連載小説
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最高の宝
「いやぁ〜!前までは赤い糸なんてアホ臭くて信じてなかったけどよ、この身で体験しちまったからには疑う余地も無いよな!昨夜のアレで分かっちまったんだよ!俺とルトは身体の相性もピッタリだってな!その上互いに愛し合ってるときたもんだ!こりゃもう運命としか考えられねぇよな!今朝だって何時もより早く目覚めたんだけどよ、俺の隣に寝てるルトが愛おしいのなんのって話だよ!その寝顔ときたら可愛くて可愛くて、いけないと分かってても唇奪っちまってな!その時に目が覚めて、状況を理解した時のルトの真っ赤な顔ときたら……堪んねぇなぁオイ!」


「…………」
「ん〜?おい、どうしたんだよ?」
「いや……素でドン引きしてんだよ……」
「は?何に?誰に?」
「アンタ以外に誰がいるんだよ……」


ルトと結ばれてから二日後……とうとう出航の時が来た。
俺とキッドは今、それぞれ自分の船の甲板に立ち、出航の準備が終わるまで雑談を交わしてる最中だった。

「おいおい、ドン引きはねぇだろ。アンタだって、嫁さんを愛する気持ちは負けてないだろ?」
「いや、そうだけどよ、俺はそこまで惚気てないぞ。サフィアを愛してる事に偽りは皆無だが、キチンと場の空気は読んでるし、理性も常に保ってる」
「とか何とか言ってよぉ!アンタもインキュバスなんだから、いざ夜になれば理性なんてどっかにぶっ飛んじまってるんだろ?」
「……アンタ、下ネタとか好物だったっけ?」
「魔物ってのはみんなそうだ!」
「……あぁ、そうだったな……やれやれ……」


早速俺はルトへの愛を語ってるところなんだが……どういう訳か、キッドの奴はさっきから呆れ顔を浮かべている。俺の話にも適当な返事しか返さないし……二日酔いか?いや、それは無いか。
同じ話を美千代たちにも聞かせたが、みんなキッドと同じ反応を示して……全く、羨ましいならそう言えば良いのに。素直じゃない連中だな。


「で、そのルトは今どこにいるんだ?そっちの船でも見かけないが……」
「あぁ、ルトなら船の出航準備を手伝ってるところだ」


ルトは今、美千代たちと一緒に船を出す準備を手伝っている。海賊船での研修も兼ねて、今頃帆の張り方とか碇の上げ方とかを学んでるだろう。
本音を言えば、今すぐこの腕で抱きしめたいところだが……ルトの意思を無視する訳にもいかない。我慢するのも、一つの愛情だ。

「あぁヤベェ!なんだかルトを抱きしめたくなって来た!」
「ははは……よっぽど気に入っちまったみたいだな」
「気に入ったもなにも、俺にとってルトは夫でもあり、宝でもある!これから何があろうとも、俺はルトを一生守り続ける!そう決めたんだ!」

昨夜から俺の生き甲斐が一つ増えた。
それは……何が何でもルトを守る事だ。ルトは今まで耐え難い理不尽な暴行を受けてきた。それもモーガンの野郎の勝手な野望の所為で……。
だが、もう二度とそんな辛い目には遭わせない。どんな局面に置かれても、俺がルトを守ってみせる!一生ルトを幸せにしてやる!そう決めたんだ!

「そうか……ちょうど良い。なぁ、急に話題は変わるんだが……」
「ん?」
「あの髭のオッサン……モーガンだが……」


と、キッドはいきなり話題を変えてきた。それも、ルトを虐待してた憎きモーガンについて……。


「……あいつがどうかしたか?」
「あぁ。あいつはまだ生きているが……アンタは何時か、あの野郎が再び目の前に現れる日が来ると思うか?」
「そりゃあ……そうだろうよ。だが、その時もまた返り討ちにしてやるさ!」

問題のモーガンだが……あいつはまだ生きているから、これから復讐の為に俺たちの前に現れる日が来てもおかしくない。その時はルトにも手を出すだろう。
だが、そんな真似はさせない!もしも再び俺たちに襲ってきたら、返り討ちにしてやるさ!その時は自慢の鉄砕棍で、身体の骨を粉々にしてやるぜ!

「いや、悪いがアンタは返り討ちなんて真似は出来ない。絶対にな」
「……あ?どう言う意味だ?」

今の台詞は聞き捨てならないな。まるで俺がモーガンに負けると……そう言う意味でも聞こえる。
だが、このキッドの不敵な笑み……何やら別の意味があるような気がしてならない。

「言葉通りだ。その理由がこれに書かれている」

そう言うと、キッドは着ているコートのポケットから何やら丸められた紙を取り出した。一見すると、何枚もの紙が重なられて、細かい文字がギッシリと並べられている。
と言うことは、それは……。

「それは……新聞か?」
「ああ、それも今朝発行されたやつだ。投げるから受け取れよ」
「おっと!」

そしてキッドは持ってる新聞を俺に向かって投げ渡した。クルクルと空中で弧を描きながらも、丸められた新聞は俺の片手で受け止められた。

「その表表紙を見てみろ」
「?」

俺は言われたとおりに新聞を広げて、一番最初に載られてる一面の記事へと目を配る。
そこには……!


「なっ!これは……!」


そこには……俺が知ってる男の顔が……!





『教団の仮面を被った極悪犯罪者、モーガン・ギルフを逮捕!』





「モーガン……!?」


両手首に鉄の手錠をはめられ、教団の兵士に連行されてる顔面蒼白のモーガン。
その表情はまるで、もう二度と救いが来ないと悟ってるような、絶望を漂わせているように見えた。
だが……逮捕って、どう言う事だ?なんで自分と同じ教団の人間に捕まったんだ?


「あの戦いの後……自力で国に帰ってきたところを取り押さえられて、即行で逮捕されたらしいんだ」
「自分の仲間にか?なんで急に……」
「モーガンがルトを奴隷として何処かの国へ売り渡そうと企んでたのは知ってるか?」
「あぁ、勿論」

知ってるも何も、ルト本人から聞いた話だ。

「で、過去にモーガンはその計画を、自分の部下に話したらしい」
「あぁ、ルトも同じ事を話してたな。確か、奴隷の話を部下に持ちかけてたとか……」
「そうらしいな。だが、その部下に話したのが間違いだった。その新聞にも書かれてるが、どうやら部下はモーガンに何かしらの弱みを握られてて、虐待の件についても上層部の人間に報告しないよう強いられてたらしいんだ」
「マジか……」

モーガンの奴、あろう事か自分の部下まで駒にしてたとは……呆れて言葉が出ない。自分の欲だけの為に自分より格下の人間まで巻き込むとは……なんて愚かな人間なんだ。


「だが、奴隷の話が出てきた時は流石に戸惑いを隠せなかったらしくてな、数日間も悩んだ末、ついに上層部に密告する覚悟を決めたんだとか。それでモーガンが海へ出た隙に、物的証拠となる奴隷売買の契約書を上層部に見せて……後はその記事の通りだ」
「……自業自得ってのは、まさにこの事を言うんだろうな」
「そうだな。まぁ、主神に仕える身でありながら、自分より弱い子供を虐待したり、あろう事か人間を奴隷として扱おうとしてたんだ。おまけに違法ギャンブルに麻薬の密輸まで……やりたい放題やってたからな。主神の顔に泥を塗った以上、教団には戻れないだろうし、もう人生に栄光が射される日は二度と来ないだろうよ」
「ああ、俺もそうあって欲しい。こいつには残りの人生を冷たい牢獄の中で過ごして欲しいくらいだ」


モーガンは教団の名を振りかざし、金と名誉だけの為に周囲の人間に惨い仕打ちを与えた。ルトだけじゃなく、自分の部下にまで……。
その結果、皮肉な事にモーガンは同じ教団の人間に裏切られて、己の汚名を世界中に知られてしまった。周囲の人間からの信用も失い、社会的な立場も無くなった。モーガンはこれから暗くて寂しい一生を強いられる事になるだろう。
当然の報いとも言えるが、一つだけ断言出来る事がある。
悪は必ず滅びる。まぁ、俺も海賊だけどな。


……ん?待てよ?


「ギャンブルに麻薬って……アンタ、なんでそこまで知ってるんだ?それも新聞に書かれてる事なのか?」
「いや、それは新聞に書かれてない。ちょっと前にカラステングの情報屋から買った情報でな、その新聞が発行される前から、奴の悪行については色々と知ってたんだ。あの時もモーガンの顔を見た時にピンと来たんだ。こいつで間違いないってな……」
「へぇ……情報屋なんてあるんだ」
「あぁ、情報屋の詳細はその新聞に挟んであるから、一度は目を通しておいた方がいいぞ」
「あぁ、助かる」

カラステングの情報屋か……情報収集に長けてる魔物だから、恐らく貴重な情報も沢山揃えてるんだろうな。今度会ってみるか。


……ん?待てよ?顔を見た時にピンと来た?
それって、以前からモーガンについては少しだけ知ってたって事だよな?
今思えば、モーガンを放置しようって提案したのはキッドだった。モーガンの悪行を事前に知っておいて……。


……と言う事は……まさか……!


「アンタ……こうなる事を見通してたのか!?教団に捕まると予測して……だからあの時放置しようだなんて言ったのか!」
「……言っただろ?これ以上手を出す理由も無いってな」


新聞の記事を指で叩きながら問いただすと、キッドはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
こいつ……あの時から計画通りに事を進めてたのか!教団に逮捕させる為に、金品と食料だけ奪って、後は海流に任せて国へ帰して……!
今になってようやく知った。
このキッドって男……侮れない。今回の一件で敵にならないで本当に良かったよ……。

「奈々さ〜ん!」
「……はっ!」


と、突然後ろから俺を呼ぶ声が聞こえた。
その声は、俺にとって最も大切な人の……!


「ルトぉ〜!!」
「え、わわわわわ!?」


俺の傍まで駆け寄ってきたルトを咄嗟に抱きしめた。


「あ〜!温けぇ!それに良い香り!」
「な、奈々ふぁ、むぐ、んむぅ〜!」


そのまま抱きかかえて俺の胸に顔を埋めさせた。
あぁ……これヤッベェ……最高だわ……!

「……お〜い、離してやれよ。何か伝えたい事があるらしいぞ」
「あ、そうか」
「ぷはぁっ!はぁ、はぁ……」

キッドに指摘されてようやく気付き、俺の胸からルトを離した。解放されたルトは激しく肩で息をしている。
そんなにきつく抱きしめたか?大袈裟だな……。

「で、ルト、どうかしたか?」
「あ、はい。出航の準備が終わったので、そろそろ号令を出して欲しいとの事です」
「お、そうか」

どうやらもう何時でも出航出来るらしい。視線を後方へ移すと、美知代と武吉を始めとした俺の仲間たちが出航の号令を待ちかねている。

「キッド〜、こちらも出航出来ますよ」
「おうサフィア。スマンな」

そしてキッドの嫁であるサフィアがキッドの隣まで駆け寄ってきた。どうやらあっちも出航の準備が終わったようだ。大勢の海賊たちがキッドの号令を待っている。

「さて……一旦ここでお別れだな」
「ああ、だが生きている内にまた会えるさ。その時までにくたばるんじゃねぇぞ」
「アンタもな!」

ここでキッド海賊団ともお別れになる。一緒に戦って、一緒に酒を飲んで……色々と有意義な時間を過ごせた。
また何れ会う機会が訪れるだろうが……その時までに俺はもっと強くなっておこう。助けてもらった借りも返さなきゃならないしな!


「よし、それじゃあ……」
「あぁ……オメェ等!」
「野郎ども!」


俺とキッドはそれぞれ背を向けて、仲間たちに向かって大声で号令を出した。



「出航だぁぁぁぁぁぁ!!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」



二重に重なる雄叫びと同時に、それぞれの船の帆が一気に張られた。船が少しずつ前方へ進み、それぞれの航路方向に分かれて迂回される。


「オメェ等ー!またどっかで会おうぜー!」
「おう!その時まで達者でなー!」
「色々とお世話になりましたー!」
「あなた達もお元気でー!」


ゆっくりと船を進めながら互いに別れの挨拶を交わした。
姿が見えなくなるまで、ずっと…………。







「……ふぅ……行っちまったな……」
「はい……」


キッドたちを見送ってから数分後、姿が見えなくなった後でも俺はルトと一緒に船の甲板で海を眺めていた。
目の前に広がるのは何の特徴も無い海原。これだけだと味気ないが、穏やかな潮風のお陰で心地良い気分になってきた。

「さて……これから色々と忙しくなるぞ。やるべき事が増えたからな」
「え?やるべき事?」

俺の呟きに対して、ルトはキョトンとした表情を浮かべながら首を傾げている。
よく分かってないみたいだが……全部ルトにとっても大事な事だ。

「色々あるぞ。ルトとヤッたり、海で戦ったり、ルトとヤッたり、島を探索したり、ルトとヤッたり、あとルトとヤりまくる!」
「……あの、ヤるって何の話ですか?」
「セックスに決まってんだろ。毎日やるぞ」
「えぇ!?あ、あれを毎日!?」
「なんだ、嫌か?」
「い、嫌って訳じゃ……ただ、身体が持つかどうか……」
「心配ねぇよ!死ぬ訳じゃねぇし!」

無事にルトを夫にした訳だし、後は本能のままにズッコンバッコンしまくってインキュバスにさせれば、第一の目標は達成だ。
俺の血を浴びさせてインキュバスに変える方法も考えたが、そんなグロテスクな方法だとルトの虐待のトラウマを増幅させちまう。
無難にセックスしまくった方が良いし、何より俺もヤり甲斐があるってもんだ。無事にルトがインキュバスになったら……ククク♪


「……何ニヤニヤしてるのよ、気持ち悪い」
「み、美知代テメェ!誰が気持ち悪いって!?」
「あはは……まぁまぁ、落ち着いて……」


急に俺をからかってくる美知代と、捲くし立てる俺を宥める武吉。
この二人はある意味、夫婦生活においては先輩みたいなものだからな。これから色々と助言を貰う時があるだろう。


「まぁ、ヤりまくるのは良いけど、船の仕事も忘れちゃ駄目よ?あなたは一応船長なんだし」
「一応ってなんだ、一応って!?つーか、お前だって人の事言えねぇだろ!酒に酔って毎回武吉と酒乱セックスしまくって仕事に手を出さなかったら堪ったもんじゃない!」
「わ、私は酒乱じゃ……」
「酒乱だろ!この前の宴会だってカリバルナのビールを飲みすぎて、仕舞いには大衆の中で服を脱ごうと……」
「キャー!キャー!言わないで!思い返すだけで死ぬほど恥ずかしいんだから!」
「あはは……二人とも落ち着いて、落ち着いてよ……」
「……あ……あはは!」

すると、俺たちのやり取りを見ていたルトが突然楽しそうに笑い出した。

「どうした、急に……?」
「いえ、なんだか……嬉しくて……」
「嬉しい?」
「はい、これからもずっと、こんなに優しくて楽しい人たちと一緒に居られると思うと、本当に嬉しくて……!」

そう話すルトは、心を和ませてしまう程の温かい笑みを浮かべている。その笑顔を見て、俺も美知代も武吉も、この場にいる全員が互いに顔を見合わせて笑顔を浮かべた。
そうだな……ルトを大切に想ってるのは俺だけじゃない。美知代も武吉も、船の仲間たちも、みんなルトを仲間だと思っている。ルトには大切な仲間が出来たんだ。ルトにとって、こんなに嬉しい事は無いだろうな。

「ルト君、改めて言うけど、これからもよろしくね」
「僕たちはもう家族みたいなものだ。何か困った事があったら、遠慮なく相談してね」
「……はい!こちらこそよろしくお願いします!」

優しく話しかけた美知代と武吉に対して、ルトは深々と、床に頭が着くかと思うくらいに頭を下げた。
その表情ときたらホントに幸せそうで……あぁ、駄目だ。我慢できん。


「よっしゃぁルト!もっと親睦を深める為に……ヤるぞ!」
「え!?ちょ、ま……はわぁ!」


咄嗟にルトを抱きかかえて、より一層愛を深める為に蜘蛛足を進めた。


「……やれやれ、暫くはあの調子のままね」
「ま、まぁ今は特に何も無い事だし、良いんじゃないかな?」
「ルト君も大変ね。あの身体で性欲旺盛なウシオニの夫になるなんて……」
「まぁね……今度、精力剤でも買ってあげようかな」


背後からコソコソと話し声が聞こえたが、俺は構わずに船長室へと向かって行った……。




============




「はむぅ……ん、ちゅっ……ん、んぅ……」
「うぁ、な、奈々さん……」

日差しが船長室の窓から射し込む中、俺はルトをベッドに座らせて固くなった肉棒にしゃぶり付いていた。
口内でペニス全体を包むように頬張り、時々舌先で裏筋をなぞるように舐めてみる。口内から卑猥に響く唾液の音が、より一層俺の心を昂ぶらせた。

「むちゅぅ……ちゅっじゅるぅぅ!じゅぅ、ちゅるるぅ……」
「うわぁ、あっ!あっ!」

根元まで咥えて勢い良く吸い込んでみる。ルトの身体がビクッと痙攣しているのが伝わり、ちゃんと感じてくれてると分かって嬉しく思えた。

「な、奈々さん、僕もう……!」
「ん……このまま飲むから……沢山出してくれぇ……あむ、ん、ちゅ……ん、んん、じゅるっ!じゅるぅ、ちゅ、ちゅるぅぅぅ!じゅる、じゅるるぅう!」

そうこうしてる内に、早くもルトの方は射精が近くなってるようだ。ベッドのシーツをギュッと握って快感で身悶えている。
このまま口の中に出して貰う為、俺は一気に肉棒を激しく吸い込んだ。

「うぁ、あ!で、出る!」
「じゅ、ん、ちゅぅ……ん、んん!ん……」

それが引き金となったのか、ルトの精液が俺の口内で噴出された。何度出しても濃厚な味は変わらない……口いっぱいに広がるルトの味はやはり最高に美味なものだった。

「ん……ゴクッ……はぁ、ご馳走さん!やっぱりルトの精液は美味いな!」

口の中に溜まってる精液を一気に飲み干した。熱い精液が胃に到着し、身体を更に熱く興奮させる。
思わず唇を舌で嘗め回し、甘味なご馳走を食して満足げに頷いた。

「あの……前から思ってたのですけど……それって不味くないのですか?何時も美味しそうに飲んでくれますけど……」
「何言ってんだ。不味い訳ないだろ。大好きなルトの精液だから、毎回美味しく飲めるんだ」

俺の返答を聞いた途端、ルトは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
やれやれ……こいつの恥ずかしがりやな性格にも困ったもんだ。少なくとも嫁の前では堂々としてれば良いものを……。

「……あ、あの……」
「ん〜?」

すると、何やらルトの方から話を切り出してきた。

「その……いきなり、こんな事を言うのもアレですけど……」
「なんだよ、どうした?」
「えっと、その……ちょっと恥ずかしいですけど……」
「ん?」

初めは恥ずかしそうにモジモジしていたが、やがて決意を固めたような表情を浮かべて口を開いた。


「あ、ありがとう……ございます……」
「え?」


その口から出されたのは……『ありがとう』だった。
だが、俺には礼を言われる覚えが無かった。
何が『ありがとう』なのか……話が見えない。


「な、何が?俺、何か礼を言われるような事やったか?」
「で、ですから、その……!」


ルトは真っ直ぐに俺の目を見つめながら、強くてハッキリとした声で言った。



「僕の事……好きになってくれてありがとうございます!僕を奈々さんの夫にしてくれて、ありがとうございます!僕も奈々さんが大好きです!だからこれからも一緒に居させてください!」
「っ!!」


……こんなに嬉しい事を言われたのは……初めてだ……!


「……んっ!」
「ん!?」


溢れる想いを抑えきれず、俺は返答代わりにルトの唇を奪った。
ただ触れ合うだけの優しいキス。だが、それだけでもルトの温もりを感じるには十分だった。


「……俺の方こそ、夫になってくれてありがとう。俺もルトが大好きだぞ。これからもずっと一緒に居ような……」


唇を離して、両腕で優しく……そしてしっかりとルトを抱きしめる。
俺と比べたらまだまだ小さい身体だが……俺の愛する夫である事に変わりはない。

「……ありがとう……ありがとう……!」


何度も同じ言葉を繰り返し、薄っすらと一雫の涙を浮かべながら、ルトは小さな手を俺の背中に回した。


「……へへ、こうして抱き合うのって良いよなぁ……」
「はい……」




俺の腕に抱きしめられてるのは、一生愛すると決めた俺の夫。
身体は小さくて、歳もまだ若い男。
恥ずかしがりやで、少しばかり涙脆くて……
優しくて、気配り上手で、愛想が良くて……
そして……何よりも固くて強い心を持ってる。


それが……ルトと言う男。
世界でただ一人しか居ない、大切な人。
俺はそんな人を……これから一生守って生きよう。
何があろうとも、ルトを幸せにしよう。
百年経っても、千年経っても……永遠に愛し続けよう。
俺にとってルトは……心から愛せる夫であり……
何にも代え難い……数値的な価値も付けられない……



最高の……宝だから…………!


「ルト……愛してる……」
「はい……僕も……」



過ぎ去る時も頭から消えて、俺たちは暫くの間、しっかりと強く抱きしめあった…………。
13/03/31 22:04更新 / シャークドン
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■作者メッセージ
この後、しっかりと……いえ、しっぽりとヤりました(殴)
だいぶ遅くなってしまって申し訳ありません!やっと最終話まで書き終わりました!
いやぁ、何はともあれ、ルトも奈々と結ばれてハッピーエンドです。これから奈々がルトを幸せにしてくれるでしょう。いや、ホントに長かった……。
そして……もっとエロく書きたい(懇望)

では、最後まで読んでくださった方々、本当にありがとうございました!
次回も……と、その前に……。


<舞台裏での会話>

サフィア「キッド〜、見てください!」
キッド「ん?……サ、サフィア!?どうしたんだ、その格好!?」
サフィア「はい、所謂学生服と言う服です。セーラー服とも言いますね」
キッド「そ、そうか……」
サフィア「……もしかして似合いませんか?」
キッド「いや、スッゲェ似合うよ!あまりにも可愛すぎて見惚れちまって……」
サフィア「まぁ、キッドったら……嬉しい♥」
キッド「……で、なんでまたそんな格好を?」
サフィア「はい、次回の出演もありますので、ちょっと試しに着てみようと思いまして」
キッド「出演?何の話だ?」
サフィア「あら?もしかしてキッドはまだ聞いてないのですか?」
キッド「いや、だから何の話だ?」




サフィア「やるらしいですよ……学園パロディ



キッド「……は?」
サフィア「ですから、私たちを使って、学園パロディ物を書くらしいのです。よほどの反対が無い限り、このまま予定通りに進めるみたいですよ」
キッド「……はぁ!?」
サフィア「あ、因みに私とキッドは本編通り恋仲設定らしいです。パロディでもキッドとラブラブなんて幸せです♥」
キッド「……どうしてこうなった……」


……言っておきます。マジです!
では、次回もよろしくお願いします!

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