連載小説
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TAKE18.8 白熱登攀QUIZ BATTLE
"聖戦"最終第八試合 『脳身一体! 海上登攀(かいじょうとうはん)クライム&アンサー』

「最終第八試合は『脳身一体! 海上登攀クライム&アンサー』である!
 要するにクライミングというわけだ!」
「クライミングって、ボルダリングのロープあり版でしたっけ?」
「それはリードクライミングですね。
 スポーツとしてのクライミングは壁面を登っていく競技のことで、道具も安全装置も使わないのがフリークライミング、最低限の装備を用いるフリークライミングの派生形がボルダリングと呼ぶんですよ。
 一方命綱を用いるクライミングはルートクライミングと呼ばれ、中でもロープをかけながら進むのがリードクライミング、予めかけてあるロープを辿って登るのがトップロープクライミングと定義されます。
 ……それで? クライミングと一口に言っても色々あるわけだが今回の競技はどうなんだ」
「よくぞ聞いたな! あれを見るがいい!」

 そう言ってエールが差した方向には、最終第八試合の舞台となる特設競技場が姿を現していた。

「あれか……」

 その"競技場"とは、海原にそそり立つ巨壁であった。
 頂上には足場が備わり、二本の頑丈そうな綱が垂れ下がっている。
 また注視すれば壁の表面には大小カラフルな突起が備わっており、それがボルダリング等のクライミング競技で用いられる壁であると理解できた。

「命綱の存在を考慮するにトップロープクライミングって所か。然し脳身一体だのアンサーだのという単語が気になるが……」
「それについては競技が始まってから説明してやろう! さあ、どちらが出るか決めるがよい!」

 相談の結果、最終第八試合への出場者も雄喜に決まった。

「ほう、我が相手も貴様か! これはちょうどいい!
 慢心に伸びきった貴様の鼻っ柱、我がへし折ってやるとしよう!」

 嬉々とした様子のエースが発動した転移魔術により巨竜と男優は海の上に飛ばされ、気付けば二者は胴に命綱を括り付けられた状態で宙吊りになっていた。


「……転移直後から海に落ちないようになっているとは、随分と親切設計だな」
「ふん、始める前に勝負がついてしまっては面白くないのでなぁ! 感謝してくれてもよいのだぞ?」
「誰がするかよ、メストカゲ。いいからさっさとルールを説明しろ」
「ふん、この状況にあって尚強気な姿勢を保ち続けるか……それでこそ"わからせ"甲斐があるというものよ!
 さて、ルール説明だったか? それならば我より適任がおってな……おい、さっさと出て来んか!」

『おおっと、お待たせしちまって申し訳ねぇ!』

 エールが上を向いて叫ぶと、どこからともなく声が響いた。
 その声は若干しゃがれていて、低さと甲高さを併せ持つ……幅広い役柄で活躍する老齢の大御所男性声優といった感じであろうか。

『ちっと準備に時間がかかりましてねぇ! ですがもう大丈夫ですわァ!』
「弁明は不要! さっさと競技のルールを説明せんか!」
『へい、畏まりました! っと、その前に……
 エールのアネさんはともかくとして、そっちの兄さんは何がなんだかわかんねーってんで困惑してそうですなァ!?』
「ああ、そうだな。僕だけじゃなく、読者たちもいきなりの事で何がなんだかわからないと思うぞ」
『おぅおぅ、そいつぁいけねぇや! アネさん、そんなわけなんでルール説明の前に自己紹介をしときたいんですが構いませんね?』
「ふん、仕方あるまい……手短に済ませよ!」
『そいつぁ勿論っ!
 そこの兄さん! そんで読者の皆さん! お初にお目にかかりまさァ!
 小生は"ベン・タラー"! 電脳魔法"KANZAKI"による異空間の制御を任された"魔法AI的なアレ"とでもお考え下せぇ!』
「"的なアレ"って何だ、"的なアレ"って……。
 まあいい。お前については大体わかった。ルール説明を頼む」
『畏まりましてェ!

 こちら「クライム&アンサー」! そのルールは至極単純"名前そのまま"ってなモンで!
 ただ「クイズに答えて壁を登る」ッ! たったそれだけでごぜぇやす!』
「それは全く至極単純だな。っていうかこの"ボルダリング用の壁によくあるカラフルな出っ張り"、よく見たらボタンになってるのか。数字が書いてあるようだが……」
『よくお気づきで! 実はそのボタンの数字がこの競技の肝の一つなもんで!
 手順と致しましてはお二方、まずご自身の手番となりましたらば最寄りのお好きなボタンを押して頂きやす!
 そうしますと小生めが、ボタン毎に設定されましたるクイズを出題(だ)させて頂きやす!』
「そしてクイズに正解できたなら上に登れる、というわけだ!」
『如何にもアネさんの仰る通りィ!
 ボタンに記されましたる数字は問題の難易度と正解時に入る得点を現しとります!
 要は数字が高けりゃ高いほど難しく、然し得られる点も多くなるってワケですなァ!
 因みにクイズのジャンルは魔物娘図鑑に関する事柄がほぼ大半を占めとりますぜェ!』
「なるほど大体わかった。然し得点ってのは何に関係してるんだ?」
『そりゃもう、登れる距離でさァ! 何せこの競技は「クライム&アンサー」!
 ただクイズに正解したからって好きに登れるってワケじゃーねぇ! その距離は一度のクイズで得た得点に比例して長くなりやす!』
「つまり高難易度の問題に正解すればそれだけ有利というわけだ!」
『その通りでごぜーやすアネさんッ! 序でに申し上げますとお二方を繋ぐ命綱、実ァ頂上の帝滑車に引っ掛かった長いロープ一本から成っとりますもんで、片方が上がるともう片方は下がる仕組みとなってますんでそちらご注意下せぇ!』
「単なるクイズ付きの競争じゃないわけか。不正解の場合と敗北条件を聞いても?」
『勿論構いませんとも! 敗北条件は今まで通り、"海に落ちちまう事"ッ!
 お二方のどちらかが競技場の天辺にある足場へ到達したらばその時点で勝利確定! もう片方は命綱が切れて海へ真っ逆様ってわけでごぜぇやす!
 あとはまあ、クイズに答えねえで壁を登ったり空を飛んだりだとかの反則行為があった場合も強制的に海へ落させて頂きますんでご了承下せぇ!
 次いでクイズの答えを外しちまった場合ですがご安心を! ただ外したってんなら単に進めねえだけでごぜぇやす!
 ただ小生が問題を読み終えてから余りにも長時間何の回答もねえ、若しくは答えを三度間違えちまうと回答権が相手方に移っちまいますんでご用心!
 一応、わかんなけりゃパスで回答放棄して次に賭けるって手もありますがねェ!』
「了解わかった。とりあえず正解し続けてれば何とかなるわけだな……」

 かくして最後の"聖戦"は開幕する。

『ほいでは先ず、お二方の手番を――
「まずは我から行くぞッ! 異論は認めんッ!」
『……ぇえ、へい。畏まりやしたァ。兄さん、それで構いませんね?』
「ああ、大丈夫だ。何も問題はない……。
 先攻は譲ってやる、さっさと答えなメストカゲ」
「ふん、減らず口を叩けるのも今の内だぞ、ユウッ!
 手始めに我はこの黄色いボタンを押すッ! さあタラ―、出題せよっ!」
『へい、畏まりやしたァ。
 ほいではアネさんに出題(だ)させて頂きますはこちらッ!』

 クイズ番組にありがちな効果音を鳴らしつつ、AIのベン・タラーは声高に問題文を読み上げる。

『問題!
 我らが偉大なる魔王様が目指しておられる偉業ってヤツを端的に言い表すとどうなりますかねェ!? 四字熟語で分かりやすくお答え下せぇ!』
「ふん、なんだそれは? 簡単過ぎるではないか……答えは『人魔統合』!
 魔王陛下は憎き主神めが定めた古臭い法則を上書きし、魔物と人類が一つの種として統合された新世界を創造なさるおつもりなのだ!」

 エールが声高に答えを述べると、それが正解であることを報せる効果音が鳴り響く。

『お見事ッ! 正解なもんで三点贈呈!
 というわけでアネさん、点滅する紫のボタンん所までお進み下せぇ!』
「点滅する紫のボタン……あれか。ふむ、三点の割には意外と進めるものだなぁ……。
 どうだユウ! ドラゴンは武力のみならず知識に於いても無敵の存在であるぞ!
 貴様如き人間風情では太刀打ちできん圧倒的実力を思い知ったかァ!?」
「いやあ、別に? そこまで危機とも思ってないし何ならお前は何をそんなに誇ってるんだと疑問にすら思うが」
「何ィ!?」
「だってそうだろうよ。始まったばかりのクイズ勝負で敵に正解を先取されて焦るか普通?
 まあよっぽど負けが許されない重大な勝負ならまだわからんでもないが、それでも異常だろ。
 生後間もない我が子を見た親は『私の子は言葉も話せず歩く事もままならない』なんて絶望はしない。それと同じことだよ」
「ぬっぐ……な、何も――
 「言い返せないなら喋ろうとするな」
「っっ……」
「……さてMr.タラー? ボタンを押してもいいかな?」
『ええ構いませんとも! お手の届く範囲ならどれ押して頂いても構いませんや!
 ただ答えられるかどーかは自己責任ですがねェ!?』

 宙吊りのまま思案した雄喜は、ちょうど目の前にあった赤いボタンを押す。

『おっと兄さんそちらを選ばれましたかい!
 そんじゃ出題(だ)すのはこの問題ってことになる!

 ン問題!
 クロビネガ公式サイトで最初に記事が公開された種族はァ〜アルラウネッ!
 そんで図鑑を書いた流浪の先生が設定されましたる"図鑑ナンバー"が筆頭を務めますは我らが魔王様の同族たるサキュバスにごぜぇやす!
 ンでは令和三年八月下旬作者めがこの話を書いてる途中の今現在ッ!
 和名を五十音順で並び替えた場合、ア行の最初に表示される種族たぁ何か、お答え頂きてえっ!』
「……和名五十音順、ア行の冒頭か。"ア"で始まる種族は幾らかいるが……よし、わかった。
 答えは『アークインプ』だ。長母音は実質ア行だからな」
『お見事ッ! 正解なんで五点贈呈ェ!
 さあ兄さん、そちらの点滅する紫のボタンの前までどうぞ!』
「やっぱり二点の差はデカいな……さて、これで幾らかリードしたな」
「ぐぬぅぅぅぅぅっ! 人間の分際でドラゴンより上に立つか貴様ぁぁぁぁ!」
「騒ぐなメストカゲ」

 かくしてエール対雄喜によるクイズ勝負は白熱していく……。


『問題ィ!
 令和三年八月下旬現在! アンデッド系の魔物娘は図鑑に十六種が掲載されとります!
 この内、ゾンビ属、ゴースト属、デュラハン属"以外"に分類される種族と、それらの"属"は何かをお答え頂きてえッ!』
「……何? おいタラー、貴様何を言っている? アンデッド系はアンデッドなのだから例外なくそれら三つに分類されるのではないのか?」
『それがそうでもなく! アンデッド系なんで等しく"アンデッド型"ではあるんですがねぇッ!
 それ以外のがいるんですわァ!』
「……そういえばセレーネの奴がそんなことを……
 わかったぞ! 答えはヴァンパイア、属としては魔人属だ!」
『あぁーっと残念! ヴァンパイアは合ってますが属が違ぇ!
 それに正解の分類群と種族は複数ありましてねぇ!』
「なるほど……よし、答えはサキュバス属のヴァンパイアとワイト! そして魔人属のダンピール! これで間違いない!」
『間違ってますぜ、アネさぁーん! ヴァンパイアがサキュバス属てのだけは正解ですが、
 ただワイトはあのいかにもなナリの割にゾンビ属でっ! ダンピールってのもこの場合は正解じゃねえんで!
 さあ次が三回目ここで間違えちまうとそちらの兄さんへ回答権が移ります!
 アネさん、答えをどうぞ!』
「くっ、そうなると……答えは、サキュバス属のヴァンパイアとファラオ!
 そしてミミック属のマミー、だ!
 以前テレビで見たのだが、ファラオ候補たる古代王の内、生前より愛に全力であった男が魔物娘ファラオではなくインキュバスになるというのは有名な話!
 これが仮に他の属に分類されるならば、旧魔王時代より愛に生きた雄魔物の例に漏れずインキュバスではなく雄のファラオとなっている筈であろう! よってファラオはサキュバス属!
 そして序でにマミーはあの包帯で身体を覆って擬態をしていそうなのでミミック属であろう!
 今度こそ間違いはないっ!」
『……なるほど。アネさんの言い分も分からねえ事はありませんや……』
「ほう、であれば――」
『然し残念ッ!
 ファラオとマミーは揃ってゾンビ属ゥ! よってハズレにごぜぇやす!』
「な、なにぃいいいいいい!?」
『というわけで兄さんへ回答権が移りまさァ!
 さあ兄さん答えをどうぞ!』
「……サキュバス属のヴァンパイアとバンシー、あとゴーレム属のスケルトン、だろ?」
『ハイ正解ィィ!』


『問題ッ!
 男女の双方が変異しうる魔物娘と言や、ホトケさんのお骨が魔力で変じたスケルトン!
 そんでスケルトン以外の魔物娘ってなァ原則人間の女性か、はたまた人間以外のもんから変じて"なる"のが世の常ッ!
 然し世の中わからねえもんで"人間の男からしか変じ得ねえ魔物娘"ってな例外がいる!
 その例外たる種族は何かをお答え頂きてえ!』
「それは『アルプ』! そう『アルプ』だ!
 先天的な適性と女性化願望を持ちうる人間の男が変じたサキュバスの一種こそお前の言う"例外"だ!」
『お見事! 正解ッ!』
「どうだ人間ン! また正解したぞ!? お前などすぐに追い抜いてやるからなぁ!」
「たかが一点程度ではしゃぐな」


『問題ッ!
 獣人・魔獣系に分類される魔物娘の内、挿絵の方が武装してる種族を五つお答え頂きてえッ!
 尚この場合の武装ってなァ、まあ一般的になんかそういう感じなアレってな定義でお願ェしやす!』
「"一般的になんかそういう感じなアレ"ってなんだよ。まあ言いたいことはわかるけどさ……。
 獣人・魔獣系で挿絵のが武装してる種族(ヤツ)……。
 武闘派で好戦的か、でなきゃプライドが高くカッコつけたがりで自己顕示欲が強いってとこだろうが……
 オセロメー、アヌビス、バフォメット、ケンタウルス、ナイトメア……ってとこか」
『お見事、正解ッ! 他にゃミノタウロス、オーク、ハイオークに、ちっと怪しいがクー・シーなんかも該当しまさァ!』


『ン問題ィ!
 虫系に分類される魔物娘の内、完全変態する昆虫の魔物だと明確に断言できる種族以外の全部を挙げて頂きてえっ!』
「ふむ……魔物娘は例外なく完全な変態故、変態云々と言うのは引っ掛けであろうな。
 とすると昆虫でない虫系の魔物娘を挙げればよいのだな。
 とすれば、おおなめくじ、アラクネ、ジョロウグモ、ギルタブリル、ウシオニ、大百足、サンドウォーム、アトラク=ナクア!
 これら八種族が正解で間違いない!」
『ザァァァン念ンッ!』
「な、なにぃっ!?」
大ハズレでごぜぇやすよアネさん!
 小生、"完全変態する昆虫"以外と言いましたよねェ!?
 それに魔物娘が例外なく完全な変態だなんてひでぇ偏見じゃないスか!』
「ぬぐっ……そう言われると……!」
『アネさんにしちゃあんまりにも酷過ぎるミスなんでペナルティとして三回間違えた扱いで回答権を兄さんに移させて頂きます! さあ兄さん、どうぞ!』
簡単だな。さっきそこのメストカゲが挙げていた八種族にデビルバグとマンティス、アントアラクネを加えればいい」
『ハイ、正解にごぜーやすゥ!』
「な、なぜだ!? デビルバグはゴキブリ、マンティスはカマキリ、アントアラクネはアリの魔物であろう!? 何れも昆虫の魔物ではないのか!?」
「メストカゲ、お前タラーが二度も言った事を覚えてなかったのか? 奴は完全変態する昆虫と言ったんだぞ?」
「そ、それがどうした!? 完全変態とは完全なまでに変態的で絶えず色に飢えているということではないのか!?」
バカか、全く違うわ!
 いいか? 完全変態ってのはな、幼虫から蛹を経て成虫になる様式のことだ。
 一方不完全変態とは簡単に言えば幼虫が蛹にならず脱皮だけを繰り返して成虫になる様式を言うんだ。
 まあ他にも小変態、新変態、前変態、不変態とかいうのもあるんだが……。
 で、これで考えていくとまずそもそも昆虫でないシェル属のおおなめくじとムカデ属の大百足、アラクネ属の六種……アラクネ、ジョロウグモ、ギルタブリル、ウシオニ、アントアラクネが除外される」
「おい待て貴様! アントアラクネはアリではないのか!?」
「アントアラクネはアリグモだぞ」
「アリグモとはなんだ!?」
「自分で調べろ、そのくらい。
 ……とにかくこれで八種族。更にそもそも節足動物かどうか曖昧なサンドウォームもここに加えるとする」
『小生としてもそこは迷ったんですが砂虫ってゴカイの事らしいんでまぁいっかと思いましてねェ。逆に同じウォーム属でも変態しねぇワンダーワームなんかの扱いも迷いましたがまあ原種は変態するグリーンワームなんで遺伝子的にはそっちだろっつーかァ』
「僕も同意見だ。
 そして更にそこへ、生物学的に昆虫と定義される魔物娘の内、不完全変態で蛹にならない種の形質を持つ二種……つまりゴキブリであるデビルバグとカマキリであるマンティスを加えた合計十一種族。
 それがこの問題の答えってわけだ」


『さァ問題だッ!
 サキュバス・悪魔系に分類される魔物娘の内、性格傾向欄に"我儘"、"意地悪"、"凶暴"、"強気"の記述がなく、挿絵個体が幼児体型でない種族を四つお答え頂きてえっ!』
「ふん、簡単だな! クノイチ、リリム、ダークプリースト、サキュバス!
 この四種はそれら四つ何れの性格も持たず挿絵個体も成熟していたであろう!」
『正解にごぜぇやす! 他はレッサーサキュバスと、一応アルプも幼児体型じゃねえってんで正解でしたねぇ!』


『よっしゃ問題ィ!
 精霊系魔物娘の内、エレメント型に属さないのは令和三年八月下旬現在ウンディーネ、イグニス、シルフ、ノーム、ゆきおんな、ダークマター、アプサラスの七種族!
 そしてこれらの精霊型じゃねーのはアプサラス……で、ありますがァ!?
 ではそのアプサラスは何型に分類されますでしょーかァ!?』
「水棲亜人型だ」
『お見事正解! 誕生経緯を考えりゃ納得の分類群ですわなァ!
 そういう事情もあって個人的に精霊系ン中でプールやビーチが似合うなァアプサラスじゃねーかと思う小生でさァ!』


『ハイ問題ィ!
 鳥人系魔物娘の内、不思議の国固有種にして鳥人系でない全く別種の幼体を産む特徴を持つのは――
「ジャブジャブ!」
『――ンですがァ!?』
「くっ、そのパターンか!」
『では、不思議の国を統治なさるハートの女王様が、魔術でハーピーを変異させジャブジャブを生み出した動機とは何でござんしょう!?』
「ふん、初歩の初歩ではないか……。
 答えは一つ、発情期に入るまで男を襲おうとしないハーピーの姿に痺れを切らした為だッ!」
『大・正・解ィィィィ!
 三女様はほんと魔法に関してだきゃ超一流ですからねぇ! あれでデルエラ閣下の半分でもしっかりなさってりゃ文句はねーんだが……』


『さーてどんどん参りやしょうっ! 問題ッ!
 魔法生物系魔物娘は主に魔法生物型、魔法物質型、擬態亜人型に分類されますのは周知の事実!
 そしてこの内、例外的に魔法生物系以外で存在が確認されとりますは擬態亜人型! ほんでその例外ってのが人魚・水棲亜人系に分類されるカリュブディスってのも皆様ご存知の通りですけどもォ、
 同種族が地球生物フジツボの形質を持つと考えた場合ある人魚・水棲亜人系魔物娘に似ると言えなくもござァせん!
 その種族を、そう言える理由と共に述べて頂きてえっっ!』
「キャンサーだな。カニとフジツボはどちらも節足動物門甲殻亜門に属する」
『お見事正解! これ結構正解できるヤツ少ないんですよねぇ、みんなフジツボは貝だと思ってっからァ』
「あの見た目じゃしょうがないよな」
(何っ……!? フジツボとは貝の一種ではないのか!?)


『なんか気分良くなってきたなァ! 問題ィ!
 ……っと、アネさん。こいつぁ外せねー問題を引き当てちまったようで!』
「なんだと!? れはつまり……我と同じ爬虫類系魔物に関する問題ということか!?」
『その通りでござい! 小生としちゃ、未だ劣勢のアネさんには是非とも正解して頂きたいところ!
 んなわけで改めて問題ッ!
 爬虫類系魔物娘ってなァ主にラミア属、ドラゴン属、リザード属などに分類され、そのほぼ全てが爬虫類型に属しとりますはご存知の通り! されど中には数少ねえ例外も存在します!
 さあその例外ってのが何か、属する型含めてお答え頂きてえ!』
「ふん、簡単だな……答えは両生亜人型のミューカストード! そしてアンデッド型のドラゴンゾンビである!」
『正解ィ〜ッ! ドラゴンゾンビはアンデッド型でもアンデッド系じゃなく爬虫類系ってのが意外っちゃ意外ですわなァ!』


『さアまだまだ行くぜェ! 問題ッ!
 魔人・妖女系魔物娘と言やあ魔物娘ン中でも特に人間に近く、故に食性も人間に近い!
 大抵は人間と同じもん食う序でに精も頂くってなのが結構な比率を占めておられる!
 ただやっぱ例外ってのも居て、あかなめと毛娼妓は図鑑記事の食料欄に"人間と同様の食事"って記述が含まれねぇ!
 然し逆に図鑑記事の食料欄へ"人間男性の精"って書いてねえ方の例外もいる! なもんで兄さんにゃそっちの例外を挙げて頂きてえ!』
「……少し難しいが、確かぬらりひょんと、トランパートだったかな」
『正ッ解ッ! ぬらりひょんは兎も角トランパートなんて不思議の国系なんだからいかにも精だけで生きてそうな感じあんのに意外だよなぁ!』


『もっと楽しもうぜぇ! 問ン題ッ!
 爬虫類型魔物娘の殆どが爬虫類型に分類されるように、植物系魔物娘の殆どもまた植物型に分類されます! 然しやっぱり例外ってのがいますんで、それが何型の何て種族なんだかお答え頂けますかい!?』
「植物系でありながら植物型でない……ということは、植物系乍ら植物系らしからぬ見た目ということであろう? ならば答えは簡単! 魔人型のマッドハッターだ!」
『お〜み〜ご〜とぉ〜! シカトにキレた女王陛下の魔法で知能が発達し頼り甲斐と信頼性が上昇したマタンゴの変異種マッドハッター!
 実際あのビジュアルで植物系ってのが驚きだけど、その上魔人型ってのも冷静に考えりゃ驚きだよなぁ!』
「やるなメストカゲ。てっきり外すと思ってたのに」
「見くびるなよ人間! この程度魔物娘ならば答えられて当然よ!」
「でもお前虫系魔物娘の問題間違えてたじゃん」
「ぬぐぎぎぎぃぃぃ〜っ!」


『さあこっからはもう"問題"っての省いてくぜ!
 亜人系魔物娘の内にゃ妖精型ってのも居ますが、その殆どは魔王様のお力で後天的にサキュバス化してんのが現状!
 だがそんな中、幸か不幸かサキュバス化を逃し妖精属のまんま図鑑記事に掲載されてるマジな妖精型魔物娘ってのがいる!
 ん〜なわけでェ! さあ、その種族とは何か、お答え頂けますねッ!?』
「ふん、簡単であろう! フェアリーだ!」
『ハズレェェェェ! フェアリーはサキュバス化してますぜェ!』
「何っ!? ではティターニアだな!? 妖精の女王というぐらいだ、安易にサキュバス化などせんであろう!」
『アネさんのその言い分、わかんなくはありませんがッ……それでもハズレェー!
 ティターニアもサキュバス化してますって!』
「なんだと!? 成熟した見た目の割に内面は幼稚そのものならば妖精属ではないのか!?
 おのれ……であればピクシーだ! あのいかにも妖精じみた風貌のピクシーこそ妖精属に違いない!」
『残念、ハズレェェェ! ピクシーはフェアリーっぽい見た目ですが分類学上はインプ属、あれで亜人系じゃなくサキュバス・悪魔系の魔物娘です!
 さあ回答権が移ります! 兄さん、どうぞ!』
「リャナンシー」
『正解ィィィィィ!』


『スライム系魔物娘ん中で、挿絵がツーショットな種族は!?』
「ショゴスとスライムキャリア。ショゴスは混沌の魔物の例に漏れず下半身に変異した旦那を含んでるし、スライムキャリアは相方の寄生スライムに跨ってるからな」
『正解ッ! 複数名描かれてるってなりゃクイーンスライムもそうだがありゃスリーショットだからなぁ!』


『正体が今一分からず分類不明扱いの魔物娘と言やローパー、ゲイザー、マインドフレイア!
 ではこの内、属名が種族名と異なってんのはどいつですかねぇ!?』
「マインドフレイアであろう! あれは一応スキュラ属扱いになっていた筈だ!」
『正解ィ! しっかしショゴスはスライムでアトラク=ナクアは虫、ウェンディゴだって獣人なんだからマインドフレイアも人魚・水棲亜人系に分類してやってもいいと思ってんのは小生だけじゃねー筈だァ! つかなんであいつら頭足類なのに洞窟棲んでんの!?』
「「知らんがな」」


『魔法生物系の属つったら、ガーゴイルやオートマトンでお馴染みゴーレム属、つぼまじんにクリーピングコインとかの面々が揃うミミック属、提灯おばけに唐傘おばけなんかで有名な付喪神属なんて面子だが、そんじゃリビングドールは何属かお答え頂こう!』
「ドール属。序でに言うなら魔法物質型だな」
『正解正解正解ッ!』
「何ぃ!? オートマトンやスケルトンがゴーレム属ならばリビングドールとてゴーレム属ではないのか!? リビングアーマーとてゴーレム属なのだぞ!?」
「違うわ。リビングドールはドール属だしリビングアーマーもアーマー属だ。どっちも魔法物質型だがな」
「な……なん、だと……!? では、カースドソードと一反木綿はっ……!?」
「カースドソードは剣魔属で一反木綿はそのまま一反木綿属だな」
「ば、バカな……魔法物質系であればとりあえずゴーレムではないのか……?」
「そんなわけあるか……っていうかお前魔物娘に詳しいのか詳しくないのかどっちなんだ? はっきりしろよ」
『……アネさん。命綱切ってもいいですかい?』
「やめろぉ! 我はまだ反則などしていないっっ!」


『人魚・水棲亜人系の魔物娘にゃサキュバス属のネレイスやミミック属のカリュブディスなんて感じで、結構陸棲種族に近えような種族が居たりするもんで!
 てなわけで、属に基づいて"海棲の爬虫類系魔物娘"っつー定義できる人魚・水棲亜人系の種族は何か、根拠込みでお答え下せぇ!』
「ふん、また高得点の割に簡単な問題を出して来おったな。
 答えは既に見えておる! ウミガメ型の海和尚と、なんかビジュアルに亀っぽさがある河童だ!」
『残念ハズレェェェェ! アネさんやァ〜、河童にゃ確かに亀っぽい甲羅はありますが、属としちゃサハギン属ゥ〜! サハギンは半魚人とも呼ばれる魚型の種族でさァ! もっと言や、鱗が変化したっつー水着みてえなのを着てるって共通点もある! 何より小生は海棲と言ってますが河童はそもそも淡水棲ですぜぇ!』
「くっ……であれば海和尚のみだ! 海和尚以外に海棲爬虫類と定義できる魔物娘はおらん!」
『またもハズレーッ! 海和尚以外にもう一ついますぜ海棲爬虫類と呼べなくもねー魔物娘がっ!』
「なんだとぉ〜〜っ!? であれば龍だ! 龍は爬虫類系であり水棲傾向もあった筈だ! 海和尚と龍! それが正解だ!」
『ンンンン〜遠からず! 然し残念ハズレでさぁ! 確かに龍は水棲傾向の強い爬虫類の魔物娘、で、す、がッ!? 分類としちゃ爬虫類系!
 小生が言ってんのは"人魚・水棲亜人系に分類される中で"海棲爬虫類と言えなくもねー種族でしてねぇ! そもそも龍もどっちかつーと淡水棲でしょうがしっかりして下さいよアネさぁん!
 さて回答権が移ります! さあ兄さん、この難問を解くことがおできかねッ!?』
「海和尚と乙姫だろ。前者はウミガメ型で後者はドラゴン属だから」
『おぉ〜っと! まさかの正解〜っ!』


 かくして巨竜対男優の戦いは白熱していく。
21/08/23 20:28更新 / 蠱毒成長中
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