連載小説
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私と貴方
気づけば私はユウタを押し倒していた。
私が毎日寝ているベッドに沈めるように。
ユウタと共に寝ていたベッドに押し込むように。
私はユウタの上に覆いかぶさるようにして。
押し倒していた。
「…フィオナ?」
私の下にいるユウタ。
その黒い瞳に今の私はどう映っているだろう。
そこまで考えてああ、と思った。
これじゃあまるっきりあの時と同じだと。
ユウタを本能のままに押し倒して、欲望のままに交わろうとしたあの夜と同じ。
「…。」
「…。」
ユウタは何も言わない。
私は何も言えない。
今の私は本能に支配された魔物らしく、ユウタを襲わずにいられない。
我慢が出来そうにもないほどに。
体は昂ぶり、本能は燃え上がる。
「フィオナ…。」
そこでユウタが私の名を呼んだ。
ただ名前を呼ばれた。
それだけなのに。
その行為に。
その声に。
私の体は反応する。
暴走、しそうになる。
「だめ…なの…っ。」
こんな状況で我慢できるほど私はできているわけではない。
ユウタのようにどんな欲求にも痛みにも耐えられるほど強いわけでもない。
ユウタを押し倒して、覆いかぶさっているこの状態。
魔物なら襲うなというほうが酷だろう。
襲わずにいられるものなどいるはずがない。
でも。
ここでかまわず襲ってしまえば…またユウタは離れていってしまう。
あのときのように私と距離をとろうとするだろう。
私がユウタを求めていても。
それがあくまで私のためだから。
「…。」
何も言わずに見つめ続けていたユウタが動き出した。
そっと。
ゆっくりと。
私の頬を包み込むように手を添えた。
「ユウ、タ…?」
温かな手のひらが優しく触れる。
「あー…えっとさ、フィオナ。」
言いにくそうに、恥ずかしそうに。
少しばかり照れているように。
ユウタは私を見つめてくれる。
「言っただろ?一応、リリムっていうのが何を食料にしてるのか知ってるって。」
確かにそれは言っていた。
私の誘いを拒んだあのときに言っていた。
自らを傷つけてまで止めたあのときに。
それじゃあ…やはりユウタは私を拒もうとして…。
しかしユウタは私の頬を包んだままだ。
拒むどころか離す素振りも見せない。
「あの…それで…非常に言いにくいんだけど…。」
本当に言いにくそうだった。
何を言うのかはわからないけど。
それでも恥ずかしそうにしている。
「えっと…その…いいけど…。」
「…え?」
「いや、フィオナがしたいっていうんなら…いいかな…って。」
今ユウタは何て言った?
いいって…言った?
何に対して?
私に対して?
何のことに?
私が…ユウタを襲うことに…?
「…え?」
それは信じられないことだった。
今まで散々私を拒んできたユウタからは予想できない言葉だった。
それで。
私が求めていた言葉でもあった。
「え?でも…ユウタは…。」
今まで拒んだ理由は私のためじゃなかったの?
ユウタがただしたいというだけではしないと言っていなかったの?
不思議そうな顔をしているだろう私を前にしてユウタは首を小さく振る。
「そりゃただしたいって理由だけじゃしないさ。ただ単に欲求を満たしたいならそこらにいそうなオレなんかよりもずっといい男とすればいい…。」
そんなことはない。
絶対にないと言い切れる。
だってユウタ以上の男なんていないんだから。
そう言い切って良いほどに私はユウタを想っているのだから。
「でも。」
ユウタは言葉を紡ぐ。
「フィオナは言ってくれたからさ。」
気恥ずかしげに。
それでも微笑を向けて。
「あのときに…傍にいてって…。」
それは私が勇者に襲われていた時に言った言葉だ。
助けに来てくれたユウタに情けなくも抱きついて泣きじゃくったと気に入った気持ちだ。
私の傍にいて欲しい。
ずっと隣にいて欲しい。
それはあまりにも理不尽過ぎることとはいえ、あまりにも我侭過ぎることとはいえ。
それが私の抱いた気持ち。
胸の奥で想っていたこと。
心の奥で湧き出た本心。
「そこまで言ってくれた女の子から…逃げるわけにもいかないだろ?」
頬を包んでいた手がするりと抜ける。
変わりに私の背中へと回された。
私を抱きしめてくれた。
温かい。
とても落ち着く。
だけどもそれは。
今の私にとっては情欲を燃え上がらせる行為。
ただでさえ治療のために裸に近い姿のユウタに抱きしめられていて。
すでに我慢は限界を迎えている。
「で、でもっ!」
それでも私は拒んでしまう。
本当なら拒みたいとは思わないのに。
ずっとこうなりたかったと思っていたのに。
だってこれじゃあ。
また私はユウタに押し付けているようで。
一方的に迫っているようで。
「迷惑…じゃ、な―」
そこで言葉が止まった。
唇に。
ユウタの指が添えられていたから。
ユウタはその指を離し自分の唇の前に移動させる。
何も言うな。
そう言っているような姿。
それで、ユウタは私に言った。
私の、枷を外す言葉を。
本能を解放つ言葉を。
私の望んでいた言葉を。

「いいよ。」

ユウタは呟いた。
「ユウタ…っ!!」
私は止まらない。
止まるつもりもないから。
これをどれほどまで待ち続けたのだろう。
この瞬間を。
この時を。
ずっと待ち望んでいた。
私はすぐさまユウタの頬を両手で包み込む。
離れないように。
逃げ出さないように。
でも、それはただの杞憂で。
ユウタは私の背にまわした右腕を戻し、右手を私の手に添えた。
私の想いに答えてくれるように。
微笑んで。
そして、ゆっくりと。

―唇を重ねた。

「んっ…っ。」
「んむ…。」
ただ重ねるだけ。
触れ合わせるだけのむず痒いキス。
本当なら貪るようにもっと深く求めたい。
もっと激しく淫らなキスをしてみたい。
でもそれはだめだ。
重症をおっているユウタには刺激が強すぎる。
体に響くような激しいものは出来ない。
そう、だから…出来る限り抑えないといけない。
いけない、はずなのに。
すっと身を離すユウタを、ゆっくりと唇を離したユウタを。
追いかけるようにその唇に吸い付いた。
「んむっ!?」
「んんっ♪」
私の目の前にはユウタの驚いた顔があり、しかし理解したように静かに瞼を下ろす。
安らかな顔。
頬を赤く染めたユウタ。
私も同じように瞼を下ろした。
もっと味わうために。
この行為をこころゆくまで堪能するために。
唇から伝わる柔らかな感触。
あの指で止められたときに感じたものよりもずっと柔らかい。
ただ唇を重ねているだけ。
その行為が私の胸を満たしていく。
罪悪感なんて冷たい気持ちじゃない。
温かな気持ちを募らせていく。
これで舌をユウタの口に入れたら…どうなるのだろう…?
それは魔物の欲望。
これ以上の快楽を、快感を求める貪欲な本能だった。
本当は抑えないといけないのに。
落ち着いて、ユウタの負担になるようなことはしちゃいけないのに。
私は本能に従った。
「ふぅんんっ♪」
「むっ!?」
閉じた唇の隙間をなぞるように舐めて、そのまま潜り込む。
そうして滑るように私の舌はユウタの口内へと侵入した。
そのまま伸ばせば触れ合う。
熱を持つ、湿ったこれ。唇とはまた違う柔らかさのもの。
これがユウタの舌だろう。
私はそれに私の舌を絡ませた。
「ふむっ…ん♪ちゅ、んんん♪」
「ん…ふむっ。」
それにユウタは合わせるように舌を動かす。
こすり合わせて絡み合わせ。
舐めあい、弄り、押し付けあって。
唾液が流れ、啜りあう。
深く、深く。
より深い口付けを交わす。
「ちゅ…ふっ♪んんっ♪ふむぅ♪」
「ん…んむ…ん。」
本来口付けに味なんてものはないだろう。
それなのに、とても甘く感じられる。
どんな甘味でもこの甘さを表現することは出来ないぐらいに。
アルラウネの蜜だって、ハニービーの蜂蜜だって敵わないくらいに。
もっと欲しく、もっと求めてしまうくらいに。
甘くて、それでいて気持ちいい…っ♪
舌が痺れて、頭の中が蕩けてしまいそう…♪
こんな感覚は初めてだった。
あまりにも良すぎて夢中になってしまう。
私のとユウタの唾液が混ざりあい、唇の端から垂れていく。
垂れる唾液さえ欲しいと思ってしまう。
欲しい…欲しい…!
ユウタが、欲しい!
もっと深く。
もっと近く。
もっともっと、ユウタが欲しい!!
「ふむむっ♪」
腕をユウタの後頭部へとまわして引き寄せる。
そしてさらに不覚まで貪りあう。
ああ…こんな、こんな激しいの…っ♪
本当は…しちゃいけないのに…ユウタの負担になっちゃうのにィ…っ♪
やめることなんて出来そうになかった。
何もかも満たされる行為なのに。
私の欲望は更なる快楽を、これよりもずっと先のことを望んでいる。
体の奥から広がる熱は。
胸の奥から燃える気持ちは。
ユウタという一人の男の人を求めている。
その私の求める男は。
やはり優しげに私に触れる。
そっと。
右手で頬を撫でたかと思えば頭に添えられてゆっくりと撫でてくれる。
それがまた心地いい。
そして左手は私の体を撫でていく。
ゆっくりと。
それがもどかしくも気持ちいい。
ユウタに触れられているという事実が私をさらに昂ぶらせる。
頬を、肩を、腕を、背中を、お尻を撫でていく。
その体温が温かい。
温かくて、気持ちがいい。
触れられている部分が溶けてしまいそう…♪
そのまま撫でていた左手は私の胸に添えられた。
「んんっ♪」
ただ包み込むようにしているだけ。
ただ添えているだけのユウタの手。
まだ揉まれてもいないのに気持ちいい。
服越しに手のひらから伝わる体温が私の胸を蕩かしそう…♪
そんなことをされながらも舌の動きは止まらない。
むしろさっきよりもずっと激しく動いている。
今度はユウタの舌が私の口内へと侵入してくる。
その舌を私は唇ではさみ甘噛みをしたり、私の舌とこすり合わせたり。
啜ったりして存分に味わう。
そうやって長くキスをしているとユウタの手に力が込められた。
入った力の分が私の胸へと伝わる。
ユウタの手が、私の胸を揉んだ。
「ふむっ♪」
あまりの気持ちよさに私は唇を離してしまった。
それにユウタは心配そうな顔を向けてくる。
キスで興奮して真っ赤になっている顔でそんな表情を浮かべてくる。
「痛かった?」
その言葉に私は首を振った。
痛いんじゃない。
あまりにも、良すぎる。
その温かさが。
その優しさが。
その温もりが。
ユウタという存在が。
どれもが私を昂ぶらせる。
その昂ぶりを言葉に出来ないほど甘い快楽が私を満たす。
「いい…からぁ…♪」
かろうじて出せた声は蕩けたもので。
私自身こんな声を出せるんだと知った。
「全然、いいからぁ…だから―」

―もっと…して♪

その言葉にユウタは嬉しそうに微笑んでくれた。
「おう。」
そう短く答えて再び手に力を込める。
込められた力が私の胸に伝わった。
「んはぁっ♪あぁ…っ♪」
乱暴ではない。
荒々しいものじゃない。
痛みを感じさせるものではない。
優しい手つき。
撫でて揉んで。
擦って包んで。
甘い痺れが私の体中を駆け抜ける。
ユウタの手が動くたびに私は唇の隙間から蕩けた声を漏らす。
そこからユウタの動きが変わる。
親指の腹がある一箇所を撫でた。
胸の先端。
私の乳首。
擦るというよりも一瞬だけ擦るような仕草だったがそれは先ほどまでの甘い痺れよりもずっと強い痺れを感じさせる。
「ふっぁああっ♪」
声が我慢できない。
あまりの気持ちよさに我慢なんてものが動でもよくなってしまう。
もっとして欲しいと、求めてしまう。
先ほどはユウタの負担にならないようにと我慢するつもりだったのに。
ユウタ自身がその我慢を決壊させていく…。
あのときユウタは私の誘惑を耐えていた。
体を寄せて甘い吐息を吹きかけて。
ユウタの理性を壊しにかかったのに、壊れなかった。
今はその逆の状況。
私は今、激しくユウタを求めないように我慢しているのに。
それが、これほどまでに難しいことだとは思わなかった。
「ん。」
するりと。
ユウタの手が私の肌と服の間に滑り込む。
流れる水のように。
そうして服越しではなく、ユウタの肌と私の肌が触れ合わさった。
「はぁぁあっ♪」
ただ、直に触れ合ったというだけなのに。
ただそれだけのことなのに。
触れているという事実が心地よい。
直接伝わる感触が、直に伝わる体温が。
とても、気持ちいい…♪
もっと触れてもらいたい。
ユウタにもっと触って欲しい。
そう思った私はゆっくりと服の止め具を外して広げる。
普段よりも前面を大きく肌蹴た姿。
その姿のままユウタに抱きついた。
「おわっ!フィオナ!?」
「ユウタぁ♪もっとしてぇ♪」
先ほどよりも触れ合う面積が広がった分、ユウタの体温をとても感じる。
ああ…温かい。
落ち着いて、心地よくて。
ほっとして、安心できる。
だからこそ私の情欲は燃え盛る。
そんな私に抱きつかれているユウタはやはり優しそうに微笑んだ。
微笑を浮かべたと思ったらその顔が近づいてきて…。
「ん。」
頬に口付けを落とす。
「ふぁっ♪」
ぞくりとした。
悪寒にも似た感覚が背筋に走った。
すごい…っ♪
唇を重ねたときとはまた違った気持ちよさに本能がよりいっそう燃え上がる。
そのままユウタの顔は下がっていき私の首に。
「あぁん…♪」
私の肩に。
「んっ。」
そして私の胸に。
「ぁあっ♪」
今まで出一番強い快楽が体中を流れた。
なに…これぇ…♪
こんなに気持ちいいとは思わなかった。
その理由はわかっている。
相手が、ユウタだから。
私のことを考えていてくれる、優しいユウタだから。
だから、ここまで気持ちいいんだ…♪
そのままユウタは私の胸に何度もキスをする。
そのたびに甘い快楽は私の体を駆け巡る。
何度も、何度も。
電気が体に流れているみたい…♪
ユウタから与えられる快楽に身を任せて味わっていると太ももあたりに何か感じた。
硬く、熱いものを。
不思議に思って視線を下げればそこにあるのはシーツを押し上げる何か。
ユウタの体をまだ半分覆っているシーツがそこだけ山になっている。
あれは…。
私はすぐさま体を浮かせてユウタの半身を覆うシーツを取り払った。
「わっ!?」
いきなりのことにかユウタは驚いた声を上げたが私の意識はそことは別のところへ向けられていた。
ユウタの下半身。
シーツを取り払われてあらわになったかと思えばそうではなく。
ユウタが履いていたこの世界のものとは違う下着が現れた。
お風呂に一緒に入ろうとしたときに見たあれ。
その下着はやはり内側から何かが突き上げていて盛り上がっていて先端は既に湿っているのか色が違う。
それと同時に。
体からシーツが取り払われたことによりユウタの匂いが部屋に充満した。
男の人の匂い。
いや、ユウタの、ユウタだけの匂い。
それがまた私の欲望を掻き立てる。
理性なんてものはもうないに等しい。
私を駆り立てるのはユウタが欲しいという本能だけなのだから。
「ユウタ…脱がすね…♪」
「ちょっとっ!?」
慌てたユウタだけど今ユウタは十分に動ける状態じゃない。
だからこそ好都合。
私はすばやくユウタの体を隠す最後の布を取り払った。
「っ♪」
「フィオナ…っ!」
ああ…これが…。
これが…ユウタのなんだ…♪
今ようやく初めて目にするユウタの男の人の証。
力強く反り返った先端が可愛いピンク色のそれ。
どくどくと脈打つ様は今にも爆発してしまいそうで。
先端からは物欲しそうに透明な液体を垂らしていて。
とても可愛らしく、とても愛らしい…っ♪
そして何よりも。

―欲しい…っ♪

早くユウタと繋がりたい。
男の人の証を私の女の証とすり合わせ、重ね合わせたい。
そうして愛して愛されたいっ♪
私は傷付けないようにそうっと優しく包み込む。
手のひらが。
ユウタに触れた。
「っ!」
すごい…熱い…。
手のひらから伝わる熱い脈動。
赤く燃えているかのように感じる。
それでいて、とても硬い。
まるで鋼鉄のように。
少しさすってみる。
ユウタがしたように体温を馴染ませていくように。
「ぁ…っ!」
苦悶の声。
何かに耐えるような声を小さく漏らしたユウタを見てみると浮かべているのは泣き出しそうな表情。
それでいて真っ赤になって耐える顔。
痛いの…?
いや、そうじゃない。
気持ちいいんだ…。
私だって一応それくらいのことは知っている。
何度も学んできている。
男の人にとってこの部分が一番敏感だということぐらい、理解している。
その証拠に手を動かせばびくりと震えた。
私が…ユウタを気持ちよくさせてあげてるんだ…♪
その事実が欲望に更なる拍車をかける。
上下に擦って、時折先端を撫でたり、裏筋をなぞる。
「ふっ………ん…ぁ……ぅぁっ!」
声を出すまいと唇を硬く結んでいるユウタ。
それでも快楽に耐えることは出来ないのか小さく切なげな声が漏れている。
それがまた私を昂ぶらせる。
でも。
ある想いが私を止めた。
このまま擦ってあげて、ユウタを気持ちよくさせてるのは良いかもしれない。
でも、だ。
ユウタの精。
やはり一番最初ぐらいは膣で受けたい。
最も深く、一番奥で。
口で味わったり、このまま出させてあげるのも良いけど。
やっぱりそれ以上にユウタが早く欲しかった。
肌蹴ただけでまだ着ていた服を脱ぎ捨て、ユウタのお腹に手をついて上に跨る。
脱いだときに気づいたが既に私もぐしょぐしょだった。
体は正直にユウタを求めている。
そしてそれは心にも言えること。
腰を下ろして愛液を塗りつけるようになぞりあげた。
「ふぅ、んん♪」
「ぁあっ!?」
熱くて硬いユウタが擦れて快楽生まれる。
先ほど胸を愛撫して、キスしてもらったのとはまた違う。
比べ物にならないほどの膨大な快楽。
これ以上のことをしたら…どうなっちゃうんだろう…♪
私は蕩ける思考でそんなことを考えながら腰を揺らす。
もっとユウタと擦り合わさるために。
愛液が伝わり濡らしていく。
とてもいやらしく淫らな光景。
それを目にしてさらに気持ちが昂ぶる。
私は入り口を先端に合わせる。
「うぁあっ!!」
今までで一番ユウタが大きい反応を示した。
我慢しきれないのか体が震えている。
「どう…♪」
聞くまでもないことかもしれないが聞いてしまう。
わかっていてもやはり心配だから。
気持ちよくなっているのは私だけじゃないかと心配だから。
そんな私を前にユウタは震えながらにも言う。
「すごい…良すぎ……っ。」
私はリリムなのだから男の人に快楽を与えることは簡単にできる。
私の姿を見せただけで魅了でき、見つめたままで相手を果てさせる事だって出来るぐらいに。
それでも。
魅了の効かないユウタが感じているということが。
ユウタというたった一人の存在が喜んでくれていることが。
リリムとしての力なんて関係なく嬉しくなってしまう。
私自身を心の底から昂ぶらせてくれる。
「ユウタ…♪」
赤い瞳を向けると黒い瞳は優しそうに見つめてきた。
「フィオナ…。」
名前を呼ばれ、そっと頬に手が添えられる。
上半身だけ起こしたユウタは何もいわない。
勿論私も何も言わない。
だってもう言葉なんて要らないから。
この先何をするのか、わかっているから。
あとはこのまま腰を下ろすだけでいい。

―ただ、少し怖いけど…でも、ユウタとなら…。

私はユウタを見て頷くとゆっくりと腰を下ろす。
そして。
ユウタを私の中へと導いた。

―体内に突き破るような音が響く。

体に駆け巡るのは快楽ではなく、痛み。
先ほどまで感じていた気持ちよさが嘘だというかのような激痛だった。
「痛っ!」
「っ!フィオナ!?」
痛みに顔をしかめつつユウタを見れば浮かべるのは驚愕の表情。
それも、当然かもしれない。
私はリリムでサキュバスの最高位で、そして淫魔。
男性の精がないと生きていけない存在。
それなのに。
私は純潔だった。
ユウタと体を重ねたことが、初めて男の人と体を重ねたことだった。
「痛いって…まさか…初めてなのかよ…!?」
「そう、よ…。」
痛みに震えながらも手を突いて体はしっかりと支える。
それもユウタの負担にならないように。
私の頬に何か水のようなものが伝う。
それは涙だった。
悲しいから流しているんじゃない。
痛いから流している…だけど。
それ以上に、嬉しい。
ユウタとやっと繋がれたことがとても嬉しかった。
「キスだって…ユウタが、初めてなんだから…っ。」
「っ!」
浮かんでいるのはやはり驚愕の表情。
リリムだからって男と体を重ねたことがないのはおかしいことだろう。
それで何度もクレマンティーヌにからかわれたこともあったぐらいだし。
それでも、私は決めていたんだ。
夫となる男の人に捧げようと。
「…後悔、してないのかよ。こんな…とりえもないようなオレが初めてで…。」
「そんなの…するわけないでしょっ!」
後悔なんてするわけがない。
やっと繋がれて何を後悔することがあろうか。
ユウタと繋がれて、どう後悔するのだろうか。
だって、私は…私は―

「―ユウタのことが、好きなんだから…っ!!」

「っ!!」
言えた。
一番言いたかった言葉。
罪悪感で押しつぶされていた私の本心。
ユウタが私のそばにいなくなって気づかされた気持ち。
私が、ユウタという一人の男の人に抱いた感情。
やっと、言うことが出来た。
やっと伝えることが出来た。
私の気持ちにユウタは。
「あ、え…っと…。」
戸惑っていた。
顔を真っ赤にして、どうすればいいのかわからないように。
そこでクレマンティーヌの言葉が脳裏に蘇ってくる。

『おそらく蔑まれた経験があったのだろうな。』

蔑まれた。
嫌われていた。
そしてユウタはこの城にいる魔物娘達から逃げていた。
それは。
今まで好意を向けられたことがなかったからじゃないのか?
蔑まれることばかりで誰かの気持ちに恐怖していたんじゃないか?
だから、ユウタは。
好意を受け止めることに不慣れなんだ。
優しくすることは出来ても。
好意を向けられることに慣れていない。
そんなユウタがまた愛おしく感じる。
思わず抱きしめ、再びキスをしてしまうくらいに。
「んむぅっ!?」
「んんんっ♪」
好き。
好き。
大好き。
あの時はただ男の人としか認識していなかった。
ユウタなら私の純潔を捧げてもいい、そう思っていた。
でも、今は違う。
ユウタだからこそ捧げたい。
ユウタだからこそ、したい!
だって私は―

―私はユウタのことが好きだから。

「んむぅ♪好きぃ♪ユウタぁ、大好き♪」
キスしながら何度も呟く。
しっかりとユウタに届くように。
私の気持ちを言葉に乗せて。
「んんっ、フィオナっ!」
するりとユウタの手が私の手を包んだ。
そのままどちらともなく指を絡め、まるで恋人同士のように手を繋ぐ。
恋人。
その言葉に、指を絡めていることに胸が高鳴った。
指先から伝わる手の甲の感触。
熱くて、硬い。
この手でユウタは守ってくれたんだ。
時には体を張って。
時には自ら傷ついて。
時には拳を振るってまで。
また、ユウタが愛おしく思える。
「んちゅ…♪」
名残惜しくも唇を離し、ユウタを見つめる。
ユウタは照れたように笑っていた。
ただそれだけでも満たされる。
これが人を好きになるという感覚なのだろう。
お母様が毎日お父様と体を重ねることはこういうことなのだろう。
初めて理解した。
それと同時に感謝した。
私がユウタに出会えたことに。
ユウタという存在とめぐり合えたことに。
「…んんっ。」
長く時間を置いたからだろう、純潔を捧げた証拠である痛みは既に引いていた。
それどころか痛みは熱になり甘い快楽へと変わっていく。
意識をキスに集中していたからか私の気持ちを伝えていたからか気づかなかった。
見てみればユウタのオチンポはまだ半分ほど残っている。
私の膣にまだ納まりきっていない。
それじゃあ…。
これで…動かしたらどうなるのだろう…♪
さらに奥へと誘ったらどうなるのだろう…♪
ただ動かなくてもじわりとした快感が広がってくるのに、これ以上したら…♪
そう考えただけでぞくぞくする。
早速動き出そうとする私だがそこで動きを止めることになった。
どうして?
それはユウタが私の動きを遮るように声を出したから。
「ちょっと、待った…。」
「…?どうしたのユウタ?」
「いや、情けないんだけど…もう少し待ってくれない?すぐに動かれると…その、出る…。」
恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながら言ったその言葉。
それはユウタの限界が近いということだろう。
さっきまで手で擦っていたのだから近くなっていて当然かもしれない。
それなら長く体を重ねてるために少し止まっていたほうが―

―しかし、その考えはすぐに打ち消された。
―ユウタの言った一言によって。

「こういうこと…経験、したことないんでさ…っ。」

「…え?」
今、ユウタは何て言った?
経験したことない…?
それは…体を重ねたことがないということだろうか?
誰とも交わったことがないということだろうか?
それじゃあ…。
「ユウタにとって…私が初めて…なの…?」
「そう。オレも嬉しいんだけど…その…我慢できそうにない…。」
笑みを浮かべても苦悶に耐えるような表情は変わらない。
いや、苦悶に耐えているのではなく…それは快楽に耐える表情。
そしてその快楽は私と体を重ねることによって生じていて。
私がユウタに快楽を与えているようなもので。

―そして、それがユウタにとって初めてなわけで…!!

ぞくりとした。
欲望がさらに燃え上がった。
本能がにたりと笑った。
おそらく私自身も似たような表情をしているだろう。
もしかしたらいやらしい笑みを浮かべているかもしれない。
嬉しい。
ユウタにとっての初めてが私ということが。
とても嬉しい。
それに、欲しい。
ユウタのだという証拠が。
初めてという印が。
私がユウタにとって初めての相手であるという証が。
欲しいっ♪
だから私は考えるよりも体を動かした。
ただ単調な動き。
腰に力を込めて下げたというだけの動きだった。
それでも。
ユウタのオチンポは私のオマンコに入っていて。
繋がっていて。
そのような動きをすれば当然さらに入ってくるわけで…♪
「はあぁぁぁあああああぁ♪」
「っ!?ぁああっ!!!」
純潔よりもずっと奥。
まだ何も入ったことのないところまでユウタのものが肉を掻き分けて入ってきた。
硬くて熱いユウタのオチンポが。
私のオマンコに締め付けられながらも奥へと奥へと侵入してきて。
粘膜を、肉壁をゴリゴリと擦りあげて。
こつんと。
一番奥へとぶつかった。
「ぁあっ♪」
「んぁっ!?」
それは今まで感じていた痛みを一瞬で忘れさせるほどの感覚だった。
ユウタのオチンポの先端と、私のオマンコの一番奥。
子宮がキスをしたことによる快楽は今まで愛撫で与えられていたものの比ではない。
意識が弾けそうな。
更なる高みへと押し上げられそうな。
そんな、快楽だった。
「はぁあああぁあああああああっ♪」
何……これぇ……♪
一人では絶対に味わえない至高の快感に。
好きな人だからこそ与えられる最高の悦楽に。
私は足をユウタの腰に回して、尻尾まで絡めて腰を押し付けた。
これ以上入らないのはわかっている。
だから、これ以上抜けないように。
それは体内でも同じだった。
子宮の入り口がユウタのオチンポの先に吸い付く。
離さないように。
さらに密着するように。
「フィオナ、ぁっ!?ちょっと…ぁぁあっ!」
その行為にユウタは我慢の限界だったのだろう。
既に熱くたぎっていたオチンポは限界を迎えたのだろう。
どくんと、私の中でユウタが跳ねた。
大きく暴れるように。
そして、流れ込んできた。
「っ!!ああああああああああああああああああああ♪」
熱く、激しく、荒々しく。
それでも、優しく。
それは、ユウタのオチンポから放たれて流れ込んできた。
それがなんだかは知識で知っている。
見たことはない。
触った事も。
その匂いさえも。
それでも教えられたから知っている。
本能的にわかっている。
それが、私達の食料となるものだから。
それが私達の求めるものだから。
そして、それが。
ユウタの証となるのだから。

―これがぁあ…♪ユウタの、精液ぃ………♪

どくどくと流れ込んでくるユウタの精液。
あまりの勢いに子宮の奥をノックする。
そのたびに私の意識は快楽一色に染め上げられ、高みへと何度も押し上げられる。
子宮を満たしていくユウタの証。
私の体に注がれると同時に私を満たしていく。
それは肉体的に。
今まで精を求めずにいられず、魔力を切らしてしまったこの体。
それが一気に満たされていく。
枯渇していたものが潤っていく。
まるで水一滴もない砂漠の地が一気に海に変わってしまうような。
とてつもない量の魔力へと変わって私を満たしていく。
そして精神的に。
ユウタの証。
それも、初めてという一つしかない証。
それを私に注いでもらったことが嬉しかった。
胸の奥から、心の底から。
充足感が広がってくる。
すごい…くる…♪
たった一度精を出したぐらいで満たされる。
髪の毛の先からつま先まで全て魔力が巡って満たされた。
満たされたけど…。
満たされず、逆に貪欲になる本能が私にはあった。
もっと…欲しい…。
満足したけど…満足できない!
これほどの精を一度味わったくらいでやめられないっ!
今まで散々我慢してきた。
数日なんてものじゃない。
一週間以上、ずっと我慢してきたんだ。
お母様から魔力を分けてもらうのさえ我慢して。
ユウタとしたいとずっと思っていたんだ。
だから、今更私に我慢が出来るわけがない。
これほどまでの精を注いでもらって止まれるわけがない。
やっとユウタと繋がれて、やめられるわけがない!
だから私は沈めた腰に力を入れ、引いていく。
離れたくないとばかりにオマンコが抱きつき絡みつきこすれる感覚がまた私を高みへと誘う。
そしてその感覚は。
ユウタにも同じような快楽を感じさせているということで。
「ぁああっ!フィ、フィオナっ!?」
焦ったような驚いたような表情で私を見るユウタ。
顔を真っ赤にさせて…愛らしい…♪
だがその表情は何かに怯えるようで。
私が腰を下ろすことを恐れているようみたいで。
自分の知らない快楽に戸惑っている様子だった。
それでも、私は―
「ユウタぁ♪もっと、するね…♪」
快楽に蕩けた声で囁くと一気に腰を沈める。
「おいちょっと―」
ユウタの静止の声なんて聞こえなかった。
聞こえていたのに、快楽が一気に感覚を遮断したから。
痛みのない、オマンコを擦る感覚から。
一番奥の子宮にキスする感覚から。
生じた快楽は先ほどとは比べきれないほどの量で私の体を駆け巡る。
「あっぁはあああああああああああああ♪」
「〜っ!!!」
嬌声を上げる私とは逆に声を押さえ込もうと歯を食いしばるユウタ。
シーツを硬く握り締めて耐えているようにも見えた。
そこで思い出す。
確か男性は一度射精したらしばらく休まないといけないと。
インキュバスならその必要はないだろうけどユウタは人間。
そして、ユウタは初めて。
初めての相手がサキュバス、それも最高位のリリムだ。
そんな私が与えている快楽はとんでもないものだろう。
初めてのユウタが耐え切れるほどのものではないだろう。
体にも相当な負担がかかってしまう。
それ…なのに…。
ユウタを気遣わなきゃいけないのに。
残っていた理性は欲望という炎により蒸発してしまった。
ただ一度腰を動かしただけで全てが焼ききれた。
私は本能に従って何度も腰を打ちつける。
足はユウタの背にまわして。
尻尾はユウタの足に巻きついて。
そもそも十分にうごけないユウタに私から離れようなんてないとわかっていても。
さらに深くまで繋がれるから。
もっと奥まで誘えるから。
「っ!!ぁあっ…んっ……く、ふっ………っ!!」
ユウタは絶対に声を出すまいと唇を固く結ぶ。
快楽に悶えた声を出すのを好んでいないのだろうか。
でも、その行為がまた愛らしい。
「ふむ♪」
「むっ!?」
だからユウタの固く結ばれた唇に私は唇を重ねた。
結ばれた唇の隙間を舌でなぞってぬるりと侵入する。
「むー♪んんー♪れろ、ちゅっ♪」
「んっ、ぷはぁっ!っぁくぅっ!んんんっ!?」
何度も何度も腰を打ちつけて。
愛液と精液が混ざってぐちゅぐちゅといやらしい音をたてて。
口からは唾液をだらしなく垂らして。
それでも手は恋人のように握って。
私はユウタと交わり続ける。
部屋に響くは淫らな肉と肉のぶつかる音。
あまりの大きさに部屋の外まで聞こえているんじゃないかと思ってしまうほどに。
また音の大きさは行為の激しさを物語る。
「ユウタっ♪ユウタぁ♪好き…大好きぃ♪」
「フィオナっ!激し…くぁっ!!」
「あぁあっ♪は、ぁん♪好きぃい♪」
うわごとのようにその名を呼んで。
熱に浮かされたように好意を囁いて。
快楽に蕩けながらも抱きしめて。
一方的に腰を打ちつけていると変化があった。
ずんっ、と。
私の子宮を貫くような衝撃が伝わる。
それは、ユウタのオチンポがついたことによるものだった。
「ひゃぁあっ♪」
「フィオナっ!」
どうやらユウタが腰を動かしたらしい。
動くのもつらい体なのに。
全快から程遠い状態なのに。
片手を私の腰に添えて。
私の動きに合わせるようにユウタは腰を動かした。
私を受け止めるように。
私に応えてくれた。
また、涙が出そうになる。
ユウタのどこまでも優しい心に。
自分のことなんてどうでもいいというユウタの意志に。
「ユウタぁああ♪好き、なのっ♪好き、ぃ♪」
向かい合って、抱き合って。
キスを何度も交わして。
片手は指を絡めて握り締めて。
私はユウタを求める。
何度目か啄むようなキスをしていると雄太がするりと抜けていった。
口を私の耳もとに持ってくるように。
耳にでもキスをするのだろうか。
蕩けた思考ではそれくらいしか考えられなかったがそれでもよかった。
ユウタにしてもらうことは何でも嬉しい。
それが私を求めていることだから。
だけどユウタは私の予想とは違ったことをしてくれた。
耳に口を近づけて。
触れるだけのキスをするように。
そうして、ユウタは―

「―フィオナ…好きだ…っ!」

言った。
私の言ってもらいたかった言葉を。
「ふぁあっ♪」
その言葉を聞きたかった。
町を歩けば確実に言われるその言葉を。
どんな男の人からでもない。
たった一人。
ユウタから、言って欲しかった。
ユウタの口から聞きたかった。
その言葉を聞いて、耳から流し込まれて。
私の体は震え上がる。
あまりの嬉しさに。
耳から…快楽を流し込まれているんじゃないか、そう思えるくらいに。
背筋に快楽とはまた違ったものが走る。
甘く、とても甘い気持ちが。
それでいて、とても温かい気持ちが。
胸の奥から湧き上がり全身へと広がっていく。
その気持ちは私の体に反応を示して。
ユウタのオチンポを全てくわえ込んだオマンコがきゅうきゅうと締まった。
「っ!!フィオナっ…そんなにしたらまた……ぁっ!!」
びくびくと震えるユウタのオチンポ。
それがどういう意味だかさきほど既に理解した。
ユウタは限界が近いんだ…♪
また、私の中に出してくれるんだ…♪
それがわかればいい。
私はユウタを抱きしめた。
「いい、からぁ♪もっと、出してぇ♪ユウタのせい、えきで、いっぱいに、してぇ♪」
「っ!!」
きゅんきゅん疼く私のオマンコ。
ユウタのオチンポの形が見なくてもわかるほどきつく抱きしめて離さない。
そんな中でユウタは。
「っ!また……ぁあっ!!!」
どくん、と。
二度目の射精をした。
「ひゃぁああああああああああああああああああっ♪」
意識が弾けた。
高みへと押し上げられていた意識が、爆発した。
目の前が真っ白になるほどの快楽に私も達していた。
出てるぅ♪
ユウタの精液がいっぱい、出てるぅ♪
一度放てば量だって少なくなるはずなのに。
それでも二度目に放った量は一度目にも劣らない。
満たされていた子宮の中にさらに流れ込んでくる。
質だって変わらない。
むしろ一度目のほうが劣っていたんじゃないかと思うほど。
精液は子宮をさらに満たして、精は私の肉体を満たしていく。
「あっはぁ♪まだ、でてりゅ♪」
どくんどくんと長く続く射精。
人間がここまで出来るのだろうか、ユウタの体は大丈夫なのだろうかと心配になってしまうが、それも全て快楽に染め上げられる。
オマンコは更なる精を求めて蠢き搾り取るような動きでユウタのオチンポを刺激して。
それに答えるかのようにユウタのオチンポも精液を吐き出してくる。
気持ち、よすぎる…っ♪
「はぁ…はぁ…。」
抱きしめあった体勢で荒くなった息を整えるユウタだが私の中にあるオチンポはまだ硬い。
既に二度も精を放っているというのにだ。
普通の人間ならこれぐらいではへばるところだろう。
でもそれはユウタがそこまで性欲があったということか。
いや、それだけではないだろう。
私がユウタが萎えるのを許さないんだ。
もっと快楽が欲しいから。
もっとユウタが欲しいから。
オマンコは貪欲に蠢いてユウタの情欲までも刺激する。
「フィオナ…っ!」
ユウタは優しげに私の名を呼んだ。
何かに耐えるように顔を真っ赤にして。
体のほうに負担をかけているのか、それとも快楽に耐えているのかわからない表情で。
その表情がまた愛おしい。
「ユウタぁ♪」
私は蕩けた声で彼の名を呼んで、また口付けた。
もう何度目かわからないほどにキスをしている。
でも、まだ足りない。
もっと、欲しい。
もっとキスしたい。
もっと体を重ねたい。
もっと精液が欲しい。
もっと快楽が欲しい。

―もっとユウタと愛し合いたい…!!

私のオマンコの中でいまだに鋼鉄のような硬さと燃えるような熱を持つユウタのオチンポ。
これならまだまだ愛し合えるだろう。
ユウタの片手が私の胸に添えられた。
そのまま優しく撫でるような動きはしない。
胸の先端を指の腹で刺激する。
指を使って胸の形を変えていく。
「はぁあっ♪」
ぞくりと走る、甘い疼き。
ユウタの黒い瞳に、闇のように深いその中に情欲が渦まいている。
ユウタもその気なんだ…♪
そのことが私を体の奥から熱く疼かせる。
互いが互いを燃え上がらせる。
さらに情欲を掻き立てるように、湧き上がらせるように。
そんな疼きを感じながら私は行為を続行させ、ユウタともっと愛し合おうとした、そのときだった。

―そこで、音がした。

大きな音が。
私はその音に聞き覚えがある。
だってその音は以前にも聞いたことのあるものだったから。
私の部屋のドアが開く音だったから。
それも、いつものようにあけるだけの音じゃない。
大人数が押し寄せてドアが開いてしまったときの音だった。
「っ!!?」
「!?」
私とユウタはすぐさま音のするほうを見た。
そこにいたのは―
「―…まさかと思って戻ってきてみれば…怪我人相手に何してるのですか…っ!?」
「ずいぶんとまぁお盛んじゃのう。見ているこっちまで疼いてしまうわ♪」
「流石に初めてくらいは譲るってあげようとは思ったが…ふふふ、いけないな。これほどのものを見ると私もしてみたくなってしまう♪」
エキドナのエリヴィラ。
バフォメットのヘレナ。
ヴァンパイアのクレマンティーヌ。
その三人がいた…。
「っ!!貴方達なにしてるのっ!!」
「何って…のう?」
「覗きだが?」
言い切った!
この二人、はっきりと言ってきた!
二人をよそにエリヴィラはするすると滑るように移動してきてベッドに上がった。
そのままユウタの隣に来る。
手には、薬が入っているのだろうビンを持って。
「魔法では流石に限界があるのでお薬をお持ちしました♪さぁ、ユウタ君口をあけてください。口移しで飲ませてあげますよ♪」
「いやいやいや!?エリヴィラ!?今の状況わかってる!?」
ユウタは大慌てで身を引こうとするが、出来ない。
だっていまだに私と繋がっているんだ。
それに今のユウタは十分動ける体ではないのだから。
それを好機と見てかエリヴィラは畳み掛けるように身を寄せてきた。
「大丈夫ですよ、苦くても苦味が残らないように舌で流し込んであげますから♪」
「その発言の意味、わかってる!?」
「さぁ、口を開けてください♪」
「フィ、フィオナっ!?」
ユウタは困ったように私を見てきた。
流石の私もこんな状況になるとは思わず困っていたがユウタが見たことで我に返る。
何呆然としていたんだ、私は。
こんな状況で何をしてるんだ。
私はすぐさまユウタを抱きしめ、皆に見せ付けるようにする。
「フィオナ!?」
「だめよっ!ユウタは私のなんだから!!」
口移しで薬を飲ませようとするエリヴィラに。
倒れこんだままニヤニヤするヘレナに。
壁に寄りかかり妖艶な笑みを浮かべるクレマンティーヌに。
私は威嚇しユウタを自分のものだと言うように見せ付ける。
私の胸にユウタの顔を抱きしめて、離さない。
「むーむー!?」
胸で苦しげに声を上げるユウタ。
くすぐったくてこれもまた心地よいのだが今はその心地よさを堪能している暇はない。
ユウタから少しでも離れれば彼女達はきっとユウタに襲い掛かる。
皆して頬を赤くして、息を荒くしている様子からそんなことは簡単にわかる。
興奮している。
発情、している。
どうして?
そんなの、簡単だ。
私とユウタの行為を見ていたから。
それに当てられているのだろう、皆目がぎらついている。
本当なら行為を見られていたということに恥ずかしがるべきなのだろうがそんな気持ちにはなれなかった。
というか、それ以上にユウタを守らないといけないという気持ちになった。
私の大切なユウタを。
この三人の魔の手から。
「ぷはぁっ!!フィオナ!苦しいって!」
私の胸から力ずくで脱出したユウタ。
そのわずかな隙間を。
ユウタが私の手から離れたそのときを。
狙って動き出し、先手をきってきたのはエリヴィラだった。
するりと抱きつき、実を寄せて。
持っていた薬をどこかにやって。
薬を口移しで飲ませる気なんてない、ただのキスをしようとしている。
「それではユウタ君、こちらを向いて…♪」
「いやいや!だからね、エリヴィラ!?」
大慌てで身を引こうとしたところにまた一人。
ユウタのおなかの上に乗ったヘレナ。
「んふふ〜♪勇者を武器も持たずに倒せる存在など、わしの兄上に相応し過ぎるのう♪どうじゃユウタ?わしの兄上になってくれんか?」
「ヘレナ!?」
右から来ているエリヴィラに。
前から割り込んできたヘレナに。
私といまだ繋がったままで後ろになんて下がれないユウタに逃げ場はない。
それでも身を引こうとユウタは空いている左側に体を傾けたのだが―
「―大量の出血をしてなお、リリムの相手が出来るとはすばらしい体力だ。それほど体力が有り余っているのなら…私たちの相手も出来るのではないかい、ユウタ♪」
すとんと、クレマンティーヌがベッドに腰を下ろした。
ユウタの行く手を阻むように。
ユウタを自分の体で受け止めるように。
「ク、クレマンティーヌ!?」
大慌てで体を元の位置に戻すユウタだが…それは逆効果だろう。
だってそんなことをすれば逃げ場は必然的になくなる。
右も左も。
前も後ろも。
どこにも逃げられなくなる。
「!ちょっと貴方達!!何やってるの!!」
「何って…見てのとおりじゃろう?」
「これからユウタ君と愛の契りを…♪」
「君は既に二度出してもらったんだ、十分だろう?」
そういう問題じゃないでしょうに。
「だめよっ!!ユウタは怪我して―」
怪我していたところを襲い掛かった私が言えることじゃなかったので慌てて口をつぐむ。
そんなことを言えばこの三人は確実に揚げ足を取ってくる。
そのままねちっこく言ってきて最終的には自分達も襲わせろと言うことだろう。
だからここは、三人でも反論できず、襲うことを躊躇わせる言葉を言うべきだ。

「―ユウタは、私のことが好きなのよ!」

流石にこの言葉は響いたのだろう。
三人の動きが止まる。
…ように見えただけだった。
実際大して止まらなかった。
「別にそれがどうかしたかい?ユウタが君を好きでも私達はユウタが好きだからね。」
「え、ちょっと!?」
その発言はどうやったら出せるのだろうか。
感心してしまう。
「いやいやいや!待った!クレマンティーヌ、待った!」
流石にユウタも納得いかないだろう。
大慌てで手を振った。
本当は動くだけでもつらいはずなのにそんなこと微塵も感じさせずに。
「流石にそれはね!ないと思うんだよ!オレのいた世界でも一夫一妻が普通だったからさ!」
「安心せい、ユウタ。わしらは普通に一夫多妻でもいけるからのう♪」
「普通!?安心できねーよそれ!愛せる自信もないし!」
「それなら私達が愛してあげますよ♪」
「エリヴィラー!?それどういう意味かわかってるよね!?」
だめだと思った。
そんなことをされてはたまったものじゃない。
ようやくユウタと体を重ねられたのに。
ようやくユウタと気持ちが通じたというのに。
そんなことをされたらユウタのことだ、その好意にどうやってでも応えようとすることはわかっている。
「だ!だめよ!!それだけは絶対にだめ!!」
だからこそここで止めなければいけなかった。
だがそこで身を乗り出してくるのは―クレマンティーヌ。
口ならばここにいる誰よりも上の存在が動く。
「ふふふ、フィオナ。そうは言っても、私は違うだろう?」
「?」
何が言いたいのだろう?
他のものと何が違う?
違うところなんてあるのだろうか?
同じようにユウタに襲い掛かろうとしているだけじゃないの。
「私は君とユウタのよりを戻すための手伝いをしてあげたろう?」
「?そんなことしてないじゃないの。」
「おや?それじゃあ気づかなかったのかい?それとも話されていなかったのかい?」
…?
何を話されるの?
「あの時、君が屋上に来たときだ。」
意地の悪い笑みを浮かべるクレマンティーヌ。
何か、言ってはいけないようなことを言うつもりだろうか。
なぜだか気まずそうな顔をしているユウタが目に映る。
そして、彼女は言った。

「―ユウタは君の傍にいたのだよ?」

「…え?」
なんと言った?
さっき、クレマンティーヌは…なんて言った?
「聞こえなかったのかい?ユウタは私と君の会話を全部聞いていたのだよ。」
「……え?」
「テーブルの下に、ね。いたのだよユウタは。」
可笑しそうに笑うのを堪えているクレマンティーヌに対してユウタは気まずそうに私から目をそらした。
あさっての方向へと向いて、私と目を合わせないように。
「ユウタを隠してやって、君の気持ちを聞かせてやって、それでようやくユウタは君の気持ちに応えてくれた。そうだろう?それなら私の働きがあったからこそじゃないのかい?」
…え?
それって…どういうこと?
それじゃあ…ユウタは私の会話を聞いていた…?
私とクレマンティーヌの…あの会話を?
私が…泣き出してしまった…あれを?
そこでクレマンテーヌはそっとユウタの頬に手を伸ばした。
思い切り見せつけるように。
「その分のお礼をもらいたいものだね。ぜひとも濃厚で熱いものを頼むよ、ユウタ…♪」
「クレマンティーヌっ!?」
「あ、それなら。」
そう言ったのはエリヴィラ。
クレマンティーヌの言葉に思いついたように顔を上げた。
「私もユウタ君を治療した分のお礼が是非もらいたいです♪フィオナ以上に愛してください♪」
「ちょっと!エリヴィラ!?」
「ああ、それならわしだってユウタとフィオナ殿を運んだのう。お礼されるには十分じゃ♪」
「おい!ヘレナ!?」
三人してユウタに抱きつこうとしたそのとき、またドアが開いた。
ガチャリと、少しばかり控えめに。
その音と共に姿を現したのは―デュラハンのセスタ。
銀色の長髪をたなびかせて、手にはフルーツの入ったバスケットを持って。
誰が見てもわかるお見舞いに来た姿だった。
セスタと目が合い、彼女は遠慮しがちに尋ねる。
「フィオナ様、あの…ユウタの容態はどうで―」
固まった。
私を見て。
私達の姿を見て。
私は先ほどまでユウタとしていたのだから裸は当然。
そしてそれはユウタにもいえること。
だけど、それだけじゃない。
エリヴィラ、ヘレナ、クレマンティーヌ。
その三人がいつの間にか服を脱いでいた。
普段から三人して露出の多い姿だから大して変化はないけど、それでも。
私の部屋で、私のベッドの上で。
裸になっている五人がいて。
その中で私とユウタは繋がっていて―
「―何やっているんですか!?」
手に持ったバスケットを取り落として、フルーツを床に転がして。
セスタは顔を真っ赤にして叫んだ。
普段から理知的な彼女らしい反応だった。
だが、その反応に付き合いなれている者がここにいた。
ユウタの上に居座る、私の親衛隊の隊長。
ヘレナ。
「セスタか。ちょうどいいタイミングじゃ!ぬしもこっちに来て混ざれ!」
「ちょっと!何を言っているんですか隊長!」
このバフォメット、目の前に守るべき対象がいるというのに平然と無視してる。
本当に私の親衛隊の隊長なのだろうか?
私のことなんてお構いなしだ。
「同僚に勇者のことを頼んで見舞いに来ればこれはいったいどういうことですか!」
「見てのとおりじゃろう?」
「見てのとおりって!!」
「なんじゃ騒がしいのう。そんなに言うぬしだってそうじゃろう。首の固定具、わざと忘れてきたのじゃろう?」
「っ!!」
そこで気づいた。
セスタの首。
また、固定具がなくなっていることに。
やはりセスタも皆と同じようなことを考えて…!
「ほれ、そんなとこに突っ立っておらんでぬしも来い。何なら首を外せばいいじゃろう♪」
「そ、それは…っ!!」
もじもじしながらどもるセスタ。
何度も私を見てくるが…迷っているのだろう。
私と繋がっているユウタと、しようとしていることに。
「迷っておらんでさっさとこんか!」
「そうですよ、セスタさん。皆で一緒にユウタ君としましょう♪」
「素手で勇者を倒す彼だ、私達の相手なんて余裕でしてくれることだろう♪」
「いやいや、待った!皆待ってくれよ!」
気づけば他の二人まで調子に乗っていて。
私というものが目の前にいるのに。
ユウタを明らかに困らせているのに。
それでも襲い掛かろうとしていて…。
私は思わず、叫んでいた。


「貴方達ーっ!!!」


私の声が魔王城に大きく響いた。


















「まったく、こんな大事なときまでいったい何をしていたのですか貴方は。」
魔王城のとある一室。
呆れ顔で言いつつも椅子に座った私の背後で髪を梳かすエリヴィラ。
それでも手は優しげに私の髪を整えていく。
大事なとき。
エリヴィラの言ったように今日は私にとっての大切な日だ。
人生でたった一度の晴れ舞台。
「人生一度の晴れ舞台を何で寝過ごしかけるのですか?」
「仕方ないでしょ。昨日だってユウタとしたんだから。」
「いつまでしているつもりですか。さっさと私にもユウタ君とさせてくださいよ。」
「させるわけないでしょ!!」
本当に何を言い出すのだろう、このエキドナは。
毎度のことというか、ここのところずっとユウタとする機会を狙っている。
これじゃあ落ち着く事だって出来やしないじゃないの。
「はい、完成です。」
エリヴィラの言葉に私は立ち上がった。
さらりと白い長髪がゆれ、目の前にあった鏡に映る。
乱れているところはない。
服だってきちんとしている。
普段しなくてもいい化粧だって今日はしている。
とはいっても、口紅ぐらいだけど。
これから始まる晴れ舞台のためだ、乱れているところがあってはいけない。
そして最後に私はヴェールを被る。
「綺麗ですね。」
エリヴィラは言った。
鏡に映る、私の背後で。
うっとりとした表情で。
「私も着てみたいものですよ。」
「それなら着てみればいいじゃないの。」
「それじゃあそのままユウタ君と挙げさせてもらいますね♪」
「そんなことさせるわけないでしょ!!」
最近彼女は積極的になったとよく思う。
いや、彼女だけじゃない。
私の男だというのにそれでも平然としてユウタに襲い掛かってくる娘達が増えた気がする。
やはり素手で勇者を倒したということは魔界に広まっていたらしい。
未婚で魔王城に住んでいない、遠くのほうに住んでいる娘達も一度見ようと、あまつさえそのまま行為に及ぼうとする者だっているくらいだ。
このままいけば優しいユウタのことだ、思わず気持ちを受け止めてしまうかもしれない。
そうなったら大変だ。
だけど、そんなことはさせない。
そのための意味も、今日の晴れ舞台には含まれているのだから。
「それでは行きましょうか。ユウタ君ももう待っているでしょうし。」
「そうね。それじゃあ行きましょ。」
普段着ている露出の多い服ではない服を纏った私はエリヴィラの後に続いて部屋を出た。


部屋を出た私とエリヴィラを待っていたのはセスタだった。
「フィオナ様。どうぞこちらに。」
「ええ。」
私はセスタに先導されて歩き出した。
エリヴィラも一緒についてきている。
目的地はこの城の広場に通じる扉。
舞台はその広場。
とても広くて城に勤めているものたちを全て集めても余裕なほどの広さをもつところ。
そこへと向かって私は歩く。
背中にある翼で飛ぶことなんてせずに。
しっかりと歩いていく。
「早いものですね。」
歩いているとセスタが口を開いた。
「ユウタがこの世界に来てもう半年ですか。」
「ふふ、そうね。」
半年。
私がユウタをこの世界へと召喚して既に半年が経った。
確かに早い。
ユウタが私の目の前に現れたときのことを昨日のように思い出せる。
でも、ここまで来るのに数え切れないほどの出来事があった。
私から一方的だけど喧嘩して。
それで仲直りして。
いろんな娘達から逃げるユウタを捕まえるのに苦労して。
町でデートなんてものもして。
気づいたらお母様とお父様に気に入られていて。
体を張って、守ってくれて。
気づいても平気だと微笑んでいて。
泣いてた私を慰めてくれて。
抱きしめて。
ユウタと笑って、喜んで、そして愛し合った。
数え切れないほど何度も。
男の人を虜にする私の魅了がはじめて効かなかった存在。
私がはじめて惹かれた人間。

―私の、初めて愛した男の人。

「…っと、見えてきましたね。」
そこでセスタが足を止める。
つられて私とエリヴィラも止まった。
私達の先。
城の庭へと通じる扉の前。
そこにいたのはヘレナと―

「おう、フィオナ。」

そう言って手を上げる私の想い人がいた。
見ているだけで吸い込まれそうになる闇のような瞳。
触れればそのまま沈んでいきそうな影のような髪。
深く先の見えない、光泣き夜のような服。
正しく漆黒を纏った彼が―

―黒崎ユウタがそこにいた。

学生服を着ている姿。
ただ、普段の姿とは違いその上に黒いマントを羽織っていた。
セスタ達のようなデュラハンが羽織るようなものではない。
ユウタのためだけに作らせた漆黒のマント。
その姿はいつもとはまた違う雰囲気を漂わせる。
すぐさま私はユウタのそばへと行く。
「すごい綺麗だよ。フィオナ。」
「ユウタ…。」
嬉しい。
その言葉は何度も言われているのに一向に嬉しさを損なわない。
それどころか言われるたびに私の心を喜ばせてくれる。
他の誰でもない、ユウタ一人に言われるだけで舞い上がってしまう。
「まったく遅いのじゃフィオナ殿。」
む、いいところなのに…。邪魔しないでよね。
私は不機嫌そうにヘレナを見た。
「仕方ないじゃないの。」
「待たされた身にもなってみんか。時間がかかりすぎなのじゃよ。」
「だって。」
「そこまでにしておいてくれよへレナ。」
そこでユウタが割ってはいる。
「女の子なんだから、時間がかかるのは仕方ないだろ?晴れ舞台ともなれば時間掛けたいもんだって。」
そう言ったユウタは私の手をとった。
私は応えるようにそのまま腕を絡める。
恋人がやるように。
普段からしているように。
でも、今日のはまた違う。
「まったく、ユウタは甘いのじゃ。」
「まったくですね。その甘さを私にも分けてもらいたいものですよ、ユウタ君。」
「いや、オレは一途だから。」
「セスタだって気があるのにか?」
「っ!!隊長!!」
「よりどりみどりではないか。男としてこれ以上の幸せなんてないぞ?」
「ちょっと!!変な話しないでよ!!」
「あーもう!扉開けてくれって!」
私とユウタは並んで扉の前に立つ。
この先が庭。
この扉の向こうに、この扉の先に。
私とユウタの新しい世界がある。
「仕方ないのう。セスタ。」
「はい。」
ヘレナとセスタが扉の前に立つ。
そして扉に手を掛けたところで、私はユウタに言った。
「ねぇ、ユウタ。」
「ん?何?」
「ユウタは…こんなことになって後悔してない…?」
そう聞くと呆れたように息をつく。
「今更聞くことでもないだろ。」
「でもっ!」
ユウタならありうる。
優しいユウタなら、ありえてしまう。
これは私の我侭の延長で。
ユウタをつき合わせているだけではないのかと。
ユウタを引っ張りまわしているだけじゃないかと。
不安になってしまう。
それに、時々ユウタは遠い目をしている。
故郷の世界を思ってか。
故郷の家族を想ってか。
そんなユウタを見るたびに心が痛んでしまう。
でも、ユウタは。
「嫌なわけあるかよ。むしろこっちが聞きたいくらいだって。フィオナはオレとで後悔してないのかよ?」
「そんなことあるわけないでしょっ!!」
するわけがないと何度も言ってきた。
ユウタ以上に好きになる人なんていないのだから。
ユウタ以上の男の人なんていないのだから。
「それなら、オレもないよ。あ、でも流石に学生服でっていうのは勘弁してもらいたかったけどね。」
ほんとはタキシード着て来たかった。
そう言って自分の着ているがくせいふくを引っ張った。
「あ、でも。」
ユウタは続ける。
「少しばかり残念なことはあるな。」
「え…何?」
「自慢、出来ないこと。」
彼は楽しそうに言った。
「せっかくこんな美人と一緒にいられるのに、それを家族に見せびらかすことが出来ないのは残念だったな〜ってさ。」
冗談めかしてユウタは言った。
それは私のことを想って言ってくれたのだろう。
そんなこと、今までの経験で十分理解できる。
だから、また嬉しくなってしまう。
「二人とも、主役なのですからちゃんとしてくださいね。」
エリヴィラの声で私とユウタは前を向く。
そして―
「開けるぞ。しっかりせいよ。」
「それでは、どうぞフィオナ様。ユウタ。」


―扉が開いた。


桃色の花びらが舞い散る庭。
そこには観客用の沢山の長椅子がある。
その椅子に座っている皆拍手で私達を歓迎する。
この城にいる者たちだけではなく、城の外に住まう者まで集まって座っていた。
見知った顔もあれば知らない顔もある。
それでも皆の目的は同じ。
私とユウタを祝いに来てくれている。
観客席の間に敷いてある真っ赤な絨毯の上を私とユウタは歩き出した。
空から降ってくる花びらの下をゆっくりと。
一歩一歩踏みしめて。
そうやって歩いた先に待っているのはいつもどおり露出の多い赤いドレスを着ていたクレマンティーヌ。
本当なら祭服を着た牧師なんだろうけど彼女がこの役を買って出てくれた。
私とユウタは彼女の前にたどり着く。
「妬けてしまうね。」
そう言ってクレマンティーヌは笑った。
「自分でこの役を買って出たのはいいが…複雑な心境だよ。」
「そうなの?」
「そうさ。目の前で堂々と誓われるのは妬けてしまうよ。」
「それじゃあしなければ良いじゃない。」
「そうはいかないさ。君は私にとって妹のような存在だからね。」
もっとも、とクレマンティーヌは続ける。
「ユウタにいたっては想い人なのだがね♪」
その言葉にユウタは困ったように笑う。
流石のユウタだってその言葉をこんな場面で言われたら困るだろう。
「この場でその台詞は…。」
「ふふふ、好きな相手には意地悪してみたいものでね。やめて欲しかったら私とも挙げてくれよ♪」
「だめに決まってるでしょっ!!」
まったく。クレマンティーヌといいエリヴィラといい。
皆してユウタを取り合って私が大変じゃないの。
これじゃあ式を挙げた後も大変そうね…。
「それでは早いが誓いを始めようか。」
ことんと、クレマンティーヌは咳払いをして私達を見据える。
観客達も静まり、この場に静寂が訪れる。
その中でクレマンティーヌは静かに口を開いた。
「汝フィオナ・ネイサン・ローランドはこの男黒崎ユウタを夫とし、良き時も悪しき時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他のものに依らず、死が二人を分かつまで愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを誓いますか?」
「誓います。」
迷うわけなく、私は誓う。
ユウタを愛するということを。
ユウタに添い遂げるということを。
隣のユウタを見た。
それに気づいたのかユウタも私を見返す。
「汝黒崎ユウタはこの女フィオナ・ネイサン・ローランドを妻とし、良き時も悪しき時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他のものに依らず、死が二人を分かつまで愛を誓い、妻を想い、妻のみに添うことを誓いますか?」
ユウタは言った。
クレマンティーヌではなく私を見て。
黒い瞳に私を映し出して。
「誓います。」
力強く、はっきりと誓った。
「それでは…誓いのキスを。」
ユウタは私のヴェールを静かに脱がし、肩に手を添えた。
それに応えるように私は距離を縮めていく。
どちらともなく瞼を閉じて。
ゆっくりと、それでも確実に。
待ち望んでいた瞬間。
待ち焦がれたこの時。

―そして、私とユウタの唇は重なった。

周りの参列者から上がる歓喜の声。
あるものは拍手し、あるものは口笛を吹く。
唇を離した私達を見てクレマンティーヌは高々と宣言する。

「ここに、フィオナ・ネイサン・ローランドと黒崎ユウタを夫婦と認める!!」

続いて上がった声は私達を祝福する言葉。
皆が椅子から立ち上がり、拍手をして口を揃えて言った。

「「「「「ご結婚、おめでとうございます!!!!!」」」」」

結婚式。
たった一度の晴れ舞台。
純白のウエディングドレスに身を包んだ私と。
漆黒のマントを纏ったがくせいふく姿のユウタとの。
二人の愛の誓い。
目を開いた先には嬉しそうにするユウタがいて。
私はそのまま抱きついた。
耳元に口を寄せてユウタに囁く。
「絶対幸せにするわ、ユウタ♪」
私の言葉にユウタは優しげに微笑んだ。
それは違うだろ、と言って。
抱きしめた私を抱き抱き上げて。
皆に見えるように、皆に見せびらかすように。



「幸せにする、じゃなないだろ。

―二人で一緒に幸せになろう…!」

そう言って私とユウタはもう一度キスをした。


花びらが舞い散る城の庭で。
多くの者に祝われながら。
短くも長い時を経て。
存在しなかった出会いを経て。
世界を越えて巡り合い。

私とユウタは夫婦となった。






―これは私とユウタが出会った幸せな物語―















「こうして、純白のお姫様は漆黒を纏った英雄と晴れて結ばれ、末永く幸せに暮らしましたとさ。おしまい。」
そう言って私は本を閉じた。
それは物語。
ある日、白い姫の気まぐれで召喚した者が漆黒を纏った男で。
その男が傷つきながらも姫を守って、そして最後に二人は契りを交わして幸せになるというもの。
物語の内容、モデルは勿論私達。
まったく、いつの間にこんなものを作っていたのだろう。
作者は不明。
いや、予想としてはクレマンティーヌかもしれない。
彼女は長く生きてる分なんでも出来るはずだから。
「ママ〜もう一回読んでよ♪」
「お母様、私も聞きたいです♪」
「もう読んだでしょ?また明日よ。」
そう言って私は二人の頭を撫でた。
そう、二人。
片方は私と同じ透き通るような白い長髪。
もう片方は愛しの彼と同じ黒い長髪。
私達の愛の結晶。
私達の子供だった。
驚いたことに生まれたのは双子。
彼も同じ双子だが、こちらは二人の姉妹。
黒髪で私に似て積極的な姉。
白髪で彼に似て優しい妹。
どちらも私に似ているが彼にもよく似ている。
正しく私達の子供。
双子で、違う髪の色をしていて、それでも二人には共通点がある。
いや、私にも同じことが言える。
それは―

「―ただいまー。」

そこでこの部屋のドアが開いた。
誰が来たかなんて確認するまでもない。
あの優しそうな声。
私の愛する旦那様。
「ユウタ、お帰りなさい!」
そう言って私はユウタに抱きついた。
翼を羽ばたかせて、娘達よりも素早く。
あの日からなにも変わらない姿の想い人。
インキュバスとなって成長は止まったが、それでも逞しさを増した彼。
優しそうな笑みを浮かべ。
温かな抱擁を交わしてくれる私の愛しい男の人。
「ああ、ただいま、フィオナ。」
そう言ってユウタは私の背中に手を回す。
思えば何度こうやって抱きしめられたのだろう。
いつまでもこうしていたくなる感覚は変わらない。
どこまでも落ち着けて、安心できる。
「ヘレナのところに行っていたんでしょ?遅かったけど誰にも襲われなかった?」
「何とか。っていっても、襲われたところで毎日フィオナに絞られてるんだぞ?出せるもん、出せないさ。」
今でも襲い掛かってくるヘレナやクレマンティーヌたち。
既に私達は結婚したというのにそれでも襲い掛かることをやめない。
そんな危険がありながらもユウタは彼女達に接していた。
時にはヘレナのサバトの手伝いをしたり。
時にはエリヴィラの料理を手伝ったり。
時にはセスタの稽古に付き合ったり。
時にはクレマンティーヌのチェスの相手をしたり。
妻という私がいながら、それはあまりいい気持ちはしないこと。
もっと私を見て欲しいというのに。
でも、逆にそうでもしないと彼女達は無理やり襲ってくるだろう。
だから、仕方ないことなんだ。
「あ!ママずるい〜!」
「お母様っ!」
ユウタに抱きついていると二人の娘は同じように飛びついてきた。
二人の共通点。
いや、私も含めた同じところ。

―私達はユウタが好き。

本当なら私だけでも十分なはずなのにヘレナやエリヴィラといったほかの魔物娘達、さらには子供にまで好かれるユウタ。
私の子供らしいというか。
困った娘というか。
思わず苦笑を浮かべてしまう。
それはユウタにもいえること。
ユウタも困ったような、それでも嬉しそうな顔で私達を抱きしめた。
「フィオナはいいけど、二人はちゃんと好きになった相手にしてやれよ。」
「そうよ、ちゃんと想い人を見つけなさい。」
「想い人はパパだも〜ん♪」
「私もお父様ですよ!」
その言葉にユウタは苦笑する。
「年頃の娘はもっと自分を大切にしろよ。」
「してるも〜ん♪」
「してますよ!」
本当に困った娘達ね。
これじゃあ私とユウタの愛し合う時間が減っちゃうじゃない。
二人きりのときは部屋のドアに強力な魔法をかけて誰にも邪魔されないようにしているけど、もしかしたらその魔法も破られる日が来るかもしれない。
私達の娘なのだから、それくらい平然とやってのけそうだ。
それでも、まぁいいかもしれない。
そのときは娘を交えてしちゃえばいいだけだし♪
ユウタに愛してもらえることに変わりないんだし♪
そうは言ってもユウタは自分の娘に手を出すなんてことは絶対にしないだろうけど。
「なんていうか…いいな、こういうのって。」
ユウタがポツリと言った。
「うん?何が?」
「いや、まさかこんな風に家庭を持つことになるなんて思ってなくてさ。」
それは私も同感だ。
このような家庭をもつとは思っていなかった。
二人の娘を産んで。
それで変わらずユウタと愛し合っているけど。
それでも、この日常で、この日々で。
わかっていることはある。
「ねぇ、ユウタ。」
「ん?」
「私、とっても幸せよ♪」
ユウタと出会えて。
ユウタと契れて。
ユウタと子を成して。
ユウタと温かな家庭を築けて。
これ以上の幸せなんてないといえるくらいに。
「オレも幸せだよ。フィオナ。」
そう言ったユウタは微笑んでくれる。
そんなユウタに私は言った。

「愛してるわ♪」

そして、キスをする。
触れるだけの軽い口付け。
流石に娘達の前だから自重はするけど。
「ああ!ママずるいっ!!」
「お母様っ!!」
「…娘達の前じゃ勘弁してもらいたいな。」
「仕方ないじゃない、愛してるんだから♪」
そういう私を困った顔で見て、でも最後はわかったような顔をする。
そして今度はユウタからキスをされた。
「んちゅ♪」
「んっ。」
娘の前だからなんて言ってもかまわずに。
私の想いに応えてくれる。
唇を離したユウタは私に向かって囁いた。

「フィオナ、愛してる。」

その言葉が嬉しくて。
何度言われても喜んで。
何度も交わしたはずなのにまるで初めてするかのように―

―私とユウタはまたキスをした。




HAPPY END



「で、ユウタ♪今日は昨日の倍くらい愛して欲しいな〜♪」
「ばっ!!フィオナ、娘達の前で夜の話すんなっ!」
「パパ〜私にもして〜♪」
「お父様、私にもしてください♪」
「娘に手を出せるわけねーだろっ!!」
11/06/26 20:41更新 / ノワール・B・シュヴァルツ
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■作者メッセージ
別世界から召喚された黒埼ゆうたはこうして魔王の娘フィオナ・ネイサン・ローランドと結婚して末永く幸せに暮らしましたとさ
めでたしめでたし…ということで
これにてリリムルート、完結です!!
意外と長かった!
タイトルの純白と漆黒、実はウエディングドレスと学生服のことをさしていましたw
これで完結はしましたが実はリリムルート、まだまだ終わりません!
現代編も考えております!
その名も
『リリムルート・現代編 浴衣と私とオレと花火』
今度は視点チェンジありの物語
フィオナが現代に来ていたらどうなっていた!?
そんな感じの話を夏の間に書こうと思います!

その前にもエリヴィラとの後日談や街ルートで出てくるクレマンティーヌの話などもあるのでお楽しみに!!

それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました!!

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