連載小説
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第四話 武器調達
 吸血トレーニングをした後少し休憩した。それでもまだ時間はかなり余っている。せっかくだから用事をすませておくかな。
「とりあえず首に巻くものと武器を買いにいくけどジュリアも来る」
「うう。ダルいからいいですわ」
 ジュリアは疲れが出たのかグッタリしている。初めての特訓で疲れたんだろうね。ちなみに汗をかいたので服も着替えてある。
「ふーん。残念。彼女たちにも紹介しようと思っ」
「ぜひ行かせていただきますわ!」
 ジュリアはすごい勢いで立ち上がった。
「もしかして彼女って単語聞いたからヤキモチやいてるの?」
「そ、そんなことありませんわ。ただどんな魔物に会えるのか興味があるだけですわ。べ、別にあなたが魔物と2人きりで親密になっても気になるわけじゃありませんわよ」
 もしかしてジュリアってツンデレってやつなのかな。それにしてもなんで魔物って確定してるんだろう。実際そうなんだけどさ。
「あなたと親しい女の子って言ったら魔物しか思いつきませんもの」
 そんなことないよ。ボクもちゃんと人間の女の子と
「何かおっしゃいまして?」
 その笑顔怖いんだけど。まあ実際魔物の方が縁があるけどさ。ベントルージェ領には魔物が多いからかな。
「それだけじゃないような気がしますけどね。それじゃ行きましょう」
 ジュリアはボクの手を引っ張った。ジュリア場所知らないのにどうするつもりなんだろう。

「へえ。なかなかしゃれた店ですわね」
 ボクが連れてきた服屋を見てジュリアは声を上げた。品揃えもいいし、何より店主の腕もいいからね。
「あらロキじゃない。その娘の服でも買いに来たの?」
 店主のコティが声をかけてきた。
「アラクネを人里で見るのは珍しいですわね」
 まあクモの下半身を見ればすぐわかるだろうね。
「そう?私はヴァンパイアが真っ昼間にうろついてる方がよっぽど珍しいと思うけど」   
 そういうのわかるんだね。魔物同士そういうのには敏感なのかな?
「わたくしはヴァンパイアのジュリアですわ。太陽があると力が発揮できないのがイヤで出てきましたの。よろしくお願いしますわね」
「ふーん。がんばりやさんなのね。わたしはゴールドコットン。コティでいいわ。よろしく」
 2人は握手をした。第一印象は悪くないみたいだね。
「ちょっと首に巻くスカーフか何か欲しいと思ってね」
「ああ、マーキングってやつね。…ジュリアちゃんかわいい趣味してるわね」
 コティはボクの首をじっと見ながら言った。
「ううう。ろ、ロキ。早く選びなさい」
 ジュリアが真っ赤にして横を向いた。ボクは黒でクモの巣の模様をしたスカーフを選んだ。ついでにジュリアの服も何着か買った。
「わたくしの分も買ってもらっていいんですの?」
「子犬のような目でねだってるのを無視するのもかわいそうだったからね」
 ジュリアは頬を赤くした。
「べ、別に子犬のような目なんかしてませんわよ」
 そういうジュリアの声は小さかった。
「あはは。気に入ってくれてよかったわ。また来てね」
「はい。また来ますわね」
 ボクたちは服屋を出た。さて、後は武器だね。

「…いらっしゃいませー。あ、ロキさん。…そっちの人はお弟子さんですか?」 武器屋に入ると店主のアムルが声をかけてきた。
「まあそんな所ですわね。わたくしはヴァンパイアのジュリアですわ。それにしてもサイクロプスがこんな人里に出てるとは思ってませんでしたわ」
 そりゃ一つ目を見ればわかるよね。
「…サイクロプスのアムルです。…なんでヴァンパイアが昼にいるんですか?」
 アムルは首をかしげた。みんな同じ反応だね。知識があるからよけい気になるんだろう。
「太陽で力が使えなくなるのを克服するためですわ」
「…すごく負けずぎらいなんですね。…でもそういうのいいですね」
 アムルは無口だけどストレートに言うからね。素直でいい娘だと思うよ。
「今日はスカーフに隠せるような武器を探しに来たんだけど。ジュリアも何か見ていく?さすがに朝に素手だと危ないから何か持ってた方がいいよ」
 ボクがそう言うとジュリアは額に手を当てた。
「気が向いたらそうしますわ。…それにしてもずいぶん凝ってますわね。ある種芸術みたいですわ」
 ジュリアは感嘆したように武器を眺めていた。
「アムルの武器は強度や軽さとかの性能がいいのはもちろん、見た目も美しいからね。ボクが使ってる武器は全部アムルが作ったんだよ」
 アムルはサイクロプスだけあって鍛治の腕がかなりすごい。それにいろんな大きさや形のものを作れるから隠すのにも都合いいからね。
「えへへ。…ほめてくれてうれしいです」
 アムルの顔は少し赤くなっていた。ボクはとりあえず短剣や、ジパングに伝わるシュリケンっていう武器や、隠しても形が出てこない鞭とかを中心に見ることにした。
「この傘いいですわね。これはどんな武器なんですの?」
 ジュリアが指さしたのは黒い傘だった。星空のようにラメがちりばめられており、柄の所には魔石が埋め込まれている。柄と骨の間によく観察しないと見えない切れ目もある。なんらかの武器が隠してあるんだろう。
「…これはノクターンパラソルっていいます。…布は魔力で加工されてますからよっぽど強い攻撃じゃない限り破れませんし、鈍器としても使えます。…さらに柄の部分の魔石で魔力を強化したり、魔力の発動を補助する働きがあります。…そしてこのノクターンパラソルには秘密があるんです」
 そう言ってアムルはが傘の真ん中を持って引っ張ると中から黒い刃が現れた。
「これは剣ですの?何か普通の剣と構造が違いますわね」
 ジュリアにもわかるんだ。確かに普通の剣と違って片側には刃がない。
「…ジパングに伝わる剣でカタナと呼ばれるものです。…名は絶陽と言います」
「ゼツヨウ?どんな意味が込められてるんですの?」
 アムルはジュリアを見て微笑んだように見えた。
「…太『陽』を『絶』つカタナ。…だから『絶陽』です」
 アムルの言葉にジュリアは目を輝かせた。
「まさにわたくしのための武器ですわね。これにしますわ」
「…ありがとうございます」
 こうして新たな武器を手に入れたボクたちは店を出た。
「明日からノクターンパラソルの使い方を叩き込むからね。覚悟しておいてよ」
「…はい!」
 ジュリアは自分の新たな相棒を握りしめて力強くうなずいた。

         つづく   
10/01/21 14:18更新 / グリンデルバルド
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■作者メッセージ
第四話です。少しネーミングセンスがあれなのかもしれません。

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