読切小説
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色んな魔物娘とキスするだけの物語
「ねろ……えろ……ちゅる……にゅぷ……」
「んっ……んんっ!?ん〜〜〜!?」
違和感で目を覚ましたクエストンは最初状況が理解できなかった。
目に映るのは薄青い何か、その向こう側に透けて見える森林の風景から野営をしていた事は思い出した。
今日のねぐらにありつけなかったクエストンは焚火を起こし、獣避けのお香を放り込み、保存食での簡素な夕食を終えた後に薄い毛布にくるまって眠りについたのだ。
身体に掛る重みから何かにのしかかられている事がわかったのでとりあえずその「何か」を押し退けようとする。
ぷにゅん
「……ん♪」
「!?」
柔らかい何かが手に触れた、乳房では無い、体勢的に肩あたりに触れた筈だ。
その手に伝わった人肌に似ていながら明らかに違う感触、そして視界に映る薄い青……。
(ス、スライム!?)
そう認識した瞬間目の前の薄青い物体に顔があり、表情がある事に気付く。
人間で言うならショートボブの髪型(?)をした少女の顔だった、まだあどけなさの残る顔立ちをしている。
その幼いスライムがとろん、と目を蕩けさせながら自分にのしかかってキスをしているのだ。
迂闊だった、道中で一度も魔物を見掛けなかった事からいないものと油断していた。
旅慣れているはずの自分ならば普段は犯さないようなミスだった。
どうにか抵抗を試みるが、スライムは何処を触ってもぷにぷにと文字通り掴みどころが無い、むしろ何処かに触れるたびにぷるぷると嬉しそうに身を揺らしている。
何より手に伝わるいつまでも触っていたくなるような感触と口の中で踊る稚拙でありながら妙に快楽のツボを心得た舌使いに次第に頭がぼんやりとしてくる。
(駄目だ……このままじゃ……このままじゃあ……よく見てみると可愛いなこの子)
どうにか頭を働かせようとするが思考が次第に妙な方向へ走り始める。突き離そうとしていた腕はいつの間にかその幼いスライムの背に回され、むしろ抱き寄せるような形になっている。
「〜♪」
スライムは目で嬉しそうに笑うとぞろり、と動き始めた。
液状になった下半身は横たわるクエストンの体を包み込んでおり、一緒に移動する。
「ぴちゅ……くちゅ……ぺちゃ……くちゅ……」
「ん……ちゅぷ……ぐ……」
いつしかか自分からも舌を絡め始めるクエストンは自分が移動している事に気付かない、ただとろんとした目でスライムの微笑に見とれている。
ずり……ずりずり……。
互いの口腔内を犯し合う音はいつしか森の奥の暗がりに消えて行き、後には微かに白い煙を上げる焚火の跡が残るばかりであった……。









「ちゅっ」
「えっ」
トアナは一瞬何が起こったのか分からなった。
道端に茂っていた菜の花の匂いを嗅いでいたら唐突に唇の先に何かが触れるのを感じたのだ。
「くすくすくすっ」
周囲をきょろきょろ見回すトアナの耳に少女の笑い声が届く。その発生源を見てトアナは大きく目を見開いた。
自分が匂いを嗅いでいた菜の花の影から小さな女の子が顔を覗かせていたのだ、とても愛らしい容姿の女の子の背には蝶の羽根が生えており、ゆらゆらと揺れている。
トアナは首を傾げる。大人ならば魔物かと警戒する所だがその愛らしい容姿に警戒心を抱ける程トアナは大人ではなく、また、知識もなかった。
「きみ、だあれ?「ちゅっ」うひゃっ」
問いかけた所で今度は頬に同じ感触を感じた。慌ててそちらの方を向くと菜の花に止まっている少女とはまた別の少女が笑いながらぱたぱたと飛んでいた。
最初の少女が薄ピンク色の髪の色と優しげな垂れ目なのに対し、飛んでいる少女は赤毛で勝ち気そうな顔立ちをしている。共通しているのはトアナが今まで見た事も無いくらいに可愛い顔をしている事だ。
「ね!遊びましょ!」
「あそぼうよ!」
二人は声を揃える、トアナは嬉しくなる。
「うん!あそぼう!何してあそぶ?」
「きすごっこ!」
「きすごっこ?」
「さっき私達が君にしたやつ、いっぱいしたほうが勝ち!私とポプリ……あ、ポプリってあのお花の上にいる子ね、それと私はミモザ」
顔の傍でぱたぱたと宙に浮きながら赤毛の少女は胸を張る、花の影の少女もふりふりと手を振る。トアナは笑って手を振り返す。
「ぼくはトアナ、よろしくね」
「トアナかぁ……えへへ、よろしく、それで説明の続きだけど、私とポプリの二人と君でどっちが沢山キスできたかを競うんだよ」
「えー……そっち二人なのにこっち一人なの?」
「男の子でしょ?女の子にはハンデを付けてあげなくちゃ!」
「うーん、それもそっか」
トアナは深く考えずに単純に了解してしまう。
「それじゃ、早速開始!すきありぃ!」
ちゅっ
「あっ!ずるい!」
ちゅっ
「わぁっ」
開始の合図と同時にミモザは先程の同じ箇所にキスをする、それに驚いた隙をついてポプリも飛んできてキスをする。
「ううっやったなぁっ、このぉ」
トアナもどうにかキスをし返そうとするが、トアナが小さな二人にキスをするためには飛び回る二人を捕まえなくてはいけない。
しかし乱暴に扱って怪我をさせてはいけないという思いから手が出せない。
ちゅっちゅっちゅっちゅっ
「くゃぁああ」
二人は巧みに連携を取り合い、次々にトアナにキスをする。
頬、鼻、首筋、みみたぶ、あらゆる箇所に小さな小さなキスマークが増えて行く。
(うぅっなんだよぉこれ……)
そのうちトアナは戸惑いを覚え始める、二人にキスをされるたびに何だか体がぽかぽかと温かくなり始めたのだ、それに何だか股間のあたりがうずうずする。
「えへへ〜楽勝だね♪……きゃっ!?」
「ええいっ!」
一瞬の隙を突いてトアナはミモザを捕まえる事に成功した。虫を捕まえる要領でふわっと手の平で包み込む、あくまで怪我をさせないように優しく。
「や〜ん捕まっちゃった」
「えへへ、今度はこっちの番だぞお」
得意気に笑ったトアナは手の中のミモザに唇を付ける。
ちゅっ
「きゃあ♪」
ちゅっちゅっちゅっちゅっ
今までのお返しとばかりに繰り返しキスをしてやる、なにしろサイズが違うので全身にキスをされるようなものだ。
がぷっ
「あいたっ」
と、耳に痛みを感じたトアナが思わず振り向くと何故か真っ赤になってむくれた様子のポプリが宙を飛びながらこっちを涙目で見ている。
トアナには見えないが耳たぶには小さな歯型が付いてしまっている。
「ミモザばっかりずるい!」
「え?」
トアナは首を傾げる、キスの回数を競う遊びなのにどうしてキスされない方が怒っているのだろう?
「ふにゃぁ〜〜〜〜」
と、手の平の中に視線を戻してぎょっとした。手の中のミモザは全身を真っ赤に紅潮させてぐったりとしている。
「ご、ごごごごめん!」
慌てて謝る、何だかわからないが自分はやり過ぎてしまったらしい。
「はふぅ……だ、大丈夫だよ……あやまんないで……」
言いながらふわりとトアナの手の中から飛び立つミモザ、しかしどうも軌道がふらふらと頼りない。
「えへへ……トアナ、キスごっこじょうずだね……ね、もっと沢山の友達がいるんだよ」
「ほんと?」
「うん、みんなとも遊ぼうよ!」
「うん、ぼくでよければ……」
顔を紅潮させたままミモザは笑う、トアナは快く了承する。
「じゃあ、みんなの所へ案内するね!こっちこっち!」
ミモザは手を振りながら森の奥の方へとトアナを誘い込む、トアナは笑いながら走ってミモザの後を追う。
「もうっ……次はわたしもしてもらうもん!」
その後ろからポプリが相変わらず頬を膨らませながら付いて行く。
そうして一人と二人の影は森の中へと消えて行ったのだった……。









「ちゅっ」
「んんぅ……!」
主の深紅の唇が触れた瞬間、従者の膝からすとん、と力が抜けた。
しかし主の前で無様に崩れ落ちる事は許されない、従者は必死に直立の姿勢を保つ。
「……」
そんな従者の健気な様子に深紅の目を細めた主はゆっくりと従者の中に舌を侵入させて行く。
舌が触れ合った箇所からぴりぴりと電気が走るような感覚が伝わる、それと同時に高級なアルコールを口に含んだかのような芳醇な味わいを感じる。
そんな筈はないのだが、主からの口付けに感謝する自らの気持ちがそう感じさせるのか、もしくは本当に主の舌は美酒の如き味がするのか。
どちらとも判断が付かないまま従者は夢中でその舌をむしゃぶり尽くしたいという衝動と戦う、主は乱暴な愛撫を好まない。
そっと伺いを立てるように舌の先端で主のそれに触れる、主の目の表情から機嫌を読み取り、そろそろと舌を触れ合わせていく。
触れ合う面積が広がる程により濃厚に感じられる甘美な味覚、しかし自身の快楽にかまけてはいられない、ちらりちらりと主の舌をダンスに誘うように触れ合わせる。
従者の誘いに興が乗ったらしく、主の舌はより従者の奥深くにまで侵入して行く、頭が快感と陶酔感でくらくらする。
従者の舌に比べて主の舌はゆったりとした動きで従者の口内を味わう、上顎の天井をぬるぬると這ったり歯の裏側をなぞったりと傍若無人に振る舞う。
その動きを阻害しないように気を付けながら従者は主の舌に必死に快楽を与えようとする、自分の受けている快楽の何分の一でも主に返せるように……。
やがて主の舌がとん、とん、と従者の舌に合図を送る。従者の心臓が跳ね上がる。お預けから解放された犬のように主の舌に縋りつきたくなるのをぐっと堪える。
従者の目が隠しきれない期待に輝くのを見ながら主はそっと舌を引いて行く、従者はその舌に導かれるように付いていく。
やがて従者の舌は温かな主の口腔に包まれる、舌の触れ合う部分からだけ感じていた美味が舌全体を覆い尽くす。顎が震える。
侵入した時と同じく主の舌はゆったりとした動きで従者を味わう、従者は最早されるがままに翻弄されるしかない。少しでも主に奉仕したいと考えるがもはや蕩ける寸前といった舌は技巧的な動きなど出来なくなっている。
そうして十分に前菜を味わった後のメインディッシュ、主の鋭い八重歯が軽く従者の舌に触れる。従者は訪れる快楽の嵐に備える。
カリッ
「〜〜〜〜〜〜〜っっ」
歯を立てられた箇所から全身に広がる電気のような快楽、備えていても耐え難い快楽。
従者は必死に「そそう」をしないように堪える。大きく見開かれた目にはチカチカとしたハレーション以外何も映らない。
「……んぅっ」
従者がそうして意識を飛ばす間、その一瞬だけ主は「素」の感情をその瞳に曝け出す。従者の甘美な血の味にほんの一瞬だけ我を忘れる。
いつもは怜悧な光を浮かべている深紅の瞳がとろん、と蕩け、その蕩けた瞳がうっとりとした半目になり、快楽に乱れる従者の表情を愛おしげに見つめる。
「……ふぅ」
「……ぁふぁっ」
長いような短いような至福の時が過ぎ去り、従者は主の口から名残惜しげに離れる。
「はぁ……はぁ……はぁ……い、いかがでしたでしょうか」
「悪くない」
息も絶え絶えに問う従者に主はにこりともせずに答える。そしてマントを広げ、腕の中に捕えていた従者を解放する。
主の温もりを失った従者はたまらない寂しさを覚えるが、それは表情に出さずに主の体から離れる。
離れた従者の下半身を見下ろして主は冷笑を浮かべる。
「今日は「そそう」はしなかったか」
痛々しくズボンを押し上げている屹立を意識して従者は赤面する。
「そそう」とはつまり快楽に堪え切れずに暴発してしまう事だ。慣れない頃は吸血されるたびに「そそう」をしてしまったものだ。
「ふ、少しは成長したと言う事か……今日はもう休め、健康を損ねて血の味を落とすな」
「……はい」
「血の味を落とすな」この言葉を主から聞くたびに従者はわかっていても落胆を覚えてしまう、自分は主の召使いであり、食料だ、それ以上でもそれ以下でもない。
しかしそれでも従者は主の元から逃れようとは露ほども思わない、何故なら自分は……。
「どうした、早く戻れ」
「……はい」
あらゆる感情を押し込めて従者は一礼し、主の部屋を去る。
従者は気付かない、その後姿に投げ掛けられる主の狂おしい熱を孕んだ眼差しに。
「ふぅ、ぅ」
ドアが閉じられた瞬間に主の口から息が漏れる、熱い吐息だった。
(もう少し……もう少し、だ……)
ちろりと赤い舌が赤い唇を舐める。そうして血の味を反芻する。
(あと少しであの者は私と同族に……待っているがいい……教えてやる、お前は私の物だ、誰にも渡さない、私以外の誰にも味わう事は許さない)
主はかり、と爪を噛んだ。
恐ろしく妖艶な仕草だった。









「ちゅっ」
「!?」
唐突だった、ケストレイは目を瞬かせる。
そんなケストレイを気にした様子もなく、リアリはくい、と杯を傾ける。
あまりに何事も無かったかのように振る舞うのでケストレイは今の出来事が夢だったのではないかと疑い始める。
場所はいつものバー、相手は気心の知れた店の常連、直前まで今回の仕事の報酬がケチだったとかあの店で食ったアレはうまかっただとか他愛のない話をしていた。
どこを取っても艶めいた要素は無く、リアリが自分にキスをする要因などは何処にも見当たらない。
混乱するケストレイにリアリはいつもの微笑を浮かべながら声をかける。
「……何だい?」
「いや、こっちの台詞だよ、何だよ今の」
「何がって何がだい?」
「いやだから……」
言いかけて今のは自分の白昼夢か何かだったのではないかと疑い、無意識に唇に手を触れる。
「ああ、キスの事かい?」
しかしリアリのその言葉で現実に起こった事なのだと理解する。
「キスかい?じゃねえよ、急に何なんだ」
「うーん……何となく?」
リアリはトレードマークのフェザーハットをくいと指で押し上げて勝ち気な赤い瞳で笑う。
「何となくでそんな事すんじゃねえよ年頃の娘が……そういうのは心に決めた奴とだな……」
「アハハっ、トレイは意外に古風なんだね、今時キスなんて挨拶代わりさ」
「……おい、誰にでもしてるのか」
「あ、怒った?」
「おい」
「してないしてない、トレイにだけさ」
「それなら……いやよくねぇよ、誰にだって気軽にしていいもんじゃないだろう」
「わかった、つまりトレイの主張を要約するとボクには自分以外の人にキスして欲しくないって事なんだね?」
さらに言い募ろうとするのを思い止まり、ケストレイは溜息をついた後に自分のジョッキを仰いだ。
彼女は時折こうして自分をからかって楽しむ時がある、気紛れな彼女は今日、ケストレイを弄って遊びたい気分なんだろう。
「本当に冗談でそう言う事をするのはやめとけよ、俺だからいいものの他の奴だったら一発で勘違いするぞ、お前見てくれだけはいいもんだから……」
「見てくれだけってなんだよう、こんな立派な淑女をつかまえて」
「淑女振るんならその腹丸出しの格好何とかしろよ……いっつも目立ってんぞそれ」
「ははあ、自分以外には肌を見せるなって言うんだ」
「ええいもういいわい」
わざと曲解しまくるリアリに付き合いきれないとばかりにケストレイはジョッキを仰ごうとし……中身がもう無い事に気付く。
「奢ろうか?」
「何だ、珍しいな」
「今度はトレイの方からキスしてくれたら奢るよ」
「じゃあ、いらん」
「えー、何が不満なのさ?ボクみたいな美人にキスできてその上一杯奢って貰えるなんてどこにも断る理由がないじゃないか」
「お前とはそんな風に……」
ケストレイは言いかけて口をつぐみ、席を立ってカウンターに勘定を投げる。
「またな」
「どうしたんだい急に」
「酔いが回った」
「まさか、ボクと飲み比べで引き分けた君が……」
「回ったったら回ったんだよ、じゃあな」
ケストレイは素っ気なく言い残すとバーを出て行った。
扉をくぐったケストレイはぴしゃぴしゃと自分の頬を張る。
「酔ってるな、酔ってるに違いない」
言い聞かせるように呟く。
「お前とはそんな風にキスしたくない……ってか、じゃあどんな風にしたいってんだ俺は、アホか」
しきりに馬鹿らしい馬鹿らしいと呟きながらケストレイは去って行った。
「……大丈夫?リアリちゃん?」
「……大丈夫に見える?」
ケストレイが去った後のバーでリアリはカウンターにべったりと突っ伏していた、マスターのラミアがグラスを拭きながら言葉を掛ける。
「……い、一世一代だったのに……ファーストだったのに……スルーされたぁ……やっぱりボクなんか何とも思われてないんだぁ……」
先程の飄々とした雰囲気からは想像できないリアリの有様を見てマスターは溜息をつく。あのトレイという男も鈍感だがこのリアリという女も相当だ。
「……マスター、もう一杯」
「……大丈夫?もう結構な量よ?」
「ええい、もう一杯ったらもう一杯だ!今日はこの店の酒を飲み尽くしてやる!難しい言葉で言うと鯨飲してやる!」
マスターは溜息をつきながら渡されたリアリの杯を満たす、そして今回のこの酒代は半額にまけてやろうと考えた。
無論、残り半分は事の元凶であるケストレイから色々理由を付けて徴収してやるつもりだ。
13/02/24 11:25更新 / 雑兵

■作者メッセージ
ほらあるじゃん、連載に苦戦して行き詰っている時にふとネタを目にして何気なく書き始めたら何かスラスラ書けちゃって変なのができちゃうとか・・・。
キスするだけの物語というより寸止め四連発みたいになった。正直スマンカッタ

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