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第五章:ケプリの王(歓迎の儀・下)
「もうっ、限界ですぅー」
 一際大きく身体をひくつかせ、僕の上で腰を振っていたケプリがくたりと崩れ落ちる。
 遺跡に住んでいるケプリ姉妹による、歓迎の儀という名の盛大な夜伽の為の集い。最初は一匹一匹と交わっていたのだが、末妹のアスファルが交わりの最中に姉妹のケプリ達を呼び寄せたことにより、場は一気に性欲に狂ったような乱交の場に成り果てた。
 無数のケプリに犯されるうち、何度も正気を失って獣欲に身を任せそうになってしまったが、しかしそれもこれで一応一段落だ。
 僕の胸の上でよだれを垂らしながら幸せそうに余韻に浸る彼女が、襲い掛かって来たケプリの中の最後の一匹だった。
 僕は優しく彼女の肩に左腕を回し、空いている絨毯の上に楽な姿勢で横たえてやる。
「アスファルがみんなを呼ぶから、とんでもない事になっちゃったな」
 アスファルにとびかかられてからこっち、ずっと仰向けで代わる代わるに犯され続けた。途中からは多少慣れも出てきたが、それでも数で迫られて最後まで優位を得る事は出来なかった。
 僕の左側に身を横たえていたアスファルは小さく笑う。
「でもお兄ちゃん気持ち良かったでしょ? そんな顔してたもん」
「まったく、敵わないなぁ」
 頭を撫でてやると、アスファルはくすぐったそうに笑って目を閉じる。
「お兄ちゃんも、思ったより激しくて私びっくりしちゃったよぉ。私はちょっとお休みするね。まだまだ頑張ってね、お兄ちゃん」
 姉妹を焚きつけ僕を好き放題にしたアスファルは、そう言うなりすぐに規則正しい呼吸をし始める。
 遊び疲れた子どもそのままの様子に、思わず表情が綻んでしまう。アスファルと一緒だった周りのケプリ達も大体彼女と同じような様子だった。
 やれやれと大きく息を吐いて自分の身体を見下ろすと、体中どこもかしこも誰の物かも分からない体液でびしょびしょだった。
 自分の汗、ケプリの汗、唾液、愛液、精液。感極まっておもらししてしまった子も居たっけ。
 そんな体液だまりのような肉体の上で、僕の下半身の分身は未だに力を失う事も無く、痛々しい程に勃起しきって震えていた。
 もう勃起が止まらないどころの話では無かった。ケプリ達との乱交状態に入り、二三個の魔力球を取り込んでからというもの、射精自体が止まらなくなってしまったのだ。
 溢れる精液を舌で舐め取られ、口で吸い上げられ、膣で受け止められ。そうしているうちにようやく、今でも気を抜けばいつでも射精してしまうような状態ではあるものの、垂れ流しの状態は収まってくれた。
 その恥知らずな自身の向こうに見えているのは、まだ一度も抱けてやれていない、未だに僕を待ち続けてくれている何匹ものケプリ達だった。
 恐らく積極的な姉妹達に気後れして手の出せなかった子達だろう。だが襲い掛かって来なかったからと言って、彼女達の気持ちまで小さいとは限らない。
 彼女達とて僕に仕えてくれる事になるケプリ達だ。同じように大事にしてあげたい。そう思い身を起こそうとしたのだが、右腕が邪魔をして立てなかった。
 不思議に思ってそちらを振り向き、僕は絶句してしまう。
「あ……」
 と僕の視線に驚いて顔を伏せてしまう、前髪で目元を隠した大人しそうなケプリ。
 彼女は舐めしゃぶっていた僕の手をとっさに口から離すも、しかし手までは放したくないとばかりに自分の胸元に抱き寄せる。
 感覚が無くて意識出来ていなかったが、アズハルを抱いていた時も、アズラクと肌を重ねていた時も、アスファル達を犯し、犯されていた時も、彼女はずっと右手を舐めて癒し続けてくれていたのだ。
「アスワド」
 弾かれたように顔を上げる彼女。王の間で話していた時に、身を出せない程恥ずかしがりながらも、隠れて覗き見てしまうくらいに僕に興味を持っていてくれたケプリの一人だった。
「あ、あの。……右手、傷が酷くて、治したくて。だから、その、私魔法は下手だから、こうする事しか出来なくて」
 感覚の無かった右手が、今はアスワドの体温と鼓動をしっかりと感じ取っていた。
 手を動かした拍子に成長途中の僅かな膨らみを掴んでしまう。少し硬めの未熟な果実の触り心地は、熟した果実とは違った背徳的な喜びがあった。
「あう」
 恥ずかしそうに身をよじるアスワドの小さな体を、僕は身を起こしながら抱き寄せる。
「あっ。アミル様……」
「ありがとう。おかげで右手が何も無かったみたいに良くなったよ」
「い、いえ。召使として、当然の事を、しただけ、です」
「そっか。じゃあ僕も王として召使の期待には応えないとね」
 右手を彼女に這わせる。丸みを帯びたお尻の柔らかさ、すべすべとした背中の肌触り、さらりとした薄い翅の感触が、痺れ一つない手の平から伝わってくる。
 翅の付け根を指先でくすぐると、アスワドは身を強張らせながら猫のような声で鳴いた。
「は、恥ずかしいです。みんなが、見ています」
「でも、アスワドだって僕を見てたんじゃないの?」
「それは……」
 アスワドの肌がほんのり熱くなる。
「……いて、下さい」
「ん?」
 彼女は震えながら僕の首元に顔を埋め、囁く。
「抱いてください。私はアミル様の召使。アミル様の喜びが、私の喜び。好きなように、私をお使いください。どんなに乱暴な扱いにも、倒錯的な行いにも耐えて見せます。アミル様がしてくれること全てが私の喜びです。……お願いします。私を抱いてください」
 彼女の身体を深く抱きながら、僕もまた囁き声で返す。
「分かった。アスワド、魔力球を」
 頬でアスワドの髪が揺れる。アスワドの腕が僕の背を離れ、僕の背中の更に先へと伸ばされる。
 煮え滾るような感触が背中越しに伝わってくる。背に触れそうな程近くまで、アスワドの魔力球が降りてきたのだろう。
「アミル様、受け取ってください」
 背中から入ってくる感触に、背筋が震えた。
 魔物の魔力の奔流。その流れを意識し、流れに乗り、流れを導き、身体の中心に向かって流れを落とし込んでいく。

 そこは狭く暗い石室の中だった。そこには膝を抱えた金色の昆虫の魔物が一匹居るだけで、他には誰も居なかった。
 その部屋に、ふと声が聞こえた。アミル、アミルと僕の名を呼ぶ嬌声が木霊しはじめた。
 姉の自慰の声を聞くうちに、膝を抱えていた魔物は自分の身体の熱を自覚し始める。身体に疼きを覚えて、とうとう我慢が出来なくなって、自らの女陰に手を伸ばす。
 顔も知らない相手を思い浮かべ、恋焦がれるうち、手の動きは次第に激しくなっていく……。
 まだ見ぬ王の名を小さくつぶやき、姉の恋人を思い浮かべて自慰をする自分を恥じらいながら、それでもその手は止まらず、むしろ激しさを増していく。
 彼女は姉の恋人が王になってくれることを切に願っていた。
 話を聞いていただけなのに、彼女自身もまた見たことも無い姉の恋人に恋をしてしまっていたから。
 自分まで外に出て行く勇気は無かった。自分の想いが罪深い事であるとも分かっていた。それでも彼女は自分の恋心を抑えられなかった。

 姉。それはアズハルの事で、その恋人というのは、間違いなく僕の事で。
 この照れ屋で大人しいケプリのアスワドもまた、自分の事を強く慕ってくれていた。それを思うと、胸の奥がかっと熱くなった。
「あっ。アミル様のが」
 勃ち上がりっぱなしの男根から透明な汁がわずかに迸り、アスワドの下腹に降りかかる。
「ご、ごめん。まだ自分の身体が上手く扱い切れてなくて。……驚かせちゃったね」
「だ、大丈夫。だいじょうぶ、れす、ふあぁ、いいにおい……」
 突然くらりと倒れかけたアスワドの身体を支えてやる。よろめきながらも、アスワドはすんすん鼻を鳴らして何かの匂いを嗅ぎ続けていた。
 酔ったように頬を染める彼女の視線の先には、僕が出してしまった我慢汁の染みがある。
「あみるさまのにおい、どんどんよくなっています。こんなにいいにおい……。わたし、どうにかなってしまいそう」
 薄紫色の髪の間から、澄んだアスワドの大きな瞳が見えた。深い紫色のアメジストの瞳。アズハルのルビーのような瞳に負けないくらい、アスワドの瞳もきらきらと輝いていた。
 僕は片手でその前髪を掻き分ける。驚いて目を真ん丸に見開くアスワドに微笑みかけて、その小ぶりな唇を奪う。
 強張る唇をついばみ、少しずつ優しく解きほぐしていく。
 唇がほぐれて来たら、甘い蜜を求めて舌を入れる。奥に引っ込んでいるとろける果肉を舌先でつつき、誘いだしてやる。
 最初は舌先でつつき合い、それから少しずつ絡める範囲を広げていって、やがては一口で貪るように求め合う。
 星空のように煌めく瞳から、溢れた涙が零れ落ちる。
 それでも、もうアスワドは止まらなかった。ぽろぽろ涙を零しながら、必死で僕にしがみつき、舌を求めてくる。
 アスワドは僕の身体に腰を擦り付け、僕のあそこの裏筋に濡れた割れ目を当てて、腰を揺らしてくる。
 くちゅり、くちゅりと音を立てて、お互いの大切な場所が擦れ合う。
 最初はゆっくりとしたわずかな動きだったのが、少しずつ大きく早くなってくる。そのうちいいところが擦れたのか、アスワドは「んっ、んっ」と艶っぽい声を漏らし始める。
 アスワドは身体の感覚に戸惑い、恥じらいつつも、確実に昂り始めていた。上の口で、下の口で、貪欲に僕を求めるようになってきていた。そして目の前の相手を欲するその気持ちは、僕も同じだった。
 こんな煮え切らない刺激ばかりでは、もう満足できない……!
 僕は腰を引いて、蜜で満たされた淫らな花の入り口に先端をあてがう。
 アスワドは僕の行為に目を大きく見開き、その瞳を戸惑いに揺らした。しかし震えながらも、決して紫色の双眸は僕から離れてはいかなかった。
 少しずつ、だが確実に熱を帯びていくアスワドの瞳。
 動いたのは、アスワドの方からだった。
「ん、んっ!」
 アスワドは僕に向かい合ったまま、僕に全身を委ねるように体重を預けてきた。
 唇はさらに強く重なり、舌はさらに深いところまで絡まり合う。アスワドの膨らみかけの乳房が僕の胸の上で潰れ、その腕が僕の背に回され。
 そして僕の猛り切った一物が、彼女の中にぬるりと飲み込まれる。
 大人しそうな見た目とは対照的に、アスワドの胎内は僕の肉棒を受け入れるなり粘っこくまとわりついてきて、きゅうきゅうと締め付けながら奥へ奥へと導いてきた。
 接合部が奏でる水音も、ぬちゃり、ぬちゃり、とこれまでの姉妹達とは違って粘着くような色合いを帯びていた。
 僕は彼女のほっそりしたくびれをなで下ろし、しっかり肉の付いたお尻を両手で包み込む。
 そしてぎゅっとお尻を掴んで、彼女の腰ごと上下に、左右に動かし始める。
 ねばねばのひだひだは離れる事を嫌がるように吸い付き、なかなか動いてくれない。それを無理矢理引きはがすようにしながら、僕はゆっくりと彼女の身体を揺り動かし続ける。
 僕の形を彼女の膣に教え込んでやるように。彼女の身体の内側をすみずみまで冒険するように。角度を変え、深さを変え、何度も、何度も。
「んっ。んんんっ!」
 僕も平常ではいられない。奥まで突きこむたびにすみずみまで粘着く柔肉が吸い付いてきて、出て行こうとすれば嫌がるように襞に絡め取られて引き留められる。求められるまま深く進んで、また吸い付かれて、締められて。それが幾度も幾度も繰り返される。
 呼吸だって落ち着いては居られず、お互い息苦しくて唇を合わせていられなくなった。
 糸を引く唇からは甘い鳴き声が零れ落ち、時折髪のとばりの向こうから細められたアメジストの光がのぞく。
「はぅ、あぁぁ。ぅああっ」
 言葉にならない声を上げ、アスワドの両手が僕の肩を強く強く掴む。
「アスワド。そろそろ、出して、いい?」
「も、もちろん、です。どうぞ、わた、私の、どこにでも、アミル様の、好きなときに、好きなだけ、注いでください」
 うわごとのように呟くアミル。その目はもう、僕を見ているようで焦点が合っていないようにも見える。
 そんな顔を見ているうちに、僕の中に妙な気が起きてしまう。
「じゃあ、一番奥にたっぷりそそぐね」
 気持ちを抑えられずに腰同士がくっつくまで突き上げ、奥の奥までねじり込む。そして彼女の中心を掻き回すべく、掴んだお尻を左右に揺する。アスワドの一番敏感なところに、自分を強く擦り付けるように。
「ああ、あああっ!」
 アスワドはのけ反り、声も上げずに荒い呼吸を繰り返すだけだ。
「ダメ、ダメぇ、ダメですぅー」
 拒絶する言葉と裏腹に、身体は一層強く僕を締め上げる。
 僕ももう、限界だった。
 びくんと収縮した彼女の中心に、奥から込み上げ、噴き上がって来た欲望をそのまま迸らせた。
 奥に精液が叩きつけられるびしゃびしゃという響きが、繋がった部分から伝わってくる程に激しい射精だった。
 精液が発射されるたびにアスワドの身体は小さく痙攣し、その膣は強く収縮して僕の放つものを求め続ける。
 予想以上の射精量に、僕はしばらく動く事が出来なかった。
「だめ。だめぇ……。こんなの、知ったら、知っちゃったら、もう……」
 がくがく震えながら、震える声で呟くアスワド。
 射精の波が少しずつ穏やかになり、引いてゆく。それでもまだ余韻を味わうかのように、アスワドの中は蠕動し続けた。
 僕は自分の呼吸が落ち着くまで、アスワドの身体が大人しくなるまで、ずっと彼女の髪を撫で続けていた。
 やがてお互い落ち着いた頃合いを見計らって、僕は彼女の耳元で囁いた。
「アスワド、とっても気持ち良かったよ。あと、凄く可愛かった。またしようね」
 アスワドは泣きそうな顔で笑ってから、全身から力を抜いて僕に身を預けてきた。
「……絶対、ですよ」
 という消え入りそうな声は、妙に艶っぽく僕の胸に響いた。
 僕は彼女の背中を優しく叩いて応え、彼女の身体から少しずつ身を離していく。
 大切な場所が擦れ合う最後の感触を歯を食いしばって堪えながら、僕は彼女の腰を持ち上げ、白く太い糸を引く自身を引き抜く。
「あ、うっ」
 反応して身をよじらせるアスワドを優しく抱き上げ、絨毯に横たえる。
 アスワドはしばらく僕の腕を名残惜しそうに掴んでいたが、僕の微笑みに、そして僕の背後の姉妹達の視線に気が付くと、目を閉じて手を離してくれた。


 立ち上がって、まだ僕を待ち続けているケプリ達の方へと振り向く。
 まだ、半分と言ったところのようだ。
 こんなに激しく何人ともしたというのに、身体は全く疲れていなかった。むしろ残されたケプリ達との更なる交わりへの期待で、さらに気持ちが滾ってしまう程だった。
 ケプリ達は僕に、その身体の中でも特に股間に熱っぽい視線を向けながらも、皆遠慮し、躊躇うばかりで前に出てこようとしない。
 そんなケプリ達を見て、ずっと妹達を見守っていたらしいアフマルが腕を組んで苦笑していた。
「アフマル」
 呼びかけると、アフマルは意外そうな目を向けてきた。
 だがそんな顔も一瞬の事で、すぐに片手をあげて左右に振って見せてきた。
「あたしはまだいいよ。この子達を先に」
「王として命じる。アフマル、お前が欲しい」
 一瞬身を強張らせてから、渋々と言った様子で前に出るアフマル。
 僕の前に裸体を差し出し、赤くなった顔を逸らして唇を尖らせる。
「随分と慣れてきたみたいじゃないか」
「王様っぽいかな? ごめん。調子に乗った」
「いいんだよそれで。……先に妹達を抱いてやってくれ、あたしは後でいいから」
 そう言って戻ろうとする寂しげな背中に、僕は腕を回して抱き留める。
「ひゃぅっ、い、いきなり何を」
「こんな綺麗な身体を目の前で見せつけられて、何もしない方が王として失礼だろう?」
 左手で乳房をしたから揉み上げ、右手を下腹部に這わせていく。
 そんな僕の両手を、アフマルはやんわりと両手で押さえてくる。
「待たせて悪かった。本当は一番最初にしたかったんでしょ? 一番長く王を待ち望んでいたのはアフマルなんだから」
 囁くと、アフマルはくっと言葉を詰まらせる。
「千年以上待ったんだ。妹達が満たされるのを待つくらい、何でもないさ」
 そう囁き返してくる彼女の手には、しかしもう拒絶しようという力は籠められていなかった。
「この時をずっと待ってた。ひたすら待ち続けてた。だから、あと少し待つくらい、どうって事」
 後ろを振り向いて来た彼女の唇に、僕は自分の唇を重ねる。
 彼女は自らの手で僕に乳房を強く握らせ、しとどに濡れた秘所に導いてくる。
 反り返った僕自身にお尻を擦り付けて、腰を振ってくる。
「ん、ちゅぅ。どうって事、無いのに。欲しいなんて言われたら、そんなに優しい事言われたら、揺らいじゃうじゃないか」
 手の平に吸い付いてくる形のいい乳房。その頂点のぷっくりした果実を指先で転がすと、アフマルはまぶたを落として声を上げる。
 濡れた長いまつ毛が揺れて、切なげに眉が震える。
 足の間に手を忍び込ませて、湿った割れ目を手の平全体で撫で上げる。アフマルは手首を掴んでくるものの、決して止めようとはしない。
「アミル様ぁ」
 ぐしょぐしょになった花弁を指で撫でていく。アフマルの中心が、蜜を滴らせて僕を待っていた。
 そこにあてがい、少し力を加えただけで、指先はいとも簡単に彼女の中に飲み込まれてしまった。
 蜜でとろとろの柔肉が指に絡み付いてくる。後でいい、などと言いながらも、その中はもうとろけきっていた。
 中に入った時の心地よさを想像して思わず腰が跳ねてしまい、アフマルに笑われてしまう。
「あれだけいっぱいしたのに、まだ私を欲しがってくれるとはね」
「おかしい、かな。やっぱり」
「そんな事あるわけ無いさ。……嬉しいに、決まってる。
 緊張も解けて、遠慮も無くなってきて、あたしら好みの王様になって来てるよ。素質があったのかもね」
「それは、……どうかなぁ」
 歯切れの悪い僕を、やっぱりアフマルは笑った。
「それなら、あたし達の手で王様らしくしてやるだけさ」
 そして彼女は両手を広げて自らの魔力球を呼び寄せる。
 他の姉妹より明らかに一回りは大きなそれは、凝縮されても小さな子供を包み込んでしまえそうな程の大きさにしかならなかった。
「アフマルの、大きいな」
「千年以上溜めたんだ。そりゃそうさ」
 アフマルは振り向いて、両手で抱えたそれをこちらに差し出してくる。
 僕はそれを受け取り、抱きしめるようにして胸の中に押し込んだ。

 彼女が生まれて初めて見た物は、空っぽの棺だった。
 王が眠るはずの棺には、人の形に添って豪奢な衣装と黄金の装身具が転がっているだけだった。天敵アポピスの毒で骨まで溶かされたのか、棺の中には眠っていただろうファラオは影も形も無くなっていた。
 締め付けられるような胸の痛みを覚えた彼女は、新たな神の使いである王が現れるまで遺跡を守り続ける事を決めた。
 不遜な遺跡荒らしや野蛮な魔物から、彼女は一人で遺跡を守り続けた。
 やがて自分と似たような存在が現れ、共に助け合うようになった。
 気の遠くなるような時間が経つうち、仲間の数も少しずつ増えていった。
 しかしいくら時間が経っても、待ち望んだ王は現れなかった。
 それでも彼女は諦めず遺跡を守り続けた。王を招き、尽くす事だけが彼女の唯一の生きる希望だった。
 そんなあるとき、世界のどこかで魔王の代が変わった。遺跡を守っていた彼女達の姿も変わり、彼女達にとっての王の定義も以前とは少し違うものになった。
 しかし、そのころにはもう遺跡の全ては砂に埋もれて、訪れる人間も居なくなっていた。
 そんな中、妹の一人が外に出たいと言い始めた。遺跡で待っているだけじゃいけない、王に相応しい者を見つけに行くべきだと、強く訴えた。
 彼女は止めるように言いつけた。外に出る事は、自分達の生き様からは外れるものだったからだ。
 しかし、彼女には妹の行動までは止められなかった。立場と矜持が邪魔をしていたが、本当は彼女自身もまた王を求めて外の世界に出て行きたいと願っていたのだ。
 そして、妹は王を見つけて帰って来た。
 粗末な服を着た、痩せちょっと頼りなく見える人間の男。しかし、その少し幼く見える姿からは大きな優しさが滲み出ていた。
 この人だ、と思った。この男こそ、自分の全てを捧げるのに相応しい人間だと悟った。
 胸の中にそれまで感じた事の無い、心地よくて温かい感情が生まれた。魔王が変わった時、肉体が変化した時でも特に何も思わなかった彼女が、その時初めて自分が本当に生まれ変わったのだと自覚した。
 彼が、欲しくて欲しくてたまらなくなった。
 妹達の見ている手前、あくまでも姉としての体面は保ち続けなければならないと自分を抑え続けたが、それでも身体の奥底からは淫欲が湧き続けていた。
 彼に犯されたい。立場も忘れて、獣の交尾のように、ひたすらにお互いを貪り合いたい。
 自分が果てても彼が満たされるまで、彼が枯れ果てても自分が満足するまで、何の遠慮も無く欲望をぶつけ合いたい。
 でも、自分は……。

「ど、どうした? 大丈夫かアミル様」
 眩暈を起こした時のように頭の中がぼうっとしていた。身体の感覚がふわりと浮き上がってどこか遠くに行ってしまっていた。
 何とか全身の感覚を取り戻すべく深呼吸を繰り返すものの、上手く戻って来てくれない。
 うるさいくらいに胸がどくどくと脈打ち、ぐつぐつと煮え滾る血液を全身に送り出していく。
 凝縮された性欲そのもののような魔物の魔力と、僕自身の性欲が混じり合い、どっちの物なのか分からなくなる。
 一瞬慣れたかと思った魔力球の注入。しかしアフマルの紡ぎあげてきた魔力の塊は、そんなわずかな経験など吹き飛ばしてしまう程に凄まじかった。
 僕の両腕が勝手に上がり、心配そうに僕を見るアフマルの形のいい乳房を鷲掴みにする。
「や、あ、急に」
 指から肉がはみ出るくらいに強く握りしめ、揉みしだく。アフマルの小さな悲鳴が、腰の奥にとぐろを巻く何かを更に滾らせる。
「痛、あっ。アミル、様ぁ」
 鼻と目の奥が熱くなってくる。視界が狭まり、アフマルしか見えなくなってくる。痛みに眉を顰め、戸惑うような表情を浮かべたアフマルだけが僕の世界の全てのように……。
「いいんです。アミル様がしたいなら、あたしの身体で出来る事だったらなんでも喜んでいたします。アミル様になら、アミル様が満足してくださるなら、あたしの身体なんていくらでも好きにしてくださって構いません」
 アフマルが僕の手に手を重ねてくる。柔らかく、温かかな彼女の手が、僕を我に返らせる。
 違う。僕がなりたいのはそう言う王様では無い。僕がなりたいのは欲望のままに貪る暴君では無く、みんなを愛し、愛される優しい王様なんだ。
 そうでなければ、大切な人が傷つかない国なんてきっと作れやしないんだ。それでは、王様になる意味が無い。
 ケプリ達も固唾を飲んで僕を見守っている。
 僕がどんなふうに長女を抱くのか、これから自分達がどう抱かれるのか、期待と不安で胸がいっぱいになってしまって、気になって仕方ないのだろう。
 強張る両手を抑えつけ、強すぎる力を抜いていく。
 優しく接するんだ。大切にしてあげるんだ。僕はそう念じながら自分を制御しようとする。だが、アフマルはそんな僕を見て、安心しつつも残念がるような表情になっていた。
 もしかして、アフマルが僕に望んでいるのはそういう事なのだろうか。優しくされるのではなく、むしろむき出しの獣欲を求めているのだろうか。
 僕は身体の中に渦巻く黒々とした性欲の炎を自覚しながら考える。
 欲望に支配されたくはない。かといって、大切に集めてきたものを与えてくれた彼女の気持ちを放り捨てたくも無い。家臣が尽くしてくれるのならば、その家臣の欲望もちゃんと満たしてあげたい。
 魔物の、アフマルの欲望を受け入れて、自分のものにして、そしてアフマルに返してやりたい。
 魔物達の王となるためには、時には王様らしく欲張りにならなければならないのかもしれない。彼女達が力任せに、乱暴に貪られる事を望むのならば、それを叶えてやれるような、ケプリ達の、アフマルの性欲も全部丸呑みに出来るくらいの大きなケダモノなる事もまた必要なのかもしれない。
「アミル、様?」
 首を傾げて覗き込んでくるアフマルの肉体を、僕はじっくりと観賞する。
 ほっそりした金色の手足。すらりとしつつも柔らかそうな太もも。つるつるの割れ目に、ほんのり脂肪の乗ったお腹。片手で収まらないくらいの大きさを持ちながらも、形を崩さない二つの乳房。
 鼻筋の整った美しい顔。目が合うと、アフマルははっと息を飲んで目を逸らした。
「アフマル。……その場に四つん這いになれ」
 アフマルは頬を染めて、ちらちらと僕の方を見ては目を逸らす。
「よ、横になるんじゃ、駄目……ですか?」
「駄目だ。犬のように四つん這いになるんだ」
 自分の身体を抱き寄せて恥じらうアフマルを、僕はじっと見続ける。
 彼女はやがて耐えかねてひざを折り、そして躊躇いながらも両手を床に下ろした。
「よ、四つん這いに、なりました」
「何が見える」
 アフマルは僕を見上げ、真っ赤になって『それ』から目を逸らす。
 僕は腰を寄せて、『それ』で彼女の頬を軽く叩いた。
「あ、アミル様の、その、お、おちん」
「はっきり、ちゃんと言うんだ」
「硬く大きく勃起したおちんぽが見えます」
「舐めろ。手は使わずに、口だけでするんだ」
 アフマルは唇を震わせて僕を見上げてくる。恥辱にまみれた彼女の瞳の奥に見えるのは、しかし怒りでも怯えでも無く、昏い悦びの色だった。
 アフマルは顔を近づけると、まずは僕の匂いを嗅いだ。
「んっ」
 それから愛おしげに僕に頬ずりし、もう一度僕を見上げてくる。
 淫らな昏い影を落とした彼女の微笑みは、半ば陶酔している僕でも息を飲むほどに美しかった。
「お口で、ご奉仕いたします」
 大きく開いた口の中から、たっぷりと唾液の乗った舌が顔を出す。
 その舌先で僕の先端を舐め、裏筋を舌の上に乗せ、かりのくびれに沿って亀頭全体を嘗め回し始める。
「ふぅん、はぁっ、はぁっ」
 いつもは勝気そうなアフマルが夢中で雄にしゃぶりついている様は、何とも壮観だった。
 アフマルは一度舌を引き、僕の先端に口づけをする。そしてそのまま口を開いて、僕を熱い口の中に飲み込んでいく。
 かりまで唇で包むと、一度口をすぼめながら頭を引き、今度はより深くまで僕を受け入れて、口をすぼめてまた引いていく。
 アフマルの内頬の肉が隙間なく僕の肉棒を覆い尽くし、熱くねっとりと絡み付くように擦れていく。
 ぐちゅっ、ぐちゅっ。と彼女の口から音が漏れ、その口の端からよだれがぼたぼたと垂れ落ちていく。
 少しずつ腰の奥から熱がせり上がってくる。アフマルの身体の向こう側から、むわっと女の匂いが漂ってくる。
「よし、もうその辺でいいぞ」
 アフマルが驚いたかのように僕を見上げる。言っている意味が分からない、そんな顔だった。
 僕は呆然としている彼女の顔を掴むと、手早く自身を引き抜いてしまう。
「あっ、……そんな」
 僕は膝を折って彼女の前に屈みこみ、彼女の顎を持ち上げてその唇を奪う。
 目を見開く彼女をよそに、僕は二三度強く舌を絡ませ合ってから唇を引いた。
「アミル様、ご奉仕した口に……。良かったのですか?」
「僕の身体は口づけを躊躇う程に汚れているのか?」
「い、いえ」
「ならいいじゃないか。アフマルの身体だって、どこも綺麗だ。僕は綺麗な君に口づけしたくて、そうしただけだ。何か不服が?」
 唇に指を当て、アフマルは乙女のように恥じらう。
「不服など……」
「なら、次に進もう。アフマル、そのままお尻をこっちに向けるんだ」
 アフマルはその褐色の肌を恥じらいの色に染めながら、しかしもうためらう事無く後ろを向いて、僕にお尻を突き出してくる。
「向け、ました」
「お尻を広げて、僕にアフマルの身体を良く見せてくれないか」
 びくっと彼女の肢が震える。
 彼女の長い指が丸々としたお尻の肉に食い込み、そして。
「ほ、本当に、しなければ駄目ですか」
「僕に見て欲しくないのなら、それでもいい」
 そして、彼女はお尻を左右に広げた。
 桃色の灯りをてらてらと照り返しながら、ひくひくと微動する濡れた女陰。それと一緒に蠢くお尻の穴。自分でも滅多に見る事の無いであろう、また絶対に誰にも見せたくないであろう、恥ずかしい場所。
「う、ううぅ」
「準備万端だな。アフマル、どっちに入れてほしい。好きな方を犯してやるぞ」
「え? どっちがいいか、ですか?」
 返事がすぐに返って来ない。それだけアフマルの葛藤が激しいという事なのだろう。
 いつまでも待ってやりたいというのは気持ちだけに留め、僕は彼女のお尻の割れ目に指を這わせていく。尻の穴を少しくすぐり、それから濡れた花びらを撫でてやる。
「ぁああっ」
「欲張りだな、どっちもこんなに欲しがってる。まだか、アフマル」
「そちらで、お願いします」
「そちら、とは? はっきり言ってくれないと分からない」
「あ、あたしのおま、おまんこを、アミル様の硬くて太いおちんぽで、ぐちゃぐちゃに掻き回してください。濃厚なザーメンを溢れるくらいに注ぎ込んでください。どうかあたしに種付けして、アミル様の子を孕ませてくださいっ」
「分かった。入れるぞ」
 答えを聞くなり彼女の手ごとお尻を掴んで引き寄せ、雌穴に狙いを定めて何の遠慮も無しに自分の欲棒をねじ込んでやる。
 入り口あたりで少し抵抗があったものの、それからあとは吸い寄せられるようにあっけなく全てが飲み込まれてしまう。姉妹の中の誰よりも熱を持った肉体が僕を迎える。
「ああっ。いきなり、そんなっ。まだ準備が」
「こんなにびしょびしょにしておいて何を言ってる」
 身体の準備が出来ている事なんて、アフマルを後ろから抱きすくめた時から既にはっきりわかっていた。そしてそれ以上に、正直僕はもう我慢するのが限界だった。
 僕は腰の疼きが命じるままに、奥まで腰を突き入れる。
 火傷しそうな程に熱いアフマルの胎内。細やかな襞が僕自身を包み込み、小さな隙間まで見逃さずに吸い付き絡み付いてくる。少しでも気を抜けば、すぐに発射してしまいそうだ。
 僕は一度アフマルの膣から肉棒を半分ほど引き抜き、勢いよく突き入れる。
 ぱんっ。とお尻が音を立て、アフマルが桃色の悲鳴を上げる。
 獣欲の命じるままもう一度。今度はさらに深く、次は角度を変えて、少しずつ速度を上げていく。
 思った通りに抽挿させるのは難しかった。今日が初めての僕には、たどたどしくなりながらも一生懸命腰を振る事しか出来なかった。
 今までしてきたまぐわいだって、ケプリ達から動いてもらう以外には、下から腰を突き上げるか、ゆっくり丁寧に動くくらいの事しかしてやれていない。
 ただ、僕なりに少しでもアフマルを満足させてやりたかった。
 ずっと遺跡を守り続け、姉妹が増えてからは彼女達のまとめ役を担い、自分の欲を押し殺して生きてきたアフマルを、ずっと王を求めてきた彼女を少しでも満たしてやりたかった。
「そんなっ。激しすぎます、もっと、ご主人様の形が分かるくらいにゆっくり……。これじゃ、激しすぎて、もうあたしっ」
 こんな振る舞いが正しいのかは分からない。でも、言葉とは裏腹にアフマルの身体はどんどん柔らかく熱く昂っていく。
 丸めた背をびくんびくんと跳ねさせ、腰をぶつけられる度にお尻が震える。
「いいっ。きもちいいっ。あああっ。だめ、もうあたしっ」
「駄目だっ。まだ、我慢しろっ。僕は、まだ、満足してないぞ?」
「でも。ぁ、ぁあいく、いってしまいますっ。あたしもうっ、げんかいですぅっ」
 黒い絨毯を掴みながら、大きく背を丸めて全身を収縮させるアフマル。
 とろけていた膣口が狭まり、糸のように細いヒダヒダが強く締め上げてくる。
 身体の芯を犯してくる程の快楽を、僕は食いしばり何とかこらえようとする。
「もうしわけ、ござい、ません。でも、あみるさまのが、よすぎて。あたしっ」
 奥底から噴き上がり出て行こうと暴れるそれを押さえつける、一部制御が効かずに少し精液が漏れ出した気がしたが、全てを放出してしまう前に何とか波を乗りこなして時間を稼ぐ。
「嬉しい事を、言ってくれる。まぁ、アフマルが満足してくれたなら、良しとしようかな」
 絶頂の余韻に身体を震わせるアフマル。少し乱れた髪と身体が、たまらなく美しかった。
「あ……、アミル様は、まだ、なんですね。一緒に、いきたかった、な」
「何を言ってるんだ。まだまだ一緒に楽しもうじゃないか」
 僕の限界もまたすぐそこだったが、あと少しなら波も乗りこなせるだろう。大事なのはこれからだ。
 わけが分からなくなるくらい、アフマルを滅茶苦茶にしてやる。身分も体面も忘れて快楽に溺れさせてやる。
「え、待ってください。少し休ませて、今は、まだ、敏感で、そ、そんな深くしたらぁ」
 一度抜けるほどまで引き抜き、それから根元までゆっくりと押し込んでいく。
 明らかに絶頂を迎えたはずのアフマルの雌穴は、とろけきりながらも変わらぬ圧力で僕を求めてくる。
 僕は限界線上を行ったり来たりしながらも、アフマルの雌に自分の雄を擦り付け続ける。
 限界を我慢するうちに異様な興奮が首をもたげ、僕はついにはアフマルに覆いかぶさって無理矢理うつぶせに押し倒し、動きようも無い彼女に何度も自分を突き立てた。
 くっつけたお腹に、翅越しにアフマルの痙攣が伝わる。
「アフマル、出すよっ」
 僕は腋の下から彼女の両乳房を握りしめ、長い髪に顔を埋めながら、抑えに抑えた自分を解放する。
「あみるさま、あみるさまぁ、あたしもまた、いくっ」
 身体の芯が膨れ上がって爆発したようだった。全身が心臓になったみたいに脈打つ。まるで身体中を使って射精しているみたいだった。
 壊れてしまったポンプのように、僕の射精はなかなか収まってくれなかった。どれだけ大量の精液が放出されているのか自分でもわからない。
「凄い、熱いのがいっぱい……。このままじゃ、子宮から、あふれて……」
 二度の絶頂を迎えてなお、アフマルの肉筒は弛緩しきらずぎゅぅっとすぼまった。胎内に叩きつけられる僕の大量の精液を余すことなく飲み込もうとするかのように、彼女は細やかな収縮を繰り返し続けていた。
 僕はまだ絶頂の波の引かない身体を動かし、アフマルの耳元に口を寄せる。
「満足したよアフマル。凄いまぐわいだった」
「あぁ、あたしも、こんなに身体も心も満たされたのは初めてだよ。ありがとう、こんなあたしに気を使ってくれて」
 振り向いた寂しそうな笑顔の横顔には、涙の痕が一筋走っていた。
「気付いていたの?」
「あんなに欲望に忠実で嗜虐的なら、王になる事に最初から遠慮なんてしないだろう?」
「……そうだね」
「いきたいのを我慢してまで、あたしを無茶苦茶に責めやがって。最初からこんなにされたら、次から何をすればいいんだよ」
「だって、射精しちゃったらアフマルは身を引くだろう? そうしたらアフマルを満足させてあげられないじゃないか」
「アズラクだってそうだったろ? ……そうか、だからか。全く、あたし達の王様は余計な気ばかり回すんだから。
 本当はあたし達が喜ばせなきゃいけないのに、あたし達が喜ばされてばっかりだ。いい王様だと思う。心の底からあんたが王様で良かったって思うよ。でも……」
 顔を伏せた彼女の顔を、さらに長い髪が覆い隠す。
「でも、アミル様はずるい。あたしはみんなをまとめなきゃならない長姉なんだ。それなのに、こんなに優しくされたら自分を抑えられなくなるじゃないか……」
 思う事は色々あった。だが、そのどれも口にすることは出来なかった。
 彼女には彼女にしか分からない、これまでずっと積み上げてきた事があるのだ。それに対し、仮に王だとしても、今日会ったばかりの僕が軽々しく意見できるわけが無かった。
 でも、感謝を伝えるくらいの事は許されるはずだ。
「アフマル、本当にありがとう。突然面倒事を持ち込んできたこの僕を、妹を傷物にしたこの僕を王様として迎えてくれて、こんな風にみんなをまとめて歓迎してくれて。
 ずっと自分を抑えてでも妹達の事を想い、妹達の気持ちを優先し続けていた君を、僕は尊敬する
 でもこれだけは分かっていてほしい。ケプリ達にとってはアフマルはお姉さんかもしれないけど、僕にとっては一人の大切な女性だって事を」
 アフマルの肩が大きく揺れ、しゃっくり上げるような小さな声が漏れる。
「アミル様。あんたやっぱりずるい。ずるいよ……。
 どうしてもっと早く、あの子と会う前にここに来てくれなかったんだよ。そうしたら、あたしは……」
 小刻みに震えだす身体を優しく抱き締めると、彼女の長い髪が左右に揺れた。
「はは、こんなんじゃ駄目だね。……独り言だ、聞かなかった事にしてくれるかい?」
 僕はこれまでと同じように、アフマルにだけ聞こえる声で囁く。
「……えっと、何の話だったっけ? 次はお尻でしようって話だったっけ」
「ふふ。そうだよ。次はあたしのお尻で、十秒ももたせず何回も搾ってあげる。覚悟してなよぉ」
 僕は少し怖くなりながらも、アフマルにいつもの調子が戻ってきているのを見てほっと胸をなで下ろした。
「悪いんだけど、もう一つ頼んでいいかな。あと一分、いや、三十秒でいいから、このまま抱きしめていて。少し泣いたら、元のあたしに戻るから」
 僕は声も立てずに泣くアフマルに寄り添うように肌を重ねる。その身体の震えが収まるまで、僕はずっと彼女の身体を抱き締め続けた。


「う、ううん。さ、流石あたし達の王様だ。予想以上の激しさにあたしもどうにかなってしまいそうだったよ。それに、あんなにしてもまだ元気なんて」
 落ち着きを取り戻したアフマルは、わざと周りに聞こえるくらいに声を張ってそんな事を言った。
 そして、上手く続けろと視線を送ってくる。言外に、妹達をちゃんと抱いてくれと言っているのだ。
「あぁ、僕はまだまだ君達を抱き足りない。君達が可愛くよがり、イき狂う姿を見たくてたまらない。さぁ、次は誰が僕の相手をしてくれるのかな?」
 僕は立ち上がり、未だ交合を見守るにとどまっていたケプリ達に両腕を広げて見せる。
「一緒に気持ち良くなろう。してほしいことがあったら何でも言ってくれ。家臣の期待に応えるのも王様の役目だからね。それに、自分を解放した方が気持ち良くなれるよ」
 ケプリ達は相変わらず互いに視線を交わし合い縮こまっていたが、やがてその中から一匹のケプリが意を決したように手を挙げて踏み出してきた。
「わ、私、私を、壁に押し付けながら抱いてください。立ったまま、後ろから、……少し乱暴に」
「分かった」
 その子に歩み寄ろうとすると、すぐに隣の子も声を上げた。
「私は噛んでください。全身に歯型が残るくらい、王様に抱かれたって次の日一日中分かるくらい、強く痕を残してください」
「いいの? うん。わかった。そうしよう」
 そして彼女をきっかけに、他のケプリ達も次々せきを切ったかのように気持ちをぶつけてきた。
「じゃあ私は、お姉ちゃんみたいに後ろから」「私は普通に前から、王様の顔を見ながら愛されたいです」「あ、あそこを、舐め合いたいの」「お、お尻……いえ、やっぱりおまんこでいいです」「「私達を変わりばんこに犯してください」」「私は、優しくしてくだされば、どんな体位でも……」
 幼い顔つきの子が倒錯的なお願いをして来たり、大人びた子が普通の丁寧な交わりを申し出て来たり、双子のように似た二人が声を揃えて頼んで来たり。
 その欲望は十人十色ではあったけれど、彼女達も皆僕を求めて、期待をしてくれていた。
「分かった。誰かと一緒でいい子はまとめて相手にするよ。一人ずつがいい子は、順番だ、ちょっと待っててね」
 一番最初に手を挙げてきたケプリの手を取った僕の元に、二三匹のケプリが寄り添って来る。
 夜は、まだまだ長そうだった。


 壁沿いに並んだケプリを後ろから順番に犯したり、かと思えば恋人同士のように身を寄せ合い言葉を交わし合いながら抱き合ったり、ひたすらお互いの性器を舐め合ったり、同じ顔をした二匹のケプリに同時に迫られたり。
 魔力を注ぎ込まれ続けた肉体は萎える事を知らず、僕はひたすら彼女達の肉体を貪り、また彼女達に貪られた。
 一匹一匹匂いも味も触り心地も、包み込んでくる胎内の感触も違っていて、彼女達の相手をする時間は、天国のように甘美で地獄のように淫らだった。
 全員を一度抱き終えた頃には最初の頃に抱いたケプリが回復していて、休む間もなくまた行為に没頭して。
 本来であれば枯れ果て失神していてもいいくらいなのに、僕の身体は何回何十回と交わり、射精を繰り返してもなお疲れを知らなかった。むしろケプリ達と肌を重ねるごとに勢いを増していたと言っても過言ではない程だった。
 二十を超えるケプリ達をそれぞれ二回ずつ抱き、求めてくるケプリによっては三回、四回と抱いてもなお、夜は明ける気配を見せていなかった。
 周りを見渡せば、月の無い夜の闇のような絨毯のそこかしこにケプリ達が倒れていた。
 何かの体液で艶やかに光る褐色の肌を時折びくんと跳ねさせ、金色の四肢を投げ出して、虚ろな瞳で身を横たえる魔物達の中、立っているのは自分だけだった。これだけしてなお、まだ勃ち続けていた。
 それぞれとの交わりは脳に焼き付いていたが、何回したかはもう途中から数えるのをやめていた。
 しかし、これだけの魔物が倒れ伏す程に数えきれないほどしてもなお、下腹部の奥にとぐろを巻いた獣は満足していなかった。
 疲れ果てたケプリ達の姿も獣の欲望を助長させた。彼女達の足の間から垂れ落ちる白濁が自分の注ぎ込んだものだと思うと、胸の中にどろどろとした熱が再び込み上げた。
 手近なものに覆い被さり、有無を言わさず犯してしまえと下半身が命じる。
 だが、まだまともな自分は彼女らに鞭打つ事などするなとも忠告する。
 自分で慰めて気持ちを落ち着かせるという選択肢も考えた。だが、いくら自分でしようとしてもあそこが破裂しそうな程膨れるばかりで射精にまでは至れなかった。
 魔物娘達の魔力を受けて変質した肉体は、魔物娘達の『自分の肉体に精を注ぎ込んでほしい』という欲望を反映しているのか、交わり以外による射精を許してくれなくなってしまったのだ。
 自慰が出来ない以上、高まり続ける射精感を鎮めるためにはケプリ達を抱かなければならなかった。しかしそうしてケプリ達を抱けば抱くほどに、性欲はなおさら高まっていってしまうのだった。
 その欲望を鎮めるために再びケプリを求め、それがまた欲望を燃え上がらせ……。
 そんな淫らな循環は、確実に僕の僅かな理性を蝕み、意識を犯していた。
 僕の足は、自然と一匹のケプリの元に向かっていた。
「アズハル」
 仰向けになっていた身体を抱き上げ、肩を揺する。彼女の小さな身体が動くたび、これまでの交わりの激しさを物語るように動きに合わせて股の間から白濁液がしたたり落ちる。
「う。あ、みる?」
 表情を取り戻し始める彼女に、僕は短く口づける。
 アズハルとは他のケプリに比べてもかなり多く肌を重ねていた。誰かと気持ちいい事をするたびに同じことをアズハルとも共有したくなって、結局アズハルの身体に戻って来てしまうのだ。
「ねぇ、したいんだよ。だめかな」
「私も、したいけど……」
 アズハルは自分のお腹を撫でる。度重なる僕の射精を受けて、その下腹部はぽっこり膨れてしまっていた。
 金色の手が少し下腹を押すと、ぶぴゅっと音がして彼女の割れ目から白濁液が噴き出してくる。
「アミルの手は気持ち良くって、キスはもっと気持ち良くって、おちんちん入れられると頭がおかしくなっちゃいそうなくらいだけど、でもこんな状態じゃきっと気持ち良くさせてあげられない……。
 ごめんねアミル。私だけがアミルを満足させてあげられてない……ごめんね」
 その瞳から涙が零れ落ちる前に、僕は彼女の目元を指先で拭う。
 やはり僕はやり過ぎていたのだろうか。獣欲だけに身を任せまいと、脊髄反射的な交わりはするまいと頑張ったつもりだったが、僕自身が意識的に彼女をこんな風にしてしまったのでは、愛しい人を泣かせてしまったのでは意味が無い。
「そんな事無いよ。僕が一番いっぱいしてるのはアズハルなんだから。……こっちこそ、苦しい思いをさせてごめん」
「苦しく無いよ、気持ち良すぎるだけだよ。アミルは何にも悪く無いよ。だってアミルは私達の王様なんだもん」
「でも僕は、みんなが動けなくなっているのにまだ誰かとしたくてたまらないんだ。こんな僕が王様なんて」
 僕が頭を抱えそうになったその時だった。後ろから、小さな笑い声が聞こえてきた。
「それはアミル様が立派な王である証拠ですわ。私達に絶えることなく精をお与えくださる王、これ以上に素晴らしい王などありえません。アミル様、よろしければ、この私の身体をお使いください」
 振り向けば、四つん這いになったアズラクがすぐそこまで身を寄せて来ていた。
 彼女は身を起こしてこちらにお腹を向けると、膝を立てた脚を広げて、精液まみれになった自身の雌穴を広げてきた。
「魔物娘の身体はそんなにやわではありませんわ。愛するアミル様の射精でしたら、あと十回でも、二十回でも、いくらでも喜んでお受けいたします」
「おっと、長女のあたしも忘れるなよ」
 アズラクの隣に並んだのは、憔悴しながらも不敵に笑うアフマルだ。
「子宮はちょっと窮屈になって来たけど、何、まだお尻の方は全然余裕だよ。アミル様、いくらでもあたしの身体を使ってくれよ」
 二人との濃密な交合を思い出して生唾を飲んでいると、いきなり背中に誰かが飛び乗って来た。
「私も復活したよぉ。もっともっとせっくすしようよお兄ちゃん」
 軽くて凹凸の少ない身体から何となく想像はついていたものの、後ろから跳びついてきたのは一番下のケプリであるアスファルだった。
 彼女を降ろしてやろうと右腕を動かそうとすると、その右腕まで横から伸びてきた金色の捕えられてしまう。
 奪うように僕の手を取り自分の乳房に押し付けてきたのは、前髪の長いケプリ。アスワドだった。
「……私も、まだまだ大丈夫、です。いくらでも、好きなだけ犯してください。私、もっともっとアミル様と、気持ち良くなりたい」
「より取り見取りだぞ。誰とするんだ、王様? この際だ、好きな順番で抱いてくれよ」
 アフマルはそう言って笑ったが、僕は困ってしまう。
 アズハルだけは別としても、彼女達に順番など付けられるはずが無い。みんな少しずつ違っていて、それぞれが他にはない魅力を持っているのだから。
 言葉に窮していると、不意を突かれて誰かに押し倒されてしまった。
 唇を奪われて目を白黒させているうちに、とろけた熱い蜜壺に欲棒が飲み込まれていた。
 この感触、心地よさ。やっぱり僕を最初に抱きしめてくれたのは……。
「順番なんて、そんなの駄目。私に先に声をかけてくれたんだもん、私がアミルを気持ち良くさせてあげるのっ」
 震える手足に力を込めて僕の上で腰を振っていたのは、限界まで下腹部を膨らませていたはずのアズハルだった。
 彼女は涙目になりながら、がむしゃらに腰を上下に振ってくる。またぐらに与えられる快楽以上に、その健気な姿が胸の奥を熱くさせた。
「だな。やっぱ順番付けるなんて興が醒めるだけだ」
「みんなで一緒にアミル様にご奉仕してさしあげましょう」
「えへへ、休ませてなんてあげないからね、お兄ちゃん」
「わ、私も一生懸命ご奉仕します。たくさん、楽しんでください」
 唇に柔らかい感触が重ねられ、左腕が大きな二つの弾力の間に挟まれる。右脚の上に濡れた小さな割れ目が押し付けられて擦れられ、右手の指が熱くぬめった狭い場所に導かれる。
 ケプリ達は僕の全身に取り付き、貪るように肌を重ねてくる。
 時に大渦のような激しい快楽で僕を飲み込み、時にさざ波のような官能で僕を癒し、飽きることなく、絶えることなく、身を寄せ合い続ける。
 愛しい者達の身体を抱き寄せながら、僕は日が昇らずに、永遠にこの時が続く事を願った。
13/07/06 23:58更新 / 玉虫色
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■作者メッセージ
言い訳的、あとがき。
というわけで、歓迎の儀後半でございました。今回も「エロあり」というより「ほぼエロ」というような内容でしたね……。

予告としましては、次の章が最終章となります。
そのあとで後日談を付ける予定なので、更新は後二回くらいですね。

出来る事なら最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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