連載小説
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第伍話-上空に潜む影-
窓から薄日が差し込み、目が覚める。

「ぅん……ふあぁあ、んん〜」

背伸びして眠気を振り払い、隣にあるもう1つのベッドを見るとセリーヌがまだ夢の中にいた。
彼女の格好は基本全裸だ。理由はどうしても服を着たがらない
(服を着ているスライムというのもなかなかシュールな光景だが)からだ。
本人曰わく、『魅力が半減する』らしい。
だが、いくら魔物娘といえど、裸の女性を連れ回す趣味は残念ながら僕には無いので
外では魔力により申し訳程度に服らしきものを粘液で形成してもらっている。
正直僕には服というよりは下着にしか見えないのだけれど……
そんな現在全裸で睡眠中の彼女をそろそろ起こさないといけない時間だ。

「セリーヌ起きてくれる?」
「……んぅ〜……すぅ、すぅ」

寝息に合わせておっぱいがふるふると揺れ、僕の劣情を掻き立ててくる。
少し触ってもバレないはず……

「セリーヌ、寝てるよね?」

一応確認してみたが返事は返ってこない。
起きないセリーヌが悪いんだからね……

−−むにゅぅう♪−−

「あんっ……すう、すぅ」

一瞬起きてしまったかと思ったが大丈夫なようだ。
うん、何度触っても飽きないなぁ、この感触は。
手のひらに吸い付いてくる肌はひんやり冷たく、指に力を入れると
どこまでも沈んでいき、指の間からこぼれ出てくる。
スライムであるからか弾力性には欠けているが、それを補う程の柔らかさを持っていると思う。
いや、持っている。……はっ!?、思わず力説してしまった。
まぁそれぐらい気持ちいいのだ。男なんて女の子のおっぱいが大好きな生き物だろう?
最早これは遺伝子レベルで刻み込まれていることだと言っても過言ではない。
この間も僕は揉むことは忘れない。


−−もにゅ、むにゅぅ、むにっ、もにゅもにゅ−−

「んっ……あふぅんっ、あん♪……」

セリーヌからかわいい吐息が漏れれくる。
名残惜しいけどそろそろ止めて起こさなければいけない。
胸から手を離し、本格的にセリーヌを起こし始める。

「ほら起きて、もう行くから」「んんぅ……もぅ?」
「そうだよ。早くしないと昼過ぎちゃうからね」
「はぁ〜い」

僕はセリーヌが起きたので、一足先に部屋を出た。


−−−−−−−−−−−−−−−−−

目が覚めてから気付いたけど、なんだか体が火照ってる。
なんでだろ……えっちな夢でも見ちゃったかなぁ。
なんだかオナニーしたくなってきちゃった……
でも、だーりん待たせちゃいけないし、もういかなきゃ。


セリーヌを起こして食堂で待っていると彼女が降りてきた。
二人揃った所で朝食が運ばれてくる。相変わらず女将さんの料理は美味しそうだ。
今日この宿を利用しているのは僕達だけのようで、
女将さんは料理を運んでくると近くにあった椅子に座った。

「相変わらず美味しいですね」
「そうかい。そりゃ良かった。嬢ちゃんも美味しいかい?」
「うん、おいしーよ♪」

僕はもちろんのこと、彼女も女将さんの料理を気に入っていた。

「女将さん、僕達今日でここを出ますので」
「それは残念だねぇ。もう街を出るのかい?」
「今日中には出発しようかと」
「また来ておくれよ、嬢ちゃんも連れてね」
「はい、必ず」「またくるね〜」

食べ終わり、女将さんにお礼と支払いを済ませ、森へと向かう。
ありがたいことに、別れ際お昼にと弁当を渡された。あとで美味しく食べよう。




昨日歩いた道を辿り、太陽が真上にくる前に集合場所に到着出来た。
ルノアはまだ来てないみたいだ。しばらくして森の奥からワーウルフがやってきた。
あの銀狼はルノアで間違いないだろう。

「待たせたな」
「やあ、そうでもないよ」
「おはよールノアちゃん」
「2人ともおはよう。早速だが付いてきてくれるか?族長が会いたいそうだ」
「りょーかい」
「では付いてきてくれ」

ルノアのあとを追っていくと小さな村のようなものが見えてきた。
家がいくつも並んでいる。

「あれが私達の里だ」
「へぇ〜、かなり立派だね」
「そうか?ちなみに私の家はあそこで向こうにあるのが族長の家だ」

見えてきたのは他より一回り大きな家。そこに僕達は入っていった。
中の造りはしっかりしていて、ソファとテーブルがあり、
水も通っていて住み心地が良さそうだ。
ソファには群青色の毛並みのワーウルフが座っていた。

「族長、連れてきました。この2人です」
「ご苦労、ようこそ我が里に。立っていないで掛けてくれ」
「どうも」「ありがと〜」

ソファに座るよううながせれ、セリーヌと並んで座る。
ルノアは僕の横に立っていた。

「はじめまして、僕はデイル」
「セリーヌでーす」
「デイルにセリーヌだな。私はロアナ、この里の長をしている。今回は助かった」
「そんな、好きでやってることだから気にしないで良いよ。それで……」


あの後、酒場で聞いたことを話すと本格的な作戦会議が始まる。
セリーヌはどこで聞いたのか、ワーウルフの赤ちゃんを見に行ってしまった。
居ても邪魔なだけなので、呼び戻す気は全く無いが。セリーヌと交代で入ってきたのが
セラヴィというワーウルフ。里の中で最も頭の切れるらしい。
そして僕、ロアナ、ルノア、セラヴィの四人で作戦を練っていく。

「敵を50として、こちらは約25。かなり分が悪いですね……」
「ルノア、僕も数に入れてね」
「ああ、わかった」
「お前は戦う必要はない。情報だけでも十分助かったのだ。
そこまでしてもらう訳にはいかない」
「僕はやりたいからやるんだ。ダメなら個人的にやらせてもらうよ」
「ロアナ、今は出来るだけ戦力が欲しい」
「セラ……わかった。デイルよろしく頼む」

セラヴィは里で唯一、ロアナと対等な人物で最も信頼されているらしい。
彼女のおかげで参加を認めて貰うことができた。



こちらの主力はワーウルフ。魔術は苦手だが強靭な身体と俊敏性を持っている種族で、
彼女達は地の利を生かした戦闘・連携が出来るという。
対して相手は土地勘の無い寄せ集めの集団だが、
教団・パーティーと個別での連携には気を付けなければ。
最も厄介なのが、相手はこちらに比べて数が圧倒的に多く、魔術師がいることだ。
上手く立ち回らないと全滅は必須である。
会議は主にセラヴィ中心で進んでいった。

「……ではその作戦でいこう。ルノア、皆を集めてきてくれ」
「分かりました」

ルノアが出て行ってから十五分程で広場に全員集まった。
ロアナが中心に立って今回の作戦内容を告げる。
奇襲部隊6人、護衛部隊8人、遊撃部隊12人の3つに分ける。
精鋭を集めた奇襲部隊は木の上に配置し、敵を無力化する。
敵部隊を複数に分断しながら撤退した後、僕ら遊撃部隊と合流し各個撃破する。
もちろん男は連れて帰り、夫にするようだ。
護衛部隊は最後尾のこの里に配置し、子供を2人のワーウルフと男衆で守り、
セリーヌもここにいてもらう。

「いいか、皆で我らの里を守るのだ!男は連れ帰り、好きにして良い。
この危機を里の繁栄に変えるぞ!」

『ワオォォォン!!!』

未婚のワーウルフはギラギラした眼をしながら吠え、
様々な思惑の中、夜を迎えていった。



−−−−−−−−−−−−−−−−−

討伐隊が次々と集まってきていた街の広場は異様な空間となっている。
その中で俺は今回初めて隊の小隊長を任され、全員統一された鎧に身を包んだ
教団兵の指揮を執っていた。隣には副官のテベスが控えている。

「ダン隊長、そろそろ時間です」
「分かった。テベスみんなを整列させてくれ。傭兵もだ」

テベスが声をあげて、数列に並ばせている。
俺は親父が教団の信者だったため所属している。
魔物は人間を喰らうと教えられ討伐してきたが、
未だ仲間が喰われたという話は聞いたことが無く、少し不信に思っていた。
今までは疑うこと無く与えられた任を全うし、魔物を殺してきたが、
最近自分は間違いを犯しているのではと思ってしまう。
そんな考えを小隊を率いる責任感で塗り潰していった所で、列が出来ていた。

「今回小隊長を務めるダンだ。よろしく頼む。
これからワーウルフの集落に行き奇襲をかける。それではいくぞ!」


−−−−−−−−−−−−−−−−−


森に潜んでいた偵察のワーウルフが戻ってきた。
僕がいるのは第2遊撃隊で、3人のワーウルフと共にいる。
奇襲部隊のルノアとロアナは既に森に潜んで、敵がくるのを待ち構えている筈だ。
偵察によると70人前後の兵が侵攻してきているらしい。
予測していたよりかなり多いな……






@ 遊撃隊 B
A


××× 奇襲隊

   凸
敵部隊



奇襲でどれだけ効果出るかによって戦局はかなり変わってくるだろうが、
僕が出来ることは彼女達に期待することだけだった。



−−−−−−−−−−−−−−−−−



「そろそろ来る頃だ。全員気を引き締めろ……」
『はい……』

小声で族長が鼓舞した。私達は木の上に身を潜めて敵を待つ。

「来たぞ」

鎧を纏った兵士が前衛、武器・服装などがバラバラな人間が両側面、
ローブを着ている魔術師は最後尾に控えていた。
周囲を警戒している者も何人かいるが大半が隙だらけの上、
木が行く手を阻み、隊列が崩れている。

「あいつら奇襲する気なんだろうが、これからするのは私達だ」
「族長、タイミングは?」
「最後尾が過ぎた瞬間出るぞ」
『はい』

私達の真下を過ぎていく。
族長が最後尾の魔術師が過ぎた瞬間ハンドサインを出した。

(いくぞ)



−−−−−−−−−−−−−−−−−



「のどかな森だな……」
「そうですね」

俺とテベスは並んで歩き、辺りを見渡した。青々と木が繁っている。
これから見ることになるのは真っ赤な血なのだろう。
そう思うと少し胸が痛んだが、気を引き締め直し、周囲を警戒した。


『ぐはあぁぁ!』
『て、敵しゅがはっ!?』
『ぎゃぁぁぁあ!』

「なに事だ!?」

突如後方から6匹のワーウルフに襲われ、全体が混乱してしまった。
態勢を立て直す為、俺は声を張り上げた。

「慌てるなっ!急ぎ陣を作れ!」
兵士達に指示を飛ばし、ワーウルフの攻撃に備える。
……くそ、魔術師がやられたか。
ワーウルフは二人一組で見事に連携攻撃を仕掛けている。
中でも銀色の女性と群青色の女性は舞い踊っているかのように見え、
長い髪が空中に銀と蒼の線を引いていた。

「無事な者はケガした者を守るのだ!」

『りょ、了解!』

しかしワーウルフは攻撃の手を止めると後退し始め、
こちらの反撃をひらりと躱すと挑発的な顔をした。指示を無視して1人追撃を始めると、
堰を切ったように続々と後に続いて追撃を開始した。

「全員止まれぇっ!……くそっ、テベスは右手に行った部隊を止めてくれ」

見事に三方向に分断されてしまった。
残っているのは死んではいないが戦闘不能の魔術師が7人、剣士が3人、
無事な魔術師が3人、剣士が13人、傭兵が4人いた。
半分の兵をテベスに預け、俺は残りの半分を連れて中央に向かった仲間を追った。



−−−−−−−−−−−−−−−−−



僕はこっちに向かってくる二人を視界にとらえた。
ルノアとロアナだ。

「デイル上手くいったぞ」
「そうか、良かった」
「まだ安心するのは早いぞ2人共、追っ手がすぐに……どうやら来たようだな」

ロアナに言われてから数十秒してようやく僕にも見えてきた。
数は十数人。全員剣士だ。
他の場所でも既に戦闘が始まっている。僕は剣を構えて待つ。
手のひらからはじっとりと汗が出てきていた。

「……いくぞっ!」

敵を出来るだけ引き付け、ロアナの号令で僕達も地を駆けると、敵兵は僅かに怯んだ。

−−ガキィィン!……キンッ!−−

剣同士がぶつかり合い、金属音が森に響く。
僕達5人に対して相手は二倍以上。1人当たり最低2人を相手しないといけない。
バックステップで一度距離をとり、再び打ち合うが、
まともに訓練したことが無い僕に2人相手にするのは無理があった。

−−キィン、ぶしゅっ!−−

切られた腕から血が流れ、服を赤く染めてゆく。
幾度と打ち合ったことで手からも血が滲み出ていて、感覚がない。

『はあぁっ!』
『がふっ!?……』
「はぁっ!……ふん!」
『ごふっ!ぎゃあぁぁ!』

ロアナ達が次々と蹴散らして、加勢してくれたおかげでなんとか助かった。


−−ヒュゥヒュゥゥン……ドゴオォォン!−−


『きゃっ……』

突然、2つの火球が襲い掛かり、爆音により悲鳴が途切れる。
直撃した1人のワーウルフが吹き飛んでいって、木に激突し動かなくなった。

「総員突撃ぃ!」
『うおぉぉぉっ!』

まずいな……ケガ人抱えて戦える余裕なんてないぞ。

「ロアナッ!一度撤退しよう」
「分かっている。ルノア、ケガ人を里まで運んでくれ」
「分かりました。お気を付けて」

ルノアはケガしたワーウルフを背負って下がっていった。

「デイル、悪いが一緒に殿を務めてくれ」
「ああ、任せてくれ」

既に腕はボロボロでまともに戦える状態では無かったが、まだ魔法がある。
あちらの魔術師をどうにか出来れば、勝機はある。
だが、どうやって最後尾の魔術師を倒せばいいのか……

「何か考えがあるみたいだな」
「まぁね、無茶を承知で聞くけど一番奥の魔術師3人倒せる?」
「……残念ながら考えてる時間は無いようだな」


すぐ側まで敵は来ている。ロアナは敵陣の中央に飛び込んでいった。
12/01/11 16:01更新 /
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