読切小説
[TOP]
聖騎士と天使
『お父様
私は今日、命により地上へと降ります
一人でも多くの人を救って見せます
ですので、どうかご加護を・・・』
一人の天使は天界の門をくぐり、地上へ堕ちていった・・・


俺はトアル村に向かうという商人の馬車に乗せてもらっていた
隣ではフードを深く被った少女が小さな寝息を立てている
フードを深く被った外見からは判断しにくいが、実はその少女の頭上に光輪があり、背中には翼が付いていた
そう、この少女は天使なのだ
この天使は自らの翼に包まって気持ちよさそうに寝ている
このまま何事も無ければ、明日の朝にはトアル村につけるはず
そこで俺はこの少女とともに使命を果たさなければならない
だが明日の朝まで何事もない、ということは無いだろう
馬車のほろから覗く月はほぼ完全な円を描いている
明日か明後日には満月だろう
魔族たちは満月の夜に近づくにつれて活発になる
まだピークでないにしろ、こんな夜にこんな山道を進むのは自ら襲ってください、と言わんばかりなのだ
特にここの山道は・・・

と、突然少女が目を覚まして外に聞こえないように小さな声で言った
「た、大変ですっ!!
凄い数の魔族の気配が近寄ってきています!」
「やはり来たか・・・」
俺は馬車の前方に移動し、手綱を握っている商人の隣に座ってあたりを観察した
何も言わずにあたりを伺っている俺に嫌な予感を感じたのか、恐る恐る声をかけてきた
「あの・・・どうしました?」
「・・・」
「まさか・・・この近くに魔族でも・・・」
「・・・」
周りに集中して何にも反応しない俺の変わりにフードを被った少女が馬車から顔だけ出して答える
「この周辺に魔族がいると思われます
あ、ここで馬車を止めてください」
「え?」
ガッ!!
少女がそういった瞬間、前方にある木が揺らいだと思ったら道をふさぐ様にして倒れてきたのだ
馬が驚き、馬車は停車してしまう
「魔族とか・・・う、嘘だろ!?」
分かりきっていたとはいえ、ため息が出る
「ハァ・・・残念ながら、本当だ」

クスクスクス・・・

どこからとも無く笑い声が聞こえる
右の草むらが揺れたかと思うと、左の木の上で何か大きなものが動いた
すでに気配は商人でも感じられるほどに近く、強くなっている
向こうはこちらの様子を伺っているのか、いきなり襲ってくることは無い
不用意に来る様子が無いのを見る限り、向こうも場数を踏んでいるようだ
それに対し、この商人はまだ若い上にこういった修羅場も初めてなんだろう
完全に取り乱しており、完全に向こうの思う壺だった
「あ、アンタ達、あの時に絶対に大丈夫っていったよな!?
どうしてくれんだよ!?
早く何とかしろよ!!」
「いちいち喚くな
黙って見てろ」
取り乱している商人を言葉で切り捨てて俺は馬車を降りる
「そ・・・そんな・・・」
絶望に浸る若き商人に対し、少女は優しく微笑みかける
「大丈夫ですよ
彼、口は悪いですけど約束は破りません
ですが、危険ですので事が済むまで馬車の中へ」
そういって、少女はローブを脱いだ
光輪が輝き辺りを照らし、体を覆うように丸まっていた翼が広がり羽が舞う
「あ、貴方は・・・天使、様!?」
「えぇ」
にっこりと微笑むその天使の姿はまさに聖女だった
「ということは、あの男は・・・聖騎士!?」
俺も戦闘のためローブを脱ぎ捨てる
天使の光輪が放つ光によって周囲が照らされる
俺の身に着けている防具に刻まれた、十字架の紋章
それこそ、主神に愛でられし教会における力の代行者、聖騎士の証である
その瞬間、さっきまでの笑い声が一斉に止んだ
「こいつらが最近噂の・・・」
最近になってこの周辺に出没し、見境無く襲っているオークの群れだった
近隣の町では討伐指令も出ているが、数が多く非常に厄介なため手を出そうとするものはいない
この状況では俺がやるしかないようだ
馬車のなかではあの商人がまだ喚いているようだ
「だ、だけどあんな大軍どうやって追い払うんだよ!?
こっちは聖騎士といえど一人だ!
勝ち目なんてあるのか!?」
天使は外の様子を眺めながら静かに言った
「オークという魔物は数人で馬車を持ち上げてしまうほどの怪力を持つので、あまり正面突破は考えないほうがいいですね
ですが、突破方法はあります」
「どうやって!?」
「おそらく、どこかに群れのリーダーがいるはず・・・
ボスを討てば、オークの性質から群れを無力化できるはずです」
さて、俺もそろそろ前に出なくては、向こうもそう長く待ってはくれないだろう
「リズ、馬車周辺に結界を張ってボスを索敵しろ!
それまで俺が時間を稼ぐ」
「はい!
Werden Sie.. Licht.. umgeben Sie mit einer Mauer und schützen Sie uns vor der schlechten Moralperson」
リズと呼ばれた天使はスペルを詠唱、馬車の周りに光の結界が生まれた
そして群れのボスを探すために索敵を開始する
馬車の周りに結界が生じるのを確認してから、前方のオークたちに向かって歩き出す
この結界ならば、オークの攻撃にもある程度は耐えられるはず
後は、ボスがどこにいるか分かるまで、どれだけ多くのオークを引付けられるかが問題だ
とりあえず、オーク達に奇襲を仕掛け混乱を誘うしかないだろう

馬車よりも前に出る
その瞬間、周囲の視線が一斉に集まった
「ハァ・・・ハァ・・・」
「ジュルリ・・・」
再びどこからとも無く荒い息遣いが聞こえる
それもそうだろう
オークたちの魔族としての血が目の前の男を犯せと疼いているのだ
馬車周辺に展開している結界は見た感じどうしようもないなら、後は外にいる男を襲うしか選択肢は無い
しかも、その男からかなり濃い精の匂いがするならば、オークでなくてもこうなる
その狙われている当事者である俺も下手に動くことが出来ない
否、直感が今だっと叫んだのだ
右腕が腰の剣の柄へと動いた、それより一瞬早くオークたちが飛び出して来る!
思った以上に素早いッ!?
ガシィッ!!!
剣を引き抜くその刹那、既に右腕がオークに掴まれていた
「ムフフフフ♪」
そして目の前のオークが、ムチムチの体で俺に抱きつかんとするオークたちがニタァァと淫らな笑みを浮かべた瞬間だった
カッ、キィィィイイイイイイイイイインンン!!!!!!
「ぷぎぃ!?きゃぁぁぁああああああああ!!!」
光では生ぬるい、閃光が闇を切り裂いた
そして同時にものすごい耳鳴りがそこにいた全員を直撃する!
オークたちが一斉に俺を凝視していたこと、オークの耳は人間の何倍も良いことが幸いし、ほとんどのオークが怯んだ!
俺の本命は左手から地面に叩きつけられていた球、炸裂閃光玉だったのだ
「うぉぉおおおおおおおおおおおお!!!!」
オークたちの視界が回復する前に腕を掴んでいるオークを振り払い、手当たりしだい殴り飛ばして道を作って進んでいく!
当然、コレくらいでは誰一人くたばりはしないが・・・
「アレン、ボスの位置が分かりました!」
リズの声が響き、頭に情報が流れ込んでくる
右斜め後ろ、四時半の方向!!
そこにもいくつかのオークがいた
が、その中に一際胸がデカいオークがいる
ヤツだ!
混乱に乗じ、側近二人を草むらから飛び出した勢いで蹴り飛ばし、ボスと思われるオークに剣を突きつける
「ヒィッ!!」
俺の目はまさに得物を狩る者の目、そのものだったろう
「アレン、穢れた魔族に浄化を!」
浄化・・・つまりこの目の前の魔族の首をはねろ、という事だ
以前の俺ならば既にそれは完了している
しかし、今の俺にはそれが出来なかった
失禁したのか足が濡れており、目からは溢れ出るように涙が流れているオークに向かって言い放つ

「とっとと失せろ、雌豚共」

「・・・ぷぎゃぁああああああああああああああああああああ!!!」
この世のものとは思えないような絶叫を発しながらオークが逃げ出した途端、
周りのオークたちも一斉に逃げ始めた
そしてやがて全ての気配が消えるのを確認して剣を収める
「アレン、お疲れ様でした
どこかお怪我はないですか?」
子を持つ母親にも似た慈愛の表情を浮かべながら聞いてくる
「大丈夫だ」
その優しさにも素直になれず、俺は踵を返した
「あのオーク、逃がしてもいいのか!?」
「・・・逃がすしかなかった
もしあの状況であの数のオークが群れのリーダーを失えば、それこそどうなるか分からない
俺だけに危険が及ぶのなら別にかまわない
だが、リズまで危険にさらす訳にはいかない・・・」
「ま、まぁ・・・俺は無事だったから構わないけど・・・」
並々ならぬ雰囲気を感じて若き商人はそそくさと馬車へと戻る
馬車を遮っている樹木を焼き払い、再び馬車は走り始めた

トアル村
各地方に向かう行商人が多く寄るこの町は昔は小さな集落だったと言う
だが、次第に山を越えた交易が始まってからは山の間に存在するこの村で一休みする行商人が多かった
次第に村の人口が増え、宿を始めたり鍛冶屋が出来た
流れ込んでくる様々な物の中から掘り出し物を求めて買いあさりに来る者などで賑わっていた
集落の規模はすでに町並みかそれ以上だが、ここに住んでいる者たちの意向で、未だに村と名乗っている
そんな村に俺はいた

コンコン・・・
「どうぞ」
部屋の中から声がする
「お邪魔します・・・」
ドアを開き、部屋に入ると、そこにはごくごく普通の女の子がベットに腰掛けるように座っている
体の線はとても細く、天使であるリズよりも儚く見えるようだった
リズはちょこんと少女の隣にすわり、しばらく沈黙が流れた
「天使、様・・・」
「リズ、と呼んでくださいませんか?」
「リズ、様・・・」
少女が何か言いたげに口を開くも、なかなかその先が言葉に出来ない
そんな少女にリズは語りかけた
「貴方は・・・なにか趣味でもありますか?」
「趣味・・・ですか?」
「えぇ、何でもいいですよ
なにかありませんか?」
「編み物を・・・少々」
「編み物、ですか
良いですね
どんな物をお作りになられるのですか?」
「あまりこの時期は編まないのですけど、去年はこちらのマフラーとか・・・」

二階にいる少女をリズに任せ、俺は一階でその両親と面向かっている
教会の人間が来た、ということを聞いてあの娘の両親は喜んで迎えてくれた
「この度はこんな偏狭の村までわざわざお越しいただいて、本当にありがとうございます」
・・・止めろ
「全く知識のない私達は、ただあの子を見守ることしか出来なくて・・・でも、これで安心しました」
・・・止めてくれ
俺達にだって、どうしようもできない!
俺は、あの娘を、助けることは、出来ないんだ!!
吐き出しそうになる感情を抑え、殺して、俺は口を開く
「・・・残念ですが・・・」
俺の一言目、これだけで両親の目の色が変わった、そんな気がする
「現在、魔族化を止める方法は確立されておりません・・・」
「えっ!?
そ、そんな!!
では、あの子はどうなってしまうのですか!?」
俺が知ったことか!?
テメェの娘の事だろうが!!
「まだ、我々からは何も・・・
まだ人が魔族になるメカニズムが解明されていない上、魔族化自体に掛かる時間はほんの僅かであるため、情報が思うように取れずに研究が非常に困難なのが、教会の現状でもあります」
俺は感情を口にせず、あくまで確立されたデータのみを口にしていく
「で、ですが、娘が襲われてから3日たちましたが、未だ異変はありません
もしかしたら、このままって事は?」
「その可能性も否定できません」
確かに、否定は出来ない
否定は出来ないが・・・
「過去に魔族化しなかった事例は確かに存在します
ですが、生まれつきそのような力が備わっていれば余程出ない限り魔族に襲われるということも無いでしょうね」
「そうですか・・・」
・・・しばらくの沈黙
この気まずさは何度体験しても慣れるということは無いな
だが、いつまでも黙っているわけにはいかない
「娘さんに、このハーブを薬として飲ませてください」
「・・・このハーブは?」
「ごく普通のハーブですが、ハーブのエキス、香りには僅かながら興奮を抑える効果があるとの事です
魔族化は興奮状態で起こるのが確認されているので、あくまで予防程度に服用されるといいでしょう
また、魔族化には当事者の精神的な要因も大きく絡んでくると言われています
娘さんにこれを薬だと思い込ませることで魔族化を抑制できるかもしれません

要は精神論
しかし、精神論だけでは世の中どうしようもないことがあるというのは俺自身が良く知っている
「他に、私達で出来ることは何でしょう?」
俺は娘の父親を見据えて口を開く
「満月の夜までなるべく異性との接触は避けるように
ちょっとした心の揺れで、ということも考えられます
ですのでお父さん、貴方はこの家にいないほうが安全でしょう
魔族化した場合、もっとも身近な男性が狙われます」
「たとえ、それが親でも・・・ですか?」
肯定
「魔族化というのは魔族への転生を意味します
つまり、外見は貴方達の娘かもしれませんが、中身は別物です
体も作り換わっているため、生みの親と言えども見境無く襲ってくるでしょうね」
魔族化した子を助けようとして不用意に近寄った親が犯される、そんな光景も数多く見てきた
しかし、俺は双方を助ける方法を知らない
魔族だからといってその娘を親の目の前で切れば・・・その娘を、その親を救ったことになるのか?
たぶん、俺は一生かけてもその方法を見つけることは出来ないだろう
・・・なんとも、救うことを忘れた騎士らしい答えだろうか
内心で苦笑する
「もし、次の満月の夜に何事も無かった場合、この先も魔族化の心配は少ないでしょう」
「山場は、今夜か、明日の夜か・・・」


いつから、俺は人を助けるための戦いを止めたのだろうか・・・
いつから、俺は魔族を殺すための戦いを始めたのだろうか・・・


「フフ、編み物、上手なんですね」
「小さい頃からやってまして・・・
あの、リズ様?」
ふと、この少女の顔が暗くなる
「どうしました?」
「リズ様は、こんな話をしに来たんじゃないんですよね?
私が魔族に襲われた事に関して、聞きに来たんじゃないんですか?」
「もう少ししたら、ころあいを見て話そうと思っていましたが・・・
そうですね
そろそろ話しましょうか・・・
先ほどの話で、近所のおばあちゃんから編み物を習っているとおっしゃってましたね?」
「・・・えぇ、それが何か関係が?」
「今から貴方とそのおばあちゃんでセーターを編んでもらおうかと思います
それで、貴方がおばあちゃんよりも素敵なセーターが編めたら・・・」
「待ってください!!
私はセーターなんて編んだことなんか・・・それにおばあちゃんよりも上手に編むことなんて・・・」
「それは、どうしてですか?」
「おばあちゃんは、編み物のプロですもの・・・」
落ち込む娘に天使は優しく微笑んだ
「すみません
少し意地悪してしまいましたね
そうですね
プロが相手ではどうしても適わないこともあるでしょう
魔族もまた誘惑のプロなのです
人を誘惑し、陥れるプロ
貴方が魔族の誘惑に負けてしまったということを恥じることはありません」

・・・・・・

俺達はその家を後にし、トアル村の教会に向かうために通りを歩いていた
「リズ、娘のほうはどうだった?」
「魔族に襲われた時から時々体が疼いたりと不安を感じているようです」
「そうか・・・」
その様子だと、魔族化は確定
問題は、どのタイミングで魔族化するか、だ
考え事をして前をあまり見ていなかった、と
ドンッ
誰かにぶつかってしまったようだ
「す、すみません!!」
下から女の子の声がした
なんだ、子供・・・か?
人ごみの中遠ざかっていく女の子のスカートの裾についている飾り、あれは・・・
サバトの紋章か!?
サバトといえば、魔族の一大勢力
バフォメットという上位魔族を中心に魔女で構成された、魔族の中でも特に組織的な集団
独自の考え、宗教を持ち、我々教会に仇なす存在!
「リズ、お前は先に教会へ戻ってくれ!」
「どうしたのですか!?」
その声は届かず、俺は既に人ごみに紛れていた
「そこの娘、止まれぇ!!」
かろうじて向こうに紅いスカートの少女が走っているのが見える
町行く人は並みならぬ雰囲気を感じて道を開けていく
その時、日は傾き始めている
そうして俺は魔女と思われる少女を追って町のはずれの森まで来ていた
体の小さい少女は人ごみの中でもスイスイと行ってしまい、人を押しのけるように進まなければならない俺は見失わないようにするのがやっとだったのだが・・・
「完全に見失ったか・・・」
仕方あるまい
いったん教会に戻って・・・
「お〜にさ〜んこ〜ちら、て〜のな〜るほ〜ぉへっ!」
森の中から声がする
俺を誘っているのか?
愚か者が、キジも鳴かねば打たれまい
俺は迷う事無く森の中へ入って行く
やはりフェアリーかピクシーがいるのか、どこからか童歌が聞こえてくる

通りゃんせ 通りゃんせ
ここはどこの 細通じゃ
天神さまの 細道じゃ
ちょっと通して 下しゃんせ
御用のないもの 通しゃせぬ
この子の七つの お祝いに
お札を納めに まいります
行きはよいよい 帰りはこわい
こわいながらも
通りゃんせ 通りゃんせ

唄に誘われるがままに森の奥へと進む
そして一軒の建物にたどり着く
かつて異教徒と呼ばれた宗教集団が教会の教えに背き、人々を唆したとして中央教会から迫害され、殲滅されたという
俺は話を聞いただけだが、おそらく建築様式からかつて異教徒達が集った建物だろうか
今ではサバトが使っているというのも、何かの因果か?
そんなこともどうでも良くなる
今の俺には魔族を狩ることしか出来ない!
『ようこそ聖騎士殿、我がサバトへ!』
この声はどこから聞こえてくるのか?
この独特な口調・・・声・・・まさか・・・
『ワシがここのサバトを率いる、バフォメットじゃ
種族名くらいは聞いたことがあろう?』
あぁ、もちろんだとも
あいにく、俺程度の力ではアンタに指一本触れることも出来ないだろうが
『そう身構えるな、聖騎士殿
何もお主をこの場で取って食おうという訳ではない』
・・・何?
『ワシも弱き者を一方的に嬲るのは好かんからのぉ』
たいした余裕だな
しかし、その余裕もその実力からか・・・
世の中にはバフォメットに勝つ物語は数知れない
しかし現実はそんなに甘くない
俺の内心の焦りを知ってか知らずか、声は続く
『そこで、ワシの暇つぶしのため、ゲームに参加してもらおうぞ』
ゲームだと?
ふざけた真似を・・・
『もしお主がゲームに勝てたのなら、いいことを教えてやろう』
良い事か
どうせロクでもないような事に決まっている
『しかし、もしお主が負けた場合はバツゲーム・・・クックック、分かっておろうな?』
負けたところなんて、考えたくも無い
『その体にサバトの教義を叩き込んでやるからの
あ、もしワシが気に入らんことをしたら、強制的にバツゲームじゃ♪』
つまり、ゲームに参加しないなどという選択肢をとった場合、即バフォメットによる制裁が下って・・・ということか
『クックック、まぁせいぜい踊るが良い
では、早速ゲームを始めようか』
「いらっしゃいませ、ご主人様♪!」
「さっそくお出ましか、魔女共!!」
「フフ、そんなに焦らないでくださいな♪」
木の陰から出てきたのは一人の女性
魔女・・・じゃない!?
『クックック、どうじゃ?
この娘達には強力な欲情の魔法をかけた
今、お主の体が欲しくて堪らないはずじゃ
困った人を救うのは教会、聖騎士の仕事でもあるはずじゃぞ?』
「そんなに人間が珍しいのですかぁ?」
「ふふ、哀れな私達をどうぞお救いください、聖騎士様」
「邪悪な教えに犯されてしまった、私達を・・・」
俺の前に姿を現したのは、人間の少女達だった
魔女じゃない・・・人間だと!?
『おっと、その構えてる物は何じゃ?
さっさと手放さんかのぉ?』
・・・俺は構えている剣を鞘に戻した
『ククク、良い子じゃの
お主も別に構えるモノ♂があるじゃろうに』
「フフフフ♪」
「やだ、バフォメット様ったら♪」
教会関係者は人間を傷つけることは教義により硬く禁じられている
しかし、教義だけではやはり人間を傷つける者が現れてしまう
そうならないためにも、教会からの束縛・・・否、制約が存在する
聖騎士といえど、人間との戦闘は考慮させていないということだ
『お主の信じる教えとやら、見させてもらうぞ』
しかし、この状況では考える暇はなさそうだ
大地を踏みしめ、拳を握り締める

いざ・・・勝負!!!!


一人になると自分の中の誰かが問いかけてくる
貴方はあの少女を救えたの?
って
でも・・・いいんです
私はどうせ

救うことを忘れてしまった天使ですから

アレンが何かを見つけて走って言った後、リズは程なくして教会に着いた
トアル村の教会は大きく、目立つのだ
「アレン、どうしたのでしょう・・・
彼の身になにか悪いことがなければ良いのですが」
中では一人、聖職者の後姿
・・・気のせいか、人の気がやけに少ない
「お待ちしておりました、天使様」
ガチャッ!!
・・・?
ドアを押しても引いてもびくともしなかった
閉じ込められた!
と気づいてからでは遅い
そして聖職者がこちらに振り向く
「・・・尻尾が出ていますよ?」
ダークプリーストはハッと悪戯がばれた子供の様に笑った
「あらあら、変身が解けちゃいましたか?
ウフフ、ごめんなさい
無垢な天使様を調教できると考えると、興奮してしまいまして」
「魔に堕ちた貴方では、私に触れることすら出来ません!」
しかし、ダークプリーストは余裕の表情
「あら?
随分前から一人では奇跡を使えなくなってしまった天使様に何が出来まして?」
・・・ばれてる!?
「大丈夫ですよ
天使様が奇跡を使えなくても、人々を幸せにする方法を教えてあげますわ♪」
ダークプリーストが指を鳴らし、出てきたのは全裸を縄で縛られ、さるぐつわを嵌められた男
「ンン〜〜〜〜ッ!!ンッン〜〜〜〜!!!!」
信じられないような光景に一瞬呆気に取られる
「なっ何をしているのですか!?
その男性を開放しなさい!!」
一方ダークプリーストは意味が分からないというように首をかしげる
「下僕を解放・・・なぜ?」
「何故って・・・人を下僕呼ばわりなど、自分のしていることがわかって」
「ンン〜〜〜!!」
「天使様が喋っている途中なのに、下僕の分際で喚くんじゃないわよ!!」
バチィィイイイイイン!
「ンン〜〜〜〜♪!!」
男性がムチで叩かれる様子を見て、全身がすくんでしまう
「・・・ひ、酷いっ!」
しかしダークプリーストはこちらを見ていない
「ほらっ」
バチィィイイイイイン!!
「これが」
バチィィィィイイイイン!!!
「欲しかったんでしょ!?」
バチィィィィイイイイイン!!!!
「ンンンン〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪♪♪!!!!」
リズはあまりに異質な光景を見てしまい、完全に気が動転してしまった
「イ・・・イヤァァァァァァァァァァァアアアアアアアアア!!!!」
ドアまで走りノブを捻るが、ガチャガチャと音を立てるだけで一向に動く気配が無い
アレン・・・アレン、助けて!!
そう私が魔族にさらわれた時も、助けてくれた
あのときのように、きっと助けに来てくれるハズ・・・
「フフフ、まだ白馬の王子様が助けに来てくれるとでも思っているのね?」
足に何かがしがみついてくる!?
「ンンン〜〜〜〜!!ン、ン〜〜〜!!」
「その下僕は天使様にムチで打って欲しいみたいですわよ?」
「そ、そんな・・・こんなこと止めてください!!」
「この変態な下僕はね、ムチで打たれることが何よりも幸せなの
貴方は人々を幸せにするための天使様、違いは無くて?」
壁際に追い詰められたリズに逃げ場は無かった
すでにダークプリーストは目の前まで来ている上、足を掴まれているため動くことが出来ない
「フフフ、父上から見捨てられ、天界からも見捨てられるなんて可愛そうな天使様♪
でも安心してくださいな
私達は貴方を見捨てることなんてしませんから」
「お父様が私をお見捨てになるなんて、そんなことはありません!」
「あら、ありえない、なんて事がありえませんわ
なら何故、天様は奇跡が使えなくなったのですか?」
「そ、それは・・・私のお父様への信仰心が薄くなってしまったからでしょう」
「なら何故、天使様は天界へ帰れなくなってしまったのですか?」
「それは・・・私への試練でしょう」
ダークプリーストは最もいやらしい笑顔を浮かべただろう
「試練、ですか
そのような苦行を神様からの試練と、さも当然かのように言われるのには我慢なりません
もし、それらが本当に貴方のお父様から与えられた試練だというのなら、天使様のお父様は世界一のサディストですわ
天使様のお父様と比べたら私なんて足元にも及びません」
「お父様の侮辱は許しません!」
「あら、まだ天使様のお父様を信じておられるの?
では、私が全て教えてあげますわ♪」
「貴方のような穢れた魔族が、一体お父様の何を知っているというのですか!?」
少しずつ、でも確実に追い詰められているのを感じる
「フフフ、私のように穢れてしまった魔物だから、天使様が地上へ追いやられたという理由も分かってしまうのです」
「私は、追いやられてなんかいません!
私はお父様から与えられた使命のため・・・!!」
「そう、哀れな天使様は理不尽に与えられた使命のため、地上へと追いやられたのですよ!!」
鬼気迫る気迫に完全に気圧されてしまい、何も言うことができない
「そう、天使様は人々を幸せにするため・・・という名目でこの半分魔界と化した地上へ堕とされたのです」
「名目、だなんて・・・!!」
「人間という生き物はなんとも流されやすい生き物でしょうか
ある時までは教会の言うことが絶対だったのに関わらず、魔物が全て美しい女性の姿になってしまってからは教会側と魔物側に付く人間の数は拮抗する程度にまで来てしまいました
それもそうでしょう?
教会にいる神父が仏頂面して教えを説くのに耳を傾けるのと、魔物の女の子たちと遊ぶのと、どっちが人間を引付けるかなんて明白ですものね
神界はこれを危惧しました
人々の信仰がそのままの力の大きさに反映される神々にとって、人々の信仰が薄れるというのは力の減少に直結するためですわ
もしこれ以上力が減少すれば、いつ来るやも知れぬ神魔戦争が再び勃発した場合、魔族に力負けしてしまうのは天界としても避けたいところでしょう
そこで、天使様の出番というわけです
神界は神の教えを再び布教させるため、天使を地上へ堕とすことを決定しました
人の信仰を集めるのには漠然とした教え、偶像ではなく、天使様という実像が必要だと、神界は判断したようですね
しかし、地上へ向かわせれば天使が魔力に曝されてしまいます
それは遅かれ早かれ、天使様を蝕んでいきます
もし、魔力に蝕まれた天使が天界へ帰還しようものなら、瞬く間に他の天使を蝕むでしょう
さらに、魔族に神界への道を示してしまうことになりかねません
ですから、その任には天界への帰還方法を知らず、魔に堕ちても問題ない様な下級天使が選ばれるのですよ
そう、貴方のような・・・!!」
心のなかでは聞いてはいけない、耳をふさげ、などと危険信号がなるが、体は全く動かない
ましてや、一語一句が頭に響くかのようだった
言葉をつむぎながら、足元の男に何度もムチを振り下ろす
バチィィィイイイイン
「ン〜〜〜♪!!」
「ほら、うれしそうに善がっているでしょう?
ほら、天使様もこの哀れな下僕に幸せを与えてやってくださいませ」
そう言ってリズの手にムチを握らせる
「わ、わたしはこんなこと・・・あぁ、お父様!」
ダークプリーストがゆっくりと顔を近づけて、両手を握って耳元でささやく
「大丈夫、白馬の王子様が来るまでもうちょっと時間があります
それまでに私が天使様に人の喜ばせ方を教えて差し上げますから♪」
「ヒィ・・・や、やめ!!」
リズとダークプリーストの唇が重なった


俺は魔法で強化されている少女と戦闘していた
普段なら瞬殺しているところだが・・・
身体的能力の強化はもちろん、防御能力も上がっており、並みの攻撃ではあまりダメージが入っていない様子
さらに聖騎士のくびきにより身体能力が普段より抑えられた状態
「ハァッハッハァ・・・うらぁぁぁあああああああ!!!」
ボコォっ!
腹を抉るかのような拳は見えない壁に阻まれ威力を相殺されてしまう
それでも衝撃は内臓を揺さぶる
「ガハァ!(ガクッ」
これで最後・・・
俺の、勝ちだ!
『なぜじゃ・・・?』
・・・?
しばらく黙っていた声が響く
『なぜ、そこまであの教えに尽くすのじゃ!?
あのような堅物の教えのどこに、お主がそこまでして護る魅力があるというのじゃ!!!
何がお主にそこまでさせているのじゃ!?』
バフォメットの声に初めて、焦りを感じる
『あの詰まらん考えしか出来ぬ老人共に、そこまで尽くす理由は何なのじゃ!?
そこまでして、あの老人達の側に付く、その信念はどこから来るのじゃ!?
なぜ、快楽を拒む!?
何故じゃ!?なぜじゃ!?』
このバフォメットは聖騎士が何たるかを知らないようだな・・・
ならば教えてやる
「あぁ、上級神官共の事か
あんな奴ら、どうにでもなれば良い」
「なんじゃと!?」
「人は弱い生き物だ
時に何かに縋らなくてはならない
我々聖騎士の役目は人々の心の拠所を護る事だ!」
一拍の沈黙、そしてため息
「・・・どうやらこのゲーム、ワシの負けのようじゃな
約束じゃからな、良いことを教えてやろうぞ」
「なんだ?」
「あの娘が満月の数日前に襲われ、数いる聖騎士の中からお主『達』が派遣され、お主『達』が満月直前にあの村へ来、魔女がお主に町でぶつかってここまで逃げてきて、魔女ではなく人間の娘が現れ、羽をもがれた蝶は地に落ちる」
・・・達?
「随分と物知りだな」
「ククク、そうじゃろう
これはワシが仕組んだ事じゃからな」
いや、仕組んだのはコイツだけじゃない筈
例えばそう、教会関係者に・・・
・・・教会関係者!?
「ククク、これ以上のヒントは不要のようじゃな
しかし、所詮お主は教え『しか』護れぬ存在d・・・」
バフォメットが言い終わるより先に俺は走り出す
仮にこの出来事が計画されたものだとしたら、教会に共犯がいることは明白
だとするならば、最後のフレーズは・・・
ヤバイ
天界から定期的に舞い降りてくる天使のほとんどは、しばらくすると奇跡を使役できなくなってしまう
そして教会から相性の良い者が天使のパートナーとなり、天使はパートナーの力を一時的に借りることで小規模な奇跡を使役できるように協力する
リズもまた、そんな天使の一人で、俺はそんな天使のパートナーなのだ
森の中では木に阻まれよく見えなかったが、この時点で空には既に月が昇っていた

やっとわかった
俺は護るための戦いを止めてなんか無かった
俺はずっと、リズを護るために戦っていたんだって
そして、これからも・・・

聖騎士が去った後、私達が気絶して倒れた少女達を回収していた
「バフォメット様〜
私達の小隊であの男を追撃して来ますかぁ?」
『止めておけ、あの男が相手では町の警備隊での被害どころの騒ぎではなくなるぞ?
少なくとも、おぬし達に何とかできるレベルではなさそうじゃ
・・・そうじゃな、あの者に村への道案内くらいはした方が良さそうじゃな』
「何故ですか?」
遠くの方で爆発音
『あの男が村に着く前に、この森に住む魔族が全滅してしまうぞ?』
バフォメット様の言うことも満更じゃないみたい
仕方ない、少し危険だけどさっきみたいに町まで誘導してこよう・・・

俺が森を抜け、村に出たのは既に日が暮れてから大分経っていた
やはり満月が近い夜に外を行くものは殆どいない
俺は一目散に教会へ向かった
ドアを開けば、中には一人の聖職者がいた
「どちら様ですか?」
「夜分遅くにすまない、ここに一人の天使が来ている筈だが・・・」
「天使様はとある少女の様子を見に行くと言って、先ほど出て行かれましたよ?」
とある少女というのは昼間の少女で間違いないだろう
「それまでに何か変わったことは?」
聖職者は首をかしげる
「変わった事、ですか?」
いや、俺が考えすぎなのだろう
「いや、何でもない
では失礼する」
扉が閉まる瞬間聖職者が笑顔になったのに何故か寒気を感じ、先ほどの会話がフラッシュバックする
教会関係者に・・・裏切り者が!
ハッと気づいてドアを開くと、そこには誰もいなかった
だとすれば・・・今のが裏切り者か!?
しかし逃してしまった様だ
そんなことよりも、今は優先することがある
俺はガランとしてしまった通りをひた走る!
そう、あの家だ!
・・・鍵は開いているようだ
あの娘の母親はどこへ?
家へ入り二階の少女の部屋へ
家の中は何ともいえない匂いが漂っている
剣を構え直し、ドアを開ける

まず気配は3つ
その中から聞き覚えのある声がする
「ほら、角が生えてきましたね♪生えたてのコレ、とっても敏感なんですって
ホラ♪」
少女に覆いかぶさる影は執拗に股間の部分を責め、部屋中に湿った音が響いている
そして生えたばかりだろう、まだ乾燥しきっていない角を握った
ギュ〜〜〜〜〜〜!!
クチュ、クチュ、クチュ、クチュ、クチュ・・・
「ふぁああ♪ぁ、あああああああああああああ〜〜〜〜っ♪♪♪」
ビクッビクッと少女の体が痙攣し、股間から液体が噴出した
「な!?」
俺には何が起きているのか、理解できていなかった
「ふふふ、いいタイミングね♪
さぁ、貴方も無事にサキュバスになれたんだし、行きましょうか」
そういって
もう一つの影が組み敷かれている少女を抱え、窓際に立つ
俺は金縛りから解けたかのように動くことを思い出した
「・・・待て!!」
この感覚・・・コイツはサキュバスで、抱えられてるほうはまだレッサーサキュバス
では、先ほど少女にのしかかっていたのは・・・
サキュバスは暗闇で不敵に笑った
「フフフ、ごめんなさい
今日は坊やの相手をしてあげられないの
そのかわり、そこの子が貴方を待ってたみたいよ?」
それを捨て台詞に羽を広げ、まだ余韻に惚けているレッサーサキュバスを抱えたまま飛び立とうとする
・・・今ならまだ間に合う!
一気に間合いをつめようとするも、そこの影に邪魔される
「じゃ・・・!!!」
邪魔だ、退けぇ!!!
と叫ぼうとしたとき、その存在に気づく
やはり、というべきか、リズだった
「退いてくれ、俺はあの魔物を狩らねばならない・・・」
「そうですか・・・そうですよね?
貴方にとって今の私は所詮、神の教えを布教するための人形に過ぎないんですものね?
私のことなんか、見てくれません・・・よね?」
やはり、とまたもやいうべきか、様子がおかしい
「リズ、今はあの魔物を・・・」
「なら、私しか見えない場所へ行けばいいのですよね?
そして、私は貴方を、その苦しみから救ってあげるの!!」
っ!?
足元にもっと気を配るべきだったようだ
この部屋のカーペットの下で魔方陣が光り、浮かび上がった
っ!?
「しまっ・・・!!!!」
この部屋全体が魔方陣だったようだ
「じゃあね〜♪」
サキュバスの嘲笑が聞こえる中、俺とリズは魔法の光に包まれた
「無事行ったわね、じゃ、私達もお腹減ったし、おいしい男を捕まえに行きましょ?」
「おとこ〜、おいしいのがいい♪」
「そうね、貴方がしっかりサキュバスになれるくらいの精をもった男を捜しましょうね♪」
サキュバスの夜は始まったばかりなのだ

ここは果たしてどこだろうか
何もかもが歪んでしまったかのような、そんな空間に俺はいた
時間すら流れているのか怪しく思える
「ここは万魔殿(パンデモニウム)です」
「リズ・・・なのか!?」
その純白の羽は漆黒に染まり、輝いていた光輪は紫色に染まっている
そしてその体には、至る所にルーン文字が浮かんでいる
やはり、俺は最も護りたかったものすら護れなかったらしい
だが、ここで落ち込んではいられないのだ
リズは魔物に犯されたといえども、天使なのだ
魔族として生きることを良しとしないだろう
ならばいっそ、俺が・・・!!
「アレン」
名前を呼ばれた
「私、魔族になれてよかった」
「なっ!?」
「だって、こうしてアレンを独り占めできるんですもの♪」
扇情的な笑みから、既にリズが魔族になってしまったことを知る
・・・魔族は浄化せねばならない!
抜刀!
必殺の間合いに入り、剣を振るう
しかし、剣は何も着る事無く、止まってしまった
リズの笑顔が、今まで見てきたどんなものよりも、まぶしかったから
「アレンなら私を切らないと、信じてましたよ」
それに対し、俺は何も言うことができなかった
「アレン、私、人々を幸せにする方法をいっぱい教えてもらいました
その時、奇跡なんかいらなかったんだって気づいたんです」
剣を引いて体も引こうとするが、体が動かない!?
「アレンは、これからずっと、私が幸せにしてあげますから・・・」
「リズ、駄目だ!!
こんな事もう止めろ!!
そんなことしても、誰も幸せになんかなれやしないんだ!!
だから、俺達は己を殺しながらでも教えのために戦ってきたんだろ!?」
俺の話を聞いているのかいないのか、リズは俺の鎧に手を伸ばし始めた
「私は、なぜあのような下らない教えなどを布教していたのでしょうね
フフフ、今では考えるだけでも滑稽ですね
だって、この世にはこんなにも素晴らしい事があるのですよ?」
「それに可笑しいと思いませんか?
種の存続のため誰もが性交して子供を作らねばならないのに、自ら禁欲しているのですよ?」
「人には法や規律のような、自らを縛る戒律が必要なんだ!」
「そんなもの必要ありませんわ
それに、良い事は神のお陰、悪いことは神からの試練
よく出来た教えですわね?」
「・・・」
俺は完全に返す言葉を失ったと同時に、全身の服を剥かれて押し倒されていた
「ではアレンを幸せにしてあげますわ
フフフ、アレンのおちんちん、皮を被って可愛いですね♪」
「や、やめっ」
ぎゅっ!
「〜〜〜〜〜っ!!?」
自分でもあまり扱いたことの無く皮を被ったままのモノを、リズはためらい無く掴んできて言葉が出なかった
リズの手は思った以上にモチモチしており、自分で扱く時とは全く違う快感が俺を襲った
「フフフ、まだ握っただけですよ?
少しずつ、動かしますからね」
コシュ・・・コシュ・・・
「っ!!・・・っ!!・・・」
自分で扱く時はただ生物として発生する性欲を処理するためだけに扱くためさっさと終わらせようとするのだが
リズはじっくりねっとりと一回一回を味わうように責めてくる
俺もリズに一回扱かれる度に声が漏れそうになるが何とか堪えている
が、体は正直だ
この責めに限界を迎えるのも近いだろう
「皮、剥いてあげますね?」
ゆっくりと扱く中、亀頭が覗いたり隠れたりしている
それを少しずつ、扱くたびに皮をスライドさせていく
「リ、リズ!?つ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!」
洗うときのみしか外に出ないそこは、俺のどの部位よりも敏感だった
風が吹くだけでもその刺激が脳にまで伝わってくるのだ
そこを皮の上からと言え、出したり戻したりと扱かれているのだ
すでに俺のモノは痙攣し、精を吐かんばかりの状況だった
俺はもう、頭では良く考えることが出来なくなっていた
「でる!?リズ、出るから、もう止めろ」
やっとの思いで口から出てきたのはすでに何の意味も持たない言葉
逆に、出る、という言葉に反応してリズが喜んだ
「出してくださいますのね?
私が口で受け止めますので、どうかお出しください♪」
はむっ!
「口!?うわぁぁぁぁぁああああああああ♪♪」
ズリュリュリュ、ズブブブ、ズチュチュチュチュ〜〜〜〜〜〜〜ッ!!
最後まで皮を剥かれたと思ったら、ビクビクと脈打つモノを、一気に口に加えられたようだ
思わず口から悲鳴が漏れる
最も敏感なところを思いっきり吸われ、先端を舌で嘗め回され、頭の中まで真っ白になってしまう
そして快感の大波を俺を襲った
腰がガクガクになり、モノからドクドクと信じられない量の精液が出るのと同時に信じられないほどの快感を感じた
リズはまだモノを口に咥えている
コクン、コクン
と喉が動いているのを見ると、精液を嚥下しているのだろう
天使がモノを咥えて精液を飲んでいる、なんとも倒錯的な光景だろう
だが、男はこの後来るのは気だるさと、現実を見る・・・ハズなのだが、いつまで経っても高まった気分が落ちる様子が無い!?
ぷはぁ♪
やっと口を離したかと思った
「今度は下のお口で頂きますね♪」
すでに反論する気力も無い
何もしていなくても、すでに濡れている下の口はとても綺麗だった
それもそうだろう
いままで誰も使ったことがないのだから
消えかけていた理性が最後に叫んでいる
聖騎士が天使を汚したとなれば、聖騎士の名折れだ、と
リズはそれを分かってか否か口を開く
「アレン様、どこか遠くで一緒に住みましょう?
聖騎士としてではなく、天使としてではなく、一人の男と、一人の女として」
それを聞いて、俺の理性は叫ぶのをやめた
俺はただ、求めることに集中した
「リズ!!!」
「アレン!!!」
リズは腰をゆっくりと下ろし始めた
「う・・・」
リズが顔をしかめて小さく呻いた
結合部からは紅いのが見える
だが、こちらもリズのことを気遣っている余裕は無かった
なにせ、本格的に剥いたのが今日始めてだというのに、咥えられて吸われた挙句、挿入させられているのだから
本当に少しずつ進んでいるのにも関わらず、その刺激はさきほどの比ではなかった
「あぁ、熱い、アレンのおちんちん、熱いのぉ♪♪」
中までグチョグチョなのにも関わらず、暖かい肉壁はしっかり絡み付いてきて、進むたびに絡まる肉壁とこすれるのだ
完全に挿入し終わるまでで既に射精しそうになっていた
「〜〜〜っ!!」
完全に挿入され、俺は刺激に余裕が出てきたが、リズはまだ厳しそうな顔をして俺に抱き付いている
「待って、抜かないで・・・もう少しだけ待って」
そういって30秒ほど
痛みが引いているのか、だんだんと顔が安らかなものになっていった
人間ならばこうはいかないだろう
「お待たせしました・・・では動きますね♪」
ズ、ズブリュ!
「うわぁぁ!?」
ズ、ズブブブ!
「んぁああああ!!」
ズ、ズチュチュ!
リズは慣れたのあろうが、俺はこの快感になれるわけも無く、いきなり快楽を送られくる
一定のリズムで送られてくる快楽に、早くも屈しそうになっていた
だがリズもそんなに我慢強いほうではないらしい
「リ、リズ、俺、もう・・・!!」
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、中で、良いよ♪」
そして最も深くまで突き入れられる!
それが二人のスイッチになった
「んあぁぁぁああああ♪♪」
「くぅ〜〜〜〜〜〜っ♪♪」
ドプッ!ドクッドクッドクッドクッ・・・
脈打つモノから精液が再び出される
二回目だというのに、信じられないほどの量が出ているのが分かる
俺はこの二回目で気をやってしまった
初めてには刺激が余りにも強すぎたのだ


「リズ・・・ちょっといいか?」
俺の最愛の人(元天使)に声をかける
「なんでしょう?」
「リズはこれからどうするんだ?」
その答えはもう決まっているようだ
「私は、これからも多くの人を救うために旅へ行こうと思います
いいえ、人だけではなく、私のように迷える天使を救うためにも・・・
ですが、アレン様がいやだというのなら・・・」
あぁ、良かった
魔に墜ちても、この天使は人を救うことを真っ先に考えている
俺はこの天使以上に付いて行こうと思えることは無いだろう
「俺は、これからも教えを貫く者を護る盾であり、剣であり続けたい」
「これからも、よろしくお願いしますね!」
そう笑った彼女はまるで女神だった

もし今一度、魔に堕ちた身でも神に感謝できるのなら、一つだけお礼を言いたい
こんな素晴らしい天使をこの身を呈して護れるのだから

護るための戦いを思い出した騎士と
救うことを思い出した天使のお話はまた別の話・・・

〜fin〜
11/02/02 03:08更新 / poke

■作者メッセージ
待ちに待ったときが来たのだ
多くのSSが無駄死にではなかった事の証のために!
再びSS書きの理想を掲げるために!!
魔物娘成就のために!!!
SS投稿所よ、私は帰ってきたぁ!!!!!
(・ω・)<=○(どーん

20×20原稿用紙43.735枚を記録
(暇な人は文字数の計算でもどうぞ
えぇ、またやってしまいました
前回のネレイスの件でもうしばらくは長物書かないつもりだったんですが

ご ら ん の 有 様 だ よ

まったく、だいたいこんな所まで呼んでくれてる人が一体何人いるかって話だよ!!
しかもエロ殆どないし(爆
読んでくれた回数の半分はページのバー見て、回れ右じゃなかろうか
まぁ、大学生だったら退屈な講義中にでも(おい
そうでなくても電車の中とかで(もっとマズイだろ
楽しんでいただければ幸いでございます
さぁ、次は短編を書こう

そうそう、一番最初のセリフで書きましたが、この作品を作るに当たっていくつか書いていたんですが、筆が進まずして終わったりするものがひぃふぅみぃ・・・たくさんあります
その犠牲の上成り立っているともいえるこの作品も、自分のしたかったこと、表現したかったことはある程度はできたのではないでしょうか?
いつかはそっちの方を書き直ししたいのですが・・・

修正などがあればその都度直します
いかんせん長いので、自分だけでは確認仕切れなくなりましたorz
みなさん指摘をよろしくお願いいたします

ではこんな所までお付き合いいただけてpokeもうれしい限りです
では皆さん、良い魔物娘ライフを〜

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33