連載小説
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真新しい視界
キィィィィィィィィィィィィィィン

 耳鳴りのような音が鳴り響く。次第にそれは治まり、聞き慣れた振動音が聞こえ始める。

「・・・・・・んっ・・・んんう?」

 目覚めたのはラキだった。彼は司令室の床に倒れていた。ゆっくりと起き上がり、辺りを見回す。すると他の隊員も同じように倒れていた。

「!?・・・何が・・・ブレード!ジェミニ!」

 彼が呼びかけると呻き声とともに彼らも目覚める。

「・・・痛・・・」
「・・・朝?」
「・・・昼?」
「・・・夜でもないぞ」

 下らないやり取りをしていると奥で倒れていたイーグルとエスタも起き始める。

「酷い耳鳴りだ・・・高地ではないはずだが・・・」
「いちちち・・・・・・はっ!レックス!」

 エスタが気付くと隣でレックスが倒れていた。彼は慌てて取り出した小型携帯端末のプラグをレックスの耳横に刺し込む。イーグルが心配になり見つめる。

「大丈夫か?」
「メンテナンスモードで機能停止しているだけ。再起動させるよ。」
ブゥン、ピピピ
「メインシステム作動オールグリーン・・・通常モード起動・・・おはようございます。ドクターエスタ」
「はぁ、よかった・・・問題ない?」
「全システムに問題ありません。先ほどの謎の光に包まれた際、全システム停止に陥る衝撃を受けました」
「そうか・・・あ、レックス!起きたばかりで悪いけど、艦の記録を確認して!」
「了解」
 命令を受けた彼は身体を起こし再び、端末にプラグを差し込む。

「何を調べる?」
「さっきの出来事。艦の記録で確かめてみる」
「艦の航行記録を確認します。・・・・・・・・・ドクター」
「よし、どれどれ・・・・・・え?」
「どうした?」

 エスタの反応が気になり、イーグルも端末に表示された記録を確認する。すると彼も開いた口が塞がらなくなった。

「「おーい」」
「二人ともどうした?」

 ラキとジェミニも気になり声をかける。反応が無いため、レックスが答えた。

「先ほどの航行の時間。全く記録されていません」
「「「はいぃぃぃぃぃ!!??」」」
「・・・どういうことだ?」
「原因は不明です」

 呆然とする全員。そんな中、ラキだけ静かな雰囲気から抜け出る。

「まあ、無いなら仕方ないじゃん。また新しく作ればいいことよ。見ろよ外は晴れて・・・」
「ラキ。全然分かってないね」
「うん、セーブしたはずの記録が消えていた事実がどれだけ絶望なのか」
「お前らそれは旧世代のゲーム機だろうが!一緒にする・・・」
「・・・待て!ラキ!」
「はいぃ?」
「・・・今、お前なんて言った?」

 いきなり突っかかるブレード。

「いやだから・・・旧世代の・・・」
「それじゃない!その前だ!」
「えーと・・・無いなら新しく作れば?見ろよ外は・・・はっ!?」
 ようやく言った言葉に気付く。全員がその言葉に反応し、フロントガラスを見る。

 砂だらけの視界しか見ていない彼らにはそれは異常にしか見えなかった。視界に映るは青き空と遠くまで見える砂の大地。遮るものは何もなかったのだ。

「「晴れてるね」」
「気候は正常。外に出ても問題ない状態です」
「いつ晴れたの?」
「あの砂嵐、気絶している間に止んだのか・・・」
「・・・ふん・・・」

 ラキのみ言葉が出なかった。

「全く、自分の言った言葉に気付かないとはお前らしいな」
「・・・うっさい」

 イーグルに小さく突っ込むラキ。

「とにかく、あれからかなり移動したはずだな。ジェミニ。現在地を」
「はいは―い」
「ええと現在地は・・・あれ?・・・自艦の表示は?」

 メインテーブルに映されたマップに艦の表示が無かった。何度も探すも見つからない。

「イーグルぅぅ」
「出ないよぉぉ」
「やれやれ、端末が故障でもしたのか・・・ドクター見てくれ」
「イーグル・・・それなのだけど・・・」
「どうした?」
「艦事態に異常は無いよ」
「はぁ?」
「艦全てのシステムに問題はありません。ただし、現在使用不可なシステムが一つだけあります」
「それは?」
「GPSが使用不可です。衛星とコンタクトを取っていますが、一向に反応しません」

 レックスがありえない事実を告げる。それはつまり自分たちの現在地が不明であることを意味する。

「いや待てそんなことないだろう。衛星の数は地上を見渡すために多数配備されているはず。応答しないなんて・・・」
「こんなに晴れている。GPS機能も正常。なのに衛星と連絡がとれない。つまり・・・」
「「迷子!!」」
「・・・だな」
「やけに冷静でいられるな・・・みんな・・・」
「・・・騒いだら黙らせる」
「やめい!その物騒な背中のものを出すな!」

 ラキに突っ込もうとするブレード。その目は本気なのか不明。

「さて、馬鹿は置いといて・・・ドクター。何か案はないか?」
「了解、隊長。それじゃあ、偵察機を飛ばして周りを調査。それで位置を特定しよう。レックス!『Dフライ』射出。3機でいい」
「了解。偵察機カタパルトオープン。『Dフライ』1号機から3号機まで発進」

 司令室の上部辺りで駆動音がするとそこから三つのエンジン音が聞こえてきた。ジェミニがフロントガラスを見ると三体の影が上空へ飛び立って行った。

「おお、トンボが・・・」
「久々に飛んでった」

 偵察機の詳細を光学ディスプレイに映し出す。レックスが操縦とカメラ操作を行っていた。メインテーブルにも自分たちを中心にマップが表示される。近くにいた四人はテーブルに集まった。

「「でた」」
「んんぅ?艦の後ろにあるのは?」
「・・・でかいな・・・岩山か?」
「岩の大きさはこの艦を超えています。高さ100m横幅200m」

 どうやら自艦は岩山を後ろにし、目の前が砂漠地帯となっているらしい。

「どんな感じだ?ドクター」
「ふぅん。一様、この辺り一帯のマップはできた。幸い方角も問題ない。今、自分たちは南の方角に向いている」
「南?あの時、北に向いていたはず・・・」
「それも詳細不明だよ。どうする隊長?」

 しばらく考え込むイーグル。他の者たちが見守る中、俯いた顔が上がる。

「このまま南に向かう」
「「みなみ―」」
「なんで?」
「GPSが効かない状態で未知のエリア移動するのは非常に危険だ。方角通りであれば荒野地帯へ戻れるはず」
「そうだね。この艦は長期間遠征を可能としたハイテクを積んでいるけど、万が一ってことはいつあるか分からない。できれば何処か連合軍の前線基地があればいいな」
「・・・結局後戻りか」
「作戦続行はできるけど・・・状態が微妙だしね。レックス!艦の発進準備!それとDフライは艦の半径10kmで旋回しながら地形探索を」
「了解。全エンジン作動。ホバリング開始。Dフライ旋回行動開始。」
「それじゃあ・・・」
「僕たちは・・・」
「さっきと同じ配置に就いてくれ」
「また目かよ・・・」
「・・・了解」

 ジェミニはテーブルで出来上がるマップとにらめっこ。ラキとブレードも先程と同じく外に目を向けた。

「想定外の出来事か・・」
「そうだね・・・・・・」

 ずっと端末画面を見続けるエスタ。それを見てイーグルが不思議に思う。
「・・・・・・」
「・・・ドクター?」
「えっ?あぁ、レックス!発進して!」
「了解。航行開始」
「???」
(これは・・・いや・・・今言うべきではないだろう。・・・確信要素が全くないからな)
11/06/05 01:11更新 / 『エックス』
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