読切小説
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相性ゲーには逆らえない。
「さーて、今回のターゲットだ...ッ!」

両目を覆っていた、『独身判別ゴーグル』を額まで上げる。

自分は教団軍が進軍しているところを、付近の崖の上から様子を伺っていた。
俺は左手の親指と人差し指でわっかを......俗にいう『金を要求する時のサイン』を作り、それを右目に当てて左目は瞑った。
右手は男チョキ......もしくはピストルのサインを作り、進軍中の教団軍の中で一番装備が多く馬に乗っている男......行動隊長に向ける。
そうすると、行動隊長の顔に、指先の動きと連動する青い光の点...ポインターが浮かんだ......。
それをこめかみに合わせると、自分はそこめがけて右手の指鉄砲の先からレーザービームを放った!!

ズキュゥゥンッ!!

狙撃された行動隊長は馬上から転落。
それに気づいた兵たちは敵襲だと騒ぎ始めた!

その混沌めがけて崖から飛び降りる自分。

「空歩、いっきまーす!」

空中で右掌から発した青い光を剣状に出力し、軍のど真ん中に着地するや否や、横に一閃した。
オレオレ言っておいて今更だが、自分の名は尾美 空歩である。
『この世界』では、空歩・スカイウォーカーと名乗っているが。





なんでこんなことになっているのかというと、話は1年前まで遡る。
俺は元々この世界の住人ではなく、インターネットやスマートフォンなどが普及する普通の世界にいた。
そこで自分は、『マジックランド・クロニクル』というネトゲにはまっていた。
廃人レベルで。

その『マジックランド・クロニクル』は、ファンタジー世界が舞台の、とてつもない自由度が売りのネトゲであった。
クエストをこなすと経験値ポイントがもらえるのだが、それを既存のスキル強化に充てたり、新規のスキル獲得に使用したりできるのだが。
新規のスキルの種類が豊富、いや。節操が無いのだ。

ゲームを運営のAIが許可がもらえれば、システムに自分が考えた新たなスキルを造れるのだ!!
最も、ゲームが成り立つ範囲で、という前提ではあるけど。

自分はそれをフルに使い、自分の好きな映画......ライトサイドやダークサイド、フォースやジェダイ、シス云々のSF映画を参考に自分のアバターを作っていった。
さすがにライトセーバーやフォース・ライトニングは無理があり、
前者はゴムゴムの海賊漫画の『黄色い猿』から肉体光化をオミットしたような光系能力、
後者は禁書目録のビリビリを足して割った雷系能力で代用せざるを得なかったが。


そんな廃人ロードを邁進していたある日、とある都市伝説を耳にした。
『3時3分』や『23時23分』といった時間が揃っているときにだけ現れる限定クエストがあると。
俺は確かめてやろうと4時4分にゲームをつけた。
その結果、それは存在した!!
何も考えることなくすぐさまクエストを受けたら、PCが眩い光を放った!!

そして気づいたらこの世界にいたとです、しかも教団領。
自宅でネトゲをしていると思ったら石造りの街に移動していたというザマで、
しかも最初にやったことは、わが身に起こったことに驚いて、精魂込めて育てたアバターと同じ能力を暴発させたことだった。
どうやら自分は、アバターのスペックや能力をそっくりそのまま引き継いでいたらしい。

それを通りすがりの司祭に見られ、「この者は神が遣わした者なり!!」と勇者養成学校に送られてしまった。
そんなこんなで極めてブラックな環境で、剣や戦術を覚えていき、勇者として祝福を受ける寸前に、制御できるようになった能力を使って脱走してきたのだ。

その怨みをどう晴らしてやろうかと思って旅をしていた矢先、俺は魔物娘なる存在(既婚)と、その夫に接触した。
彼女たちから話を聞き、魔物娘界は常に男日照り、独身男を紹介すればいい商売になると吹き込まれ。
俺は独身男を魔物娘へ供給する賞金稼ぎとなった。

小尾空歩から、空歩・スカイウォーカーへと名乗るようにしたのもこの頃から。
スタ〇ウォ〇ズから取った、自分のアバターキャラの名前である。





ここで冒頭へ戻る。

俺は右手に持った光の剣でバッサバッサと兵を薙ぎ倒しつつ、
左手から青い雷を放ち次々と兵たちを鎮圧していく。

これだけ派手に暴れているにも関わらず相手が無傷なのは、服の下の二の腕につけている腕輪型の魔具『殺さずのバングル』の効力である。
これをつけて攻撃すると、どんな攻撃をしても相手を気絶させるだけで肉体にはノーダメージで留めてくれる優れものである。
ちょうど魔界製の武器を使ったような状態と同等といえば分かりやすいか。

10分も経つ頃には全員のし終わっており、あたりを見回してそれを確認して息をついた。

「今回は全部で50人の部隊で、独身が42人......いい値になるなぁ〜」

俺再び『独身判別ゴーグル』をかけ、背負っていたバックから縄を取り出すと、それに延長魔法を掛けて伸ばしに伸ばしまくり、伸ばした縄で独身の男たちを捕縛していった。
こうやってケチru......もとい、節約するのも経費を浮かすコツである。

一通り縛り終えると、余った縄を仕舞い、次にバックから取り出したのは人差し指と中指にはめるメリケンサックのような魔具。
それを右手にはめて前方へ向け、行きたい場所を念じる。
そこへ繋がれー繋がれーと念じながら左手で前方に円を描いた。
そうすると右手を向けた方向にオレンジ色の輪が生じ、それが空間の穴となり、向こう側にこことは違う場所が見えた。

俺はテレキネシスで捕縛した独身男たちを全員持ち上げると、向こう側へと送り込んだ。
最後の一人を送ったのを確認すると、自分の向こう側へ入った。
向こう側でゲートを円をかき消すように右手を振ると、ゲートはプシュッと音を立てて消滅した。




「独身男が42人......毎度あり!」
「いやー、このギルドは金払いがよくてほんと助かる!!」
「いやいやいや、、『婿狩りギルド』は金払いが命だかんね?」

会話の相手は、婿狩りギルド...その名も『グルームハンター』の窓口の狸のお姉さん(既婚)である。
ここには腕に覚えがない独身の魔物娘たちが個人だったり、クラウドファンディングの要領でお金を出し合うなどして団体で、お婿さんを調達してきてもらう依頼がアホほどくる場所なのだ。
故に食いっぱぐれない職業としても有名で、非公認だが『婿取り団』という愛称もあるほどだ。

クエストは、特定の個人を連れてくるものだったり、さっきのように『教団軍の独身男を根こそぎ』という依頼までいろいろある。
その中から自分がイケるやつを行くのが、魔物娘の流儀に習った賞金稼ぎのおおまかな流れなのだ。


「さてさて、さっきのは簡単すぎたし、次のクエストでも......」

賞金を受け取った俺は、次なるクエストを求めて狸の姉さんに催促する。

「そうかそうかん、もう行っちゃうか......」

パラパラと本をめくっていた狸さんは、ふと思い出したように言った。

「たしかエライとこからの依頼も入っとったな......空歩クン? ちょっとすごいところからの依頼、受けてみる気はある?」
「どこでしょうか?」
「それはね......」

狸姉さんが顔を寄せてくる。
どんないわくつきなんだろうか......。







「やってきちゃった、不死者の国『ノクタロア』......」

そう、さきほどの依頼は不死者の国一つ、ノクタロアの『さる高貴なお方』からの依頼である。
そのお方は、もし依頼を受ける者が現れたなら、依頼を遂行する前に一目自分の元へ来てほしいと言っているらしい。
そのような事情なため、結構前に依頼が出されたのにも関わらず、確実に遂行できる者に心当たりがないということで実質封印状態になっていた案件であった。



国の門番に『さる高貴なお方』からの依頼を受けた旨を伝えると、門番がその思念を伝えたのか。
門を入ってすぐの場所に現れた魔法陣から執事服のヴァンパイアが出てきた。

「私はあなたの依頼主にお仕えするもの。さあ、こちらへ」

そう言って開きっぱなしの魔法陣へ放り込まれると。
そこは城の玉座の真ん前だった!!
その玉座に座っていたのは......

「ごきげんよう♪」
「......ごっ、ごきげんよう...」

アンデッドの女王こと、ワイトさんであった。
なんか玉座の横に女王様ワイト様を若くしたようなワイトさんたちまでいる。

「私はノクタロアの女王、ローレル・フォン・ノクタロリアンと申します」

ワイトがどういう存在かは聞いたことがあったが、想像以上の美人である。
今まで見てきた魔物娘の中で一番、とも言えるだろう、自分の中では。

玉座を降りて自分の元へ歩み寄ってくると、手を伸ばして自分を立たせ。
立たせると自分の周りをぐるぐる歩き回って、こちらの全身をくまなく観察してきた。

視線がこそばゆい......。
そう思っていると、おもむろに顔に手を伸ばしてきたローレル様。
ギョッとして硬直すると、彼女はそのまま吸精してきたではないか!!

ヘタる体に鞭を打ち、ローレル様の手を振り払って数歩後ろへ逃げる。
ギュインギュインのズドドドドッと激しい動悸に襲われている自分に。
両手を広げ、今にも抱きしめようとせんとばかりに距離を詰めてくるローレル様。

「さっそく依頼の夫を手に入れてきてもらうつもりでしたけど、気が変わりましたわ。今回の依頼は、あなたを私の夫にすることで成立ということでいかがでしょう? 私、ルックスも精の味も、すっかり好きになってしまいましたの♥」
「なっ、なっ、なっ.......」

この女王様は俺をご所望らしい。
すっかり本気の眼をしている......ッ!!!

「だが断る! 俺はまだ所帯を持つ気にはッ......なれないッ!!」
「あら、あなたは今までそのような独身男性をお婿として提供してきたのではなくて? 人をお婿にする者は、自分がお婿にされても文句を言う権利はありませんよ?」

ぐうの音もでない正論である!!

「それに、母から王位継承したものの私は独り身、女王たるもの独身では皆に格好がつきません......。どうか、私を助けると思って......ねっ?」

どうするか。
こうします。

俺はあらかじめ指に填めていた、さきほど使った移動用の魔具を使いにかかる。

「そうはさせませんわ」

右手を挙げた瞬間、ローレル様は右手にビー玉ほどの破壊光弾をぶつけてきた!
ちょうど前方に挙げた瞬間を狙ってきたために直撃。
完全に魔具がおシャカになってしまった!

「こうなれば......!!」

俺は右手から光の剣を作り出し構えた。

「あなたがそこまで抗うなら......いいでしょう、私とて魔物娘の端くれ、体で語り合うとしましょうか!!」

ローレル様はワイトの吸精爪を展開する。
そしてそれをあろうことか、カットラス状に変形させてきたではないか!!

「......ワイトってそんなことまでできるんですね、初めて知りました」
「ふふふぅ......研鑽を重ねれば爪を『爪剣』にするくらいは容易いことで...すッ......!!」

言い終えるや否や、瞬間、間を詰めて斬りかかってきたローレル様。
それを光剣で受け止める。

「なかなかの腕前で......ますますお婿にしたくなりますわ♥」
「これでも賞金稼ぎですからね...」
「では......こういうのはいかがでしょう?」

刃を交えた爪剣が脈を打つと、自分の光剣がみるみる爪剣に吸収されていくではないか!
慌ててテレキネシスでローレル様を吹っ飛ばすと、彼女は左手から吸精爪を出し、それを数本のワイヤーとアンカーに出力して床に打ち込み、短い飛距離で抑えてしまった。
自分の手元を見ると、光剣は既に半分以上が爪剣に吸収され、柄だけになっていた。

アンカーを納めてローレル様は言った。

「あなた様の光の剣は半実体の武器......同じく半実体の武器を使えば強く干渉できるのですわ。加えて私はワイト。その吸精能力を用いれば、純粋な自然由来のものは無理でも、あくまで生物由来の異能なら吸収できるのですわ♥ つ・ま・り♥ 私とあなた様は相性がいいってことですのよ♥」
「あたなから見ればね!!」

俺に言わせれば、相性は最悪だ。

光の剣はダメだ......なら。

「これはどうだ!!」

俺は指鉄砲を作るとローレル様にレーザービームを発射した。

「無駄ですわよ♥」

彼女は爪剣を備えていない左手でビームを受け止めるとそのまま吸収してしまった!!
ビームもダメか!!

光もダメ、念力もダメ......。

「それならば!!」

渾身の雷撃を放つ。

「意外とあきらめない方ですのね、滾ってきちゃう♥」

爪剣を両手で扱って雷撃を斬り食らい尽くしたローレル様。
クッソ、雷までダメなのかい!!

「そろそろ反撃に移らせてもらいますわ......」

ローレル様は自分に左手を向けると、そこから吸精爪が茨型の触手......隠者の紫のようなビジュアルで伸ばしてきた。
巧みに動かされる触手を避けきれず捕まってしまうと、触手は自分から精を吸い始めた。

「ウッグゥッ...!!」
「あぁ、本当においしいですわぁ♥ もう一度聞きますわ......私の夫になる気は...?」
「あるかないかっていうと......」

返答を渋る。

「ああもう、じれったい!!」

渋っているとローレル様は右手の爪剣を自分に突き立てて、トドメと言わんばかりに精を吸い尽くしにかかった。
あまりの吸引力に自分は頭がショートして気絶した......。





「くっ、殺せ、いっそ殺せ......ウッグゥッ」
「殺しはしませんわ......生殺しになるかはあなた次第ですけど♥」

ズゾゾゾゾッ。
大きな下品極まりない音を立ててペニスを吸い上げられる。

負けた俺は、彼女の寝室へと連行され、現在進行形でローレルから愛撫を受けていた。
無論、爪触手でしばられ吸精され続けたまま。
達しそうで達せない状態をずっと維持し続けられている。

「ほ〜らほ〜ら、どうします? ずっとイけない状態でもいいんですかぁ? たった一言、『夫になるからイかせてください』って言えば快楽を貪り尽くせるんですよぉ〜?」

吸精が強められた。
亀頭を甘噛みされる。

はむはむ、はむはむ......。
右手で玉を転がし、竿を刺激し、亀頭から口を放し玉をしゃぶられ。
今度は竿を甘噛み......

何度目かもわからない射精感がこみ上げてくる......がっ!!!!!

「ウッグゥゥゥゥッ!!!」
「は〜い、残念でした......」

アァァァァァッッ!!!
もう......ッ......。
限界だァァァァ!!!!!


「夫に......イかせ...さい....!!」
「ん〜? もっと、大きな声で?」
「......夫にッ!! なります!! ならせてください!! だからっ......だからっ!!!」

叫んだ途端、爪触手を解除し、ペニスからも口を放すローレル。
イかせてくれるんじゃ......

「魔物娘なら、一発目はこっち、でね...♥」

ペニスの真上に位置取った彼女は、先端を入り口に宛がうと。
一気に重力に任せて腰を下ろした!!

ずぶっ。
ブチっ。

ブッシャァァァァ!!!

全てが決壊し、彼女の中へ全てと思るものをぶちまける。

「あぁ......雷のように刺激あふれるのもいい、光のように繊細な味もいい、だけど。これには敵わないわぁ!!!」

全てをぶちまけて息も絶え絶えになっていると。
顔を近づけてきたローレルは、濃厚すぎる舌を絡ませるキスを仕掛けてきた。

「?!!!」
「ぷはぁ、たかが一回で終わりだと思わないでくださいまし。 今から行うのは夫婦の契り。 先ほどの不完全燃焼分を取り返すほどに犯して差し上げますわ♥」


それ本当に昇天しちゃうやつだ!!
誰かー!! 誰かー!!
俺が悪かった......だから助けてくれー!!








「ようやくインキュバスになりましたねぇ」
「一か月もかかったね......」

行為の後。
ベッドの中で二人とも全裸で語り合っていた。

あれから一か月。
ローレルの夫となり、賞金稼ぎを廃業しており。
今では彼女の夫 兼 ボディガード 兼 執事をやっていた。
ボディガードに関しては必要ない気もするが。

姓も変わっており、スカイウォーカーからノクタロリアンへなった。
なんだかマンダロリアンのような名前になってしまった....。
自分のアイデンティティよ......。

「そうだ、久しぶりに手合わせと行きません?」

上体を起こして提案してくるローレル。

「とんだじゃじゃ馬女王だな......。 まぁいいけど」

提案を飲み、二人で風呂に入った後。
あの日と同じく玉座の前で光剣を展開する。

「おや?」
「色が違う......」

いつも自分が展開した時の光剣は、青い光だった。
だがインキュバス化したことで影響が出たのか。
今の光剣は、赤い光を放っている。

「とうとうスカイウォーカーから、ベイダーになってしまった......」

ふと気になったのは雷撃の色。
試してみようと、ローレルに雷撃の避雷針になってほしい胸を伝え放電してみる。
すると雷撃の色も、深紅へと変わっていた。

シスでもフォース・ライトニングは青白かったというのに......。
暗黒面......いや、魔物娘面に落ちるっていうことがどういうことか思い知らされる。
男が嫁の色に染められるということを悟った。

「では、『新生』空歩さんとの一騎打ちと行きましょうか。負けた方は一週間は相手にご奉仕ということで」
「なっ、今聞いたぞ!!」

さっさと条件を付けて爪剣を展開するローレル。
慌てて構えると、『あの日』と同じように斬りかかってきた。

さて、今回は勝てるのか。

それは別のお話、である。


fin.
18/04/28 00:29更新 / 妖怪人間ボム

■作者メッセージ
Q:この後、空歩君は勝ったのですか?
A:勝てませんでした。

Q:尾美の由来は?
A:オビ=ワン・ケノービ。それと銀魂の尾美一塾頭。



どーも妖怪人間ボムです。

燃え話を書いて投稿してもどうせスベるから、今回は開き直って全力で趣味をぶっこんでみた!!
後悔はしてない、書きたかったこと、
『チートを持って図鑑世界に行っても相性次第でぼろ負けする』テーマが消化できたから......!!

それはさておき、前の投稿作品が思った以上に伸びていて驚いています。
深夜のテンション交じりで書いた話だったのに......

次はどうなるのかわかりませんが、よろしくお願いできればと思います。
失礼しました〜。

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