連載小説
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よりかかる夜

(もう一回……お腹に欲しい……)

 礼慈はリリの言葉を反芻してその腹を凝視する。
 リリから種付けするように求められているという事実に、ようやく収まりどころを迎えていた礼慈のモノに新たな熱が籠もり始めていた。

 自分の中にこれだけの精力があることに呆れのような驚きを得ながら、求められるままにリリの腿に触れる。
 大きさを取り戻していく陰茎を掴んで彼女と位置を合わせようとして、ふと、思いつきを口にしていた。

「じゃあ今度はリリから、俺のを入れてみようか」
「わたしが……お兄さまのおちんちんを……?」
「そうだ」

 精力は驚く程湧いてきても、射精のし過ぎと腰の振り過ぎで流石に疲れているということもあったのだろう。
 気が付くと、同意を得ながらスる。というこれまでのやり方を崩して、リリ自身に逸物を入れさせるよう促していた。
 魔が差している。だが、それをやっぱりやめ。と取り下げる気はない。彼女も礼慈を欲しがっているという現実をもっと味わっていたい。
 だからと陰茎から手を離し、礼慈はリリの行動を待つ。

 リリは喉をゴクリと鳴らして頷き、股越しに手を通して尻に寄り添っていた陰茎をそっと掴んだ。

 彼女の掌の中でまだ甘勃ち状態だった陰茎が固く、はち切れんばかりに性交の態勢を整えていく。

「すごいです……お兄さまの、すごく熱くて……」
「リリのお腹に入りたくてウズウズしてるんだよ」
「すぐに、おむかえします……っ」

 両手で包み込むように陰茎を握ったリリは腰を浮かせて、尻の下に陰茎を通した。
 自分と礼慈の性器をまとめて見下ろして性器同士をゆっくりと触れ合わせる。

 亀頭が恥丘周辺をなぞっていく感触に、礼慈は小さく呻いた。

 自分の膣口の位置をいまいち掴めていないのか、リリはもどかしそうに腰をくねらせて性器の位置を合わせようとしては周辺をなぞらせ、もどかしそうな息を漏らしている。

 礼慈としても焦らしが続いている形だが、性器がニアミスするたびにぬちゃぬちゃと粘質の音が鳴るのが、リリから求めてきてくれているのを明確に感じさせて、今まで感じたことがない種類の感動を覚えるため悪い気はしなかった。

「……ん、っふ、ぁ……っ」

 恥丘を割り開いて浅く陰唇に沈み込んだ亀頭に腰を擦りつけながら小さな声で喘ぐリリ。彼女の細い腰を掴んでこちらから挿入を果たしてしまいたくなる衝動を我慢して、尿道から溢れる先走りと愛液が混ざり合う音に耳を傾けていると、膣口に亀頭がほんの少し埋まる感覚があった。

「ここ……っここです! お兄さまがほしいよってて、おなかがきゅん、っってなってます」

 自分の未成熟な体には凶器のような大きさの陰茎を今まさに突き立てようとするリリに礼慈も応じる。

「俺もリリに入りたくてしょうがない。分かるか?」
「わたしの大事なところとくっついてからびくびくってしてます……お兄さま……っ」
「入れてくれるか? リリ」
「はい……っ」

 リリは頷くと、ふー、ふー、と熱気を帯びた息をしながらゆっくりと腰を下ろしてきた。
 後ろから礼慈が突いた時同様に、まだ膣口はほぐれている。そのおかげで膣内への亀頭の侵入は比較的スムーズに進んだ。
 それでも、元々の肉洞の狭さはどうしようもない。
 ぬかるんだ肉の隘路をリリがゆっくりと腰を下ろすのに合わせて掻き分けていく。

 自分の中にどれだけ陰茎が入っているのか確かめるように、陰茎を輪っかにした指で測る彼女の小さな口から「……ん、あっ!」と悩ましげな声がこぼれてくる。
 何度もイッていたリリの体勢はおぼつかず、挿入途中であちこちに腰が揺れて、それが互いの性感を刺激する。

「……あ、は、はいってきてます……ぅっ」

 陰茎の半ばが埋まり、子宮口が亀頭の先に感じられた。
 そこで一息ついたリリが、涙目で礼慈を見下ろすが、その焦点が合っていない。
 大丈夫だろうかと思っていると、彼女は陰茎を固定していた手を離した。

「じ、じゃあ……おく、おくまで……っいただきま――」

 言いかけた所で、不意にリリの脚が滑った。
 湿った浴槽の足元に溜まった湯でゲル化した精液に足を取られたのだ。

「――――?!」

 驚きの声は、足が滑ったことによって落ちた腰が最奥まで礼慈を呑み込んだことによってかき消え、代わりにカヒュ、という音が彼女の口から漏れた。
 いきなりの動きに宙に取り残されていた蜂蜜色の髪が一拍遅れて落ちる。

『――――――――ッ?』

 礼慈とリリ。二人の声にならない悲鳴が爆ぜた。

 栓を抜いた浴槽の水位はもう礼慈の腰より下だ。
 浮力を与えてくれるものが無い状態での挿入は、リリの体重全てをかけた勢いのある、暴力的なものだった。
 覚悟する暇もないままに訪れた子宮奥への挿入は、小さな体の奥の奥を深く穿ち、リリの下腹部が明らかにポコっと膨らんだ。

「――――――――」

 それと同時にリリの体内が、礼慈に自分がどれだけ気持ち良いのか。そして礼慈にどれ程気持ちよくなって欲しいのかを伝えるように抱きしめてくる。

 肉体の快楽でせり上がってくる射精欲を、礼慈は下腹に力を入れて堪える。
 とんでもない勢いでほぼ精液を吐き出し尽くしたはずの陰茎が射精欲に漲ってくることに、自分の体が魔物の相手として成長してきていることを感じると、天井を見上げていたリリが絶頂の衝撃から降りてきた。

 未だ小さな尻がビクビクと痙攣しているのを下腹部に感じながら。礼慈は問う。

「大丈夫か?」
「は……っ、は、い……んっ、だいじょうぶ、です」

 ふわふわとした調子で言いながら、リリは「お兄さまこそ」と問いかけてきた。

「いきなり、おしり……おとしちゃって、あの、だいじょうぶですか? いたくなかったですか?」
「こんなに軽いのに痛いも何もないよ」
 そう言ってから、礼慈はいや、と呟く。
「……実はな、痛くはないんだが、大丈夫じゃない」
「え ……」

 慌てて礼慈の上からどこうとするリリの足がまた滑った。
 浮かせかけた尻がまたぺたんと落ちて、彼女の胎内で性器が愛撫し合う。リリの口から「ふぇ……っ」と喘ぎ声が漏れ、礼慈も呻きながら、

「っ……、大丈夫じゃないっていうのは、気持ち良すぎてやばいってことだから。痛いとか、重いとかはない」

 何度も射精して、一度はほとんど満足に近い状態にまでなったからこそ我慢できているが、それを一気にまくる勢いでリリから快楽が与えられてきた。
 今の性器の擦れ合いだけで、射精が近づいたのが下腹部に感じる熱で分かる。

 礼慈の言葉にほっとした様子のリリだったが、直後、彼女は困ったように礼慈を見た。

「あ、あの……っお兄さま……んっ、あの、止まらないです……きもちよくって……ぁん……ッ!」

 リリの腰は、礼慈からどこうとした時の動きを繰り返していた。
 腰がわずかに浮いて、カリ首が子宮口に引っかかる。そしてカリ首を擦るようにリリの腰が回され落ちる。

「――んんッ!」
「……っぐ!」

 感じた快楽を何度も求めて繰り返すリリの動きにアクセントを加えるように礼慈は腰を突き上げた。

「――んっ!」

 リリは与えられた快楽を模倣するように、腰の上下運動を強くする。

「――ん、あ、っは! ぁ。おにい、さま! あ、あ」
「リリ……!」

 腰の振りを強くした礼慈は子宮口を往復する快感に先走りを垂らしながら子宮底をゴツゴツ突いていくと、リリもその動きに合わせて膣口と子宮口をきゅ、きゅ、と締めつつ腰を回して陰茎全体を幼肉で愛撫する。
 
 湯が無くなった浴槽に水音を立てながらリリの体が揺れる。

「ん、っふ――あ、あっ! おにぃ……っ! さまあ!」

 リリの声が昂ぶっていく。
 幼い声帯から発される淫らに興奮した声を聞いているだけで、耳から愛撫されているような気分になる。

 リリが求めるままにしようと子宮の奥を軽く突き上げるだけにとどめていた腰の動きの勢いが増す。

「ん! っ! あ、っは! ぁ! お兄さま! ああ! これ! これぇ!」
「――ッ」

 揺れる髪の動きが激しくなり、礼慈の体をなぞるのすら愛撫に感じられる。

 リリは腰の動きを前後左右に振りたくるものに絞ってきた。
 そうしながら快楽に涙をこぼす瞳で礼慈に訴えてくる。
 それに応える形で、礼慈は彼女がやめた上下動を引き受ける。
 リリの自主性に半分は任せていた抽送から礼慈の欲を叩きつける動きにシフトする。
 ゴチュ、とリリの中の愛液を撹拌しながら子宮底に突き刺すように突き上げる。

 へその下からポコ、と覗いていた大きな陰茎に突かれている証。それがより強く浮き出る。
 そこにリリの腰の振りが合わさって子宮底がグリュ、と抉られた。

「――――ッ!! ――――ッ?」

 リリの口から嬌声と一緒によだれが漏れ、全身を跳ねさせるような痙攣が起こる。

「あぇ……っあ! ……んっ!」

 抽送も腰振りもお互いやめないせいでリリは何度もイッている。重なる絶頂は小等部がしてはいけない快楽に塗れたイキ顔をリリの小顔に浮かべさせ、目から礼慈を興奮させてくる。

「リリ、次――っ、こっちも、いって、みる……っか」

 呼吸でなんとか射精を制御しながら、礼慈は手を、何度も打ち下ろされ擦れ合うリリの股間に伸ばした。
 つるんとしている中に一本線が引かれていただけだったそこは今、礼慈の剛直を受け容れるために精一杯開いている。ソコの腹側の頂きにある肉芽に指を触れた。

「――――――?!」

 リリが胸を反らして痙攣する。

「な、なに――っ! あ! お兄さま?! あ"?!」
「ここは、な。クリトリスっていって、女の子の、ちんちんみたいなものなんだ」

 いきなり与えられた新しい場所からの刺激のためか、動きを止めたリリに答えながら、礼慈は両手で肉芽を包んでいる莢をめくった。
 赤く火照った肉莢の中からちょこんと現れたのは、乳首よりも小さい、だが真珠のような輝きを持つ宝石のようなクリトリスだった。

 その宝石を、包皮に触れる間に指にまとわりついていた二人の体液を塗りたくるように愛撫する。

「――――? ああ! あ!」
「気持ち良いか?」
「――はい! はいぃ! あ! あ!」

 リリが声を上げるたびに締まる胎内にうめきながら、礼慈は愛撫を強くした。
 腰の動きは止まったのにクリトリスが指で弾かれるたびにリリはイッているようで、イキ顔は変わらず礼慈を楽しませてくれて、腰の上で小さい体をガクガク震わせる姿が嗜虐心をそそる。

 もっと強い反応を引き出してみたくなって、指は撫でるような動きから、こね回すような大胆な動きになる。

 同時に動きを止めていたリリを煽るように腰での突き上げを再開すると、リリは期待以上に淫靡な反応で魅せてきた。

「ん"、んぁ! ――あ、っ! お兄さま! お兄さま! お兄さま! ああああ、わた、し! っわたしぃ!」
「ん、リリ、もう少し、がんばって」
「――あ! ん! わたし! きもちいぃ! お兄さま! ずっと、こう! ね! ずっと! ずっと!」
「ああ、っん、ああ!」

 リリに引かれるように射精に向けてスパートを掛け始める礼慈から思考と呼べるものが溶けるように崩れていく。

 そうして残った本能の塊を吐き出すために肚に力を込めて腰を突き上げながら、礼慈はシャワーを取っていた。

 快楽に霞む視界で蛇口をひねると、湯が勢いよく出てくる。
 それをリリに向けると、絶頂の痙攣に動きを不規則にしながらも、礼慈の動きに合わせてグチュグチュと腰を振りたくるのを再開していた彼女が「ぁえ?」と疑問の声を嬌声に混じらせた。

 疑問に取り合う思考力は打ち捨て、礼慈はリリにシャワーヘッドを押し当てた。

「ァああああああアアアア?!」
「――――ッ!」

 むき出しにされたクリトリスに流水が殺到してリリの健気に勃起した肉芽を打ち据える。
 やはりこれは効くようで、リリの締め付けが急激に強くなった。
 襞の繊細な吸い付きとは趣の違う、体、肉全体で陰茎を握り込むような性器の収縮だ。

 幼いながらもその体が本気を出せば礼慈の陰茎は胎内を守ろうとする肉の関所にねじ切られかねないというのは以前味わって知っている。
 だが今、この少女が淫らにヨがる様をもっと見て愉しみ愛でたいと本能で望んだ礼慈の狼藉によって、水流による絶え間ない暴力的な刺激を与えられてイキ続けているリリの中で得られるのは快楽だけだ。

 全身で陰茎を握り込み、絶頂の痙攣が陰茎を奥に引っぱるように膣と子宮を蠕動させる。
 膣口と子宮口。二重の関所の締め付けが刺激のアクセントになって礼慈の上で跳ねるリリの動きを快楽の扱きにする。

 一秒ごとに性徴しているとしか形容できない。そんな巧みさで礼慈はリリが得ているのと同じ量の快感の奔流を味わっていた。

 絶頂の中でもリリの腰振りは止まらず、絶頂の波が高くなるのに合わせるように動きが大胆になっていく。
 シャワーがリリの股で弾ける音に混じって陰部と陰部が打ち合わされる打音が響く。
 得ている快感の量は同じでも、ただの水流と礼慈専用に成熟しつつある魔物の媚肉とでは質が違う。
 礼慈は自身の狼藉によって限界を振り切ることになった。

 今、リリの中ではカウパーではなく、暴発するように溢れたザーメンが漏れているはずだ。
 そんな状態で、だがまだ本当の射精は迎えていない。本当の爆発は、欲望がたどり着く場所は、もう少し高い所にあると、抽象的な概念として解っている。

 短くなる呼吸に合わせて我慢が続く限り何度も突き上げを行っていく。快楽によって浮き気味になる礼慈の腰の上で首が据わっていないかのようにガクガク頭を揺らしているリリが叫んだ。

「あ、あ、あ! あぁあ! で、でそうなんですね?! あかちゃんのもと……ッしゃせー! あ"、な、なかに! ね、おにいさま! なか! こんどはね! ほしいの! おにいさま! ね?! ぁ、んんッ?」

 連続絶頂で音が飛ぶような声で懇願されながら、礼慈は満たされていくのを感じていた。

「――わ、わかっ、た……っ」

 喘ぎ声に挟み込むようになんとか返事をすると、途端にリリがぎゅうぅっ、と締め付けた。
 それを合図に、礼慈の中で前立腺が収縮する。
 亀頭がぐっと膨らんでリリの奥に形を刻み、

『――――ッ』

 礼慈の内圧が尿道括約筋の弛緩に伴って噴出した。

「あああああああああ?」
「――――――――ッぐっ……ッ?」

 あれ程の快楽の波にまかれて更には精液の嚆矢は既に撒き散らかされていても射精の瞬間は明確に分かるのだなと、溶け落ちた思考の中で段階を上げた快楽に襲われながら礼慈は体感していた。
 射精の勢いはもはや回数をこなしていても衰えることを知らず、むしろ体中の全てのエネルギーがこの瞬間爆発しているのではないかと思える程に激しかった。
 快楽も、以前のように下半身に集中したものではなく、全身まんべんなく、それこそ体中が陰茎になってしまったかのような狂ってしまいそうな快楽が体を浸していた。肉体と一緒に心もオーガズムを迎えている。これが、精を放っているということなのだろう。

 リリの方もシャワーと陰茎の突きでイキ続けていても射精されているというのは分かるようで、

「おにいさまああああ……ッあ、ありがと……っあつ……っせーえき、ありがと……ござ……っ!」

 とお腹に手をあてながら喉を反らして、天井に意味をなさない言語の断片を吐き出していた。

 悲鳴の中の感謝の言葉が言い終わった時、射精の一度目の脈動が収まる。

 天井を見上げていたリリが、その一瞬でプツリと弛緩して、姿勢が崩れた。
 礼慈はシャワーを放り投げて髪に引っ張られるように背面に倒れていこうとするリリの腰に手を回して引き寄せた。

 リリの頭が礼慈の胸に落ちてくる。
 その頭を抱きとめながら、もう片方の手はしっかりと繋がったままでいるように尻尾の付け根を押さえつけて――

 二射目が子宮底に接射された。

「――んひっ、あ、あああああ!」

 リリが鳴き声を上げながら礼慈に抱きついてくる。
 足を絡ませて腰を押し付けて、一番深い所で射精を受けられるようにしている。そんな彼女を褒めるように礼慈は片方の手で頭を撫でた。

「んんんんんんんむ――」

 跳ね回ろうとする体を礼慈に擦り付けながら、リリは礼慈の胸に唇で噛み付いた。

 今の礼慈は全身が性感帯だ。
 リリの食みつきは、陰茎を唇で甘噛みされるのに等しい快感と興奮をもたらして。礼慈の中の爆圧を跳ね上げる。

 手と足でリリを全力で抑え込むと、礼慈は体内で暴れ回る熱の全てをリリの子宮に塗りたくった。

   ●

 激しい脈動の波が長い時間をかけて、ようやく終わりを迎える。
 深い呼吸を繰り返しながら、礼慈は天井をぼんやりと眺めていた。

 激しい運動による酸欠と熱。それに未だ尾を引いている快楽の余韻で意識が朦朧とする。

 天井から落ちてきた水滴が額で弾けて、ようやく正気付いた。

「……リリ。大丈夫か?」
「…………ぁぃ」

 リリの方が絶頂は連続して長く続いていた。
 その分疲れたのだろう。礼慈の胸に顔を埋めているリリの呼吸は落ち着かない。

 意識も朦朧としているのか、目がトロンとしていて、返事も言葉の意味が分かっているというより、礼慈が発した音に対して反応しているのを表現しただけのように見えた。
 もしかすると、彼女の中のアリスとしての生態が記憶の消去のために働きはじめているのも重なっているのかもしれない。

 疲労というより強烈な眠気に襲われているような彼女をこのまま寝かせてやりたいのは山々だが、家へ送り届けなければいけない事情を考えると、そういうわけにもいかない。

(……ごめんな)

 心の中で思うだけはそう思い、礼慈は浴槽に放り出されて湯を撒き散らしているシャワーを持った。

 水温を冷水にして、ことわりなくリリにぶっかける。

「――みゃ?!」

 驚くリリと一緒に冷水を浴びて、礼慈も意識をはっきりさせていく。

 イッている間の、自分とリリ以外のものが世界から排除されたような、二人が一つになって、それで全てが完結しているような気分だったのが解きほぐれていく。

 自分とリリの体が別の個体であると認識されて、体中で包み込んでいる小さな体が一つになって完結されていた時の満足感とは別の多幸感を全身に伝えてくる。

 脱力と幸福に身を任せてそのままだらだらしたくなったが、せめて髪にかけてしまった精液だけでも流そうと、冷水を背中から髪に浴びせて蜂蜜色の髪を梳く。

 指はすっと髪の間を流れていった。
 ちょっと引くくらいの量を髪にもかけてしまっていたはずだったが引っかかりはない。
 魔物なのだ。髪から精液を吸収できたとしてもそれはそれで不思議ではないが、魔物の神秘を感じはする。

 髪から背中へと冷水をかけ流す位置を変えてこちらも精液がこびりついていないことを確認すると、冷水を湯に変えて背中を撫でながら冷水で下がった体温を上げ直してやる。

 かかる冷水にひとしきり悲鳴を上げていたリリは目が覚めたのだろう。背中に当たる湯の温度にほっとした息をこぼしながら、胸から礼慈を上目遣いに見上げて言った。

「ごめんなさい」
「うん?」

「わたし、きおくをなくしてしまうわたしを知っていて、それで、きおくをなくしてしまってもその消えてしまったきおくの中でわたしが楽しかったって、わたしのどこかがおぼえてる……そんなすごしかたができる人……お兄さまに手を差しのべてもらって、助けてもらって、それで、いいなって思っちゃったんです。
 このきおくが消えてしまうのがなおらなくても、お兄さまさえいてくれたらって……自分で成長しなくてもいいやって思っちゃって、でも、それじゃいけないって思って、オトナのみんなが、お兄さまが飲んでるものを飲んだら、もっとオトナが分かって成長できて、きおくだってなくならなくて……、もっとお兄さまといられるって思ったんです。でも、それはちがうってレミお姉さまに教わりました」

「いや、母さんは母さんなんでお姉様って年齢じゃないぞ……魔物相手にこの感覚が通じるのかはわからんが。
 それに、リリは間違いに気付いたんだからいいだろう」

 礼慈としては、どちらかというと大人然とした態度をギリギリまで虚勢だと告白できなかった自分の方が謝るべき筋ではないかと思う。

「でも、わたし、もうどうやったら成長できるのか分からなくなっちゃいました」
「俺だって分からないよ。それで今までだって酒に頼ってなんとかやってきたわけだし」
「それでここまでごりっぱになられたんじゃないですか。……きっとステキな女の人がお兄さまのことをすきになってしまうって、わたし、思ってました。そうなったらわたし、どうしようって不安でした」
「あーそれは、ない。安心していい。もし誰かに好かれたとしても、俺はもう今リリしかそういう対象に見れないよ」
「わたしも、です……だいすきです。レイジお兄さま」

 心底ほっとしたように言う彼女の声が少しずつ間延びしてきた。えらく眠そうだ。冷水をもう一度かけてみてもいいが、無駄な気がする。

(これは、アリスとしての生態の方か……)

 記憶の消去の時間帯ということか。それだけリリの中の魔性は満足したということだろうかと思いながら、礼慈は言う。

「俺も、大好きだ」

 思えば自分にはサバトの適性があったのだろう。
 これまでその特性が表にでなかったあたりはリリの魅力が潜在的なものを引き出したのだということにしておく。

 リリは礼慈の胸に額を擦りつけて、むずがるように訴えた。

「お兄さまがだいじょうぶって言ってくださっても、こわいです。お家にかえってお兄さまがいないって思うと、わたしはさびしくてだめになってしまいそうになります」
「あんなに素敵な家族が居るだろう。友達だってリリのことを心配してるんだろう?」

 礼慈からしてみたら、どこに居てもリリはひとの輪に囲まれているようなイメージだ。
 リリも礼慈の言葉には頷きを返し、

「でも、そうじゃなくて……うまくいえないけど……ねえ、レイジお兄さま」
「なんだ?」

 顔を見せないまま、リリは懇願した。

「もっとわたしといてください。わたしは、そうしてほしいです」

 礼慈はこの時、この言葉によって充足する自分を確かに感じた。

「……うん、……うん分かった」
「えへへ、まだ、もう少しコドモでいちゃいます」

 普段よりも幼く――丁度外見年齢相応の語調で呟くと、リリは完全に意識を手放した。
 そうして記憶は消えるのだろう。

 礼慈は陰茎をリリの中から抜く。
 射精が終わった後も未練がましくトロトロと、それこそ生産されるそのそばからリリの中に注ぎこまれていた精液が彼女の芸術品のような性器が立てるにはあまりに似つかわしくないブビュ、という音をあげてこぼれてくる。

 この娘をこんなになるまで犯したのは自分なのだと背筋が震えるような雄の満足感の震えを得つつ、脚に伝っていく精液を流水で洗い流してなんとか収めると、リリの身体も洗い直してやった。
 その間も目を覚まさないリリを少し心配しながら、礼慈は湧き上がりそうな性欲を若干の気怠さを伴う賢者タイムを駆使して無視し、なんとか風呂を出た。

 どれだけリリと交わっていたのか、洗濯はいつの間にか終わっていた。

   ●

 リリをソファーに寝かせ、乾燥機に洗濯物をかけて、水を飲んで一息つく。

(ああ……もう)

 自分の過去も、弱い自分もさらけ出してしまった。そこに少しの後悔はあるが、それでもリリは礼慈のことをお兄さまと呼んでくれている。

(ああ……っもう……)

 自分がリリのことをどう思っているのかも赤裸々に語り、リリも同じ気持ちだと応えてくれた。
 これまで生きてきて、これほどまで満たされたことはないだろう。

(幸せはきっと俺の中じゃリリの形をしてる)

 そんな彼女に尊敬してもらえるような人間であろうと心に決める。

(そうだな……)

 覚悟を決めるのだ。


19/08/04 02:15更新 / コン
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■作者メッセージ
彼、開き直りましたね。
そして何やら決めた。というところでそろそろ連載一年経とうとしています。

一年で連載完結って感じになりそうなのでもう少し、この二人の恋路を見守ってください

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