連載小説
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歴戦の翠戦士
「この私と手合わせ願おう!」
そいつは、パッと見た感じは間違いなく人間の女性だが、手足もまるでトカゲのような緑色の手足に、人間には無い緑色の尻尾が出ていた。
出会って間もないが、一言言っておきたい。
「…は?」
ど う し て こ う な っ た。
俺が彼女との出会った経緯はこうだ。

「いったたた…。」
俺は仰向けになって寝ていた上体を起こし、辺りを見回してみる。
そこは見たこともない森の中。
そして囁くように流れる綺麗な川。
ありとあらゆるところに木漏れ日が差し込み、まさに幻想世界にでも来てしまったのではないかと思わせるくらい幻想的なところだった。
「はっ!俺ってまさか!」
確か自分はあの白い奴と対峙し、こっちから攻めようとした瞬間に黒いものに覆われ、意識を失った。
即ち、自分は今死後の世界にいるのではないかと思い、自分の頬をつねってみる。
…ちょっと痛かったということは、まだ生きていると考え、とりあえずここはどこなのかを知ろうと歩き始めた。
数分歩くと、ちょうど良いところに一人の女性が居た。

俺はその人に話し掛けることにした。
「あの〜…。」
「ん?お前は…戦士か!?」
彼女は腰から剣を抜き、構える。
「ちょっ!待て待て待て!戦うつもりは無いんだ!」
俺はただ聞きたいことがあるだけなのにっ!
「ならばその背中の大きな剣はなんだ?これでも戦士と言わないつもりか?」
「俺は戦士じゃねえ!俺はハンターだ!」
「もはや言葉は不用!私と出会ったが運のつき!この私と手合わせ願おう!」
…ダメだこいつ、早くなんとかしないと!
「行くぞ!」
彼女はいきなり急接近し、俺に向かって剣を振り下ろした。
「チッ…!」
俺は咄嗟にその大きな剣…大剣を盾にし、彼女の攻撃を防いだ。
「ほう、私の一撃を防ぐとはなかなかやるようだ…だが!」
彼女は尻尾を鞭のようにしならせ、俺の腹を目掛けて放った。
「ぐはっ…!」
俺はこの一撃は流石に避けられず、腹に命中した。
そして思いきり吹っ飛ばされ、地面に這いつくばった。
正直凄く痛いし、口から鉄のような味…恐らく口から血が出血したかもしれない。
「む…、少しやり過ぎてしまったか?」
彼女はやれやれと首を傾げて、呆れた顔をしていた。
「クソッ…!」
俺はふらふらとそこから立ち上がる。
「なにっ!?あの一撃を喰らって、まだ立ち上がるのか!?」
彼女は驚いていたようだが、関係ない。
もはやここは狩るか狩られるか。
「俺はお前を…狩る!」
俺は大剣を彼女に向けて言い放った。
「やっとやる気になったか!さあ来い!お前の本気を見せてみろ!」
彼女は先程の呆れた顔は無くなり、期待に満ち溢れた顔をしていた。
「言われなくてもな!」
俺は大剣を一旦背中にしまい、今度は俺から彼女に急接近し、そこから抜刀すると同時に縦に一撃を振り下ろす。
「ぐぬぬっ!」
彼女は俺と同じように、剣を盾にして攻撃を防いだ。
(だったら、さっきのお返しをしてやる!)
俺は彼女が先程腹を尻尾で攻撃してきたように、俺は突くように足で彼女の腹を蹴った。
俺の考えは、蹴って一瞬の隙を作り、身動きを封じるつもりだったのだが…。
「ぐはぁっ!」
彼女は先程の俺みたいにぶっ飛び、木に身体を強打して気絶した。
「…あ( ̄▽ ̄;)。」

わ す れ て た w

そういえば…この世界に来る前に、食事効果の一つである、ネコの蹴脚術が残っていたのだ。
俺の居た世界では、獣人属である猫が料理をしたり、ハンターのオトモとして一緒に狩りに行ったりとする。
俺はその猫が作った飯を食い、たまたまこの効果を手にしただけだ。
そして今回作動した蹴脚術とは、普通のちょっとしたキックでも仲間を思いきり吹っ飛ばす事ができるようになるスキルだ。
故に、さっきは思いっきり蹴ったため、かなり吹っ飛ばしてしまった。
…ってか、今はそれどころじゃない!
「おい!大丈夫か!?」
俺は彼女に近づき、様子をみてみる。
「うう…。」
彼女は意識を失っており、ぐったりしていた。
…よく見たらこいつ意外と可愛いなと思ったのは言うまでもない。
とりあえず、意識が回復するまではこいつを守ってやろう。
とりあえず安静に出来そうな場所へ行くために彼女を抱える。
「よっと…意外と軽いんだな。」
俺は彼女を抱えると、その場所を探すために歩き始めた。


そして数時間後……。
「…ん…?ここは?」
彼女は意識を取り戻し、上体を起こす。
俺はとりあえず安静に出来そうな場所に彼女を寝かせ、俺はその横で見張っていた。
「よっ、大丈夫か?」
俺は彼女にそう声を掛けると、彼女は顔を赤くし、もじもじし始めた。
「あの〜…。」
普通なら、さっきはよくも!という感じで再び襲い掛かってくるかと思い、警戒していたが、どうやらその心配は無いらしい。
それどころか、俺の手を両手で掴み、握り締めていた。
「ようやく見つけた…!私の理想の強者…!」
「…え?」
「私と結婚してくれ!そして私と添い遂げてくれ!」
「えええええ!?」
いきなりの告白に驚きを隠せなかった。
こう言うのもなんだが、俺は女性と交際をした事が一度も無いし、狩りの際でも女性ハンターとはほぼ無縁であった。
「俺は…」
それに…彼女は蜥蜴のような手足や尻尾はあるが、それを上回るくらいに綺麗な女性だった。
逆に、こんな見た目も何も冴えない俺がこんな人と居て良いのだろうか?
「…やはり私が蜥蜴だから…お前から見れば気持ち悪いだろうか…?」
彼女は自信無さそうに顔を俯かせていた。
「いや、違うんだ…。今から言う話を聞いてほしいんだ。」
自分が前まで、どんな世界で過ごしていたのが、そしてその時にこの世界に来たと思われる原因(白い龍)の話…そしてこの世界に来てからの経緯を包み隠さず、全て話した。
「…なるほど。それは悪いことをしてしまったな…。済まない…。」
「気にするなって。それより、この世界はどんな世界なんだ?」
俺は何より聞きたかった事を彼女に言ってみた。
「そうだな。お前は全て話してくれたんだ。私も全て話そう。」
そして彼女の話を聞いて分かった。
旧魔王時代までの魔物は、こんな女性の姿ではなく、化け物の姿をし、人類に危害を加えていた。
しかし、新たな魔王が全ての魔物を女性の姿に変え、人類を愛する種族へと変わった事。
そして彼女は、その魔物の中のリザードマンと言われる種族で、戦士として一人前になると集落や家族から離れ、己の技を磨くために、そして自分よりも強い男を探すために手合わせと言って試合を申し込み、戦って自分よりも強い男に惹かれ、結婚して子供を作り、リザードマンという種族を更に強固な物にするためだという。
「そして今、私はお前という男に惚れた!なに、心配要らない。私はお前の為なら何でもしてやろう。もちろん、この身体もお前だけの物になるのだぞ?」
彼女は俺の手を掴み、自身の胸に触らせた。
「◎△◇■◆!?」
やばいっ!やばいやばいやばい!
すげぇ柔らかい…じゃなくて!
「ほっ、本当に俺で良いのか…?」
「お前で良い…ではなく、お前が良いのだ。だからもう一度言おう。」
彼女はふぅ…と一息入れて、
「私は一人の女として、お前を愛している。私と添い遂げてくれないか?」
そう言った彼女の目は、真っ直ぐで純粋な目をしていた。
「…こっ、後悔しても知らないからな!」
俺はこの衝動に耐えれず、ふい彼女を抱き締めてしまった。
「フフっ♪後悔なんてあるわけがない。私はこんな素敵な旦那様を手にしたのだからな♪」
彼女も俺の背中に手を回し、お互いに抱き締め合った。


あれから何年経っただろうか……。
俺はその後彼女と親魔物領の教会で結婚し、二人の娘を授かった。
現在その二人の娘とはいうと…。
「てやぁあっ!」
「はぁぁあっ!」
二人の娘はすくすくと成長し、戦士となるために日々の修練を積み重ねた。
俺はそんな二人の相手をしているが、この二人の成長ぶりを見て、きっとこの二人も立派な戦士となり、自分達よりも強くなるだろう。
そんな二人を見て、微笑ましく感じた。
昔の元に居た世界に居た自分なら、自分は不幸だと言ってたかもしれない。
でも、今の俺は愛する妻と二人の娘に囲まれ、とても幸せ者だと改めて痛感した。
「あなたー!ご飯が出来たぞー!」
そう考えていると、裸エプロン姿の彼女…妻が俺を呼びにわざわざ来てくれた。
「ありがとう。俺はお前を愛してるぞ。」
「なっ、何を改まって…♪私はお前以上に、お前を愛しているからな♪」
俺は愛する妻を抱き寄せ、淫らで深い口づけを交わしたのだった。


ーHAPPY ENDー
14/06/18 01:17更新 / エロ書けない人
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■作者メッセージ
頭では結構組み合わせは出来ているのですが、それを文章にしてどのように書けば面白くなるかが難しいですね…。
自分の文才の無さに涙が出ちゃう(´;д;`)
さて、今回は前に感想で頂いたサボテン様の提案により、書かせて頂いたSSです。
期待に添えなかったら本当にごめんなさいm(__)m

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