連載小説
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そのにじゅうよん
かくしてリリム姉妹の代理戦争の火蓋が切って落とされた。
十日後、このレスカティエにて、双方が選出した腕利き同士が
熾烈な争いを繰り広げることになる。
争いのきっかけは実に情けないものだが勝敗の結果はきわめて重要だ。
穏健派が勝てばそれに越したことはない。問題は過激派が勝利を収めた場合だ。
裏工作をしたいところではあるがデルエラの目が光っているので
うかつな事はできない。してもいいが後が困る。現時点で既にかなりの遺恨があるというのに
さらにヘイトを上乗せするのはまずい。

デルエラを怒らせる→デルエラが憂さ晴らしに暴れる→デルエラはやばい
→レスカティエはやばい→レスカティエの君主はやばい

こういう連想が成り立つ。
完璧な情報共有が不可能な以上、レスカティエの誰かが何かをやれば
話が人づてに伝達されていく過程で尾ひれやガセネタがついたり内容の取りこぼしがおきて
俺のせいにされる確率はそれなりに大きい。有名税というやつだ。
「それで僕を穏健派の代表メンバーに入れるということですか」
「理解が早くて助かる。報酬は、死人キノコを半年分、首尾よく勝てばさらに倍だ」
死人キノコというのはレスカティエでの俗名であり、一般的には
アンデッドハイイロナゲキタケという無駄に長い名称の、生者が食べると胃腸に大当たりするが
不死者やその影響を受けたインキュバスにとっては極めて美味らしいキノコである。
昔、あやうくマリナに食わせられそうになったことがあるが
食べたフリをしてうまくごまかしたのを思い出す。あの非道なお嬢様に仕えていると
手品レベルの向上を余儀なくされると理解した瞬間だった。
「よくこんなに用意できましたね」
「ポローヴェという魔界国家を知ってるか?
そこの精霊使いの才媛とやらが、こないだ安定した栽培に成功したんだと。
まあ、したはいいが一部の魔物にしか好まれない代物だし、実験材料としても微妙なので
どうしたらいいか処分に困ってたのをミリュスに買い叩いてきてもらった。
その精霊使いは利益どころか栽培費用の元すら取れなくてヘコんでいたそうだがな」
「そうそううまくいかないのが世の中ですしね」
「同感だな」
買い叩かずにそれなりの値で買い取ってやればよかった…とも思ったが
それに気をよくして大量に在庫を抱えだしたら向こうが悲惨なことになるので
早めに現実を教えてやったのは正解だろう。
「で、出場する他の二名は決まってるんですか?」
「十四女のほうはともかく六十三女はこれといったアテがなくて
四苦八苦してるみたいだな。裏でヘリィと相談しているようだが……。
それより問題なのは、よりによって過激派サイドからマリナが出ることだ」
「止めなかったんですか?」
「止まらなかった」
「ああ、そういえばウィルマリナさんってデルエラ様の熱烈な信奉者ですもんね」
「それもあるが、なにより、止める大義名分がない。
有無を言わせず止めようものなら、それこそあの四女がヒスを起こす」
「いっそ穏健派として立場を明確にしたらどうですか?」
「レスカティエを二つに割れというのか?」
近い将来そうなりそうではあるが自分から亀裂に楔を打ち込んではいられない。
「代理戦争が終わるまでお城に引きこもってセックスしてればいいじゃないですか。
それならデルエラ様にも言い訳できますし、簡単でしょ」
「出番の時だけ交わりを中断してちょっと出てこいと言われたら断れんぞ」
「使い物にならなくなるほど快楽で頭をトロトロにするのは?」
「だがそこまでやると、それと同時に俺からの精で
パワーアップしかねない。あいつも立派な魔物娘だからな」
「この際ウィルマリナさんについては諦めましょう」
ついにウィットが匙を投げた。


〜〜〜〜〜〜


「……おっ、おっきいぃ、大きいのが中をズリズリしてるのぉ。
ああっ、あなたのおちんぽ奥まで当たるぅうう……」
やれることがなくなったので当日までひたすら嫁達とまぐわうことにした。
決して現実逃避して性欲に溺れているわけではない。代わる代わる九種類の膣をえぐり倒して
こみ上げてくる熱いほとばしりを吐き出すことで今後のために力を蓄えているのだ。
違法なお薬を常用してたら頭がぶっ壊れてしまった
馬鹿の戯言にしか思えない主張だが、インキュバスにとってはこれが正論なのである。
「そうだ、そうやって、いい声で鳴くんだ。ほらっ。
ふっ、ふうっ、俺をもっともっと興奮させてみろ…………ううっ」
「ああんっ、あっ、ああぁああああぁぁーーーーーーー!
なっ、鳴くから、やらしく鳴くからぁ……わ、わたっ、私で興奮してええぇ…!」
とはいえ、かつて勇者だったお嬢様の腰のくびれを掴んで
後ろからパンパンしてると強くなっていくとか、どう考えてもこのシステムおかしい。
まったく運動しないで痩せるダイエット法よりおかしい。
「あひっ、わ、わたひ、おかしくなるぅ、どんどんおかひくなるのぉ」
「どんな風におかしくなるんだ?」

ごつんっ

「んひいいいいいぃ!!」
俺の逸物で子宮の入口をノックされてマリナがのけぞった。
一部のスライムは体内にコアを持ち、セックスの際にそれをペニスでつついて刺激されると
意識が飛んで真っ白になるほどの快感を受けるそうだが、
こうやってマリナが味わっているそれも負けず劣らずの激烈なものらしい。
今までさんざん俺が無茶をしてきた副作用なのか、こいつらのベビールームは
取り返しがつかないほどに淫らな弱点と化してしまっている。

ごつんっ、ごつんっ、ぐりぐりっ

「ひっダメッひいいいいイクッイグウウゥングウウウウウゥゥゥッッ!!
んっぐうううう!んぐっ、うっ、うううううぅ!ふぐううううぅーーーーーー!!」
弱みをつかれることに溺れ狂うメスの叫び。
マリナは、終わりのない絶頂の繰り返しに足を踏み入れ、没頭していた。
そしてそれは俺も同様だ。これをやると他の行為が頭から消えうせ、
ひたすらえぐり、突き、ひねり、精を出すまで止まらなくなる。
いや、精を出したところで収まらない。飽きるどころか、より新鮮な気持ちよさを
与えてくる、この肉穴。柔くとろけていながらも、きつく締めつけてくる、矛盾の肉穴。
魔の肉穴。俺だけが喰うことを許された、マリナのエロくて可愛らしい肉穴。

どびゅるううっ、ぶびゅるうぅ!!

「んにゅうぐううううううううう〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
中出しに歓喜し、マリナが裸体を震わせて叫んでいる。
もっとだ。
もっと聞かせてくれ。
「こっちぃ、こっちの穴も、ぐちゃぐちゃにしてよぉ。おにいちゃああぁん……」
仰向けになったミミルが、クワガタの顎のように大股を広げて
幼い容姿に似合わぬ潤みきった雌しべを見せ付けてきた。
「…なら、次は私の、こ、こっ………………ここに、欲しいです…」
肉欲で脳内を染めきってしまっているサーシャがどもりつつも、ミミルとは逆に
うつ伏せで菊門を『くぱぁ』と広げて誘ってくる。
「サーシャ姉はケツに入れて欲しいんだ」
あえて『姉』を強調しつつ下品な言い方をしてみる。なぜなら燃えるから。
「は、はい…………そうです。
………………………………………け、ケツに、欲しいです。入れて、ハメてほしいんです。
お、美味しそうな勃起チンポで、ああっ、こ、腰が抜けるまでハメたいっ」
「血は繋がってなくても、姉さんなのに?」
「んぁぁ、いじめないでぇ…………。姉だけど欲しいのよぉ、ケツでしたいんだものぉおお…!」
我慢の限界を超えたのか自分の指でほじりだした。
「はは、わかったよ。なら、そうやってよくほぐしておくんだね」
と言ったらなぜか他の嫁達までアナニーしだした。
今宵とフランツィスカなんてシックスナインの体勢でお互いの肛門を愛撫している。
「んひぃ、しょ、触手でお腹の中、ナメナメするのらめぇ」
「けど、今宵さんのお尻の穴は、そう言っていませんわよ?」
「ひにゃあああぁ」
何本もの尻尾を逆立てて狐っ子が悶え鳴いているが
仲良きことは美しきかなということにしておく。
「マリナ」
「……はひぃい」
「俺がミミルと貪り合っている間、あんな感じで
サーシャ姉のアナルを舐めしゃぶってておいてくれよ。下ごしらえは大事だからな」
「えへへ、面白そぉだね。りょ、了解しちゃいますっ」


「あうぅ、ミミルのおまんこ穴から、おにいちゃんのがドプドプ溢れちゃうよぉ!」
「腹が膨らんでて、んっ、まるで、カエルみたいだなっ」
「違うもんっ、ミミル、カエルじゃなっひぃいいいいいぃ!?」
ぐううっ!?
「おっ、これは凄い……奥を小突いたら、とんでもなく締まって……!
………………って、お前ら、なにやってんだ……」
どういう解釈をしたのか不明だが、たぶんエスカレートしたのだろう。
抜群のきつさを誇るミミルのロリマンに夢中になっててわからなかったが
マリナとサーシャは尻を向かい合わせて互いの尻尾をアナルでくわえこんでいた。
「ひっ、はひっ、サ、サーシャさん、尻尾動かしすぎぃ…」
「ああぁマリナさんだってぇ、んっうううぅ……」

そしたら抜けなくなった。
というより、抜こうとすると尻尾の返しが腸内を強くえぐって
その度にのたうつほどの鋭い快感が走るらしく、二人にはどうも無理そうなので
俺がやることにしたのだが、面白い画なので、
適当に抜き差ししながら二種類のケツを甘噛みするだけして
今度はメルセの巨乳へと手を伸ばすことにした。


なお、二人が自らの尻尾とアナルの戒めからようやく抜け出たのは
俺が他の七人をとっかえひっかえ抱いていたローテーションが六周目に入ってからである。


〜〜〜〜〜〜


――当日。

「……よし。たっぷりセックスしたから、気力も体力も魔力も充実したぞ」
なぜそうなるかの原理はもう考えるのをやめた。どこかの賢者か学者が解き明かすのを
期待することにしよう。俺の生きてるうちに明かされるか、はなはだ疑問だが。
「パンデモニウムってこんな感じなんですかね」
魔力塊で作ったと思しきマスクで顔を覆い、俺達の寝室へとウィットが入ってきた。
まあ、この部屋に充満してる空気をそのまま吸い込んだりしたら
俺の薫陶を受けたコイツでも猛烈に発情してしまいかねない。
なのでその対応は正しいといえよう。
「メンバーはどうなった?」
「フォリエ様はお手上げ状態です。
『そこそこの実力者ならともかく、やはりこの短期間で強者を見つけるのは至難ですね。
夜に影を探すようなものですわ』と苦々しく言っていました。
結局、ヘリオリスティ様が裏から手を回して、『鋼の嵐』とかいう
新鋭のデュラハンを引き合わせたみたいです」
「ほう」
それはいい知らせだ。
「で、二人目、ヴィネトシーア様が選出したのは子飼いのサラマンダーです。
教団相手に何度も活躍しているベテランの戦士だとか。期待できますね。
そして三人目は言うまでもなく僕です」
悪くない布陣だ。


しかし向こうの布陣も悪くなかった。

「今回はよろしくお願いします」
「チームメイトとしてお互い全力を尽くしましょう、ウィルマリナさん」
マリナと蝙蝠の仮面をかぶったヴァンパイアが硬く握手した。
「よりによって、あの『闇姫』が向こうにいるとは……。
だから今日は魔力の霧が一段と濃いんだな。デルエラめ、陽光対策は万全ということか」
…いや、それだけではない。
あの魔物娘はウィットの主人の姉だ。ウィットが出場することを知って、攻めの手が
遠慮がちになることを期待して選ばれたのだろう。インキュバスなのに出場しているからには
厄介な相手だと推測して、手を打ったのもしれない。
こういう狡猾な手口はどうせデルエラの仕業だ。間違いない。
「……あれは何のつもりだ?」
つい十日前に出会った誰かさんが試合場にいる。まさかとは思うが、まさかな。

「彼女が『魔界勇者』こと、ウィルマリナ・ノースクリムで、こっちが『闇姫』だ。
そして私が大将を務める、リリム仮面である」
『ズコー!!!』
空中で審判役のフェアリーがひっくり返った。


………………ああ、そうきたか。それなら仕方ない。


――俺はハンカチを取り出すと口元を隠し、謎の覆面インキュバスとして
ウィットの代わりに大将役をつとめるため舞台へ足を進めることにしたのだった――
13/03/25 21:46更新 / だれか
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■作者メッセージ
あなた「来いよザネット、立場や建前なんか捨ててかかってこい!」
ザネット「このアル中野郎ぶっ殺してやるうううぅ!!」

フォリエ「いったい何が始まるんですの!?」
アルハゼッタ「第二次魔姫の乱よ」

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