連載小説
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本編
俺は夢を見ているのだろうか。
俺の持ち込んだ燭台が『それ』の影を揺らす。

”ねぇ、聞こえているのでしょう?”

誰に言ったとしても信じてもらえるわけが無い。頭がおかしくなったと笑われるだけだ。そもそも俺自身が自分の正気を疑っている。
むしろ正気では無いことを願いたい。

”聞こえているのならば、どうか私のお願いを聞いていただけないでしょうか?”

夢ならば、いっそ狂えれば、どんなに救われていたことだろう。
ゾッとするような艶かしい女の声で語りかけてきているのは、間違いなく『それ』だ。
肛門から入り込んで背筋を舐めあげられるような余韻を残しながら、声が脳髄に語りかけてくる。
俺は確かに墓を暴いた。トレジャーハンターなのだから当たり前だ。そのことで罰や呪いを受けることだって覚悟はしていた。
だが、これは想像出来るはずもないだろう。

”どうか、どうか。お願いいたします”

それは哀れっぽい声を俺に送り込みながら近寄ってくる。
来るな、来ないでくれ、こっちこそそうお願いしたい。
俺の体が動かないのはお前のせいだろう。人の体の自由を奪っておいて、お願いしますとは何事だ。
だが、俺は声すら出せない。俺に許されているのは、彼女の願いを聞き入れることのみ。

”あなたの精をいただきたいのです”

魔物娘のことは知っている。おそらくこいつはアンデッド系のナニカなのだろう。
魔物娘の存在が広く認識された今となっては、死者が動き出すのは珍しい話では無い。だが、いくら死んでいるとはいえ、こんな有様で活動することなんて信じられない。
山奥の古城の地下。その隠し霊廟の再奥に葬られていたこいつが、元から魔物娘だったのかどうかなど知りはしない。

今重要な事実は、こいつは魔術か何かで俺の体の自由を奪い、たまらなく俺の精を求めているということだ。
だが、その体のどこに精を注ぎ込めばいい?

”このような体を愛してくれなくとも構いません。精を与えてくださった後に放り捨てていただいてもかまいません。だから、どうか”

『それ』の節くれて黒ずんだナニカが俺に触れようと伸びてくる。
ナメクジのような速度で、篝火に向かう蛾のように、まっすぐに俺に向かって『それ』が近づいてくる。
俺は今から『これ』に犯されるのか、こんな残骸のようなものに。

魔物娘ならば、彼女なのだろう。
だが、判別するための顔は無い。下顎を残して頭蓋は失われている。口腔内があらわになった頭部には喋るための舌もない。俺を見つめるための目も、匂いを感じるための鼻さえない。俺に声を届けるために、魔術を使用しているのは間違いではないだろう。だが、そんな体でどうやって魔術を使用しているというのだ。
物を考えるための脳みそさえ失われているというのに。

残っている下顎には頬肉が申し訳程度に付着している。肉とは言っても乾燥してへばりついているそれは、フライパンにこびりついたベーコンのようだ。
他の部位も肉が残っている部分はほとんどない。まるで何かにかじり取られた食べ残しのように、まばらに付着して残っている。
さすがは魔物と言うべきだろうか、まだ水分を含んでいる箇所もあって、『それ』が死んでいるのにまだ『生きて』いるということを主張している。生と死を共に宿した残骸はシュールなアート作品のようでさえある。
しかし、その有り様は彼女の受けた仕打ちを俺に訴えてきて吐き気がした。

一度に全身を燃やしたわけではないのだろう。やたらめったらに滅茶苦茶にやった。全身は燃やされて黒々としているのに、まばらに残った肉片にかつて生物であった特徴が残っている。
顎からぶら下がっているホースのようなものは気管か食道か。その先に繋がっているはずの肺も胃も存在していない。
肋骨の隙間には血餅だったのだろう。燃えカスになったススが内側からこびりついていた。心臓が鼓動していた時に突き破られたようだ。
炭化して背骨や骨盤にこびりついている黒いものは、腸だったのか、肝臓だったのか。
数本残った手の指も黒く炭化している。骨にまで届く刃物傷はおそらく手の腱を切った跡。足は膝から下は失われて残った大腿部もひしゃげていた。
部屋の埃っぽい匂いに加えて、死者の冷たい匂いが近づいてくる。炭の匂いがする。さいわい虫は湧いていないので蛆が溢れるようなことはない。

これは人の所業か。
彼女に刻まれた悪意と憎しみは、彼女の地獄を発掘した跡のようだ。
俺は近づいてくる『それ』をつぶさに観察して、自身を狂気に叩き落そうと試みた。それでも俺は正気を保たされている。
ここに満ち満ちている魔力の影響なのか。俺に生き地獄を押し付けないでくれ。
俺はただ棺の蓋を開けただけだというのに、それは地獄に通じていたというのか。狂気に逃げることを許さずに、正気ををじくじくと苛んでくる。

”ああ、これが男性の体”

『それ』は俺にたどり着いて、悩ましい声をまた俺に注ぎ込む。その音色は俺の正気を失わせない代わりに理性をすり減らせていく。
腹の底に熱い毒を送り込んで、俺を内側から揺さぶるように蕩かしていく。

”欲情してくださっているのですね。嬉しいです”

やめてくれ。そんな骨だけの方がましな有様のお前に欲情するなどありえない。それでも、彼女の声は俺の理性も倫理もほんの少しばかりのプライドだって、一緒くたに窯に入れて蕩かしていく。それを煮立てている熱は狂気と劣情。窯の中の腹わたが決して窯を壊して溢れ出してしまわぬように、丁寧に煮込む。

”硬い”

仰向けになった俺の股間の上で残骸は蠢めく。これから俺を残骸にするように、奈落の底にゆっくり引きずり込むように。
炭化した指も、あらわになっている骨も、乾いた肉も、あらゆる自分の体の部位を道具のように使って、器用にそいつは俺のズボンとパンツを引き摺り下ろす。
露わにされる怒張した俺自身。

”あ、ああ”

彼女の嘆息とともに首元にぶら下がっているホースが揺れる。風を送り込むことのできないそれは声を奏でてくれはしない。
彼女は瞳も顔もない頭部を、そそり立つ俺の肉に近づける。全く表情をうかがうことはできないが、魔物娘だったら瞳をきらきらさせているのだろう。だが、彼女には輝かせる瞳どころか、瞳を収める眼窩すらありはしない。瞳の中に、その悍ましい光景を映しているのはおれの目だけだ。
いっそくり抜いてしまえたら。そんな衝動も、動かせない体では叶えることはできやしない。

”今、気持ちよくして差し上げます”

声を出すな。その響きは興奮したくないと考えている俺の理性に対する嘲笑でしかない。だが、それは被虐性癖者に与えるカンフル剤のように俺の生殖器だけを熱くしていく。ぞわぞわと蟻が這い回るような感覚と共に、精気も正気も勝機も俺から抜き取られていく。
男根が生えた土壌を確かめるように陰毛をかき混ぜて、彼女のカサついた指が俺の肉棒を這い上っていく。体温どころか生物の柔らかさも感じられない冷たい無機物の感触。炭のカケラをまぶしてこすり上げられ、彼女の一部だった炭が俺の先走りと混ざって墨汁となる。その指が描くのは背徳と肉欲の賛美文に違いない。
こんなカサついてゴワゴワした感触が気持ちいいわけがない。それなのに俺の亀頭の先からは、俺の意思などまるっきし御構い無しで次々と涎が溢れてくる。
言い訳が効かないほどにそそり立つ肉の柱に亡者が縋り付いて5本に足りない指で弄ぶ。
ゴリゴリと下顎しかない歯で、隙間の開いた歯並びで肉棒を擦ってきた。何か別のこともされているのだろうか。むずむずするが、これを感じているとは認めたくない。

”どんどんと溢れ出してきていますよ”

嬉しそうな声音だけが聞こえる。眼はなくとも雰囲気でわかる、彼女は俺の顔を見て何かを思いついたようだ。
何をする気だ、やめてくれ。ああ、何てことだ。俺のイチモツをこいつは首から垂れ下がっているホースに突っ込みやがった。
肉棒をズッポリと収めた彼女の内臓器官。本来通すべき酸素も食物もいらないとばかりに、急造の吸精器官として転用される。

”こぼしてしまっては勿体ありませんもの”

俺から分泌される体液の一滴一粒子さえ逃さないとばかりに彼女はそのままホースを擦り上げる。
俺から流れ出して彼女に奪われているのは、俺の理性に他ならない。

ずちゅ、ずちゅ。
干からびていたホースは俺のカウパーを吸って潤いを帯びていく。徐々に滑らかさを増して吸い付いてくるそれに、俺は確かに気持ちよさを感じてしまっていた。
ダメだ。ここで出してしまっては、取り返しがつかなくなってしまう。すでに取り返しはつかないところまで来てはいるが、そこは越えて仕舞えばもはや後戻りのできなくなる分水嶺。
だが、俺の理性も倫理も彼女によってぐちゃぐちゃに煮込まれている。窯をかきまぜているのは彼女、火加減を見ているのも彼女。窯の中の具材に出来ることは、ただ完成を待つことのみだ。
俺に耐えることなど出来はしなかった。さらに、彼女の艶やかな声音も俺の背中を蹴り飛ばした。地獄の淵が口を開けている。

”あなたのザーメンで私の体を作ってください。私の体を構成する細胞、一つ残らずあなたの精液で作り直してください”

彼女の喉を、口に向かって遡っていく俺の精液。
今までにこれほど出したことなどない。彼女の声で溶かされた腹わたが全て精液に変換されて噴射した。
背骨を切り刻んで脳髄に叩き込まれる快感。電気信号はすべて快楽信号となり俺の肉体に余すことなく伝達、全身を感電させる。

「がっ、ぁ」
久しぶりに俺の口から出たのは擦り切れた濁音だった。
彼女の喉から吐瀉物のように溢れ出た精液が彼女の歯の隙間から零れ落ち、それを彼女は手で受け止めている。

ぴちゃ、べちゃ。
新しい音が俺の耳朶を打つ。信じられない。俺は驚愕と恐怖で目を見開く。
彼女の口内に舌が生えていた。歯の数も増えている。彼女は自身の歯にこびりついた精液を丹念に舐っている。

じゅぽっ。
淫猥な音を立てて、俺のペニスがホースから引き抜かれる。潤ってピンク色の肉肉しさを持ったそれから白濁が零れ落ちて、彼女の胸骨を伝っていく。
俺の精液が触れた部分は水分が増え、いやらしいテカりを帯びていた。
死者の眠っていた肉体に生者の性臭が染み付いて混ざる。冒涜としか思えない穢らわしい香りが俺の鼻腔に届いた。

”私たちは相性がいいようです。一度の精液でこんなに復元できるなんて”

彼女は嬉しさを抑えきれない様子で再び俺の肉棒に手を伸ばす。
先ほどまでのカサついた感触ではない。肉の感触が感じられる。それでもそれには皮膚はついておらず、肉欲が剥き出しにされていた。
擦りあげられる俺の肉棒はあれほど出したというのに、再び熱を帯びて立ち上がり始める。

”ふふ。それでは舌も戻ったことなので舐めて差し上げます”

彼女の剥き出しになった舌が俺の肉棒にまとわりついてくる。普通なら見ることのできない口内の秘め事が、フェラチオの妙技が眼前でくねる。
鈴口に舌でノックしてから、カリの裏側を這い回る。猟奇的で淫靡な光景に俺は目を反らすことが出来なかった。

うふふ。その笑い声は彼女の本当の声帯を震わせたものだったのだろうか。
視覚と触覚から俺を侵食してくる快楽刺激は俺を掴んで放さない。もう俺は彼女に料理されてしまったのだろう。後は余さず美味しく平らげられるだけ。まな板の鯉以上になす術はない。
俺がなまじ諦め始めていたからだろうか。二度目の射精は呆気なく迎えられた。
一度目と遜色のない量が彼女に染み込んでいく。

伸びていたホースは食道だったのか。その先に胃らしきものが形成されて、彼女の腹部に収まった。剥き出しのピンク色の貯蔵器官が俺の精液で膨らんでいる。ご丁寧に幽門はしっかりと閉じられて俺の精液を逃さない。
彼女の喉からもう一本のホースが伸びる。新しい軟骨が生え揃っているそれは美しく、生前の彼女の白く艶やかな喉を夢想させた。
頭蓋骨の上半分も生えてきている。もう少しで麗しい瞳が嵌る眼窩が出来る。

俺の精液を受けるごとに、復元されていく彼女の体。それは治っていくというよりは、生えていくといった方が正しい。
残骸だった彼女が増えていく。肉の植物が成長していく様だ。
端から見れば怖気と吐き気しか催さない惨状ではあるが。俺は自分の精液で女を作り上げている。男の劣情を吐き出せば吐き出すほどにキモチヨサが増えていくという現状に、倒錯的な期待を抱いてしまっていた。
もっと、もっと俺のザーメンをこいつに染み込ませてやりたい。理想の女性を白い石膏で作り上げた古代の芸術家のように、俺は自分の欲望をザーメンで固めて理想の女を作り上げてみせよう。この肉を俺好みの人型にしてやる。

「か、ひゅ、……ひゅ」
彼女の咽頭から掠れた音が鳴る。きっと、笑ったのだろう。
俺に芽生えた昏い欲望を感じとったに違いない。なんて女だ。こいつはそれを望んでいる。
俺は知らず、自然と口角を吊り上げてしまっていた。体が動く。
もうこいつには俺を拘束しておく必要なんてないのだ。彼女が泣いて嫌がったって、俺は彼女の願いを叶えてやる。だから、俺を動けるようにした方が、俺にとっても彼女にとっても、都合が良くて、気持ちが良いことになるのだろう。

少しばかりの肉が戻ったからといって、獣に食い散らかされたような有様は変わらない。それなのに、こいつは俺を獣(けだもの)にして食い尽くされることを望んでいる。なんて女だ、まったく。
俺は自分の体にまとわりついている服を剥ぎ取った。こいつは腹の中まで見せているというのに、俺はたかが皮膚さえ見せないなんてあってはならない。
俺は服とともに人の尊厳も理性も倫理も破り捨てる。残っているのは獣にも劣る浅ましい情欲だけ。
股間でそそり立つ獣の牙は獲物に食らいつきたくてしょうがないと涎を垂れ流しっぱなしだ。


俺は『それ』に襲いかかった。
部屋に充満した魔力のせいか、それとも俺はすでに心だけでなく肉体まで変革されてしまっていたのか。疲れも知らず、枯渇することもなく彼女に精を注ぎ込み続けることができた。

再生してきていた頬肉をより分けてペニスを口内に挿入する。カリをぷにぷにと弾力のある頬肉に擦り合わせてていると、彼女も侵入してくる男根に舌を絡みつかせてきた。柔らかい肉の感触があるくせに、相変わらず温度はない。
頭部は精液を吸収するための表面積がまだ少ないために、何度精液を吐き出しても復元は遅々として進まない。
なんとか頭蓋骨を復元して片方の目を生やし終えたくらいで一先ず次に移る。

肋骨の隙間から、血餅を剥がしてススを掃きながら胸腔内にペニスを突き入れる。彼女に手伝ってもらって肋骨を押し上げペニスを挟んで扱く。ミシギシと肋骨が軋みを上げていた。
数回の射精によって心臓や血管が復元してきたので、血管をペニスに巻きつけては扱きあげる。乳肉ではなく心筋をペニスで突き上げられているというのに、剥き出しの表情筋がとろけた表情を描いていやがる。心臓は柔らかいくせに、他の筋肉と違って固さも備え持っている。ゴリゴリと突き上げる。
肺が復元されても肺を機能させるための肋間筋も横隔膜もない状態では掠れた音が口から漏れ出るだけだ。
たっぷりと胸元から腹部にかけてザーメンを振りまいてやる。
そいつはうっとりとした仕草でザーメンシャワーを浴びていた。

しぼめられていた胃の出口から無理やりペニスを捩じ込む。やったことはないが、アナルに締め付けられるのはこんな感じなのだろうか。挿し入れている口の部分だけが締め付けてくる。
「かぅ、はっ、ぅ”ぁ”」
徐々に掠れた風の音でしか無かった声に音が混じり始めている。むせるような様子にも見えるのは、俺が注いだ精液が気管支あたりに引っかかっているのかもしれない。こいつのちゃんとした声を早く聞いてみたい。俺はより一層抽送を速めていく。
魔物娘が相手を傷つけることが無いのはこんな所にまで適応されているのか。俺の肉棒を溶かしてしまうはずの胃液もピリピリという刺激を与えてくるだけで、むしろ心地が良い。

「ぐ、ひゅう、んァ」
ザーメンを吐き出すごとに腸が伸びて俺のペニスは胃から遠ざかっていく。精液が流れると消化液が逆流するようなルートで膵臓や肝臓が作られていく。
テラテラと内臓が光る様で俺は欲情してしまうようになっていた。こいつのせいだ。俺はもうとっくに骨の髄までイカれてやがる。だが、それはこいつの全てが欲しいから。それならこれでいい。
狭苦しい十二指腸を抜けて、まだまだ狭苦しい小腸が続く。
突如、腸内面にある絨毛の襞が肉棒に絡みついて蠕動した。
「ぐぁっ」
ペニス全体をブラシで舐めあげられるような快感に俺は思わず声を上げてしまう。まんこだったらカズノコ天井だ。
堪らず射精した俺と彼女の悪戯っぽい視線が絡む。いつの間にか両の眼窩に目が嵌っている。
想像していた以上に美しく、泉のような水色を湛えているそれは、思わずくり抜いて飾っておきたい宝石のよう。

「お前、今の自分でやったのか?」
驚く俺をよそに彼女は俺を押し倒してのしかかってくる。今度はこちらの番だとばかりに、自らの腸に嵌ったままのペニスを扱く。
「う、あぁぁぁ」
艶かしく蠢めく腸内壁と、外から締め付けてくる彼女の白魚のような指。先ほどまでとは比べものにならないような圧倒的な刺激によって精液を放出し続けてしまう。俺の精液で彼女の腸がずるずると伸びる。彼女の手は止まらない。俺の精液は彼女の腸絨毛から余すこと無く吸い尽くされていく。腸が次々と伸びていく。
空腸、回腸、盲腸。大腸に入った途端腸肉の締め付けは緩むが、彼女の手の締め付けが補って気持ち良さが変わらず供給され続ける。
俺の様子を見て、頭蓋骨に張り付いた表情筋がにまっと笑う。
「なんと可愛らしいお顔でしょうか」

「声が」
俺は馬鹿みたいな顔をしてしまっていただろう。脳のヒダを直に弄くってくるようだった彼女の声が、俺の鼓膜を震わせてから認識される。
頭に直接伝えられるのも良いが、この方が震わせられる場所が多くてより心地がよい。音とともに漏れる彼女の艶かしい吐息と悩ましい響き。
「ぁンっ」
堪らず俺は最後肋骨をに手をかけて彼女を引き寄せる。復元された横隔膜が俺の指を弾き返そうとする弾力が感じられた。
口づけを交わして舌を絡ませる。俺が彼女の口内に溢れるほど注ぎ込んだ精液の匂いはすでにない。彼女が全て吸収してしまった。
交わされる唾液も俺の体液に変わりない。舌を絡ませるたびに彼女の唇が膨らみ、弾力が増す。。

ほう、と漏れた吐息が混じり合う。
どちらともなく放した男女のくちびるを唾液の橋がつないでいた。


お互いの余韻を味わいながら俺はようやく彼女に問いかける。
「お前は、ナンだ?」
「あれほど私を汚しておいたくせに、ナンだ、とは女性に向かってひどい言い草ですね」
「あ、ああ。すまない」
俺は先ほどの猟奇的な行いを思い出して思わず謝ってしまう。
「あ、いえいえ。怒っているわけではなく、ちょっとふざけてみたと言いますか」
顔を覆う皮膚が無いとはいえ、慌てる彼女の仕草は可愛らしかった。
「むしろお礼を言うのは私と言いますか」
そう言いながら彼女は俺のペニスを掴んでしごく。
「お、おい。ちょっと。ぐああああ」
堪らず射精してしまった俺の精液を受けて腸が最後まで伸びる。アナルも出来たのに肛門括約筋が俺にしがみついて離さない。そのまま臀部の無いアナルセックスをして、ようやくアナルは俺のペニスを解放してくれた。

「ああ。私としたことが、おまんこよりも先にお尻の方を開通させてしまったなんて、なんてはしたない」
うっすらと張り出した頬の皮膚を染めながら彼女が恥ずかしがる。しかし、問題はそこでは無い。
「これでお腹の中は大分戻りましたね。早くおまんこであなたのザーメンを受け取りたいものです」
うっとりとした様子で彼女が微笑む。
「それで」
「私が誰か、ということですね。私はこの城の主で、ワイトのモーリーと申します」
内臓が零れないように抑えつつ彼女がお辞儀をする。その拍子に腎臓が骨盤にぶら下がる。
「うわっ。気をつけろよ」
俺は慌てて声を上げてしまう。
「あら、すみません。でも、取れてしまってもあなたがまた直してくださるのでしょう」
悪戯っぽい視線に俺は堪らず目をそらしてしまう。

「私があの状態で閉じ込められたのはおよそ100年前でしたでしょうか。当時、名のあるワイトであった私の城に教団が攻め入ってきました。私たちは奮戦むなしく、ボロボロにされてここに封じられた、ということです」
「あれは人がしたことなのか」
「はい。どうしても殺すことのできない私たちに対して彼らは憤りいたぶりました。しかし、彼らはとても敬虔な方々だったようで、汚らわしい魔物に対しては拷問こそすれ凌辱するうようなことはありませんでした。だから、大丈夫です」
フンスと、得意げな彼女だが、問題はそこでは無い。どう反応していいか困っている俺をよそに彼女は続ける。
「別に私たちはすでに死んでいるので痛みは感じませんよ。快楽だけは別ですが」
しなだれ掛かってくる彼女に俺は嫌な予感がした。
「私はまだまだこんな様なので、もっともっと精液をくださいね。城主様」
「は?。城主って、な、むぐぅぅ」
慌てる俺の唇を彼女は自身の唇で塞いでくる。何か、熱いものが俺の喉を通り過ぎていく。
「か、ふっ。熱っ、お前、何を飲ませた?」
「何って、媚薬に決まっているじゃ無いですか」
媚薬なんてどこにしまっていたのか。さも当然のことのようにモーリーが、きょとんとした表情を浮かべる。
俺の喉と胃を焼いた熱は下腹部で収束してとぐろを巻く。
ここは彼女の城だ。どこに何を隠していても不思議では無いということか。
そして、彼女は俺に飲ませた媚薬を自分でも飲んでいた。
「あ、ふぅ。やはり効きますね。それでは続きを」
逃げることはできない。だが、俺は逃げる気など既にさらさら無い。

俺は彼女を組み伏せると腸肉の間にペニスを捻じり込む。
「あっ、はぁァ」
彼女の口から嬉しそうな嬌声が漏れる。
ずちゅずちゅ。ぐちゅぐちゅ。
滑り帯びた腸肉が俺のペニスに巻きつく。俺が突き入れるたびにせっかく作られてきた脂肪が潰れて脂が潤滑剤の役割を果たす。
無機物だったものから脂の香りが、生き物の匂いが漂ってきている。
せっかく作られた腸を支えるための腸間膜も破って絡めていく。
俺のペニスが腹部を乱暴に壊すたびに彼女の口からは獣のような喘ぎ声が上がる。
「う”っ、が、ぁ”、ァ”、あ”あア”」
あまりの反応と声に、ここまでやってもいいのだろうか、喉が潰れやしないかなどと心配しそうになるが今更だ。それにまた俺のザーメンで治してやればいい。


もうどれだけ精を吐き出したのだろうか。
それぞれの臓器を収めておく膜、吊り下げておく膜、支えるための筋肉群が徐々に作り上げられ、彼女の腹腔内が満たされていく。
そこで俺は見つけた。子宮だ。膀胱の奥に隠れていた。子宮を作り出すために何度も注いでいたのだが、隠れていただけで既に作られていたのかもしれない。俺にいつまでも精を注ぎ入れてもらいたいために黙っていたのだろうか。
子宮にくっついている卵巣も見れて取れる。ということは、彼女は子供も作れるのだ。
彼女と俺の子供を想像してしまって、思わず顔がにやけていた。

「何をにやけているのですか」
そんな俺とは対照的に彼女から冷たい声がかかる。すでに彼女の美しい顔は元どおりになっている。彼女曰く、元の顔とは似ているものの違っており、俺の好みの顔になっているようだ。本当に俺の欲望が彼女を形作っているようで、仄暗い悦びにさらに股ぐらが滾ってしまう。
「まさか、またやる気では無いでしょうね」
彼女が訝しんでいるのには理由がある。それは俺が先ほどやらかしてしまったからだ。

新しく作られて膨らんでいた臓器を見つけてこれが子宮かと思って、俺が掴んだのは膀胱だった。
尿を止めておくための筋肉がまだ完全に復元できていないのに、それを掴んでしまえばどうなるかは想像できる。尿道を尿が走り抜けて彼女の下腹部から勢いよく吹き出たのだ。
俺と彼女が見つめる前で飛んでいく彼女の尿。綺麗なアーチを描いて飛んだな、という俺の無神経な言葉に彼女はキレた。
剥き出しの大腿骨で蹴り飛ばされた俺に、腸を零しながら迫ってくる彼女。真っ赤になった鬼気迫る表情で、出来かけの足を使って床を這いずってきた。それは初めの姿よりも怖しかった。
腸で首を絞められるなどというのはもう二度と経験したくは無い。
それでも、了解を得た時はまたやってもいいと言ってくれたのは、彼女が気持ちよかったからに違いない。

「違う。ほら、ここ子宮ができてる」
「ふぁっ、ア”ンっ」
腹の中に手を入れて子宮を引っ張ってやる。
「ン〜〜〜っ」
ボタボタと股間から液が流れ出てくる。愛液か、はたまた尿か。
「ね、ねぇ。挿れて、みて」
彼女は息を荒げながら、期待と不安のこもった眼差しで懇願してくる。彼女の視線に俺は思わず生唾を飲み込んでしまう。
「挿れろ、ったって。どこが入り口でまんこなのかまだわからないぞ」
まだ彼女の陰部は形成されていない。骨盤には筋肉がつき、骨盤の中に向かって子宮は伸びてきている。
だが、下から覗き込んでもどれが正解の穴なのかはわかったものでは無い。

「大、丈夫だから。何を今更。あなたのちんぽが入ったら、私の子宮の方から迎えに行くに決まってるわ。それに、あなたにザーメンをかけられすぎて、私の体は全部、あなたのためのおまんこのようなものじゃない」
乱暴な言い草だがその通りだった。俺はそのまま骨盤の下の穴から彼女の体内に向かって乱暴にペニスを突っ込んだ。
「あっ、ハァっ、ん、ンゥ、ンぁァ」
彼女の言葉どおり、俺が抽送を繰り返して精液を吐き出すごとに俺のペニスは何か肉の筒のようなものに覆われていく。それの締め付けは徐々に強くなっていく。
俺とモーリーの荒い息は重なって、もうどちらがどちらのものかわからない。部屋には死者と生者の性臭が満ち満ちて生臭い。
どんどん心地よくなっていく膣の感触に俺にはもう余裕がなかった。自分のために作られていく自分専用のまんこは完成したら1ピストンもする前に射精してしまうのではないかと予感させるほどの具合の良さだ。
だが、それは彼女も同じ。膣が作られていくに従って、彼女の喘ぎ声が激しくなっていく。彼女の膣は俺のペニスに対して、最高の感度を備えている。それこそ、完成品は一突きだけで彼女を絶頂に導くものであることが十分に予感させられた。

「あ”っ、あああああああ!」
「ァン、ハあァァァ、ゥン、〜〜〜〜ッ」
精の噴射とともに彼女も絶頂を迎える。作られていく彼女の内臓の原料は俺の内臓に違いない。腹わたが根こそぎ出て行ったかと思える快楽に何度も俺と彼女の体は震えてのたうつ。
俺の精液で彼女の子宮は膀胱のように膨らんでいた。つついてみたい好奇心があるが、今度こそ何をされてしまうかわからない。
本当に精液を注ぎ込む場所だから吸収率もよかったのだろうか。彼女の体はかなり形作られていた。腕と顔はすでに元通りで、足ももう少しだ。
散々かき混ぜていた腹部や胸部は治りが悪く、腹部にはまだ大きな穴が空いている。

「ねぇ。また、挿れて」
モーリーが出来立てのおまんこを広げておねだりしてくる。可愛らしいクリトリスもぷっくりと充血して誘ってくる。よほど嬉しいのだろう。
「はぁぁァァ”ァ、ンゥ」
「ぐああああああ、なんっだこれ」
俺は彼女のヴァギナにペニスを突き入れたが、あまりの刺激に挿れただけで堪らず射精してしまっていた。彼女も挿れられただけでイッてしまったようだ。
彼女の膣肉はぴっちりと俺のペニスに吸い付いて絞り上げてくる。細かいヒダヒダも俺の感じ易いところにこれでもかというほどに縋り付いて攻め立てる。カリも亀頭も丁寧に舐りあげられた。
俺が作った、俺のための、俺だけのまんこに感動すら覚えてしまうが、そんな思考は絶対とも思える快楽によって塗りつぶされる。
あまりの激情に動けない俺にかわって、彼女が腰をくねらせてくる。なんて貪欲。こんなものに抗えるわけがない。
だが、求められて俺もいきり勃つ。

けだものの吠え声でしかない男女の声と情事の匂いが部屋に立ち込めていた。どんな媚香を立ち込めたって、この芳香には敵いやしない。
頭がクラクラする。もう愛しい彼女のことすら考えられない、ペニスを突っ込んでいる女の事しか感じられない。
彼女もそうに違いなかった。俺の手をとって自分の膀胱と子宮に添えさせる。滅茶苦茶にして欲しい。彼女の意図を理解して、思いっきりそれらを掴んで扱いた。子宮は俺のペニスも一緒くたに掴んで扱く。

「「がああああああああああああああああ」」
二匹のけだものの雄叫びが部屋に木霊した。
俺の精を叩き込まれて膨らむ子宮を押すと、精液が溢れ出てくる。
膀胱を押すと膣の手前にある尿道口から尿が出る。陰門をくぐる頃には全てが一緒くたで混ざり合いながら俺のペニスを伝っていた。

「ン、っは」
彼女の腹部から手を引き抜くと、彼女の腹部が閉じられていく。腹膜、腹筋、皮膚。
透けていたものが見えなくなっていくように閉じていく。曝け出されていた秘密が再び秘密の箱にしまわれていく。
禁断の箱を開けると様々な邪悪なものが飛び出して、最後に箱の中に希望が残ると聞いたことはあるが、俺は彼女という希望だけを抜き取って、箱を閉じることに成功したようだった。醜悪な嗜好という、幾つかの邪悪は俺の中に飛び込んだようだが。


「ありがとうございました」
息も絶え絶えに彼女は俺に礼をいう。
礼をいうのはこちらの方だ。信じられないような淫靡で冒涜的な悪徳を味わって、得難い淫猥で甘美な美徳を手に入れられた。
「出来れば、あなたにはここに残っていただきたいのですが。ご無理は言いません」
顔を俯かせるながら彼女は言う。ワイトなのに、魔物娘なのに。どうした事だ。
なんでもないことのように言っていたが、あんな有様にさせられてそのまま100年間も封じられていたということは、いくらアンデッドの魔物娘とはいえ並大抵のことであるはずが無い。解体され尽くした体に残っていたのは、恐怖や絶望、憎悪や憤怒といった感情だったに違いない。
俺との交わりでそれがいくらかでも和らげられて、別の感情を思い出していてくれればいいのだが、すぐにそうは行かないだろう。
だから、あれほど激しく交わりあったのにそんな言葉しか出てこないのだ。

だから、俺はこう言ってやる。
「俺はな。トレジャーハンターだ。どういう仕事かわかるか?」
「はい、財宝を探す仕事ですよね」
「ああ、そんな俺が手ぶらで帰れるわけがない」
「そうですね。でしたら、宝物庫へご案内いたしましょう。城のものはほとんど持ち去られたと思いますが、もしかしたら見つかっていない宝物庫もあるかもしれません」
「いいや、今回の冒険に見合うようなものは並大抵なものじゃ無い。だからな、全部もらう。この城にあるもの全部。もちろん、モーリー、お前もだ」
俺に言われたことをすぐには理解できなかったようで、彼女は思案して、ハッとして、さらに思案して、おずおずと俺に聞く。
「それ、は。私と結婚して城主になってくれるということでしょうか?」
「そうだよ。だから、俺と結婚してくれ、モーリー」
俺の言葉をまだ信じられなかったのか、目を白黒させていたが、モーリーは静かに頷くと破顔した。
ワイトのくせに、アンデッドのくせに、その笑顔は太陽よりも眩しくて美しかった。

古城の地下の霊廟。
いささか埃っぽいが、俺たちにとってはふさわしくロマンチックともいえるだろう。
俺たちは互いにきつく抱きしめあって、愛を誓ったのだった。







「さて、じゃあ、仕上げをしようか」
「仕上げ、とは?。結婚式ですか」
俺の言葉にモーリーはにこやかに上機嫌で答える。しかし、俺が次に発した言葉で彼女は凍りつく。

「いや、お前はまだ完全じゃ無いだろ。その胸、ワイトがそんなに小さいわけが無い」
「…………」
「だから、今からまたおまえにぶっかけまくって元の大きさに戻してやるよ」
「…………………………」
「どうした、嬉しく無いのか。胸って脂肪の塊で結構重いらしいじゃ無いか。今まで支えていた重みが無いと寂しいだろ。その胸だと」
「……………………………………………………………………………………………。あなたは大きい胸の方が好きなのですか?」
「もちろん、好きだ。でも、お前だったらどっちでも構わないけどな」
俺の最後の言葉は彼女には届かなかった。
俺は改めて彼女を見て、背筋が凍りつく。そこにいたのは美しく、冷酷な威厳を湛えた、まさしく厳然たる不死者の女王だ。
今の彼女は人を恐怖と狂気に叩き落とす、夜空に座す月。

「すまん。それで元どおりだったんだな。大丈夫だ。俺は確かに大きい胸が好きだが、お前ならそんなに小さい胸であっても大丈夫だ。小さい方が動きやすいもんな。それに小さ」
「…………………(ブチッ)」
再び俺の体の自由が奪われた。
「悪かった。本当に悪かった。謝るから、許してくれ。お前の小さい胸のことはもう言わないから、小さいなんて二度と」
俺のペニスが彼女の足によって踏みつけられる。
「何度、私の胸を小さいと言えば気が済むのでしょうね。私、試してみたいことがあるのです。インキュバスになったら相手の魔物娘との生活が苦にならないようする特性が備わるそうですよ。ワイトの私の伴侶になったのならば、殺しても死なない、という特性くらいついてもおかしくはありませんよね」
彼女のすわった瞳が俺に本能的な恐怖を呼び起こさせる。
「私ばっかりお腹の中を見られたのも不公平です。あなたも腹わたをブチ撒けなさいっ!」
「ごめん、ごめん、ごめんなさい!」
謝っても彼女にはもはや聞く耳は無い。

「それに」
彼女は幽鬼のように揺らめいて手を振る。
「何をしたんだ」
俺はこれから何が起こるかわからず怯える。
「あなた、言いましたよね。この城にあるものは全部もらう、と」
この古城には俺と彼女しかいない筈なのに、俺たちがいる再奥の霊廟の外から物音がする。確かに彼女が眠っていたここにたどり着くまでにいくつもの棺桶を目にしたが。そんなことが、あってたまるか。
俺の予感を肯定するように音が強くなる。まるで棺桶の内側を爪でひっかくような音が幾つも幾つも聞こえてくる。
「私も言いましたよね。教団は、私たちを封じた、と。私一人だけがこの城の住人ではありませんよ」

カチカチ。俺の歯が打ち鳴らす音だけが部屋の中に聞こえる。部屋の外には何かを打ち破るような音すら聞こえてきた。
「だから、あげましょう。彼女たちも。存分に可愛がってあげてください」
彼女の後ろの扉からなだれ込んでくる亡者の群れ、皆が皆最初に会った時の彼女のように残骸のような有様だ。
元どおりになった彼女がワイトだったように、彼女たちも皆がみんなゾンビやグールというわけでは無いだろう。
「精液をたっぷりと注いであげて元どおりになれば、あなた、が、好きな! 胸の大きな子もいますよ。こんな小さい胸のでは無くてね!」
周りの骸たちの中には言ってはいけないことを言ってしまったな、とばかりに額に手を当てたり、目を覆ったりしているものがいる。
しかし、彼女たちの誰もが俺に襲いかかって、貪ってくるのは明白だ。

俺はこれから始まる惨劇を想像して虚ろな目をすることしかできなかった。
16/07/11 10:49更新 / ルピナス
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■作者メッセージ
『不死者の女王』
骸は狂気を身籠っている

穢れた肉の外套をまとい直し
夜会を開く貴婦人 楚々艶々
肉欲の宴に昇ったのは月か太陽か
右手は良人(おっと)の首に添え
左手の杯は汝を招く
酌み交わそう
生者の執着を嘲笑って肴にし
死者の永遠を言祝ぐ美酒

今宵宴は開かれた
比類なき謝辞とともに讚えよ
彼女こそ
永久(とわ)に美しき不死者の女王

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