャさんの家を見つけ、そっと扉を開けて部屋に入った。部屋の中は小ぎれいにまとまっており、台所もトイレもあった。風呂はなかったが、外に炉の上にドラム缶を乗せた風呂のようなものがあった。
 そして、ベッドの上に・・・下着のようなものがあった。恐らく胸につけるものだろうか・・・僕はそれを見るや否や、手に取り、においをかぎ、顔を擦り付けていた。
 すっかり夢中になっていた僕は、後ろに迫っていた気配に全く気付かなかった。

 突然僕は後ろから腕を首に回され、股間を掴まれ、持ち上げられた。
「誰だ!? 貴様何をしている!?」
「ま、マーシャさんっ!?」
「き、貴様・・・なぜ私の名を!? おい! 侵入者が居るぞ!!」
 辺りは急に騒がしくなり、アマゾネス達が武器を持って集まってきた・・・

 最悪だ・・・こんなところを・・・マーシャさんに見られるなんて・・・

 僕は村の中央の広場に両手足を縛られて正座させられた。周囲には武装したアマゾネスが取り囲んでいる。
 そして、目の前には煌びやかな装飾品を身に着けた、いかにも村長らしきアマゾネスが立っている。

「貴様、マーシャの家で何をしていた?」
「な、なにもしていません・・・」
「嘘をつくな!」
 村長のアマゾネスは持っている金の杖で地面の平べったい岩を叩いた。その大きな音は、子供の僕を怖がらせるには十分だった。
「我々誇り高き戦士、アマゾネスにとって、虚言は恥ずべき罪! 小僧。次に虚言を滑らせた場合、問答無用でその首をはねる。」
「た、助けて・・・」
 僕は恐怖心から体の震えが止まらない。
「もう一度聞く。貴様はなぜこの村に来た? そして、マーシャの家で何をしていた?」
「ま、マーシャさんのあとをつけていたら、たまたまこの村にたどり着きました。そして、ベッドの上にたまたま下着が置いてあって・・・」
「村長! この者は私の下着の臭いを嗅いでいました!」
 マーシャが後ろから言う。
「ほう。つまり、そなたはマーシャのあとをつけ、部屋に忍び込み、下着の臭いを嗅いだ。要するにこれは・・・」
 村長の次の言葉で、僕は自分が最低な過ちを犯してしまったことに気づかされた。

「貴様はマーシャのあとをつけ、そして村に忍び込み、マーシャの下着を物色した。これは下着ドロボウ。もとい、ストーカーということになるな。」
「下着ドロボウ・・・ストーカー・・・」
 僕は顔が青ざめていくのを感じた。僕は人として許されない、最低な犯罪行為を行ってしまっていたのだ・・・。
 他のアマゾネス達も僕の行いを責めた。

「ストーカーとは、男として、いや人として下劣な行為だな。」
「ああ。生き物の恥だ。」
「そういえば、ストーカーはやっている最中は本人に罪の自覚がないらしいぞ。恐ろしいな。」
「恐ろしいというより、愚かだな。」
「おまけに下着を物色するなんて・・・私なら、もうその下着ははけないな。汚らわしい。」
 僕のことをアマゾネス達が責め立てる。

「それより、どうする? この者は我々の村の存在を知ってしまった。このまま生かして街に帰せば・・・」
「そうだな。我々の村を知られてしまった以上、タダでは帰せないな。この者は既にストーカー、及び窃盗という罪を犯している。ということは・・・この場で処刑しても問題ないな!」
 村長は金の杖を振り上げた。

「お待ちください!」
「なんだ? マーシャ。」
「確かにこの者は罪を犯した。だが、正式な裁判なしに、しかも人間を処刑しては、魔王はお怒りにならないだろうか?」
「ふむ・・・一理あるな。確かに裁判抜きの死刑は、法に背く行為だな。しかし、同時に我々の村を見られているというのも事実だ・・・」
「はい。ですから、私に提案があります。」
「ほう? 申してみよ、マーシャ。」
「この者の判決は村長が1か月後、直々に下すというのはいかがでしょう? 外の国でも地方裁判所というものがございます。つまり村で起きた事件は村の裁判に委ねる・・・という解釈もできるのでは?」
「ふむ。よかろう。」

「聞け! 人間! 貴様の処遇は1か月後、私自らが下す! それまでは・・・マーシャ! おまえがこの者を家で見張り、世話をしろ。」
「分かりました!」
「そして、人間よ・・・分かっているとは思うが、脱走を企てるならば、その時点で我々アマゾネスは容赦なく貴様を殺す。命が惜しかったら、バカな考えは起こすなよ?」
「は、はい!」
「では、今日は解散だ! マーシャ!」
「はい!」
 僕はマーシャに抱き抱えられ、マーシャの家に戻った。

 その後ろで、村長は笑みを浮かべていた。そして、他のアマゾネス達も笑みを浮かべていた。

(でも、あんな小さい子が森の中までついてくるなんて、可愛いくせにやるじゃない!あの子!」
(ええ! 男狩りのときに泣き出して逃げる男とは大違いね! ああ、あたしもあれぐらいの可愛い男の子が欲しいなぁ〜)
(あの子気づいていないみたいね。別にこの村は外から隔離されているわけでも、秘密になっているわけでもないわ。現に村はずれに隣国の街へ続く脇道があるんだし)
(そもそもあたし達が普通に街に行ってるってところで、あの子が感づかないか心配だったけどね。)
(本当はあの男の子が居た街までの林道も作りたいんだけど、アルラウネが環境を乱すって許してくれないのよねぇ・・・)
(さてと。これからあの男の子とマーシャはどうなるのかしらねぇ〜)

 村長の家では、一人のアマゾネスと、一人の人間が談笑していた。
「上手く行ったな。正直、あの小僧が森の中で数日間暮らせるかは心配だったぞ? サンソン?」
「いいえ。私には確信がありましたよ。」
「同じ人間だからか?」
「いえ。男も女も、愛のためならば常識では考えられないこともできてしまう・・・ということです。」
「ちょっと! あたしがわざわざ動物やきのこを分かりやすいところに置いておいてあげたのも忘れないでよね!」
「そうだったな。ご苦労だった。ステラ。」
「でも、あの子結構料理上手そうよ。動物も上手くさばいてたし。」
「あの子なら、いいお婿さんになりそうですね。」
「ああ。まぁ、あとはマーシャが一歩踏み出せるか・・・だが、その心配はいらないな。マーシャは村の中でも一二を争う素晴らしい戦士だ。」
「あの、村長。肉体の戦いと、恋は別ですよ?」
「いや、同じさ! 己に負けてはならない・・・という意味ではな!」
 そう言って、村長は酒を勢いよくラッパ飲みし、サンソンも尺のお酒を啜った。

 僕はマーシャの家に連れてこられた。扉には鍵がかけられている。僕はベッドの上に放り込まれた。
「うわ!」
「言っておくがな・・・さっきも村長が言った通り、逃げ出そうなんて考えるなよ? ちょっとでもその素振りを見せれば、子供であろうと容赦しない。」
「に、逃げ出したりしませんよ!」
 僕は容疑者とされてしまった不安もあったが、同時にマーシャと2人きりになれたことに、不謹慎ながら喜びを感じていた。
「フンッ。それから、部屋の物を勝手に物色することも許さん。と言っても、高価な宝など置いていないがな。」
「僕はドロボウなんてしませんよ!」
「だが、下着は盗りそうだな?」
「そ、そんなことしません!」
「フッ 説得力がないぞ。この家の外へ出ることは許さん。あと、私は大抵夕方には帰る。遅くても、夜だ。メシは2人分作れよ?」
「え?」
「おまえと、私の分だ。不満でもあるのか?」
「いえ・・・別に・・・」
 僕は何となくだが、母親と暮らしていた頃を思い出してしまった。あのときも、母親にご飯は勝手に作りなさいと言われていたから。
「外の世界ではどうなっているのか知らないが、アマゾネスの村では、男が家事をするのが常識だ。料理ぐらいはできるようになっておけ。必要な食材は大体揃っている。」
「わかりました。」
「それから、被告人にアドバイスをする・・・というのも変だが、あれで村長は寛大なお方だ。1か月のお前の行動と態度次第では、罪が軽くなるか、恩赦になるかもしれないぞ。死にたくなかったら、下手な考えは思いつかないことだ。さ、今日はもう遅い。寝るぞ。」

「あの、マーシャさんの隣で・・・寝てもいいんですか?」
「当たり前だろう。他にどこで寝るつもりだ? この家には他にベッドも布団も、ソファーもないぞ。」
「じゃあ、失礼します・・・」
「言っておくが、寝首をかこうとしても無駄なことだ。最も、子供のお前の力では、首を絞めようとしても、刃物で刺そうとしても、無駄だろうがな。」
「そんなことしないよ・・・」
「朝は早いぞ。早く寝ろ。」
 マーシャは瞳を閉じる。僕も、寝ることにした・・・。

 朝の日差しで僕は目を覚ました。まだマーシャは起きていない。僕は朝ごはんの準備をした。
 一通り、必要な食材は揃っていた。料理屋では下働きが主だったが、野菜を切ったり肉をさばいたり程度はさせてもらっていたので包丁使いには慣れていた。
(朝だから簡単なものでいいよな・・・)

 僕は食パンと目玉焼き、サラダを作ってテーブルに用意した。
「マーシャさん。朝だよ。ご飯もできてるよ。」
「う〜ん・・・ああ、どうやら逃げ出さなかったみたいだな。おまえは賢明だ。」
「そろそろ信用してよ・・・」
「まだ貴様と暮らして1日も経っていないだろうが。」
「そうでした・・・」

「少し貧相だが・・・まぁ、美味しかったぞ。」
「朝ごはんなんだからこんなものだよ。」
「昼と夜は、もっと力のつくものを作ってくれ。肉をもっとな。」
「わかった。あれ、昼は戻ってくるの?」
「ああ。アマゾネスは朝は農業、昼は、私は戦士だから訓練と見回りだ。だから昼前に休憩と準備時間として一度戻って来る。あと、家の掃除、頼むぞ。」
「うん。」
「じゃあ、行って来る。」
 朝ごはんを食べ終わったあと、マーシャは外出の準備を整えて家を出た。外から南京錠を占める音が聞こえる。
 
 南京錠までするのか・・・まぁ、信用されないのも分かるけど。さて、後片付け・・・と。
 僕は朝ごはんの後片付けをして、部屋の掃除をやることにした。

「大変だなぁ・・」
 部屋の掃除は大変だった。今まで四畳半の布団しかない部屋に住んでいたが、この家はそれに比べたら広い。それに家具もちゃんとある。これが普通の家なのかもしれないが、僕にとっては大変だった。

 トントンッ
 扉がノックされる。
(どうしよう? 扉は鍵がかかっているし・・・というか、鍵がかかっているのにどうしてノックなんか?)
「ごめんくださーい」
 若い男性の声だった。この村にも男の人間が居たのか!
「ちょっと待ってください!」
 僕は椅子を足場にして、扉近くの鉄格子の付いた窓から外を見渡した。

「えっと、ああ、そちらでしたか。私はサンソンと言います。この村で医者をやっています。」
「そうでしたか。僕は見ての通り、閉じ込められた状態です。まぁ、被告人なので仕方ないですが・・・」
「ハハハッ 安心してください。彼女達アマゾネスはあなたを歓迎すると思いますよ。しばらくすれば、村の中ぐらいは自由に歩かせてもらえるようになると思います。」
「そうですか?」
「ええ。」
「あの、この村には人は他に居ないのですか?」
「いえ。男狩りで連れて来られた男性が何人か居ますよ。でも、アマゾネスの方が圧倒的に多いですね。なので、夫婦の家庭も少ないのです。」
「男狩り?」
「彼女達はしばし、ここからしばらく南に行った反魔物国領の国境の村から気に入った男をさらって来るのですよ。でも、金品を強奪したり、人を殺したりはしていません。」
「サンソンさんも、ここへさらわれてきたのですか?」
「いえ。私は違いますよ。私は元軍医で、私の居た部隊に今の妻が偶然一緒だったんですよ。で、私は凄惨な戦場に嫌気が差していて、妻と共に除隊しました。そして、結婚と同時にこの村へ来たんですよ。」
「なるほど。」
「村長も、僕を歓迎してくれて、診療所つきの家を建ててくれました。今ではこの村がとても大好きです。あなたも、きっと気に入ると思いますよ。」
「僕の場合、1か月後に殺されてしまう可能性もあるんじゃ・・・」
「それは村長が判断されることです。私の家は隣にあります。何かあったら相談してくださいね。ではっ」
「どうも・・・」
 そう言って、サンソンは家に戻っていった。
(とりあえず、まともな、それも人が居たんだな。話が分かる人が居てよかった)

 夜になるとマーシャが帰宅した。
「ただいま。大人しくしていたか?」
「おかえりなさい。夕飯、できていますよ。」
「ああ。ご苦労。ハンバーグか。美味しそうだ。」

「うん! 美味いぞ!」
「ありがとうございます。」
 どうやらマーシャは肉が好きなようだ。一方、野菜はあまり好きではないらしい。
「サラダもちゃんと食べてね?」
「う・・・わかった・・・」
 渋々、マーシャは手を付けていなかったサラダを口に運んだ。何か味付けを考えた方がいいだろうか、う〜ん・・・

 僕は夕食の後片付けをしていた。
「おい。これから風呂に入るぞ。仕方ないから一時的に外に出してやるが・・・逃げようとすれば、わかっているな?」
「はい。」
「よろしい。じゃあ、私は風呂を炊く。呼んだら来い。」
「わかりました。」

 洗い物が終わってベッドでゆっくりしていると、風呂が沸けたら来いと呼び出された。
 外のドラム缶には既にお湯が準備してあり、湯気がたっている。しかし、ドラム缶の大きさからして、僕の体では足がつきそうにない。
「あの、僕、多分足がつかないんじゃないかと・・・」
「分かっている。だからこうするのだ。」
 マーシャは僕を後ろから抱きかかえ、ドラム缶の風呂に入った。
「あ、熱い!」
「大丈夫だ。すぐ慣れる。」
 初めのうちは熱くて体のあちこちに痛みが走ったが、しばらくするとそれはなくなった。
 マーシャの胸が、頭の後ろに当たっている・・・。
「・・・・」
「ふぅ・・・やっぱりお湯は熱めに限るな。」
 あれ、なんだか・・・おちんちんがムズムズする・・・
「ん? モジモジしてどうした?」
「そ、そろそろ上がろうかと・・・」
「駄目だ。しっかり温まらないと風邪を引くぞ。」
 なんだかおちんちんが変だ・・・。上にそそり立とうとして・・・ちょっと固くなってる。

 子供のユウは、それが勃起だということを知らなかった。ただ、勃起と言っても、まだ体が未熟なユウの勃起は不完全だった。

「なぁ、ユウ。おまえ、どうして私のあとをつけて来たんだ?」
「べ、別に・・・」
「正直に答えろ。」
 抱きしめている腕に、少しだけ力が込められる。同時に後頭部に押し当てられている胸も、より強く押し当てられる。
「ま、マーシャさんに・・・会いたくて。実は僕、元々街で料理屋に勤めていたんですよ。」
「知っている。」
「え?」
「あの料理屋にはよく行っていたからな。おまえの顔は知っていた。名前は、そのときはまだ知らなかったがな。」
「実は、僕あのあと急に仕事をクビになって・・・もうマーシャさんに会えなくなるんじゃないかと不安になっていたんです。そんなとき、公園で偶然見かけて、これを逃したらもう二度と会えないんじゃないかと思って・・・気づいたら、村まで後をつけてしまいました。すみません!」
「そう・・・か。」
 しばらくして風呂を上がり、家に戻った。

「どうだ? 風呂上がりの牛乳は美味いだろ?」
「うん! 美味しいです!」
 この村では牛を飼っているらしい。ホルスタウロスを飼わないのは、男と結婚してしまうと母乳を男にしか飲ませたがらなくなると村長が思ったかららしい。あと、牛なら牛肉も美味いとのことだ。僕は牛肉を食べたことがないのでわからないが・・・。

 夜、寝ようとしたとき、呼び止められた。
「おい。寝るにはまだ早いぞ?」
「え?」
「恐らく、眠ろうとしても眠れないだろう。ムラムラするのだろう?」
「え、どういう意味ですか?」
「やはりまだ子供だな。体に直接聞く方が早いか。」
 マーシャはそういうと、僕のズボンを素早く脱がせた。
「な、何するんですか! やめてください!」
「黙れ! 男に拒否する権利はこの村にはないのだ! それに、やめてという割には、ここは正直なものだな!」
 マーシャさんにおちんちんをギュっとつままれる!
「ああっ!」
「ははっ! 可愛い声で鳴くな。だが、風呂でもそうだったが、まだ半勃ちというところだな?」
「き、気づいていたんですか!?」
「当たり前だ! 気づかないわけがないだろう! このままではムラムラして辛いだろう。今楽にしてやるぞ。」
 そう言うと、マーシャは僕のおちんちんをつまんだ指を上下に動かした。
「や、やめて・・・な、なんか変な気持ち・・・」
「気持ちいのだろう?」
「は・・・はい・・・」
 やがて、僕のおちんちんは完全に勃起した。
「よし、完全に勃ったな。このままイカせてやる!」
「イカせ・・? うわっ!」
 マーシャは指の動きを強めた。
「ま、待って! やめて! 変になっちゃう! 何か来ちゃう!」
「いいぞ! 出せ! 出してしまえ!」

 僕の体全体に、稲妻のような衝撃が駆け巡った。体中がブルブルと震え、おちんちんはピクピクと痙攣している。ようやく、マーシャは指の動きを止めてくれた。

「ふむ・・・やはりまだイクことはできないか。まぁいい。少しずつ鍛えてやろう!」
「はぁ・・・はぁ・・・」

 ベッドに入ったが、余計に興奮して、眠れなかった・・・。

 次の日、マーシャはサンソンの元を訪れた。
「昨日、ユウに手ほどきをしたんだがな・・・残念ながら射精はできなかった」
「まぁ、あれぐらいの年齢なら、精通もまだでしょうから。」
「そうか・・・射精できるのはいつ頃になる?」
「そうですね・・・。もうすぐだと思いますよ。何なら、少し荒療治ですが、毎晩射精を促してみてはどうでしょう? 精通が早まると思いますよ。」
「分かった。」

 それから1週間後、マーシャの家の南京錠はかけられなくなり、村の中であれば自由に外出することが許された。
 そして夜は決まってマーシャさんの精通を促す手コキをされるようになった。

 村の広さはあまり広くはなかったが、一つの集落が生活するのに必要なものは揃っているようだった。村の家は大体どこも同じ大きさだが、村長の家は宴会場もあるため大きな家だった。
 風呂、トイレ、台所はどこの家にもあるようだが、この村では風呂はドラム缶らしい。そのため、風呂を沸かすには薪を集める必要がある。
 アマゾネスの多くは戦士として育てられるため、村の訓練場は充実しており、練習用の武器や巻き藁、筋肉を鍛えるための道具も揃っていた。ただし、男がここへ入ることは禁じられているらしい。
 農場もちゃんとあり、畑や田んぼがあり、米や様々な野菜を栽培している。牛や豚、ニワトリもしっかりと飼育されている。他に食料を得る手段としては、森でアマゾネス達が狩りをするそうだ。彼女達にとっては牛肉よりも熊肉の方が好みらしい。もっとも、牛肉は主に牛乳を採取する目的で飼われているため食べることは許されないが、年に数回の祭りのときには牛肉がふるまわれることもあるのだとか。

「いぎいぃぃぃぃぃぃ!! あひひいいいいいいいいい!!」
「駄目か・・・だが、勃起は前に比べて順調にできるようになったな。安心しろ。必ず私が精通させてやる。」

 この日も僕はマーシャさんに手コキされたが、射精することはできなかった。しかし、快感だけは起きており、体全身の震えが止まらない。

 次の日、僕はサンソンさんと話をしていた。
「この村には、お医者さんはサンソンさんだけなのですか?」
「ええ。僕だけですよ。」
「アマゾネスの人たちって、やっぱり何かと戦ったりとか、するのですか?」
「大昔はこの近くに反魔物国の軍がよく攻めに来ていてそのときには戦ったみたいですが、最近は平和なので外部と戦うことはありませんよ。」
「アマゾネスも、病気やケガはするんですか?」
「ええ、もちろん。どんな生き物だって、病気やケガはします。そうですね・・・彼女たちの場合、やはり厳しい訓練をしているのでケガをすることは多いですね。まぁ、大抵は傷の消毒程度の治療で済んでしまいます。彼女達は人間の数十倍丈夫ですからね。ただ、手術が必要な患者が出ることはたまにあります。前に一度、盲腸になったアマゾネスを手術しましたよ。」
「へぇ・・・サンソンさんはすごいですね。一人で、村の健康を守っているんですね!」
「いいえ。私だけの力ではありませんよ。理解ある村長と、私を信頼してくださる皆さまのおかげです。」

「ただいま・・・ん? 何か臭うな・・・おい、おまえちゃんとトイレの掃除してるか?」
「え? トイレって掃除しないといけないんですか?」
「当たり前だろう!」
「すみません。今までトイレも、風呂も台所もない家に住んでいたので・・」
「そうか・・・それは悪かったな。トイレはちゃんと掃除しないとダメだぞ。あと、台所もだ。特に、トイレの糞は畑の肥料になるから、必ず毎日畑に持って行かないといけない。」
「え!? 人の・・・あれを・・・畑に!?」
「おいおい・・・農業の常識だぞ・・・。まぁ、頼むぞ。」
 僕は家の裏側にトイレの箱があるから、それを新しい箱と取り換えて、糞尿で一杯になった箱は畑に持っていくように言われた。

「ようやく我慢汁は出るようになったな。もう少しで精通だ。そうすれば、おまえも立派な大人だぞ。」
「う、うん・・・。」
 アマゾネスは結婚することで年齢は関係なく一人前の成人したことになるらしい。男は精通で一人前なのかな?

 それからしばらくすると、僕が逃げ出さないかマーシャさんが疑うことはなくなり、他のアマゾネスが僕を見張ることもなくなった(なんか色っぽい目で見てくるアマゾネスは居るけど、あえて目を合わせないようにしている)。
 僕は家で家事をやり、暇な時間は隣の家のサンソンさんと話をしている。そして夜は、夕飯を食べたあとは一緒にドラム缶の風呂に入る。足がつかず、一人では溺れてしまうので、マーシャさんと一緒じゃないと入れない。
 マーシャさんに抱きかかえられる形でいつも風呂に入るのだが、マーシャさんの体と密着し、後頭部には胸が当たって勃起してしまう(わざと押し当てているのかも)。
 そして寝る前はマーシャさんに手コキされる。いつも何かが出てくるような痺れる感覚があるが、あともう少しというところで出ない。
 そしてムラムラしたまま寝ることを強いられている。

 この村に来て一ヶ月が過ぎた。今日は審判が下される日だ。
「時間だ。覚悟はできているな? 行くぞ。」
「・・・はい。」
 僕はマーシャに連れられて、村の中央の広場に向かう。

 村の中央は既に村長、そして村中のアマゾネスが集まっていた。
「それでは、これより被告人へ審判を下す! 被告人前へ!」
 僕はマーシャに後ろから軽く押され、前に出て正座させられる。
「被告人は、村への侵入、及び住居侵入、ストーカー行為、そして下着ドロボウの罪により・・・!」

「被告人、マーシャは夫婦となることを認める!」
「え!?」
「なに!?」
 自分とマーシャは驚きを隠せなかった。
「この者はマーシャの家に忍び込み、さらには下着まで物色した。となれば、責任を果たさねばなるまい。」
「そうだな。」
「村まで見られてしまっては、もう街に帰すわけにもいかないしな。」
 他のアマゾネス達もはやし立てる。
「マーシャ。その者で不満はないか?」
「私は、ない。だが、ユウは・・・」」
「僕も、マーシャさんと結婚できるなら・・・嬉しいです!」
「ならば決まりだな。これより、2人の結婚式、及び成人式を行う!」

 まさか判決が出たと思ったら、結婚式と成人式が同時に行われるとは思ってもみなかった。

「今ではすっかり勃つようになったな。ユウ。」
「だけど、まだ精通は・・・」
「フッ 安心しろ。必ず私が、この場で精通させてやる!」
 マーシャは僕を抱きかかえ、完全勃起したおちんちんを膣に挿入した。
「うっ!・・・」
「血!? 大丈夫!?」
「何。心配するな。私とおまえが・・・繋がった証拠だ!」
 マーシャはより一層、動きを激しくする。マーシャの中は締まりがきついが、同時に暖かく、そしてヒダ全体が僕の精液を絞り出そうとしているかのようにきつく締まる。

「うう・・・私もムラムラしてきた・・・」
「あ〜あ・・・マーシャに先を越されちゃったなぁ・・・」

「来る! 何か来るよ! マーシャ!」
「いよいよだな! 出せ! 私の中に全てを吐き出せ!!」

 びゅるるるるるるるるるっ!!

 体全身の痺れる感覚は一緒だが、今までと違い、大量の白い粘液が僕のおちんちんから飛び出した。

「あれ・・・これ・・・いつもと違う・・・」
「やったな! ユウ! これが精通! これが射精だ! これでおまえも、一人前の大人だぞ!」
「やった・・・! これで、マーシャと結婚できたんだね。」
「ああ。・・・だが、アマゾネスのセックスはこんなものではない! まだまだ終わらんぞ!」
「え!? うわああ!!」
「お前達もよく見ておけ! これがセックスだ! 立派な戦士になるがいい!」
 周囲のアマゾネス達も興奮し、雄たけびをあげ、夫の居るアマゾネスは夫を連れてきてセックスを始めてしまった。

「さてと・・・私ももう興奮が収まらんぞ! サンソン! チンポを出せ!」
「そうですね・・・今日は診療所は臨時休業ですね!」

 こうして、アマゾネス達の大乱交は朝まで続き、まだ夫がいないアマゾネス達は、一日も早く夫を得ようと闘志を燃やすこととなった。

「上手く行きましたね。村長。」
「ああ。おまえのおかげだ。サンソン。おまえも相当悪知恵が働くな〜」
「いえいえ。村長様にはかないません。」
「まぁ、森まで一人で来た時点で、あの子は我々アマゾネスの夫に相応しいとは思っていた。マーシャの家に入ってしまったのは予想の斜め上だったがな。」
「それもまた、ユウさんが本気でマーシャさんを愛していたからでしょう。」
「そうだな。しかし、あの小僧は今はひ弱な子供だが、大人になるころにはたくましくなるぞ。マーシャの夫なら、なおさらだ。」
「そうですね。」

 その後、マーシャから村は決して外界から閉ざしておらず、むしろ街と交易することもあれば、男狩りに人間の里へ顔を出すことも知らされた。事実、この村の隅の脇道は、馬車がギリギリ一台通れそうな道が隣の街へ繋がっている。
 あと、僕がマーシャと結婚する前まではあえて店を閉めていたが、道具屋や武器や、さらには宿屋までもがあることが明らかになった。と言っても、大半は村の内需に支えられているらしく、外からの来客は皆無みたいだが・・・。

 それから数十年後、僕は体こそ細身で、身長もマーシャと比べると、顔がマーシャの胸に埋もれてしまうほど低いが、ペニスだけは大きく、立派になった。
 今では夜寝る前は家でするが、それだけでは飽き足らず、子供のアマゾネス達を集めて目の前で2人の愛あるセックスを見せつけている。アマゾネス達にとって、これは将来立派な戦士になるための激励なのだそうだ。

 ストーカー少年を待ち受けていた末路。それはアマゾネスとの結婚だった。





 
18/01/16 19:59更新 / 風間愁

■作者メッセージ
おねショタものもいくつかアイディアがありますが、今回はアマゾネスを選びました。
ストーカーは立派な犯罪です! 現実では絶対マネしてはいけませんよ!

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