連載小説
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五日目、午後(後編)
(今回も作者視点です)


『始まりの森丘・フィールドB→
→始まりの森丘・フィールドC(草原エリア)』

草原エリアを歩き、さらに奥に進んで行ったベルンたちの目の前には風によってサァッと波打つ草が一面に生えた広い野原があった。野原の左はさっきのフィールドから続く大河が流れ、野原を挟んだ大河の反対には見上げるほどの岩壁が剥き出しになっており、その上はさきの森の続きなのか、たくさんの木々があった。

「この草原、どこまで続いてるんだ?」

「きりがねぇな・・・目的地の源泉って、もしかして森ん中だったのか?」(ロック)

「そうだったとしても、ある程度草原エリアを探索してからにしましょうよ。闇雲に探すよりも、分かりやすい場所から潰して行くのがいいわ」(サティア)

サティアの意見に納得したメンバーは、辺りを探し、何かないかと捜索を開始した。


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[探索、開始。探索難度、15]
[ベルン察知点 11、失敗・・・]
[ロック察知点 5、失敗・・・]
[サティア察知点 17、成功!]
[ベーゼ察知点 15、成功!]
[ラトラ察知点 30、成功!]
[ネフィア察知点 10、失敗・・・]
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「うーん・・・なにもないな・・・」

ベルンが河岸をあちらこちらを探すが、なにも見つからなかった。

「ベルン!ちょっと!こっち来て!」

「ん?どうしたサティア?」

一緒に(と言いつつも、少し離れて)河岸を探索していたサティアがベルンを手招きした。ベルンが向かうと、サティアの足元に、綺麗に骨まで食われた魚の残骸であろうものがあった。骨がバラバラになり、頭などはない。すでに乾いているところから、しばらく放置されたものだと推測できる。

「・・・何かが食った跡、だな」

「これ、グリズリーとかじゃないかしら?」

「グリズリー?」

確かに、齧られた形は野生生物が食べたにしては綺麗すぎた。しかし、魔物であると断定できるほどではなかった。

「・・・でも、可能性はないとは言えないな」

「注意しなきゃね」

「そうだな」

(・・・ベルンを攫われたりしたら困るし・・・)

「・・・なんだよ?ジッとこっち見て?」

「別に。さ、もうちょっと探すわよ」

「? おう?」

首を傾げるベルンは、わずかにサティアの頬が赤かったことに気づかなかった。

そのとき、ベルンの視界外から小さな影が走ってきた。


「いい人ー。いい人ー。こっち来てー」


走って来たのは、ラトラだった。
なにか見つけたのか、目をキラキラ輝かせながら、ベルンの服の袖にしがみついた。

「え?なに?」

「きーてー!」

駆け寄ったラトラがベルンの腕を掴み、ぐいぐいと引っ張って行った。引っ張られるベルン本人は頭に?マークを浮かべながらついていった。
ラトラが連れて来たのは、岩壁だった。小さな岩がたくさん積み上がったような場所にたどり着くと、ぺしぺしとそこを叩いた。

「いい人ー。ここ、ここー」

「お、おい・・・あんまり叩くと、この岩、崩れ落ちるかもしれんぞ」

「それよりここー。風通ってるー」

「・・・風?」

それを聞き、ベルンがゆっくり岩壁に耳を近づけた。


『・・・ヒュォォォ・・・』


ほんとにごくわずかだが、空気が抜けるような音を、ベルンは聞いた。

「なかになんかあるのかなー?」

「うぅむ・・・単純に考えると、洞窟って線が考えられるが・・・」

どうやら、この森丘には洞窟があるかもしれないようだ。


「お〜い!ベルンく〜ん!」


その時、ベーゼが降りて来た。どうやら上空から辺りを見回していたらしい。

「ベーゼ、なにか見つけたか?」

「うん、向こうの方に河に支流があるよ。岩壁やら森の木が邪魔で先はわかんないけど、遡っていけば、水源につくんじゃないかい?」

ベーゼが指した方角は、ベルンたちが次に向かうフィールドの方だった。

「ふむ・・・じゃあ、とりあえず適当に探索して、そっちに向かうか。あ、向こうにいるサティア呼んできてくれ」

「ほいほーい」

ベーゼが手を上げて返事をした時、ちょうどロックとネフィアがとぼとぼとベルンに寄って来た。

「ふたりとも、どうだった?」

「ダメだ。なぁんにも見つかんなんなかったぜ・・・」

「僕もです・・・申し訳ありません・・・」

「気にすんなよ。他の奴らがいろいろ見つけてくれたし、そろそろ移動しようぜ」

そうベルンが言って、笑いかけた瞬間。



「見つけました!ご主人様ぁ〜っ♥」



岩壁の上から誰かが叫び、パラパラと石が転がる音とともに岩壁から飛び降りた。

「え?う、うぉわっ!?」

素早く反応したベルンがとっさに飛び退き、落ちてきた魔物娘のボディアタックを避けた。

『びたぁん!』

「へぶちっ!!」

大の字で落ちてきたのは、オークだった。
巨大な両手鎚を担ぎ、簡素な鎧を着ているこのオークががばりと起き上がり、鼻血を垂らしながらベルンを見つめるその顔を見て、ベルンはぎょっとした。

「お、おまっ!?昨日の!!」

「はいご主人様ぁ♥ご主人様の奴隷、『ビィブ』ですぅ♥」


「奴隷だとぉっ!?」(ロック)
「うわぁ・・・過激・・・」(ネフィア)
「いい人・・・Sな人なの?」(ラトラ)

オークのビィブは身体をくねくねさせてベルンにできる限りの色気を振りまく。媚びるようにベルンにすりよるその姿に、ベルンはハッとし、やっとこさ理解した。

(そ、そうか・・・あの時、1体だけ俺が倒したっけ・・・しかもオークは、自分を倒した相手を主人として認める習性が・・・って、ことは・・・)

「ご主人様ぁん♥」

そのとき、さらに岩壁からふたつの影が現れた。

「姉貴ー!見つけましたー!ビィブと・・・あ、奴だ!!!」

「なにぃ!?」

(・・・うーわー・・・)

岩壁の上に現れたのは、ビィブの相方オークに、自称盗賊団頭領のオーガだった。ふたりは岩壁を滑り降り、ベルンたちと対峙するように立った。

「ビィブ!そいつから離れな!」

「えぇ〜・・・」

「我儘言わないの!早く来な!」

「ぶぅ・・・」

ビィブはとぼとぼとオーガの後ろに戻り、もうひとりのオークと並んで立った。

「おいテメェ!ここで会ったが百年目!テメェをぶっ飛ばしてビィブの旦那になってもらうよ!」

「え、姉貴、ホント!?」

「オーガに二言はないよ!」

「いやっほぅ!ご主人様ぁ!もうすぐボクのご主人様になってもらいますから♥」

「俺を置いて話を進めんな!丁重にお断りする!」

ベルンとオーガ一行の漫才が途切れたところで。



「ちょっと待てぇぇぇぇぇぇっ!!!ご主人様ってなによぉぉぉぉぉぉ!?」



サティアが叫びながら乱入し、ベルンの胸ぐらを掴み上げた。

「うげっ!?さ、サティア!?」

「ベルンっ!?また変な関係作って!!なに!?あんたはあちこちの女の子とそーいう関係作りまくってるわけ!?ねぇ!?ねぇ!!」

「うげっ、げほっ、ちょ、喉、しま、締まるって・・・」

「ご主人様に何するんだ!」

胸ぐらを掴んだままベルンをがっくんがっくん前後に揺らすサティアにビィブが叫ぶと、サティアが髪の蛇たちとともにギョロリとビィブを睨んだ。

「あんたこそ、ベルンとどういう関係よ!?」

「ボクはご主人様にハートを撃ち抜かれたのさ!(物理的な意味で)」

なっ!!?

「熱いひと時の中、(ターゲットとして)ボクを選び、(倒そうとして)積極的にボクにアタックしてくれたのさ////」

んがっ!!?

頬を染め、ムチムチした身体をくねらせながら言うビィブの言葉を(カッコ部分は除き)聞いたサティアは、信じられないと言う顔をして女の子にあるまじき?叫びをあげる。

「・・・要はベルンがあの子を倒したって話か?もしかして」(ロック)
「おそらくは、そういうことかと・・・」(ネフィア)
「いい人、災難だなぁ・・・運の悪い人?」(ラトラ)
「それよりそろそろサティアが暴走しそうなんだけど・・・」(ベーゼ)

もう首を締められて顔色がヤバくなって来たベルンに、だんだん顔が赤くなり拳をぷるぷる震わせるサティア。さらに身体をくねらせるビィブに置いてけぼりの他メンツ。



そんな彼らの耳に、大きな咆哮が聞こえた。


『ガォォォォォォォォォン!!!』


『っ!?』(ほぼ全員)

『ぱっ、どさっ!』(サティアが手を離した)
「ぐえっ!?」(ベルン)

ほぼ全員が空を見上げ、ベルンは倒れたまま大の字になって空を見た。


一匹の『竜』がゆっくり旋回していた。


『ガォォォォォォォォォン!!』


「げっ!?ドラゴン!?」
「ややや、やばいっすよ、姉貴!」
「も、もしかして・・・」

慌て始めるオーガ一行。対するベルン一行は顔を引きつらせ、現実が信じられなかった。
竜はゆっくり旋回しながら高度を落とし、岩壁の上に着地した。


『貴様ラハ何ダ!我ガ校ノ生徒ニ手ヲ出スナラ、私ガ相手ニナロウ!』


竜の低く大きな声が響き渡った。

「・・・へ?」

竜の発言に真っ先に口を開いて素っ頓狂な声を出したのは、ベルンだった。


『ココハ学園ノ敷地内デアル!貴様ラノヨウナ野盗ノ輩ハ侵入デキヌハズダ!何処カラ入リ込ンダ!?』


「や、ヤバい、バレた!ずらかるよ!」
「へ、へい、姉貴!」
「え?ちょ、やぁん、ご主人様ぁ!また会う日までぇぇぇ・・・」

オーガ一行はビィブを引きずる形で急いで駆け出した。一応は自称野盗団、逃げ足が早く、あっという間に走って行ってしまった・・・

『グ・・・逃ゲ足ノ早イ奴ラダ・・・君タチ、怪我ハ無イカ?』

竜は岩壁から軽く身を浮かせ、小さく羽ばたきながらベルンたちの前にゆっくり降りた。
その着地直前に、激しくメキメキと音を鳴らしながら竜が縮み、一人のドラゴンになった。

「ふぅ・・・私は生徒会の『ヴァーン・レオパード』だ。パトロール中、君たちを見つけたのでな・・・無事か?大丈夫そうだな?」

ヴァーンが勝手に話を進めてる間、ほとんどの者がポカーンとしていた。

・・・ひとりを除いては。


「もちろん大丈夫です。俺たちは優秀ですから、バッチリです」


キリリと引き締まった顔をして素早く対応したロックに、一同はずっこけた。

「うむうむ。そうか、感心だな。どうやら戦闘自体は回避できていたようだな」

「少々口論になってましたが、ヴァーンさんの手を煩わせずに終わりましたよ。まぁ、俺たちメンバーの力でも、撃退は可能でしたでしょうけど」

(・・・コイツ、なんもしてなかったくせに)(ロック以外全員)

メンバーがじっとりとした目をする中、ロックは黙ればイケメンの性能を最大限に利用し、ヴァーンとの会話に勤しんでいた。

「皆が元気で結構・・・しかし、奴ら、一体どこから忍びこんだのだ?奴らを探し出し、確かめねば・・・それでは皆、冒険講習、頑張るように!」

ヴァーンは素晴らしい跳躍力でまたもや岩壁の上に跳ぶと、メキメキと音を立てて身体を巨大化させる。
深緑の鱗の鈍く光る竜の姿になると、バッサバッサと翼を羽ばたかせ、オーガたちの向かった方へ飛んでいった。

「・・・よし!手応えあり!」

「なんのだよ」

ロックのガッツポーズに、キックで突っ込んだ。


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『始まりの森丘・フィールドC→始まりの森丘・フィールドE』

ベルン一行はフィールドを移動し、ベーゼが見つけた支流を探した。
結果、支流はほどなくして見つけたのだが・・・

「う〜ん・・・」

「これはちょっと登れねぇぞ・・・」

ベルンが頭を抱え、ロックが肩を竦めた。
支流をたどって行くと、岩壁から滝となっていた。岩壁は鼠返しのように反り返り、滝の裏に広いスペースができている。たとえ登ったとしても、反り返りで落ちるか、疲労困憊になるのは明らかだった。
さらに、ひとり、絶対に登ることが不可能なメンバーがいたのだ。

「・・・な、なによ、悪い!?ラミア種で悪かったわね!」

「誰もそんなこと言わねぇって・・・」

サティアは下半身が蛇なため、このような壁は登れなかった。

「いい人〜。この先、行き止まりだよぉ〜」

「川が行く道を塞いでます。これ以上の草原エリアはないかもしれません」

滝以外にさらにフィールドを進む道を探していたラトラとネフィアが帰ってくる。その報告にベルンは腕を組んで悩んだ。

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[マッピングスキルにより、
ルートの時間計算を行います]
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(・・・もうそろそろ日が落ち始めて来た・・・ダンジョンに来たのは昼過ぎだから、もう4、5時間ほど経ってるわけだ・・・1フィールド移動に1時間ほど・・・引き返して森エリアの分岐・・・エリアBに戻るのに2時間くらいか・・・)

ベルンは、ちょうどメンバーが集まったところで話し始めた。


「みんな、ここから戻って、森エリアに行って探索すると、たぶん森に入ったところで日が暮れる。暗い闇の中、森に入るのは危なすぎる。今日はここで拠点を構えよう。ちょうど滝の裏の広いスペースにテントが張れる。何かが生活している形跡もないし、モンスターからも滝で発見されにくくなるはずだ。どうだろう?」

ベルンの提案に、みんなは・・・


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[説得行為、難度 10]
[話術点 10、成功!]
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「いいんじゃねぇの?テント張ってメシ作ってたら夕方になるだろ」(ロック)

「リーダーはベルンでしょ?任せるわ」(サティア)

「異論はないよ。滝の裏で寝るなんて、なかなか体験できないしね♪」(ベーゼ)

「いい人にさんせー!」(ラトラ)

「僕も、賛成です」(ネフィア)


・・・難なく、説得に成功した。


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滝の裏でテントがふたつ張られ、夕食(非常食を料理したもの)をすませたところ、みんな疲れていたのか、すぐにぐっすりと寝入ってしまった。


そんな夜中・・・


『ベルンの男子テント』


『・・・ごそごそ・・・』

(・・・ん?)

テントの中で、なにかが動いていた。
気づいたベルンは、寝ぼけ眼をこすってそっちに目を向けた。

見えたのは・・・



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1、ハッとした顔だった
2、眠そうな顔だった
3、泣きそうな顔だった
4、興奮した顔だった
5、きょとんとした顔だった

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12/05/02 07:48更新 / ganota_Mk2
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■作者メッセージ
注:冒険講習中は無理に寮に帰らなくて良いという校則があります。

今回はプロフィールも質問もなしです。ごめんなさい。

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