連載小説
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新顔
「まぁまぁ、皆さまようこそおいで下さいました」
「うむ、今回はしばらく世話になるぞ」

アゼレア達一同が訪れているのは、かつて行綱の初陣の褒美として訪れた温泉街の旅館。
前回に続いて、魔王軍全体にも勇名が届くような戦いを制した部下達への慰労旅行。女将である弥生は今回の一行の滞在目的をそう聞いている。
だが、一行の様子が前回とは異なる事は火を見るよりも明らかだった。

「…………♥」

紅一点ならぬ白一点。唯一の男を魔物達が囲うようにしなだれかかり、少し困ったような表情の彼の身体へ愛おしそうに腕を絡ませているのだ。
弥生はその様子に嬉しそうに微笑んだ。この宿を訪れた客がこうして結ばれている姿を見るのは、彼女にとって何よりの喜びでもある。
何より、彼女達はこれから連泊するのだ。きっと素敵な嬌声が溢れる滞在期間を過ごして貰わなければならない。

「あら、そちらの方は……」
「ふふ、お初お目にかかります」

それにどうやら、前回には見覚えのない魔物の姿も増えている。見た目に寄らず、彼は随分な女泣かせらしい。……もっとも彼女達のお熱っぷりから、主に流している涙は布団の上での歓喜の涙なのだろうが。
一人は、男と同じく火の国の出身らしき狐憑き。巫女装束を纏っている事からして、どこかの神社で自分と同じ稲荷に仕えていたのだろうか。
そして、もう一人は。

「…………」

男の身体の陰に隠れるように身を寄せ、その服の袖を握っている――美少年と見紛うような中性的な顔立ちをした、金髪碧眼のサキュバスだった。





――――――――――――――――――――





「皆、本当にご苦労であった」

――時は先の戦いの決着直後にまで遡る。
魔王城へと戻ったクロエ達は、いつものようにアゼレアの司令室へと集められていた。

「今回の働きで皆には後日、勲章と特別報酬が授与されるとの事じゃ」
「……はい。ありがとうございます」

いつもならばそんなアゼレアの言葉にノリ良くはしゃぎ始めているであろう彼女達。だが、今日はどこか上の空といった反応だ。
それを伝えるアゼレアも、どこかちらちらと視線が泳いでいて……有り体に言えば、ここにいる全員が気になって仕方がない事があった。
だから、代表してアゼレアが口を開いた。

「……なぜ、お前がここにいるのじゃ……?」

行綱の服の袖を握り傍に立っているのは、その先の戦いで行綱が打ち倒した筈の張本人。クレイグと名乗ったあの勇者の少年。
いや――少年、というのはもう正しくない。
魔物化しているからだ。
アルプ。
男性の人間が例外的にサキュバスへと変化するという、とても珍しい魔物娘に。
勝利を納めた直後の行綱に飛びつき、興奮のままにその鎧をはぎ取り始めていたクロエ達の傍に、この元少年はいつの間にかこの姿で立っていたのだ。
当然ながら、一同は心臓が止まるかと思うほど驚いた。

「…………」

返事はない。
行綱の袖をぎゅっと強く握り直し、その身体の陰に隠れる彼女にアゼレアはううむと眉根を寄せた。
ちなみに、なぜ彼女達がそんな状況になるまでこの元少年の動向を許してしまっているかと言えば、単純な腕力ではにここにいる総がかりでも彼女に敵わないからである。次点で試したミリアの転移魔法も、案の定というか何というか一目で習得されて戻ってきてしまった為、本格的に引き離す手段が存在しないのだ。
恐らく危険はないというアゼレアと行綱の直感により、そのまま行綱にくっついてここまで来てしまったのだが。
そして実を言ってしまえば、なぜこの元少年が行綱の傍を離れないのか、魔物達は既に皆分かっている。

「……そう隠れるでない。妾ももう、ここから無理に追い出そうとはしておらん」
「…………!」

そんなアゼレアの言葉に、微かに彼女の表情化から不安が和らいだように見えた。
本来は女性からしか変化しない筈の魔物化が男性から発生する原因は二つ。
元から女性へと変化する事に強い憧れを持っているか、特定の同性へ執念とも言える程の強い情愛を抱いているかのどちらかだ。
この元少年が前者であったとは考えにくい。何せ自身から生えている羽や尻尾、角を不思議そうに触ることはあっても、女性の身体になっている事に対して喜ぶどころか、戸惑っている様子すらほとんど見受けられないのだ。性差というものもよく理解できていないのかもしれない。

ならば彼女は、行綱の事が好きなのだ。

「じゃが、せめて理由を効かせてはくれぬか。お主と行綱は、戦場で二度ばかり立ち会ったばかりの仲であろう?」
「…………そ、の」

クレイグはたどたどしく口を開いた。

「初めて、壊せなかった、から……」

殺さないように。でも抵抗できないように、あんなに痛めつけたのに。
あまつさえそのうえで自分に反撃し、殺気の籠った視線すら向けて来た。
怖かった。
生まれて初めて、ドキドキした。
それら全部、全部――自分にとっての、初めてをくれた相手だから。

なのに、きっともう彼は自分の事を見てくれない。
自分を倒しに来た彼は、もう自分の事を倒してしまったのだから。
だから、羨ましかった。自分の事を見てくれなくなった後も、彼の傍に居続けるのであろう彼女達が。
羨ましくて、羨ましくて……そして気付いた時には、この姿になっていた。

(……だいぶ、斬新な好かれ方ですね……?)
(ドラゴンが自分に勝った男に惚れるみたいなモンか……?)
(どちらかと言えば雛の刷り込みなんかに近いような……)

こそこそと囁き合う魔物達を横に、再びアゼレアが口を開く。

「ふむ。……分かった」

そう言うアゼレアも、行綱に惹かれていたのは出会う前から。あの胸騒ぎに焦がされての事だ。
なるほど、時間は問題ではない。

「ただし、条件がある。行綱や妾の言う事を良く聞き、皆と仲良くする事。……できるかの?」
「…………っ!」

彼女は勢いよく頷き、そうしてはっと思い出したように行綱の顔を見上げた。

「……ぁ……腕を、ぐちゃくちゃにして……ごめんなさい……」
「……いや。あの時は、こちらも殺す気だったので……」
「……じゃあ、お互い様……?」
「ああ」
(((……どんな会話だ…………?)))

何とも言えない表情を浮かべる一同だが、彼女達が行綱を死の縁まで追いやったクレイグに対してそこまで大きな反感を表に現していないのも、つまりはそういう事だった。
彼女達は軍人だ。戦場はそういう事が起こり得る場所だという事を、そして何より行綱がそれを理解した上であの場所に立っている事を、ちゃんと理解している。
それは、目の前で最愛の男が殺されかけていれば流石に頭に血も登るが……それをいつまでも恨むのは、彼自身も望む所ではないだろう。
一度は行綱を死の縁に追いやった相手とはいえ、彼女は憐れな程に無垢で、そして今や皆と同じ魔物だ。
帰る身寄りも残されていない彼女から行綱を取り上げ、追い出すのは心苦しいものがもある。だからアゼレアが認めるのならば、彼女が行綱を囲う仲間に加わる事に異を唱える者はいなかった。

「さて。では、いつかの様に皆で温泉にでも行くとするかの。皆への褒美と、新しい行綱の側室との懇親を兼ねて、の」
「やったー!いつからいつから!?」
「ふふ、今からじゃ。実は既に予約はいれてある」
「さっすがアゼレア様ー♪」
「じゃあ、こいつの分の下着やらも用意してやんないとな。……あー、クレイグ、だったか?」
「……はい」
「そうだ、クーちゃんって呼んでもいいですか?」
「……前から、思っていたけど。舞のセンスは……独特……。」
「えー、かわいいじゃないですか……。ねぇ、クーちゃん?」

にわかに湧き始める一同の中、行綱はと言えば。
そんなアゼレアの言葉に――ようやく、自分の服の袖を握っている元少年が自分の新しい愛人になろうとしているという、一連の会話の意味を理解していた。





―――――――――――――――――――





「ん、っ…………♥」

右手には緑色の鬼。左手には幼い魔獣。腕をそれぞれの腰に回しながら、その咥内を交互に味わう。
部屋に通されるなり男へと群がる魔物達。行綱の身体へ愛おしそうに頬擦りし、服をはぎ取る彼女達をアゼレアは微笑ましく眺めていた。今回の旅行は彼女達にとっての褒美でもある。そうして結局のところ、魔物達にとって夫と認めた男以上の褒美は存在しないのだ。

「さて、お主はしばらく妾と一緒に見学じゃ。……これから毎日行う事じゃ、しっかり見て学ばねば、の♥」
「っ………………」

そんなアゼレアの横では、息を呑んだクレイグが食い入るようにその光景を見つめていた。

『――なんじゃ、行綱?』

慰安旅行の準備の為、クレイグを連れた魔物達が出て行った後。行綱は部屋に残り、アゼレアに相談を持ち掛けていた。

『安心するがよい。いまさら愛人が増えた程度で妾は不機嫌になったりはせん』
『……それはそれで、逆に何をしてはいけないのかが怖いので、今度じっくり話を聞きたいのだが……』
『決まっておる。妾の事を構ってくれなくなったらじゃ』
『それは、絶対にない』
『ふふ、そうかそうか。それは良いことを聞いたの』

以前より砕けた様子で言葉を交わす二人。自分達が少しずつ夫婦の距離感というものに近づけている気がして、行綱はそんな些細な事が嬉しかった。
……その話題が他の女に関する事なのは、我ながらどうなのかと思うのだが。

『いやな。存外に悪くないと思っての』
『?』
『お前という夫を共有する事が、じゃ』

余裕すら伺える穏やかな表情で、アゼレアは言った。
行綱や部下達の悲痛な姿を見た後である今、皆が幸せそうな表情で淫らに交わる光景の何と安心する事か。
それに彼の妻が増えるという事は、彼と交わした約束――行綱がより強力なインキュバスとなるのは勿論、万が一、彼が望まぬ方向へ道を踏み外した時は持てる全てを束ねて彼を止めるという誓いの同志を増やすという事にもつながる。

『それに、妾も魔物を想い人から引き離すような真似は出来ん。……変な話と思うかもしれんが、むしろ応援したいとすら考えておる』

そうして、少し意地悪そうな笑顔を行綱に向ける。

『それに、お前も悪い気はしておらんじゃろう?』
『…………』

どことなくバツが悪そうな、しかし否定するわけではない行綱の表情が、それが肯定だという事を物語っていた。
行綱はずっと自分が親になる事、誰かと夫婦になる事を恐れ、それを望む事すら自分に禁じ続けてきた。
そんなの家の話を聞いて、考えていた事があった。
ただでさえいつ死ぬかも分からぬ戦場に生きる家系、さらに度を超した鍛錬を自らに課す彼ら。
そんな彼らが行綱まで命を繋ぐ事が出来たのは、その血と家を絶やしてはならないという使命感だけではなく――元々が、強い性欲と繁殖欲を備えた家系だったのではないか。行綱の頑なとも言えた血を残す事に対する忌避は、その衝動の裏返しだったのではないか、と。
ならばその押さえつけられ、膨れ上がった衝動まで含めて、自分は彼を愛してあげたい。
それが、アゼレアの結論だった。

『その、ことなのだが』

行綱は一度振り返り、皆が戻ってきていない事を確認した。

『彼女は元々、男だっただろう』
『うむ』

行綱は、言葉を選ぶように続ける。

『……元々、男である彼女が、姫様達の身体に触れる事を、その、飲み込めるか……分からない』

これからの生活で、彼女達との交わりが全員との乱交が基本となる事は行綱も理解していた。
そうしてその中で、時に昂った彼女達同士が舌や身体を絡め合うという事も。
彼女の身は既に魔物であると理解していても……それが、どうしても心のどこかで割り切れないのだ。
有り体にいえば、嫉妬してしまいそうで。

『……ふむ』

そうしてアゼレアは、にんまりと笑った。

『……なぜ笑う』
『お前が、そうして妾に独占欲を抱いてくれるのが嬉しくての』
『…………』

黙ってしまった行綱に、アゼレアが続ける。

『つまりはクレイグが既に男ではないと、お前が心から理解できれば良いという訳じゃな?』
『……。はい』
『そういう事ならば、妾に任せておくが良い』

彼女は笑った。
身も心も魔物に堕とすのは、淫魔の得意分野だと。



――そうして、再び場面は現在へと移り変わる。

「ぁ、行綱ぁ…………♥」

足元に跪いた姉たる狐付きと飛竜がその陰茎に舌を這わせる。冷たい身体の魔術師に熱い胸板の先端を舐めさせ、片腕に抱いた魔界の騎士に嬌声を上げさせる。

「……ぅ、ぁ…………」

淫猥な表情を浮かべた魔物達とその夫の淫宴を見守る彼女の身体には、はっきりとした変化が起き始めていた。
身体が火照る。下腹が、痛い程にじくじくと疼く。乳首が衣服に擦れるのも痛い程に尖り、喉の渇きにも似た飢餓感が身体を駆け巡る。
そんな彼女に、アゼレアは耳元で囁く。

「……さぁ、しっかりと見るか良い」
「………………っ」

その吐息が、耳にかかる程の距離で。

「これからお前が、行綱と行う事を……♥」
「っ………………!」

クレイグの身体に、異変が起きた。
これから、自分がされる事。それを意識してしまっただけで触れられてもいない筈の身体に、甘い痺れが走る。
乳首に、太ももに、腹に、そして陰核に。彼女は身体をがくがくと震わせると、自らの身体を抱き締めその場に膝をついてしまう。
やはり、思った通りだ。
あらゆる魔法や剣技をその目に移しただけで自分の物にしてしまう彼女は――魔物が本能的に求める夫からの快感も、同じようにその身にフィードバックさせてしまう。

だから情欲を煽り、彼女達と行綱の交わりをその目に焼き付けさせてあげるだけで。
この小さな淫魔の身体は、彼専用の雌へと堕ちる。

「ああ見えて、行綱は女の弱点を探すのが上手いようでの。……ああ、自分で身体を触ってはならんぞ?」
「…………っ!」

視線の先には陰核に添えられた指先一つで表情を蕩けさせ、嬌声を上げる魔獣の少女の姿。
自らの身体の疼きに触れようとするクレイグの手をアゼレアが押さえ、代わりにそっとクレイグの下腹をなぞるように指を動かした。
触れてはいない。
なのに、その場所に耐えがたい熱が灯る。

「ぁ、っ、お兄ちゃん……っ♥」
「困った事に、そうして嬲った魔物が上げる嬌声がまた好きなようで……ああなったら、もう逃がしてはくれん……♥」
「っ…………!」

そうして、そんな彼女達の視界の先で。
男は、飛竜の喉奥へ精液を吐き出した。

「〜〜〜〜〜〜っ、っっっっ♥♥」

頭の中が真っ白に染まり、溺れるような嬌声がクレイグの喉奥から漏れた。
意識がふわりと浮かび、その首からがくんと力が抜ける。
生まれて初めての絶頂に、ひゅー、ひゅーとあえぐような呼吸をする彼女の顎に手を添え、再び顔を上げさせる。

「さぁ、本番はこれからじゃ」
「…………!」

男は白濁にべったりと汚れた肉棒を死者の体温を持つ伴侶の一人に舐め清めさせると、小さな魔獣の膝裏に腕を入れ、向き合うような形で抱きかかえる。

「ぁ…………」

そうして広げられた、熱い蜜が下たる幼い割れ目へ。
その剛直を、突き立てた。

「「――――――っ、っ!!!!」」

ミリアとクレイグの、声にならない嬌声が重なった。
鍛え上げた男の身体に小さな身体が玩具のように軽々と扱われ、反り立った肉棒が容赦なく、粘着質な水音を立てて突き入れられる。
目の焦点すら定まらない彼女の表情は、しかしこの上なく幸せそうで。
だからこそクレイグは、確信した。
こんなものではないのだと。
この身体に走る強烈で、しかしどこか最後の一線が残されたような快感は、彼に直接ああされる事でしか、本当に満たされる事はないのだと。

「…………っ、っっ!!!!!!」

どくんっ。
ミリアの小さな子宮に、男の熱い精液が注がれる。
それは男の肉棒が引き抜かれると同時、ごぽりと音を立てて溢れ落ちた。
ふらりと倒れそうになるクレイグの身体を支え、アゼレアは妖艶に微笑む。

「ふふ。……さぁ、まだ一人目が終わったばかりじゃ。しっかりと見て、お勉強をせねばな?」
「っ、ぁ……っ………♥」

呼吸も絶え絶えに目を潤ませたクレイグは、下唇を噛み――健気に頷いた。





――――――――――――――――――――





それから、しばらくの時間が経って。
部屋の中には、男女の交わりの淫臭が立ち込めていた。

「ぁ、ぁ…………♥」

股から精液を溢れさせた魔物達は、蕩けきった表情で男に指を、舌を、その肌を摺り寄せる。全員との交わりを経て尚、その剛直から硬さが失われる事はなく。むしろよりその硬度と熱を増しているようですらある。
魔物達は、既に知っている。この男は、むしろここからが凄いのだと。
代わる代わるに女を抱く中で思考の枷が外れ、獣欲に支配された、ここからが。
そんな彼が、歩み寄る。
成りたての一匹の淫魔と、最愛の魔界の姫の元へ。

「ふふ。ちょうど食べごろじゃぞ、行綱♥」
「…………」

それはまるで、飢えた獣の前に差し出されたご馳走。
目の前で散々に交わりを見せつけられ、既に幾度もの絶頂を迎えた彼女。
その顔は涙と涎でぐちゃぐちゃで、朱く上気した身体は発情した女の甘い匂いを纏っている。
それは他の魔物達と変わらぬ――自らに抱かれる事を待ち望んでいる、紛れもない雌の姿。

「ぁ………………♥」

目の前には、幾人もの魔物を犯した剛直。
見下ろされる、視線。
戦場で向き合った時のそれにも似た、しかしその奥にどろどろとした欲望を宿した瞳。
身体が、心が歓喜に震える。
ああ、そうだ。この目だ。
この目に、もっと自分を、見て欲しかったんだ。
少女の唇から、声が零れた。
心底、嬉しそうに。

「こ、わい…………♥」
「…………っ」

その姿に。
自身でも訳が分からぬ程、己が昂っているのを男は感じた。

「ん、っ……!っ………♥」

華奢な身体が抱き絞められ、その唇が塞がれる。
極限まで焦らされた小さな淫魔は――それだけで、今日一番の絶頂を迎えていた。
頭の中が、真っ白になる。自分が今、どうなっているのかすら分からなくなる程の快感。
先程見ていた魔物達のように、まだ胸や下腹部を触られている訳ですらない。
なのに、こんなにも気持ちいい。
咥内を蹂躙する舌。身体に食い込む太い腕。

「っ、はー、はー………♥」

唇が離れる。平行感覚すら怪しい身体を後ろからアゼレアに抱えられながら、その衣服を剥がされる。

「…………っ」

思わず息を呑んだ。
他のどの妻達とも違う、少し骨の浮いた肉付きの薄い身体。
少年であった元の面影を残したような、えも言われぬ背徳感を想起させる中性的な肢体。
しかし、その下半身。太ももに伝う溢れた蜜が、既にその身体が青年のものを受け入れられるという事を示している。
行綱は、その無垢な割れ目と、彼女の微かに膨らんだ胸へと手を伸ばす。

「っ――――――っっ!!?」

先端の小さく充血した突起を指の腹で擦られ、淫魔は白い喉を晒して嬌声を上げた。
指先一つで。こんなに簡単に何度も絶頂に昇りつめてしまう。
こんなのもう、絶対に勝てない。
これから先、自分はこの人に、絶対に勝つ事が出来ない。
ああ。
身体の震えが止まらなくなるくらいに、『怖い』……っ♥

「っ、ぁ、はぁ、はぁ…………っ♥」

クレイグの細い身体が、ふらりと後ろに倒れ込む。
その頭は、柔らかなアゼレアの膝枕に受け止められた。

「…………ぁ、ぁ…………♥」

視線の先では、魔物化によって変化した己の下腹部、その入り口に肉棒を擦り付ける行綱の姿。
それだけで、下腹の疼きが止まらなくなる。彼の熱と昂ぶりを、痛い程に感じる。
アゼレアが、クレイグの髪を撫でた。

「大丈夫じゃ。力を抜いて、そのまま受け入れるが良い……♥」
「っ――――――っっ!!?」

行綱は訳の分からぬ衝動のままに、その剛直を割れ目の中へと突き入れた。
彼を待ち焦がれていたクレイグの身体は、そんな乱暴な挿入にすら快感と歓喜に打ち震える。
行綱自身も把握出来ていない衝動の正体は、彼の本能の復讐だった。
自らを死の縁にまで追い込んだ相手。
それが今、目の前で己に抱かれる事を望んでいる。
ならば、孕ませてやる。
己の遺伝子を断たれかけた本人に、その連鎖を継がせてやる、と。

「あ、あぁぁぁぁぁぁ…………っ♥」

行綱の意思や理性とは関係なく溢れてくるそんな衝動が――自らを受け入れてくれたという、愛おしさへと昇華される。
己の肉棒を柔らかく受け入れる、熱く濡れた蜜壺。
男の鍛え上げられた身体が、クレイグの上に覆い被さった。
痙攣する身体を強く抱き締め、自らを拘束する腕を、ぎゅっと握り返す。
それすらも、愛おしい。
甘えるように、ねだるように。男の唇へ口付けを繰り返す。
小さい頃に教えて貰った事があった。
子供が、全幅の信頼を置く相手を呼ぶ時の名前。
自分にその言葉を教えてくれたあの人を、結局そう呼ぶ事はなかった。
心のどこかで、自分の事をずっと怖がっていたのが分かったから。
だから――きっと、この人がそうなんだ。

「ぱ、ぱぁ…………っ♥」
「…………っ!」

行綱の中で、何かが壊れた。

「パパ、好き、好きぃ……っ♥」

肉付きの薄い下腹部に腰が打ち付けられ、先端が硬い感触の膣奥をノックする。
射精の予感を感じた淫魔の膣が肉棒を締め付け、初めての精液をねだる。
アゼレアが、そんな男の顎に指を添える。

「…………♥」
「…………っ!」

最愛の妻の唇が触れると同時、それが新たな魔物への種付けの許しだったように、男は絶頂を迎えた。

「っ、〜〜〜〜っっっっ♥♥♥♥」

ああ、頭がおかしくなりそうだ。
身体を震わせる少女の最奥を塗り潰すように、どくどくと精液が注がれる。
大きく息を吐き、ずるりと肉棒を引き抜くと、小さな膣からごぽりと精液がこぼれた。
引き抜かれたそれは尚も硬さと熱を失わず、精液と愛液に塗れ、てらてらと妖しく光を反射している。

「あ、ぁ…………♥」

クレイグは、それに吸い寄せられるように身を起こした。
この後どうすればいいのかは、きちんと先程まで見て学んでいた。
その先端に、口付けする。

「ん…………♥」
「っ…………」

歯は立てないように。優しく。自らを愛してくれたそれを労わるように、咥内で舌を絡ませて精液を拭い、吸い上げる。

「ん……気持ち、良かった……?」
「……ああ」
「え、へへ……良かったぁ……♥」

少し不安そうな様子で肉棒に頬擦りするクレイグの角を撫でると、その顔がにへらと蕩けた。
休む間もなく、そんな行綱の身体に淫魔の姫の細腕が絡められる。

「さて、次は妾の番じゃな♥」

身体を引かれ、畳の上へと押し倒される。

「ん…………っ♥」

そうして、淫魔の姫は男の肉棒の上へと腰を落とした。
目の前で夫と魔物たちとの交わりを眺め、既に熱く蕩けきった女体に、肉棒がにゅぷんっと飲み込まれる。

「っ、…………!」

一瞬すら耐えられず、飢えた膣の中へと精液を吐き出す。搾り取られる。
一滴たりとも逃がすものかと腰に押し付けられる柔らかな体重。
そのまま指を絡めた行綱の両手をハンドル代わりに自らの身体を支え、男の肉棒を根本まで咥えたままのの字を描くように腰を動かし始める。
男にとって一番の女は誰なのか、愛と快楽をその身体に刻み付けるように。
魔物達はそんな、散々に自分達を蹂躙した男をいとも容易く喘がせる淫魔の姫へ尊敬の眼差しを向けていた。

「ん…………っ♥」

幸せそうに尻尾を揺らしながら、アゼレアの肉感的な身体が男に覆い被さる。
例え周りに何人の魔物が居ようとも。
今この瞬間、お互いの目に映るのは。触れ合うのは。
ただ、二人だけ。

「っ…………っ!」

甘えるようなアゼレアと身体を密着させ、舌を絡ませながらの射精。
脈動する肉棒の、その最後の一滴までを受け止めて。アゼレアはその耳元で男に囁いた。

「…………愛しておるぞ♥」
「……あ…………」

そうして、快楽の余韻に言葉が出てこない男に意地悪そうな笑みで口付けを一つして、彼女は身体を起こした。

「さて、少々最初から盛り上がってしまったが……折角旅館に来ているのじゃ、夕飯まで皆で温泉に浸かるとしようかの」

そう、まだまだ。

「もっともっと……たーくさん、らぶらぶしよう♥行綱っ♥」

まだまだこの旅行は、始まったばかりなのだから。
21/10/11 04:35更新 / オレンジ
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■作者メッセージ
すみません、もうちょっとらぶらぶセックス書いていいですか

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