連載小説
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ラクトケージ
「お、に、い、さ―――ん!!」
「もガあっ!?」

 銀時計が放つ光から飛び出してきたアリスが、その勢いのまま飛びついてきたた。
 
「会いたかったよぉ〜ぎゅー!ぎゅーー!!」

 林檎程の胸の膨らみが顔面に押し付けられる。いや、擦り付けられる。甘く、濃いミルクの香りが鼻腔を犯した。それが少女の胸から分泌された乳液が濃縮され衣服に染み付いたものである事を思えば、まるでマーキングされているかのような気分である。
 が、そんな行為にも身体の方は反応してしまうのだ。
 一方彼女の方はと言えば、抱きついた体制のままずるずると下へと移動し、今は逆にこちらの胸へと顔を埋めている。

「えへへ…おにいさんのにほひー…♪」

 にへら…と蕩けた表情でしがみつく少女に、思わずその身体へ手が伸びた。
 左腕を腰ヘ回す。生地の表でさえ、触れた皮膚に不思議な快感を与える少女のドレス、そしてその向こうの柔らかな感触が手のひらから心まで満たした。
 右手でその長い金色の髪を梳けばきめ細やかな繊維が指の間を流れ、擽ったい快感を与えてきた。

「ほわぁぁぁ…」

 その動作を受け入れる少女もまた身体を脱力させ、至福の蕩け顔を晒している。

 穏やかな時間が流れた。



…………。




「………って!こうしてる場合じゃないのよ!!」
「わっ!」

 がばりと、アリスが顔を上げる。
 勢いに押され背中から床に倒れてしまった。

「いや、良かったけど!最高だったけど!!時間さえあれば一日中こうしてたかったけどぉっ!!!」
「おおう…」

 倒れた身体を追いかける様に彼女は四つん這いになり、吠える。

「でも!誠に遺憾ながらここでは時間が有限なので!…ん――――ッ」

 いきなり唇を奪われた。
 両手で頭を固定され、逃げられないようにしながらの貪るようなキスが来る。…すぐさま舌が入り込み、口内を蹂躙した。
 異様に甘い唾液を纏った舌先が上顎を擽り抵抗力を奪い、力の抜けた身体に少女の柔らかな肢体が押し付けられる…。
 意識がかすむ。
 そのまま数秒か、数十秒か…一頻り口内を貪られた。

「ぷぁっ……はぁ♪」

 少女は上気した表情で、恍惚の溜息をつく。
 アリスの様子…テンションがどうもおかしい。何か、妙に焦っているというか、いつもの余裕を失っているように感じた。

「次はぁ、こっち♪」

 首元のリボンが解かれ、開いたドレスの胸元から片方の乳房がまろび出る。
 ふるりと揺れる魅惑の半球…。先程衣服越しに顔面に押し付けられていたそれは、桜色の先端から乳液を滴らせていた。
 
 
「わぷっ!?」

 少女の舌に蹂躙され開いたままとなっていた口に胸の先が押し込まれた。
 再び顔面に押し付けられる柔肉。それは少女の身長に比すれば十分に大きいと言える。しかしその異様な柔らかさは、いまだそれが成長途中にある事を感じさせた。
 …などと若干現実逃避気味な感想を浮かべている間に、咥内に甘みが拡がる。

「はい、吸ってぇ♪」

 流し込まれる甘い声に命じられるがまま、舌が動いてしまう。
 舌先で硬くしこったその突起をなぞれば、そこから甘い乳液が溢れ出す。以前紅茶に混ぜて飲まされたそれとは全く異なる、舌に絡みつくような強烈な甘み…そして鼻に抜ける濃厚なミルク臭。
 最早母の乳の味など思い出せないが、脳を揺さぶるようなその味わいは間違っても人間が分泌するようなものではないはずだ。
 果たしてこれは人間が口にして大丈夫なものなのかと、どこか他人ごとのようにそう思う。
 少し不安になった。

「ふあっ…♪あはっ♪」

 一方少女の方はと言えば、胸をしゃぶらせる快感に夢中になっており全く意に介していない。それどころかいつの間にか腕を後頭部に回し、がっちりと拘束している。そして舌と唇の動きを止めようものなら、一際強く胸を押し付けられ柔肉に鼻を塞がれるのだ。
 少女としては無意識の行動なのであろう。…が、受けるほうからすればそれはしゃぶるのをやめれば窒息させるぞという脅しである。しかしそれに屈して舌と唇を動かせば、あっという間に口内は異様な甘さのミルクで満たされてゆく。
 結局、危険な予感のするその液体を彼女が満足するまで飲み続けるしかてなかった。



「ぷはっ…は…」
「あはぁ……♡」

 ぐたりと、脱力した少女の身体が顔面にのしかかる。
 そのままごろりと回転し床へと…。そちらへ顔を向ければ、恍惚の表情で放心しているアリスの姿があった。乳を片方晒し、もう片方が収まるドレスの前はぐっしょりと濡れている。衣服の皺の付き方からして片方を自分にしゃぶらせ、もう片方は彼女自身の手で弄っていたようだ。
 …なんだか自慰の道具に使われた感がある。しかし彼女の満足げな表情を見ればなんだかいいことをした気分になった。
 そして一連の行為に自分も興奮を高められていたのも事実。現にズボンの中は硬くなっており、その先端でわずかに濡れた感触を感じていた。身じろぎをすれば、わずかな摩擦で快感を感じるまでになっていた。それこそ、気を抜けば下着の中に精を漏らしそうになるほど…

 ……いや、おかしい。

 興奮したにしてもあまりに敏感過ぎないだろうか。

「あ…は♪どうしたのおにーさん?もうミルクが効いてきたかな?」
「ミルクて…やっぱり何か入って」

 やはり飲まされた汁はただ甘いだけの液体ではなかったらしい。

「うん♪今回は前みたいに成分を加減してはいないの。むしろ向こうでいろんな媚薬を飲んで、気持ちよくなれるブレンドを色々考えたんだから♪」
「え…飲んだものがそこから出てくるの?」
「おっぱいだけじゃないよ。汗も、唾液も。今の私は全身媚薬人間なのです♪…いや、人間じゃないけども。」
(…生物濃縮?)

「さてさて、そろそろ…本格的におくすりが効いてきたかな〜?」
「ひぃっ!?」

 不意に脇腹から胸までをつーっと撫でさすられる。その瞬間、背筋がのけ反るほどの快楽が走った。

「どうしちゃおっかなー♪この状態で全身擽ってあげよっかな〜♪」
「お、お手柔らかに…」

 目の前で指を蠢かせながらそんなことを言う。獲物を前にした少女の眼には嗜虐の色が浮かんでいた。
 先程確かめられた通り肌の感度はのっぴきならない状況になっている、服を着てじっとしているだけでも全身を柔らかな羽毛で擽られているかのような感覚に襲われるのだ。身じろぎするだけでも衣服や床と擦れた個所に鋭い快感が走り、力が抜けてしまう。
 実質、身動きを封じられている状態であった。

「だぁめ♪気持ちよくしてあげるって言ったでしょー。あっ、そうだ。」

 アリスがにやりと淫靡な笑みを浮かべた。膝立ちになり頭の方へと移動してくる。そして顔を跨ぐように位置どると…

「まさか…」
「えいっ♪」
「ふぎゅっ!?」

 腰を下ろした。
 白い布地に覆われた尻肉が落ちてくる。
 胸以上の柔らかさとボリュームでもって、顔面を覆いつくした。更には両側から肉付きのよい太腿が挟み込み、一拍遅れてスカートが首から上を覆ったことで光が消えた。
 その代わり満たされるのは、強烈な甘い匂い。先程胸を擦り付けられた時の匂いからミルク香だけを除き、数倍に濃縮したような香り…。
 アリスの言を引けば、すなわちこれは彼女がその身に蓄えた媚薬のそれなのだろう。そしてそこに彼女自身のフェロモンとでもいうべき成分が混じり、スカートの中は媚毒のガス室と化していた。
 一呼吸ごとに胸焼けしそうな甘ったるさとともに、身体の感度が引き上げられてゆくのを感じる。
 そして突然、胸から腹部に掛けて鋭い快感が走った。
 反射的に背がのけ反り、次いで下着の中に暖かく濡れた感触が拡がった。 

「あっ……」
「あはっ、お腹に手をついただけで漏らしちゃった♪これじゃこのまま擽ってあげたらどうなっちゃうのかなぁー♪」

 上から聞こえるアリスの楽し気な声により、自分があの一瞬で射精していたことを知る。反射的に身をよじったことにより、下着の中で陰茎が擦れたのだ。
 摂取させられ続ける媚薬に加え、視界を塞がれたことにより皮膚の感度が一層引き上げられる。更にどのタイミングで来るか分からない刺激が、更に肌感覚を狂わせていた。

「んふふ、いっちゃえ♪」

 少女の手が身体を撫でまわす。胸から腹、そして時折不意を突くように腕や下腹部へと…その小さな手が這い回るたび、身体は絶頂に打ち上げられた。
 同時に彼女もまた、こちらの顔に股座を擦り付け、快楽を貪ってくる。鼻先に当たる布地は濡れそぼり、スカート内にこもる匂いと媚薬の濃度を濃くしてゆく。
 その連鎖によりただひたすら身体の感度と快楽が増してゆき、ついに精神が悲鳴を上げ…


 カチッ…








「ゑ?」
「どうしたの?おにーさん♪」

 いつしか見た光景。
 気づけば部屋の中央、テーブルを挟んでアリスと向き合い座っていた。
 目の前には湯気を立てるカップと菓子が並び、甘い匂いを漂わせている。

「はい、どうぞ♪飲み物はミルクティーしかないけど、いいよね?」
「…ゑ?」

 確かに先ほどまで彼女の下に敷かれていた筈だが…あれは夢だったのか、あるいは時間が飛んだのか…
 気づけば身体の感度も元に戻っている。

「時間止めて何かした?」

 ビクリと少女の肩が震えた。

「え…な、何のことかな!?」
「…………。」

「いやその…おにーさんの感度が上がりすぎちゃって…それを中和したりとか…」
「とか…?」
「そ、それだけだよっ!?」

 一体他に何をしていたのだろうか……
 疑っても詮無いのでとりあえず目の前に広げられたお菓子を摘まみながらお茶を啜った。
 相変わらず驚くほどに美味しい。

「………。」

 自分の身体を触れてみる。
 確かにあの異常な感度は元に戻っていた。今となっては落ち着いているが、あのまま戻らなかったらと思うとぞっとする。

「うん、おにーさんにも服を着ているだけでイキっぱなしな生活を体験してもらおうかとも思ったんだけど…私がずっとこっちに居られない以上いろいろと心配だし…一回でも体験してもらえばいつでも再生できるしね。」
「え?」
「再生〈リピート〉。」

 少女が指を鳴らす。
 と、同時に全身の皮膚で絶頂を迎えた。

「ひぃあ……っ!?」

 下着の中で精液が漏れる。
 床に接している尻から衣服に包まれている上半身下半身まで、何かに 触れている部分が快楽を発しているのだ。まるで先ほどアリスの尻に敷かれていた時のように…。
 
 パチンッ!

 もう一度指が鳴る音が響き、その異常な感覚は治まる。
 時間としてはほんの数秒、しかしその数秒の間に身体は満身創痍となっていた。
 
「時魔法の応用だよ。過去の状態を写し取って再現できるの。それに状態だけじゃなくて例えば…」

 パチンと、また指が鳴る。
 すると今度は股間が温かな何かに飲み込まれる感触に襲われた。この感じは記憶にある。

「前に来たときお口で搾ったじゃない?あの時の刺激の再現♪」

 やはりと思い至った瞬間、強烈な吸引と舌が敏感な個所を這い回る刺激が追加された。あの時はコレであっという間に2回イかされたのだ。
 そして今回はと言えば特に耐性などついている筈も無く、数秒と経たずに絶頂に達した。再び下着の中に精液が吐き出される。

「ね、面白いでしょ♪あとこんなことも出来るよ。」
「わぷっ!?」

 突然、顔面が柔らかな感触に包まれる。同時に唇に湿った感触が触れ、それを割り開くように何かが口内に侵入した。

「お尻でお顔を圧迫しながらのキス♪普通にやろうとしたらどうやったって無理だけど…時魔法ならそれが可能!素晴らしいでしょ?さらに媚薬で感度が上がった状態を組み合わせると…」
「むぐ………む――――ッ………ぶはっ!」
 
 ダメ押しとばかり、顔と口内が性感帯に変わる。
 衣服に擦れただけで絶頂に達するほど敏感にされた箇所を柔肉が舐める様に包み込み、更に不可視の舌が蹂躙するのだ。耐える事など考える間もなく、一瞬で意識が飛ぶほどの頂に打ち上げられた。その後一頻り顔面と口内を蹂躙され、解放される。
 
「こんな感じで、おにーさんにはいろんな快楽を経験してもらいたいの。だからこれからする事も受け入れて…できれば楽しんでね?」
「はっ…はっ…………ん?」

 連続する絶頂に視界がぼやける中、その視界に何か違和感を感じた。
 何となく目線が下がったような…と言っている間に周囲のものが巨大化してゆく。

「…!?!?!?」

 いや、そうではない。
 自分が縮小しているのだ。シャツが壁となって周囲を覆うのを見て理解した。着ていた服の中に吸い込まれるような感覚…。
 やがて支えを失ったそれは上空から覆いかぶさり、身体は衣服の底に埋まった。

「お菓子に縮小魔法の効果を付与してみたの。んふ、上手くいったみたい♪」
「何をする気で…うわっ!?」

 上に積み重なった衣服の山が退けられ、近づいてきた巨大な指に身体を摘ままれる。そのまま彼女の目の前まで持ち上げられた。

「ひっ………」
 思わず下を見てしまった。
 地面が遠い。
 縮小の結果、今の身長は彼女の人差し指と同程度になってしまっているのだ。もしこの高さから落ちようものなら墜落死は免れないだろう。

「あっ、ごめん。危なくないようにすぐしまっちゃうね。」
「へ?」

 自分を摘まんだ手が動く。
 動いた先は彼女の胸の上…首元のリボンが解かれ外見年齢に不相応な谷間が覗いていた。
 彼女が空いている方の手で重なり合う柔肉に隙間を作る。

「ちょ……」
「えい♪」

 そしてその隙間に、裸の身体が足先から押し込まれた。
 身体の両側から押し寄せる柔肉。そして鼻を衝く濃厚なミルクの香り…。

 …そういえば今彼女の体液は媚薬化しているのではなかったか。

「うん、汗やミルクにもお薬は混じってるけどお股の方程強烈じゃないから安心して?程よく気持ちよくなれるよー♪」

 程よくとは…。
 そうこうしている間に全身の皮膚の感度が上がってきた。足の先から頭までを、余すことなく包み込む柔肉の、その甘い感触を鋭敏に感じ始める。
 身じろぎをするだけで、その動きに全方位から反撃される感覚。摩擦を極力抑えるために身動きを取らないよう身体を固くした。

 しかしそんな努力も簡単に崩されることとなる。

「感度が上がってきたかな?じゃあそろそろ揉み込んでいくよー♪」

 両側から圧迫感が襲った。
 次いで全身を咀嚼するように柔肉が蠢く。少女が自身の胸を服の上から捏ね始めたのだ。
 腰の抜けるような快楽が全身を襲う。
 その抜けた腰も勃起した陰茎ごと揉みしだかれ、たまらず精液を吐き出した。
 柔らかく、蕩けるような後引く快楽が股間から全身に広がった。
 力が抜ける…。身体が柔肉と溶け合っていくような錯覚が襲った。

「こっちの媚薬はさっきよりもリラックスしながらイけると思うよ。ね?気持ちいいでしょ♪……んっ♪」

 胸を揉みしだく刺激で彼女自身も快楽を得始めたのか、声に甘い色が混ざる。
 胸の谷間を満たす匂いが一層甘く、濃くなった。
 そして訪れる再度の絶頂。
 それは1度目よりも優しく、暖かさの中で漏らすような射精を伴うものだった。

「ふぁ………ぁ…………」

 全身を暖かく、優しい快楽が包む中、緩やかな射精が続く。
 もはや身動きを押さえようという意思も消え、快楽の檻と化した柔内でただ悶え続ける。

「このまま…んっ♪時間いっぱいまでっ…こうしてようね…おにーさん♡」

 彼女のその言葉とともに、開けられた胸元が閉じられボタンとリボンで封をされる。…檻が完成した。
 密閉されたことで高まる体温と匂いの中、徐々に意識が薄れてゆく。



…………、



……



…。





「………はっ!?」

 床に仰向けになった状態で目を覚ます。
 アリスは……まだ居た。寝ころんだ自分の上、少し位置を下げる形で抱きついていた。何をしているのかと…

「うっ………」

 胸の先にくすぐったさを感じる。
 衣服は着せられていたものの胸元は開けられており、彼女がそこを舐めしゃぶっていた。

「あっ、気が付いた?」
「何してるの……?」
「さっきしゃぶってもらったからお返し♪おっぱい、美味しゅうございました。」
「…………。」

「それからおにーさんにちょっとプレゼントをあげようかと思って。」
「へ?」

 改まってなんだろうか…。

「さっきのおっぱいに挟まってる時の感触、ベッドに入ると再生〈リピート〉されるようにしといたから♪」
「え…ちょっ…!?」
「じゃあまたね♪」

 言うだけ言ったのち、少女は頬に一度キスを残して消えてしまった。

「えぇぇ………」


…………。

 とりあえず起き上がる。腰掛けた先は件のベッドの縁。
 
 試しに、足の先をベッドと掛布団の間に差し入れてみた。

 ずにゅり…。
「うわぁっ……!?」

 布団の中に入れた部分を、先ほどまで感じていた柔肉の感触が襲う。
 幸い、あの時の媚薬で高められた感度や匂いまでは再現されなかったものの、その快楽を想起させるには十分だった。

「………ん?」

 足の先に、何か湿った感触を感じる。
 なにか嫌な予感がし布団を掴みめくり上げると、ぶわりと甘い匂いが舞い上がった。
 見ればベッドの中央には大きな染み。鼻を近づけてみれば、先ほど散々嗅がされた甘い匂いがする…。
 アリスの…母乳のそれである。

「時間止めてる間に何してたの……。」

 呆然と呟く。
 感度上昇は免れてもあの匂いからは逃げられないようだ。


 

 なおその日から、毎晩夢精をするようになった。

 
21/10/24 21:08更新 / ラッペル
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■作者メッセージ
そろそろお話が動く…かな?

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