連載小説
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第四章:ケプリの王(歓迎の儀・上)
 遺跡のケプリ達全員による、歓迎の儀。
 僕を王として歓迎し、僕に王の力を宿す為でもあるその儀式は、王の間では無く大広間で行われる事になった。
 王の間で襤褸を脱がされ、上質ではあるがほとんど身体を隠さないような薄衣一枚に着替えさせられた僕は、そのままろくに心の準備も出来ないまま大広間まで案内された。
 そして、その大広間のあまりに現実離れした光景に、僕は儀式が始まる前から圧倒され切ってしまった。


 天井から吊り下げられている、玻璃と黄金で煌びやかに輝く無数のシャンデリア。
 桃色の火を灯したそれが、屋敷の敷地くらいはありそうな大広間を照らし出していた。壁際に灯った篝火の紫色の炎も相まって、広間全体が高貴に、少し淫靡に浮かび上がっている。
 床には毛足の長い、肌触りのいい黒色の絨毯が敷かれている。
 闇夜の水面のように艶のある絨毯は、その上に立つ者達の色を妖しく浮かび上がらせていた。
 広間のどこを見回しても褐色のなまめかしい素肌が目に入ってくる。
 柔らかな曲線を描く女の身体。金色の昆虫の四肢と相まって、その肌はより生々しく映える。そして異形の四肢は、少し動くたびに妖しくぬめるように桃色の灯りを照り返し、倒錯的な美しさで僕の目を引いてくる。
 二十を超えるケプリ達は、皆誰一人として衣服を纏っては居なかった。ふくよかな者、引き締まった者、成熟している者、まだ幼い体つきの者。ケプリごとに個性も様々なようだったが、どのケプリも可愛らしく、また美しかった。
 広間中から向けられるケプリ達の視線。それぞれ、期待に満ちていたり、不安に揺れていたり、嗜虐心を抑えていたり、好奇心で溢れていたりと様々だったが、どの視線もある種の熱を帯びているのだけは共通していた。
 彼女達が傍らに侍らせている、抱えようも無い程に膨れ上がった魔力球は、彼女達の期待の大きさそのもののようにさえ思える。
 僕は裸に薄衣一枚というほとんど裸同然の格好で豪奢な金の椅子に座らされ、そんなこの世のものとも思えぬ楽園のような光景に目を奪われ続けていた。
 見ているだけでも下半身が反応してしまいそうだった。肌に感じる熱気や絡み付いてくる視線に体がざわついて、欲情だけが先走って理性が飛んでしまいそうだった。
 僕は大きく深呼吸しながら、歓迎の儀が始まってしまう前に自分の中で確認する。
 上手くすれば彼女達の力によって僕はファラオと同じくらいの力を持つような王になれる。そうなれば血を流す事も無く、圧倒的な力で街を取り返せる。
 そうなれば一番だ。どういう手段でかは分からないが、とにかく教団の暴力からみんなを守れる。
 ただ、王になれなかったとしたら。
 アフマルはその可能性は口にしなかったが、もし間に合わなかったら。……その時は潔く身を捧げようと思う。
 そうすれば奴隷達の処分は少なくとも今すぐには行われないだろうし、ケプリ達の事もばれずに済む。彼女達には酷な事をしてしまうが、戦って多くの血が流れるよりはましなはずだ。
 ……もし彼女達の誰かが僕の子を宿したら。欲深い考えではあるが、その子に王になって欲しいと願う。
「さぁ、アミル様」
 ケプリ達の先頭に立ち、長姉であるアフマルが僕に手を差し延ばしてくる。一糸まとわぬアフマルの肉体はどこをとっても均整が取れていて美しく、女神像と見間違えたのも仕方が無い事に思えた。
「準備が整いました。お召し物を脱いで、こちらへ」
 王の間での勝気さは消え、その表情と佇まいに妖艶さを滲ませたアフマルが僕を誘う。
 僕は椅子から立ち上がると、衣を脱いで椅子に掛け、彼女達に向かって歩き始める。
 部屋の中は快適な温度で、裸でも寒くは無かった。しかし熱くも無いはずなのに、なぜか身体が汗ばんでしまう。
 歩くごとに視界が狭まってきて、ケプリ達の姿が何重にも霞んでくる。
 歩いているような実感も遠ざかり、身体が重たいような感覚と、ふわふわと浮き上がるような感覚が混ざり合って、ちゃんと歩けている心地がしない。
「これより私達ケプリは、この遺跡に新たなる王であるアミル様を迎えます。皆、心してアミル様を悦ばせ、楽しませるように。
 アミル様も心置きなく私達の歓待をお楽しみください」
「その、あ、ありがとう。……いや、ありがたく君たちのもてなしを楽しませてもらいます」
 アフマルが近づいてきて、耳元に口を寄せてくる。
「そんなに緊張して硬くならないでよアミル様。硬くするのはまたぐらだけでいい。あとは楽にして、アミル様の好きにしていいんだ」
「で、でも、こんなの初めてで、儀式なんてのも」
 小さな笑いが耳たぶをくすぐる。
「歓迎の儀なんて言っても、形だけのものさ。遠慮しなくていいんだ。みんなあんたに楽しんでもらうためにここに居るんだから」
 しかしそうは言っても緊張はすぐに抜ける物でも無い。
 アフマルは僕の目の前で胸を張り、一度ゆっくりと腰をくねらせて微笑む。
 柔らかそうで形のいい乳房。その上の小さな果実。
 鷲掴みにしてしまいたい衝動を、僕の中の何かが邪魔をする。実った果実をもぎ取りそのまましゃぶりつくせば楽になると分かっていても、身体が強張ったように動かない。
「アズハルの事?」
「え、あ。いや」
 とっさにアズハルを探してしまった。前の方に居た彼女はすぐに見つかり、そして見つけるなり申し訳無いような気持ちになってしまう。
 自分でも何が申し訳無いのか分からない。他の女に手を出そうとしているからだとも思えたし、王として優柔不断な態度を取っているからだとも思えた。
 アズハルは怒りも悲しみもせず、ただじっと期待に満ちた視線を向けてくる。
「本当、優しい王様なんだから。まぁだからこそあたしも惚れたんだけどね」
「アフマル」
 こうまで言われて応えられなかったら男が廃る。そう思って手を挙げかけたその時だった。ケプリ達の中から小さな声が上がり始めた。
「アフマル姉さん。あたしもう我慢できないよぉ」「早く王様に触りたい」「王様の匂い嗅ぎたい」「私は舐めて綺麗にしてあげる」「ずっと待ってたんだもん」「私も我慢できないよぉ」「これ以上待たされたらおかしくなっちゃうぅ」
 桃色の囁きが漏れ聞こえてくる。重なり聞こえる息遣いに、熱を帯びる視線に、僕は息を飲む。
 僕の顔を見てアフマルは笑い、そして姉妹達の方を振り返って告げた。
「分かった分かった、あたしだってみんなと気持ちは同じさ。堅苦しいのはここまでにしよう。
 さぁみんな。どうやら新しい王様、アミル様はあたし達を前に緊張しているみたいだ。それに可哀そうに全身生傷だらけと来ている。まずはみんなで癒してやろうじゃないか」
 傷を癒す。確かに腕にも足にもまだ鈍い痛みは残ってはいるが、しかし傷を癒すと言ってもどうやって癒すというのだろうか。
 訝る僕に、アフマルは歯を見せて笑う。
「アズハル。あんたが手本を見せてやりな。他のみんなはそれに続いて、あとは適当にくんずほぐれつって事で」
 部屋の空気が変わる。あっけにとられていたのは僕だけのようだ。
 呼びかけられたアズハルは一瞬驚いたような顔をしたあと、満面の笑顔で頷いた。
 アズハルはゆっくりと身体を見せつけるように僕に歩み寄ってくると、僕の肩に手を置いて、つま先立ちになって僕の身体に正面から抱きついてきた。
「アミル。大好き」
 僕はその腰に腕を回して、彼女の身体を引き寄せる。
「僕もだよアズハル。……本当に、いいの?」
「当たり前だよ。私だけを想ってくれるのも凄く嬉しいけど、アミルに王様になってもらうのが私の夢だったから……。さぁ、始めるよ」
 アズハルは少しずつ体重を僕に預けてくる。支えきれなくなった僕は膝を折り、手を着いて押し倒されるように横になる。
 んちゅ。
 柔らかな唇が押し当てられ、湿った音が耳朶を溶かし始める。アズハルの舌が僕の唇をなぞり、その唇が口の端の切り傷を覆う。ひとしきり傷に舌を這わせると、今度は頬に口づけして、音を立てて擦り傷を舐め上げてくる。
 それからアズハルは身体を僕の上から横に移し、僕の耳元に膝を突き合わせるような姿勢を取る。真横から覗き込んできて、僕の髪を撫でながら頬を唇で何度もついばんでくる。
「アズハル。これは、うっ」
 柔らかくて湿った感触が僕の脚に、太ももに、二の腕に、胸と腹と言わずに降り注いできた。
 僕は視線を下げて絶句してしまう。
 身体の上で、夜明けの空のような色をしたケプリ達の髪が、いくつもいくつも上下に、左右に、揺れていた。心地よい熱を持った感触の正体は、ケプリ達の唇だった。
 身体を縮め、より多くの者が触れられるようにと気遣いながらも、彼女達は一心不乱に僕の肌に唇を押し付け、舌で舐め上げてくる。
 身体中にある擦り傷、打撲、切り傷。ケプリ達は感覚が鋭敏になっているそういった傷の上をことさら念入りに愛撫してくる。
 傷跡は熱を帯びていくものの、唾液で濡れても、少しざらりとした舌を押し付けられても、痛む事は全く無かった。むしろ甘い疼きに全身を溶かされるようで、声を漏らさずにいられなかった。
「うぁ、ああ」
 左右の太ももの内側をねっとりした感触が通り過ぎていく。腹筋の僅かな筋に沿って、浮いた肋骨に沿って、汁気を帯びた熱くて厚い舌が這い回っていく。
 腋の下や耳の裏まで丁寧に舐められる。自分では触らないようなところまでも、ぞくぞくするような感触が走り抜けていく。
 まだ感覚の戻っていない右手も、誰かが念入りに、それこそ爪の間まで丁寧に舐めとりしゃぶり上げてくれていた。感覚は無くとも、その熱は伝わってくる。
 前髪で顔の隠れたその姿は王の間で見た気がしたが、全身隙間の無い愛撫もあって、思い出せるほどの集中力が保てなかった。
 体中からくちゅくちゅ、ちゅるちゅるという濡れた物が擦れ合う音が零れ落ち、もはや誰のものともつかない荒い呼吸が幾重にも重なり合う。
 ケプリ達の唾液と汗がむわりと強く香り立つ。
「やめ、こんなの。うあぁっ」
 身体が跳ねてしまう。女の子のような情けない声が出てしまう。しかしやめてくれとは言えなかった。この御しきれない快楽の荒波にまだまだ揉まれていたかった。
「アミル、気持ちいぃ?」
 熱気で瞳を濁らせながら、息のかかる程の距離で問いかけてくるアズハル。僕は答える代わりに必死に首を伸ばして彼女の唇を求めた。
 唇同士が触れ合う。それを割って、唾液を滴らせる舌に吸い付く。
 心臓がばくばくして、全身が熱くて、水分を求めずにいられない。甘い甘いアズハルの水が欲しくてたまらない。
 息継ぎをしながら、鼻息を荒くして僕は深く深くアズハルの唇を吸う。
 ん、ん。という鼻に掛かったアズハルの声が、僕の耳を更に犯していく。
 身体の奥から雄が首をもたげ始める。下腹部の底が煮え滾って、脚の付け根から雌を求めて身を起こし始める。抑え様の無い熱が下半身に集中し、硬くなって身体から飛び出す準備をし始める。
 びくっと腰が跳ねてしまう。
 それを境に一瞬ケプリ達の動きが止まる。
「まぁ。アミル様の、思った通りにご立派ですわ。ほら姉さんも、みんなも見て」
「す、凄いな。こんなになるんだな。……これがあたし達を」
「さぁアフマル姉さま、一緒にアミル様をお慰めいたしましょう。まずは緊張をほぐす為に、一度発散させて差し上げるのです」
「そ、そうだな。でもよく知ってるなアズラク。誰に聞いたんだ」
「うふふ。秘密ですわ」
 それを境に言葉が切れ、僕のあそこを左右から湿った感触が包み込む。
 何が起きたのか分からず呻き声が出てしまう。
 アズハルは僕と目が合うと小さく笑って唇を離し、下半身を見下ろしやすいように僕の首を支えてくれた。
「あ、アフマル、アズラク」
 天井に向かって、僕のあそこがそそり立っていた。アフマルとアズラクはそれを挟み込む様に左右両側から僕にしなだれかかり、ぷっくりと膨れた亀頭部分に左右から口づけをしてくれていた。
 僕に流し目を送り、二人は色っぽく唇を歪める。
 アズラクは舌を出してかり首をくすぐると、とろりと唾液を垂れ落とさせながら唇を上下に動かし始める。
 アフマルはそれを見てむっと眉を寄せ、彼女も負けじと同じように唇で僕自身に唾液を塗り付ける。
 すぐに濡れそぼり、てらてらと桃色の明かりを照り返し始める僕の一物。ケプリの長女と次女は顔がべたべたになるのも構わず夢中になってむしゃぶりついてくる。
「アミル様の、んっ。いい匂いですわ」
「それに美味しくて……。我慢なんてしないで、好きな時に出していいからな」
 二人は視線をこちらに向けながらも、舌を動かす事をやめようとはしない。それどころか僕の睾丸をそれぞれ片手で弄び始める程だった。
 二つの唇と舌がぴっとりと吸い付いてきて、縦横無尽に動き回る。指先がくすぐるような動きで腰の奥底を刺激する。
 自分がされている事ながら、あまりの淫靡さに僕は目を奪われてしまう。こんな風に奉仕される事など想像したことも無かった。
 周りのケプリ達ですらその光景に見蕩れる中、ふと頬のあたりにふわりと風を感じた。
 そして瞬きするほどの一瞬の隙に幼さの残る顔が近づいていて、唇を奪われていた。
「んんっ?」
 口の中をぎこちなく、しかし激しく動き回る小さな舌。歯先や舌先をころころと転がった後、それはあっけない程すぐに出て行ってしまう。
「ぱはぁっ。お兄ちゃんの唇、おいしぃ。アズハル姉さん、私もお兄ちゃんにもっとキスしたい。おちんちんはお姉ちゃん達に取られちゃったし、いいでしょ」
 あっけに取られる僕を見て笑っていたのは、王の間を覗いていたケプリの片割れのアスファルだった。姉妹の中でも一番幼く見えているが、彼女も魔物娘だけあってこういう事には積極的なのだろう。
「あ、アスファル。そ、そうね。それじゃあアミル、舌を出して?」
 何をするのかと気にはなったが、考えても仕方なさそうだったので僕は黙って言われた通りにした。
 アズハルが目くばせすると、アスファルは猫のように目を細めてたのしそうに笑った。
「そういうことかぁ。流石姉さん。じゃあこっちも始めよっか」
 頷き合い、僕に顔を寄せてきて、そして。
 二人は自分の唇を、僕の舌へと押し付けてきた。
 唇で僕の舌を咥え込み、引っ張るように擦り、そしてついに舌を出して絡ませ始める。
 もう聞き慣れはじめつつある淫らな水音がくちゅくちゅと耳元に響き、飲み干しきれないよだれが顎を伝って垂れ落ちる。
 肩を掴む二人の手に力が籠る。二人も僕を感じてくれているのだ。
 二人を抱こうと腕を上げようとしたが、押さえつけられていて動かなかった。二人ずつによる口淫と口づけに感化されたかのように、全身に対する愛撫が再開される。
 今度はただ舐めるだけでなく、場所を問わずに甘噛みしたり吸い付いてくる。
 まるで全身が敏感な陰部にでもなってしまったかのようだった。全身が気持ち良かった。心地よいのとは少し違う、鳥肌が立つような、興奮に震えてしまうような、淫靡な官能に全身を染め上げられる。
 感じてしまう。否応なく、全身を快楽に包み込まれ、脳に官能が突き刺さって焦げ付き始める。
 腰が跳ねる。
 もう限界だった。
 僕は全身を震わせながら、煮え滾った欲望を感情のままに発射する。
「ひゃぅん」
「むぐっ」
 白く濁った僕の性欲は空中に飛び散り、アフマルとアズラクの頬を白く汚し、僕の胸にびしゃりと落ちた。
 青臭い精液の匂いが広がる。
 小さな歓声が上がった。淡い桃色のような耳障りだったそれは、ケプリ達の間をさざめくうちに声色を更に濃くして、煮詰めたような色合いへと変わっていく。
 ケプリ達の目の色が、部屋の雰囲気が再び変わった気がした。
「……アフマル姉さま、頬にアミル様の精液が」
「アズラクだって随分汚れてるぞ。待ってろ、今綺麗にしてやるから」
「では、私も」
 そう言ってお互いの頬に舌を這わせ、僕が放った白濁を舐め取り始めるアフマルとアズラク。
 二人の他にも、何匹ものケプリが僕の胸元に集中して息を荒くして精液を舐め取っていく。
「あ、ずるい。私も舐めたかったのに……」
 アスファルと、そしてアズハルまでもそんな姉妹達に羨ましそうな目を向ける。熱で浮かされたような瞳はもうどう見てもまともでは無かった。
 この場の皆の頭の中は、もう交わる事しかないのだ。そして僕もまたその一人なのだ。
 アフマルとアズラクは口づけを交わし合ってお互いの口の中の精液を分け合っていた。白濁混じりで絡み合う舌と、鼻に掛かった艶っぽい吐息がその口の端から漏れていた。
 満足するまでお互いの口を散々掻き回したあと、二人は喉を鳴らして口の中のものを嚥下する。
 一度射精したとはいえ、こんなものを見せられて反応しないわけが無かった。
「アミル様の精、極上の味でございました」
「こんなの、本当に初めてだよ。やっぱり王はアミル様で間違ってなかった」
 蕩けた表情をこちらに向ける長女と次女。勝気そうだったアフマルは男の全てを知り尽くした娼婦のような顔で微笑み、おっとりとしていたアズラクは少年に女体の扱いを教え込む女性特有の優しくも淫らな笑みを浮かべていた。
「さぁ、準備運動はこの辺でいいだろう。みんな、これからが本番だよ」
 アフマルの声にケプリ達が色めき立ち、僕は一人生唾を飲み込む。
 そう。脳が焼き切れてしまうような快楽の波に溺れてしまいそうだったが、僕はまだ誰にもまともに精を与えては居ないのだ。
 無数の濁った赤い双眸に狙われながら、僕は意識をしっかりと保ち続けられるように気合を入れた。
 僕は王になる。ならなくてはならない。そのために彼女達の愛に応え、彼女達を愛するのだ。


 ケプリ達の熱を帯びた視線が、横たわる僕に注がれている。
 天井を向いた僕の剛直。周囲に漂い出す濃い雌の臭い。お互いの身体もほぐれ、あとはいつでも始められる状態、とでも言えばいいのだろうか。
 しかし今までのが戯れだったのならば、これから僕は一体どうなってしまうのだろう。
 そんな僕の不安をよそに、アフマルは最初の相手を指名する。
「まず最初は、アズハル。あんたからだ」
 アズハルは驚いたように目を丸くして、僕とアフマルの顔を見比べる。
「え、でも。……お姉ちゃんじゃなくていいの?」
「嫌なら他の誰かに「私がする」
 むきになったように返事をするアズハルの姿が、ちょっと嬉しかった。
 アズハルは僕の髪を優しく撫でながら微笑みかけてくれる。
「大丈夫だよ。アミルならきっと最後までやり遂げられる」
 ケプリ達が僕の身体から少し退き、アズハルが僕の身体に跨る。
 彼女が両手を天井に向けると、どこからともなく黒い球体が飛来してきた。
 肌から渇きにも似た焦燥感が伝わってくる。恐らく泉の水辺で初めて交わった時に注ぎ込まれた物と同質のものなのだろうが、目の前のそれは桁違いに大きかった。
 こんなものを注ぎ込まれて僕はまともで居られるんだろうか。いや、居なければならないんだ。
 アズハルは球体を両手で抱えると、それをぎゅうっと抱き締めるようにして小さくまとめていく。
 球体は今にも弾けそうにぶるぶると震えながら中央に密集してゆく。恐らく中のモノはそれだけ凝縮されているのだろう。肌がピリピリする感じからも、何となくそれが分かる。
「アミル」
 アズハルは赤ん坊のゆりかご程の大きさになったそれを僕の胸の上にかざす。手を離せば、あるいは少し下げただけでも、それは僕の中に入ってくる事だろう。
「受け取って。ずっと私が溜めてきた魔力。私の……」
 その手が下がり、僕の胸に魔力の塊を押し付ける。
 泉の時と違い、それは奇妙な弾力を持って僕の肌にぶつかり、そして次の瞬間には一気に渦を巻いて僕の中に流れ込んできた。

 まぶたの裏が真っ白に染まる。その真っ白い空間に無数の魔物娘が浮かんでは消えて行く。
 欲しい。欲しい。男が欲しくてたまらない。愛する者の精液が欲しくてたまらない。愛しい人の子どもを宿したい。でも、愛しい人はまだ居ない……。

「私達ケプリは空気中を漂ってきた魔物の魔力や、交わりで生まれた魔力を集めるの。今アミルに注ぎ込んだのは、私が生まれてからずっとずっと溜め込んできた魔力の塊」

 これは魔物娘達の魔力、その根源。淫魔の本能?
 見たことも無い魔物が男と交わっている。蛇のような下半身で巻き付くように恋人を強く抱きしめる娘、大きな翼で温めるかのように愛しい相手を包み込む娘、昆虫の下肢で、獣の獣毛で、全身で交わり、喜びに震える魔物娘の姿が頭の中を駆け巡る。

「まだ見ぬ王様の為に、あなたの為にずっとずっと。毎日毎日集めてきた、私の……」

 その中に、金色の四肢をもつ娘が居た。
 魔物娘ケプリ。アズハル。僕がずっと恋焦がれてきた娘だった。
 何匹もの魔物達の交合の幻影が渦を巻く中、寂しげな顔で歩いている彼女の姿がぽっかりと浮かび上がって見えた。
 遺跡の中だろうか。暗くて冷たい遺跡の中をアズハルは一人で歩いていた。
 アズハルは急に走り出す。そして何かを見つけて立ち止まり、花が咲いたような笑顔を咲かせる。
 泉の淵に僕が居た。砂以外何も無いはずの泉の周りには色とりどりの花が咲き乱れていて、そんな風景見たことが無いはずなのに、どこかで見たことがあるような気がした。
 柔らかい日差しが差し込むそこで僕は彼女を抱き締めて、二人で花の中に倒れ込んで……。

「アズハルっ」

 寄り集められ濃縮された魔物の魔力と、集めたアズハル自身の魔力が混ざり合い、僕の身体の中を暴れ回る。乾きとも飢えともつかない衝動が、全身を焼き尽くしていく。
 身体がぐつぐつと沸騰しているようだった。下腹部と言わず、血流、筋肉、骨、内臓、全身のありとあらゆる部分が粘着いた渇きを訴えていた。
 ケプリ達の全身への奉仕で限界まで性欲を高められていた僕の肉体。そこに注ぎ込まれた濃厚な魔物の魔力は、僕の精神だけでなく肉体までも犯し始めていた。
 目が霞んだ。喉が渇いて息苦しかった。
 もう、考えるのも面倒だった。とにかく渇きを治めたかった。どうすればいいかは、もう身体の方が理解していた。
 身体と心が、目の前の魔物を犯せと訴える。小柄なその身体を力付くで組伏し、破裂するほどに膨れ上がった欲棒を捻じ込み、その胎内に劣情を好きなだけぶちまける。そうすれば全身が満たされ、この熱も少しは落ち着く事だろう。
 犯したい。アズハルを気の済むまで犯したい。……アズハルなら、きっと何をしても許してくれる。
 身体が命じるままに左手を伸ばし、アズハルの乳房を握りしめる。柔らかで形の良いそれが手の平の中で潰れ、形を変える。
 吸い付いてくるような感触に、手の平が悦ぶ。そうだ、これだ。もっともっとだ。
「いっ。あうぅ」
 小さな悲鳴が遠くから聞こえた気がした。大切な人の声が……。
 苦痛を堪えるようなアズハルの顔が視界に飛び込んでくる。唇を噛んで全身を震わせるその姿が、僕に冷や水を浴びせた。
 違う。これじゃ駄目だ。僕がしたいのはこんな事じゃない。痛がらせたいんじゃない。大切な人と二人で気持ち良くなって、幸せな気持ちになりたいだけなんだ。
 煮え滾る身体を何とか制御するべく、僕は全身を意識する。
 優しく、優しくと意識しながら、腕から余計な力を抜いていく。掴むのではなく、包み込む。犯すのではなく、抱きしめる。
 乳房を包む様に優しく触れる。真ん丸のおっぱいの曲線を指で撫でて、その先端の色素の薄い乳首を指で軽くつまむ。
 んんっ、と鼻に掛かったアズハルの吐息が抜けていき、彼女は両手で僕の左手を掴んでくる。
 今の僕には指先を制御するのが限界だった。他の身体は、どこも気を抜いただけで今すぐアズハルに襲い掛かってしまいそうだった。
 アズハルはそんな僕の状態が分かっているのか、瞳を潤ませながらもいつもの優しい笑顔を向けてくれた。
「アズハル、僕は、乱暴にはしたくないんだ。でも、身体が言う事を効かなくて。今にも君を……」
「大丈夫だよ。どんなふうにされても、私は嬉しいから」
「でも」
「私に任せて。アミルの欲望は、全部私が受け止めるから」
 アズハルは腰を上げて僕のあそこに狙いを定める。しかし腰を沈めようとする寸前に、その動きがぎこちなく止まった。
 アズハルの腰の下で、かつてない程に硬く大きくそそり立った僕の男性部分。至る所に青筋を浮かべて、脈打ちながら雌穴を待ちわびる様は、魔物娘よりも魔物らしい存在に見えた。
 魔物の魔力を浴びたせいなのか、男性の平均程か、むしろ大きさに自信が無いくらいだった僕のモノは、今はもはや別物のような姿に成り果てていた。こんな醜悪な姿を目の当たりにしては腰が引けてしまっても当然だった。
「アズハル。無理しなくても」
「大丈夫。だって、一番にアミルを悦ばせてあげたいから」
 アズハルは僕にだけ聞こえるように囁いて、ゆっくりと腰を下ろしていく。
 鈴口が濡れた入口に触れる。たったそれだけで僕自身は反応し、透明なカウパーを彼女の割れ目に向かって噴き出してしまう。
「あっ。すごい……」
 アズハルの目がとろんとしてくる。
 左手を握りしめる手に力が籠り、僕の腰を挟む肢にも力が入る。
 そして、彼女は狭い狭い体内に僕を招き入れてきた。
 アズハルの柔らかい膣肉を押し広げ、襞を掻き分けながら身体の中に侵入していく僕自身。ぞくぞくとした快楽が腰や背筋と言わずに全身を駆け抜け、脳を沸騰させる。
 アズハルは両目を瞑り、歯を食いしばって腰を沈め続ける。胎内を暴れ回る異物の感触に、言葉も出せずに大きく息をするのが精一杯のようだった。
「だいじょぶだよ、アミル。大丈夫。もうちょっとで、一番奥に」
 肉襞を掻き分け、僕はとうとうアズハルの中心に到着する。そこが擦れた瞬間、アズハルは大きく弓なりに背を反らせて大きな声を上げた。
 ぽたり、ぽたりとアズハルの汗や唾液が僕の胸に落ちて甘い匂いを立ち昇らせる。
「あ、みる。じゃあ、動く、ね」
 止める暇も無かった。その余裕ももう無かった。
 奥を突かれて軽く絶頂を迎えたアズハルと同じように、僕もまた既に射精感を抑えるのが限界に近かった。
「ふあぁぁ、あぁんっ、あみる。あみるぅ」
 アズハルは腰を上下にゆすり始める。自らの柔肉が乱暴に擦り上げられ、愛液を掻き出され、襞がめくられ、子宮が押し上げられるにもかかわらず、身体を動かし続ける。
 絡み付き、蠕動を繰り返すアズハルの膣。苦痛の為か快楽の為か、彼女の瞳からは大粒の涙がぽろぽろと零れ落ちていた。
「凄い、こす、れるっ。硬くて、あ、熱くてぇ」
 僕から決して目を離さぬまま、アズハルは柔らかいお尻を僕の腰に打ち付けてくる。小さな体に僕の凶暴な身体をすべて受け入れてくれている。
「ごめん、ね、アミル。わた、私、もう、限界……。い、いくぅっ……」
 肉筒がきゅぅっと締まる瞬間、僕もまた本能的に腰を突き上げ射精していた。
 その瞬間、厚ぼったい子宮口の肉が僕の先端を受け入れてくる。胎内全体が中心に向かって蠕動して、僕が放つものを搾り上げ、吸い上げてようとして来る。
 まるで下腹部が心臓になったかのような激しい脈動と射精にも関わらず、接合部からは一滴も精液は溢れ出てこない。先ほどの言葉の通りに、アズハルは僕の欲望の全てを受け止めてくれていた。
 脈動するごとに渇きは少しずつ癒え、身体は静まり落ち着きを取り戻していく。
 やがて射精が落ち着くと「すごい……」とどこからともなく声が聞こた。周りが少しずつ色めき立ち始めていた。
 しかし周りと対照的に、アズハルは俯き泣き出してしまう。
「ごめん。私あっという間にいっちゃった。もっと楽しませてあげなきゃいけなかったのに、私ばっかり夢中になってた」
「僕も、あまりにもアズハルの身体が気持ち良かったから我を忘れてあっという間にいっちゃったよ。もうちょっともつと思ったんだけどなぁ。
 ……ありがとう。凄く良かったよ」
 強く握られる彼女の手を、僕はしっかりと握り返す。
 心からの気持ちだった。アズハルになら全て注ぎ込んでもいいと思ったし、実際に今ある全てを注ぎ込んだのだと思う。
「私も、ありがとう。こうしてたいけど、順番だから私はいったん離れるね。お姉ちゃん達なら、きっともっと気持ち良くしてくれるから」
 僕のお腹に手を着いて立ち上がろうとするアズハル。しかし腰がわずかに浮きかけたところで震える手足が滑り、肉棒がさらに深く突き刺さってしまう。
「あぅっ。あああ」
 アズハルは大きく肩を震わせて自分の身体を抱き寄せる。
 泉での後足が震えてしまっていた事を思い出した。もしかしたら感じすぎて立ち上がれないのだろうか。
「大丈夫? 待ってて、今」
「駄目、アミルはそのままでいて。ちゃんと、一人で、立てる」
 ぷるぷる震える手足で健気に踏ん張ろうとするアズハル。
 その腕がまた滑りかける寸前に、彼女の腋の下にしっかりとした金色の腕が回り込み、彼女の身体を引き上げる。
「ったく、見せつけてくれちゃって。ほら、大丈夫か」
「あ、ありがとアフマルお姉ちゃん」
 アフマルの腕の中で、アズハルの身体からくたりと力が抜けた。きっと長姉に抱かれて安心したのだろう。
 アフマルはケプリの群れを一歩離れ、アズラクを少し離れたところに横たえる。
「あとはあたし達に任せな。何、すぐにまた番が回って来るさ」
 アズラクは心残りがありそうな顔で僕を見ていたものの、すぐに顔を上げてアフマルに向かって頷いた。
 アフマルの言葉の意味は、考えない事にしよう。


「さぁ、次はあたしが、あっ」
 何事なのかとその視線を追うと、いきなり視界がはちきれんばかりの褐色の膨らみで覆い尽くされた。
「むぐぅ」
 顔全体が柔らかな感触で覆い尽くされる。わずかな隙間から息を吸い込むと、甘酸っぱい女の肌の匂いが鼻の奥一杯に広がった。
 一瞬見えた物が間違っていなければ、これはアズラクのおっぱいのはずだ。大きくて柔らかそうだとは思っていたが、顔を包み込んでしまえる程だとは思わなかった。
 左手でどけようと掴もうとしても、指が肉に沈み込むばかりで一向に動かない。それどころか、指を包み込みつつも押し返してくる至福の感触に、指から力が抜けていってしまう。
「うふふ。あんな情熱的なやり取り見せつけられてしまったら、もう抑えられませんわ」
 背中に回される両腕。しっかり腰を固定してくる両脚。そして腋の下のあたりにも何かが食い込む。
 何かと考え、彼女達ケプリの姿を思い出して思い至る。ケプリは昆虫型の魔物。普段は目立っていないが、もう一つ脇辺りに腕のようなものが生えていた。恐らくそれが食い込んでいるのだ。
 プニプニの弾力とツルツルの無機質な触り心地を併せ持つ昆虫の肢。それと対比するかのような、しっとりとした柔らかな女の肌の感触。同じように温かながらも、異なる二つの感触に包み込まれ、僕の中で落ち着きかけていた炎が再び熱を持ち始める。
「お姉さま、いいでしょう? だってほら、アミル様ったら、もうこんなに大きく硬くされてるんですもの。お慰めしなければ可哀そうですわ」
 うわごとのように呟きながら、アズラクはさらに強く胸を押し当て、身体を揺すって肌を擦り付けてくる。
 ヴァギナがペニスを包み込む様に、アズラクは全身で僕を包み込んでくる。その感触に、匂いに、胸の奥にアズハルの時とは違った感覚が生まれる。
 凶暴と言っていい程に激しくアズラクを犯したいと思う傍らで、こうして抱きかかえられたままの安らかな心地よさに身を任せていたいとも思ってしまう。
 激しくするよりは、むしろこのまま優しく溢れさせてもらいたい、そんな欲望さえ生まれてくる。
「まったく……。分かったよ。あたしは後からゆっくり楽しませてもらう」
「ありがとうございます。お姉さまぁ」
 アズラクの胸が離れていき、僕はようやく新鮮な空気を吸う事が出来た。しかしまともに呼吸が出来たはずなのに、なぜか汗や女の匂いのしない空気は物足りなく感じた。
「アミル様ぁ。私がぁ、ゆっくり、たっぷりとぉ、楽しませて差し上げますわぁ。さぁ、一緒に気持ち良くなりましょう」
 濁った瞳に僕を映しながら、アズラクは顔を寄せてくる。
 アズハルよりも少し厚く、柔らかい唇が僕の唇に吸い付いてくる。アズハルよりも少し大きく厚い舌が、僕の口の中を、舌の形を確かめるようにゆっくりゆっくり口の中を巡る。
 敏感なところもそうでないところも関係なく、アズラクはとにかく口の中の全てを求めてくる。
 息をするのも忘れてしまう、長い長い口づけ。
 歯の付け根や、舌の裏まで愛しそうに舐め上げてきて、そして僕の口をあらかた舐め終えると今度は自分の口の中へと僕を誘い込んでくる。
 導かれるまま舌を絡め、彼女の口の中を冒険する。
 アズハルと違う形、違う温度、違う匂い、違う味。姉妹の違いが、背徳的な興奮となって背筋を駆け抜ける。
 下品な音を立てて二人して唾液を吸い合い、唇が離れた時には二人して喘ぐように呼吸を重ね合った。
「アミル様の口づけ、とっても情熱的ですのね」
「アズラクが導いてくれたおかげだよ」
「ふふ。お上手ですのね。……少し早いですけれど、そろそろ私も召し上がってくださいな。でも、その前に」
 いつの間にかアズラクの手の上にあったのは、アズハルの時と同じような漆黒の魔力球。
 恐らくもう凝縮され切っているのだろう、小さいながらも全身が震えるほどの圧迫感があった。
 アズラクはたおやかに笑い、僕の胸に魔力球を押し付けてくる。
「私の魔力も、お受け取りくださいませ」

 まぶたの裏が弾けて、色取り取りの魔物達の姿が頭の中で渦を巻く。鱗や毛皮や翼を持った何かが肌色と交わり合い、極彩色のモザイク模様を織り上げる中、一点金色の輝きが煌めく。
 暗い遺跡の奥底で、王を優しく抱き締める事を夢見る一匹のケプリ。
 だが、彼女は決して自分だけが愛される事を願っているのでは無かった。
 彼女と共に生きてきた数多くの姉妹、そして隣に佇む自分達をまとめる長姉。
 彼女は自分の全ての姉妹達が王と幸せな契りを結ぶ事を夢見ていた。時に優しく抱き合い、時に激しく求め合い、犯し合い、性愛が高まる事を望んでいた。そしてその全てを見守り包み込みたいと願っていた。
 交合を誘い、交合に招き入れ、交合を見守り、交合に混ざり合い……。
 尽きる事の無い愛の饗宴を。王とその家臣たちによる終わりの無い愛の国を。

「そしてようやくアミル様が現れて下さった。でも、私も一匹の雌に過ぎなかったみたいですわ。だってもう、アミル様が欲しくてたまらないんですもの、ほら、ここがこんなに」
 赤子を見守る母親のような表情が目の前にあった。アズラクは一度僕に口づけしてから、びっしょりと濡れた割れ目へと僕の手を引いていった。
 指を曲げただけで簡単に中へと飲み込まれてしまう。少し指を動かしただけで僕の下腹部に滴がぽたぽたと垂れ落ちてくる。
 とろとろにとろけきった、アズラクの……。
「あ、あ、あっ。も、もう。ダメですわ。お戯れはそのくらいにしてくださいまし」
 アズラクの手が僕の指を引き抜き、指を絡めて床に押し付けてくる。
「指なんかで焦らさないでください。もっと大きくて太いもので、私を満たしてください」
 アズラクのもう片方の手が僕の根元を握り、位置を合わせる。ちょうど上から垂れ落ちてくるアズラクの愛液を浴びる位置に。
「アミル様。どうぞ私に、お情けを」
 亀頭がやわやわとした入り口に触れると、あとはあっという間だった。
 蜜が絡み合うひだひだがみっちりと詰まったアズラクの膣は、内側に向かって波うち、自ら僕を中心に向けて吸い込んでくる。
 長く深い吐息を吐きながら、アズラクの身体もまた僕を飲み込まんと沈み込んでくる。
 口と鼻、顔の下半分を豊満な乳房に覆い尽くされ、またしても僕はアズラクの甘酸っぱい匂いを吸うしかなくなってしまう。
「気持ちいいですか、アミル様」
 慈愛に満ちた笑顔で僕を見下ろしてくるアズラク。しかしその瞳の奥では性欲が煮え滾り、深く濁り始めていた。
 アズラクは僕の髪に頭を埋めて、深呼吸する。
「すぅ、はあぁぁっ。アミル様の匂い。あぁん、もう素晴らしすぎますわ」
 締め付けが強くなる。抱き寄せてくる腕の力も、乳房や肌の圧迫感も、膣の肉圧までもきゅっと締まってくる。
「それに鉄みたいに硬くて、こんなに深く……。あぁ、私、もう」
 アズラクの身体がゆっくりと揺れ始める。腹と腹が擦れ合い、乳房が顔に押し付けられては引いていく。
 柔肉と蜜の海が僕の硬く熱い部分をしっとりと包み込み、さざ波のように寄せては返す快楽を与えて来てくれる。
「アズハルも、良いでしょうけど、私の身体も、なかなかでしょう?」
 ゆったりとした動きで優しく揉みほぐしてくる水気をおびたアズラクの胎内。快楽を与えあい貪り合うのとは違う、包み込みいたわるような交合。
 少しずつ、しかし確実に射精感が高められていく。激しく腰を振り一気に射精してしまいたくもあり、しかしずっとこの心地よいぬるま湯のような官能に浸っていたくもあった。
 もどかしくも悩ましい。アズラクの肉体もまた、とても魅力的だった。
 だが、心地よい時間はそう長くは続かない。
 自然と背がのけ反り、腰を突き上げてしまう。抑えようとしてももう精液がせり上がってきているのが自分でもわかった。
「感じて、頂けてますのね。我慢なんてなさらず、好きな時に出してくださいね。私のおまんこで一滴残らず受け止めてさしあげます」
 アズラクはあくまでも緩やかな動きを変えずに、僕を一定の快楽で揺さぶり続ける。
 言い様の無い感覚に全身が強張り、少しずつ頭の中が真っ白になってゆく。
 その瞬間がいつだったのかははっきりとは分からなかった。ただ全身が大きな快楽に包まれて、気が付けば僕は寄せては返すアズラクの海のような身体の中に射精をしてしまっていた。
「あっ。出てます。アミル様の精……。熱くて、とっても濃い……」
 身を焼くような射精とは違う、静かな海原のような射精。脈動する僕に合わせて、アズラクもまた収縮する。こぷりこぷりと溢れ出る精液を、無数の襞が舐め取るような動きで中心へと吸い上げていく。
「それに、こんなにいっぱい」
 アズラクは微笑むと、僕の上から身を起こして、頬に手を添えてくる。
 昆虫型の腕でも温かい事はアズハルの手で知っていたけれど、アズラクの手は思っていた以上に温かくて柔らかかった。
「射精。落ち着いて、来ましたね。……満足して頂けましたか?」
「あぁ、もちろん。こう言う気持ち良さもあるんだね。……でもアズラクはまだ」
 アズラクの指が僕の唇を塞ぐ。彼女は僕にそれ以上の言葉を許してはくれなかった。その笑顔もまた、僕の気持ちを思いとどまらせた。
「私も満足させていただきました。でもアミル様に心残りがおありでしたら、またいつでもお声をかけてください。その時はもっともっと濃厚な交わりをいたしましょうね」
 アズラクは片目をつむって、腰を引き上げながら最後にぎゅうっと膣を締め付けくる。尿道内に残った精まで搾り取りながら、最後まで微笑みながら僕から離れていった。
 本当は、彼女はまだ達していないはずだった。それでも僕を立てて、あるいは次を待ちわびる妹達の為に身を引いたのだ。
 少し、心残りが無いと言えば嘘になる……。だが、ずっとそれを引きずる事は周りが許してくれなかった。


「さぁ、次は誰がアミル様のお相手をするのかしら? 早い者勝ちですわよ?」
「よし、あた「次は私だよお兄ちゃん!」
 身を起こす間もなく胸の上に飛び乗って来たのは一番末の妹のアスファルだった。一見ニコニコと無邪気に笑っているようにも見えたが、その瞳はもう男を求める欲望で濁り切っていた。
「ねぇ、いいでしょ。したいの。お兄ちゃんと一分一秒でも早く繋がりたいのぉ」
「わ、分かった。次はアスファルだ」
「やったー。へへへ、じゃあ入れちゃうねぇ」
 大きく腕を広げて喜ぶアスファル。その頭上には、既に他の姉妹と変わらない程の大きさの魔力球が呼び寄せられていた。
「お姉ちゃん達と同じくらい一杯出してくれないとやだからね。これで、また元気になってね」
 アスファルは粘土遊びをするように魔力の塊を小さく寄り固めると、僕の胸に思い切りたたきつけてきた。
 魔物達の魔力が三度僕の中に渦を巻く。流れ込んでくる情報量に意識が追い付かないが、その魔力の波の扱い方も少しだけ身体が覚えて来ている気がした。
 魔力や欲望を自分のものにしようとするのではなく、支配しようとするのではなく、それと一つになる。そうすれば、余計な負荷を感じずに受け入れる事が出来る。そんな気がした。
 そんな中、また僕のまぶたの裏に黄金の魔物娘の姿が閃いた。

 王が帰還し、王国が再生された絵画の前で、ただひたすらに自分を慰める一匹の幼いケプリ。
 望む事はただ一つ。それ以外には他に何もいらない。何も望まない。ただ王に愛され、昼も夜も交わり続けられるのならば、それ以外の全てはどうでもよかった。
 部屋の中に、淫らな水音が響き渡っていた。
 彼女の股の間で止まる事無く指が動き、まだ熟れていない小さな割れ目の奥に激しい出入りを繰り返していた。
 やがて彼女の身体が震え、部屋の中に小さな嬌声が木霊する。
 弛緩する小さな身体。気怠い疲れとわずかな充足。しかし満足感よりも、遥かに虚無感の方が大きかった。
 名を呼びたくても、その名さえ知らない。姿や手を想像しようにも、見たことも無い。
 切なさに身を任せて何度自分を慰めても、幼き身体は王を求めて疼き続けた。
 疼きを抑えられるならどうなっても良かった。自分の身体が壊れても、何でもいいから王に愛されたかった。

「うふふ。おっきぃなぁ。入るかなぁ。えへへぇ」
 幼さゆえの純粋な欲望。眩暈がするような幻影から覚めると、アスファルは僕の一物を掴んで激しく上下に扱き上げていた。
 身体が変容してきているのか、男根を擦られているだけなのに全身を愛撫されているような感触が走り抜ける。
「無理、しなくて、いいからね?」
 僕は歯を食いしばりつつ、アスファルを牽制する。アフマルやアズラクと言った年長者を除き、ケプリは大体が皆小柄で、その胎内も体格に合わせてそんなに大きく出来ていないようだった。
 交わりの際アズラクでさえ子宮が浮いてしまった程なのだ。それより小柄なアスファルが同じことをしたら、彼女を傷つけてしまうかもしれない。
 しかしそんな僕の心中を見抜いているらしいアスファルは、幼い顔に似合わない妖艶な笑みを浮かべて腰を浮かせる。
「へーきだよ。魔物娘の膣がそんなにやわじゃないって事、教えてあげる」
 そしてわずかに位置を直すと、体重を乗せて勢いよく腰を落としてきた。
 アズハルの物よりもずっと狭くてきつい肉を押し広げ、ともすれば引き裂くように、一気に僕の肉棒がアスファルの幼い胎内に沈み込んでいく。
「きた、きた、おきゅまではいってきたぁっ」
 アスファルは声を上げながら、大きく体を仰け反らせ、全身を痙攣させる。
 その目線も、僕を離れてどこか遠くを見るように焦点が合っていなかった。
 以前であれば絶対に委縮していたであろう光景。しかし乱暴に犯されているかのような彼女の光景に、僕はなぜか異様な興奮を覚えてしまう。
 腰を振りたい。と思った時には、もう突き上げてしまっていた。
 悲鳴のような嬌声を上げるアスファルが暴れ馬に翻弄されるように揺れる。
「しゅごい、しゅごいのぉっ。しきゅうが、ぐちゅぐちゅでっ。あぁっ。もっと、もっとしてぇ」
 緩んだ口の端からよだれを垂れ流し、蕩けきったアスファルが僕を見下ろし乞い願う。
「おにいちゃっ、のに、かきまわされてりゅの、すごくきもちいぃのぉっ!
 ねぇ、みんなもおいでよっ。しゅごいよっ。おにいちゃんしゅごいっ。きもちいいっ」
 アスファルの喘ぎ混じりの呼び声に、周りのケプリ達の目の色が変わる。
 そして匂いにでも誘われたかのように、何匹ものケプリがこちらに向かって四つん這いでにじり寄って来た。
「もう、待てない」「王様、王様ぁ」「あたし達も慰めて」「おかしくなりそうなの」「指でもいいです」「脚でも、どこでもいいですからぁ」「私達に触って下さいっ」
 憔悴しきった声、切実な声、悲鳴のような声、そして今にも泣きそうな声を聴いてしまったら、僕はもうこう言わずにはいられなかった。
「あぁ、みんなおいで。みんなで一緒にしよう。みんなのしたいようにしていいよ。みんなで気持ち良くなろう」
 周りの空気が一気に昏い喜色に染まる。
 僕の全身にケプリ達が殺到し、身体を舐めしゃぶり、場所を問わずに肌を押し付け、陰部を擦り付け始める。
 濃厚な魔物の淫らな匂いに満たされ、幾重にも重なる嬌声に脳を揺らされながら、僕は大きく腰を突き上げて射精した。
13/07/03 00:09更新 / 玉虫色
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■作者メッセージ
言い訳的、あとがき。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
「エロあり」というより「ほぼエロ」になってしまったこの四章。
申し訳ありませんが、五章もこんな調子になります。
(だって動画とか漫画みたいな複数ハーレム書いてみたかったんです)

でも実際書いてみて、何事もメリハリというものが大事だとも実感しました。
あんまり長すぎるのもアレですしね。
途中からエロいかどうかも分からなくなってきますし。
(そもそもエロシーンをちゃんとエロくかけているかという問題もありますが……)

というわけで、こんな章でしたが楽しんで頂けたら幸いです。

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