連載小説
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出陣
ずっと、この無骨で純朴な男と初めて交わるこの時を夢想してきた。
きっと彼はそういう事には奥手だから、こちらが余裕たっぷりにリードしてあげるのだと、そう思っていた。
だが、違った。
交互に舌を絡めながら、脱ぎかけの衣服の隙間から差し込まれた男の手が身体を這いまわる。武器を振り続ける人生の中で牛革のようにごつごつと厚く変化した手の平。逃がすものかとばかりに力の込められた逞しい腕。

身体をぞくぞくとした快感が駆け抜け、腰が抜けそうになる。
主を抱き。そして今自らの姉をも抱いたこの男はーー既に、どうすれば自らの腕の中で女を鳴かせる事が出来るかを、知っているのだ。
行綱はそのまま、獲物を住処へ抱え帰る狩人のようにベッドへと歩みを進める。
そうしてまずはクレアを、ベッドの上へと投げ捨てるように押し倒した。

「え、あ…………っ♥」

その腰を掴んで、四つん這いにさせる。
戸惑うように、あるいは誘うように揺れる尻尾の奥。ぴっちりと閉じ、しかし既に熱い蜜の滴る割れ目に、己の肉棒の先をくちくちと馴染ませる。
そのまま――容赦なく、クレアの身体を貫いた。

「っ…………っ♥」

征服するように背後から両手を付かされた体勢。自らを貫く、灼けるような熱を持った肉棒。
膣内には涎のように熱い蜜が潤と溢れ、男の肉棒を締め付けている。
男は身体を震わせ、悶えるように尻尾をくねらせる飛竜の腰を掴むと、具合を確かめるようにぐりぐりと子宮口に鈴口を押し付ける。

そして一度大きく体を引くと――その引き締まった臀部目掛けて腰を打ち付け始めた。


――ヤ、バい……♥
――想像していたのより、ずっと、凄いぃ…………っ♥


剥き出しの獣欲に子宮口が押し上げられ、目の奥でバチバチと火花が飛ぶ。
さらに甘い嬌声を上げるクレアを尻目に、行綱は再びほむらの身体を抱き寄せると、その咥内を貪り始めた。

「ん、っ!?ふっ…………っ♥」

ほむらの大胸筋の上に乗った張りのある大きな胸を鷲掴みにし、唇の隙間から洩れる声を楽しむように。時折くりくりとその先端を摘まみ上げる。

こんなに。こんなに荒々しく強引に求められるなんて、想像していなかった。
雄の剥きだしの性欲を前に、自らを一匹の雌として扱われる興奮。
口からは嬌声を、瞳からは歓喜の涙を流し。ベッドのシーツに爪を立てて身体を捩る飛竜の姿が、さらに男の獣欲を煽る。

「…………っ!」

行綱はそんなクレアの子宮口を捩じり上げ――その最奥へ、己の欲望を解き放った。

「あ、あ………………っ♥」

多幸感に、がくがくと膝が震える。
分かる。
己の子種で孕ませるという、強い意志の籠った射精。
肉棒が身体の奥で跳ねる度に広がる、胎の奥に染み込むような温かさと甘美な快感。


――ああ。
――生まれてきて、良かったぁ……♥


射精を終えたペニスが、ずるりと引き抜かれた。
まるでそのペニスによって身体を支えられていたようにベッドの上へと崩れ落ちるクレアを尻目にーー男の両腕が、次の獲物を捉えるようにほむらの腰を掴む。

「ん、♥ふっ…………っ♥」

正面から抱き締められ、その唇を塞がれながら。
ベッドの上で四肢を弛緩させ、譫言交じりの荒い息を付く仲間の姿を見下ろし、緑の鬼は理解する。

――次は自分が、こうなってしまうのだ、と。

男はそうして、クレアと並べるように。同じように、緑の鬼を尻を向けた四つん這いにさせる。

「……挿れるぞ」
「っ……………っ♥」

幾重もの仲間の愛液と男の精液に塗れた肉棒が、恐ろしい程の締め付けのほむらの膣へにゅるりと捻じ込まれる
行綱はそのまま覆い被さるように体重をかけ、ほむらの身体をベッドの上へと押し潰した。俗に寝バックや、敷き小股と呼ばれるような体位だ。
この体位の特徴としては膣の奥深くまで肉棒を突き込み易く、さらに肩や膝の裏を押さえつける事で一切の抵抗を封じられる事が挙げられる。
ほむらは、すぐにその事に気付いた。

「え、嘘だろ、ちょっと待っ…………!」

そうして――男は容赦なく、杭を打つように腰を打ち下ろし始めた。

「お˝っ、ぐぅ、っ…………っ♥」

体の下で、野生的な美しさを持つ肢体ががくがくと震える。
張りのある尻の弾力が心地よい。強く締め付ける膣へ無理矢理に肉棒を突き入れ、鈴口で最奥のこりこりとした子宮口を叩くのは得も言われぬ快感がある。
さらに男はその後頭部を掴み、鬼の顔をシーツへと強く押さえつけた。

「っ!?ふっ、ふーっ…………っ♥」

ただでさえ強い膣の絞め付けが更にぎちぎちと強まり、熱い蜜が絡みつく。
くぐもった嬌声を上げるほむらを責め立てるように腰を打ち付ける度、眼下の艶やかな緑色の肌に美しい筋肉の筋がうっすらと浮かび上がる。


ああ、いい。
方や、魔物が異形であった頃から生きる飛竜。
方や、故郷の極東では強さの象徴ともされる鬼。
その二人を背後から組み伏せ、子種を注ぎ込むのは――恐ろしい程に、気持ちがいい……っ!!


どくんっ。

「っ、っ――――っ…………♥」

声にならない声をあげるほむらの最奥へ、精液が放たれた。
もがくように身体を震わせるその手足をも押さえつけ、その最後の一滴までを注ぎ込んでゆく。

「はぁっ、はぁーっ…………♥」

目の前で並ぶようにぐったりとその身体を横たえる、二匹の魔物。
うっすらと涙が浮かぶその顔は被虐の快感に甘く蕩け、太ももには秘所から溢れた白濁が伝っている。

そんな光景が、また男の肉棒を痛い程に昂ぶらせた。
行綱は無言で、そんな二匹の魔物の角をむんずと掴む。

「ぁ、え……?」

そうして、無理矢理身体を起き上がらせると――その目の前に、己の肉棒を差し出した。

「ぁ…………♥」

触れずとも熱を感じる程に熱く隆起したそれ。自らを犯して尚、欠片も熱と硬度を失わぬ雄の象徴。
二匹の魔物はそれに魅入られたように視線を離さないまま、吸い寄せられるように顔を寄せるとーー淫液に汚れたそれを、うっとりと舐め清め始めた。
性欲と、達成感と、支配欲。その三つがない交ぜになった昂ぶりが、男の本能を刺激する。
まだ。もっと、と。

「行綱さん」

そんな男を背後から呼ぶ声。
振り返れば――いつの間にやら。その身を淫らな下着で着飾ったクロエとミリア、そしてヴィントが、ベッドの縁に立っていた。

「ど、どうでしょう?隊の戦意高揚やコミュニケーションを兼ねて、昔から偶に皆で買いに行ってたんです。いつか旦那様が出来た時の為、と……」
「えへへー、どう?」
「……似合う……?」

それはもはや、下着としての役割を果たしていなかった。
乳房や秘所を隠す布はなく、それどころか強調し縁取るようにフリルが飾り立てている。
女が、男に抱かれる為。
その為だけに作られ、身に纏う衣装。

「ん、行綱、さ…………っ♥」

まずはクロエを抱き寄せた。
さらさらと流れる金の髪。蜂蜜入りの紅茶にも似た甘い香り。
女性的な主や華奢な姉、そして先の二人の野性的な体つきともまた異なる、柔らかさと戦士の力強さを併せ持った、抜群の抱き心地の身体。
片腕で大剣を振りながら魔界の馬を乗りこなすその腰に手を回せば、むっちりとした肉付きの尻がその手を楽しませてくれる。
行綱は一度その唇から口を離すと、ふるふると揺れる胸の先端を口に含む。そうして腰が引けないように腕に力を込めたまま、もう片手を湿り気を帯びた秘所へと滑りこませる。
それだけで、彼女はいともあっさりと絶頂を迎えた。

「ん、っ、っ……………♥」

ぷっくりと充血した乳首を舌で転がし、指の腹で陰核をいたぶるように押しつぶす。
可愛らしく目を瞑り、唇を結んで喘ぎ声を噛み殺すクレアの肌は赤みを増し、逃げ場を失った腰が震える。
行綱はそんな反応を一通り楽しむと、抱き寄せるようにベッドの上へと横たえさせ。髪をかき上げるように、そっと両手をその頬に添えた。
そして−−その頭を持ちあげる。

「え、あの、行綱、さん……っ!?」

仲間の事だから、本で調べていた。
彼女達が魔物の中でも理性的な種族であるのは、頭が首から漏れ出ようとする欲望の蓋の役目をしているからだ、と。

「あ、あ…………♥」

クロエの視界の中。男の逞しい腕に抱きかかえられた腕の中から自分の身体が組み伏せられている姿が見える。
そうして、足の間に身体を滑り込ませた男の亀頭が自らの秘所へくちくちと擦り付けられ――挿入されてゆく。

「っ、あ、あ、すごい、こんな、こんな…………っ♥」

声が、抑えられない。
自らの身体が犯されている様子を男と同じ目線で見るという、あまりにも刺激的な体験。
男の腰が打ち付けらる度に、肉付きのよい尻や胸が揺れる。

「ん、っ、ふ…………っ♥」

行綱はそんなクロエの胸へと手を伸ばし、もう片手で蕩けきったクロエの頭を抱いたまま、唇を貪った。
絶対的な生殺与奪すらその腕の中にあるという、支配欲と性欲がないまぜになった高揚。
そんな昂ぶりのままーー男はその最奥へと、欲望を解き放った。

「っ、っ………………♥」

密着させた下腹に感じる柔らかな女の身体。健気に子種をねだる膣の締め付け。
その余韻までを楽しむように、とろりと蕩けた顔で呆けた声を漏らすクロエの艶やかな唇を塞ぎ、舌を吸う。
そんな行綱の身体に背後から絡みつく、二組の腕。
ぴたりと行綱の動きが止まった。

名残惜しげに舌を吸うクレアの頭を身体へと戻し、行綱は背後へ振り向く。
きらきらとした無邪気な瞳と、じっとこちらを見つめる二対の目。
行綱はベッドの上に立ち上がると、そんな自らを見上げる二人の目の前に、自らの肉棒を差し出した。

「あ…………♥」

今まで性的な目で見る事などとんでもないと思っていたミリアと、一度はその誘いを断ったヴィント。
だが今の自分は−−そんな彼女達の身体から得られる快感を味わい尽くしたいと、そう欲している。
どんな言葉よりも雄弁にそう語る男の肉棒に。
二人は躊躇う事無く、自らのファーストキスを捧げた。

「ん、ちゅ……………っ♥」
「…………っ!」

以前、ヴィントが言っていた事を思い出す。
男性器に生じる快感は、触れている女性の器官との体温差が有る程、明瞭に感じる事が出来る、と。
行綱は今まさにそれを味わっていた。幼子特有の高い体温の、ぷるぷるとしたミリアの唇。ひんやりと冷たいヴィントの舌。
唾液を絡め、正反対の体温を持つ二人の口淫がその肉棒を這いまわる度、震える程の快感が体の芯から沸き上がってくる。
どくんっ。

「ん、っ…………♥」

同じ部隊の魔術使いとして戦場で抜群の連携を見せる二人は、ベッドの上でもその手腕を遺憾なく発揮した。
すかさず亀頭をぱくりと咥え、その鈴口をちろちろと刺激するミリアをサポートするように、ヴィントはその睾丸を冷たい咥内に含んで転がす。
そうして、口に溜まった精液をごりゅりと満足そうに飲み込むと、一滴たりとも射精を溢さぬようにヴィントに先端を譲り、無邪気に睾丸を頬張り始めた。

「っ…………!」

止まらない。肉竿と睾丸を交互に温められ、冷やされながらの射精。
堪らずベッドに腰を下ろす行綱の股間に顔を埋め。しばらくの間、自らのファーストキスを捧げた肉棒へ愛おしそうに舌を這わせていた二人は――顔を上げると、今度はその身体へとしなだれかかり、両の乳首に舌を這わせ始めた。

「えへへ、おにいちゃん……♥ミリアのここも、触って……?」

そうして自らの身体に腕を回させると、その手を、自らの秘所へと導いた。

「っ、んっ…………♥」

左右の手に感じる温かさと冷たさ。蕩けるように蜜を溢れさせ、きゅうきゅうとねだるように指を締め付けてくる膣。
そして、何より――

「……行綱。」

ヴィントが、行綱の耳元で囁いた。

「……いい事を、教えてあげる。行綱の性的な興奮は、普通の人よりもずっと、支配欲と繁殖欲に強く結びついてる。」
「…………何、を」
「……血統書付きの雌を孕ませたい。強い雌を屈服させて、孕ませたい。行綱の衝動の根幹は、それ。……でも、それだけじゃない。」

彼女は、あの時と同じ顔をしていた。
彼女の研究室に連れ込まれたあの日に見せた、妖艶な笑み。

「……いろんな雌を、孕ませたい……♥」

いつも通りの筈の彼女のそんな囁き声にすら、どこか妖しく笑うような響きが含まれている気がした。

「だから、皆を抱き比べる度に、興奮する。さっきまで抱いていたものとは違う特徴を持った雌に、種付けしたくてたまらなくなる……♥」
「…………っ」

図星だった。
言語化された事で、男の中にはっきりと芽生えてしまった自覚。
腕の中に抱いている二人の、少し力を籠めれば折れてしまいそうなほどに華奢な身体。
今までの仲間たちとは明らかに異なるその体つきに。自分は今、異様な興奮を覚えている。

ヴァントは笑った。
――ああ、なんて可哀そうな男なのだろう。

彼は今もきっと、心のどこかでこの状況を飲み込めないでいる。
側室や妾、愛人など。複数の女性と関係を持つなど、とんでもない事だと。

だがもう逃げられない。
彼は自分の衝動の根幹を、己の本質を、自覚してしまったのだから。
きっとこれからこの男は、そんな罪悪感に時折胸を締め付けられながら。それすらも興奮の材料として、更に自分達を求める日々を過ごす事になるのだろう。


――ああ。
――なんて可哀そうで……可愛らしく、愛おしい男なのだろう……♥


言葉を失ってしまった男に、ヴィントはうっとりとした恍惚の表情で身体を寄せる。
ミリアはそんな行綱の耳元へ顔を近づけ、悪戯を思いついたような声色で囁いた。

「ねーねー。じゃあお兄ちゃん、ミリアとヴィントお姉ちゃんの食べ比べ、してみる…………?」
「……ん、それ、名案…………。」

何の事かと行綱が問い返す前に、二人はするりと行綱の腕を抜ける。
そうしてじゃれるように抱き合うと、ベッドの上へと倒れ込んだ。

「どうぞ、召し上がれ…………♥」

ミリアが上で、ヴィントが下。
男の指で解されて尚、慎ましく閉じた幼い割れ目は熱く濡れ、幼い魔獣の短い尻尾が誘う様にふりふりと揺れる。
気付けば男は、二人に覆い被さるようにしてその性器へ自らの肉棒をあてがっていた。
まずは、ヴィントに。

「ん………………♥」
「っ…………!」

ひんやりとした死体の身体。しかしだからこそその膣は生者の熱を求めるようにぐねぐねと自在に蠢き、甘く締め上げる。
一突きするごとに度重なる交わりで熱を持った肉棒に冷たい愛液が絡まり、ぞくぞくとした快感が背中を駆け上がる。
夢中で腰を振る行綱を、頬を膨らませたミリアが振り返った。

「むー、お兄ちゃん、ミリアもー……お、っっ♥」

最後まで言わせず、ふにふにとしたその小さな性器に男性器を擦り付け、挿入する。
挿れただけで、果ててしまいそうになった。
バフォメットの性器は、魔物達の中でも随一の名器と言われている。
その凄まじさは、一度バフォメットを抱いた男を悉く幼女趣味に転向させてしまうと言われている程だ。
温かく包み込む、狭くてきつい肉の筒。
幼子の魅力を詰め込んだようなその容姿。二人を重ねてもまだ自分の腕の中にすっぽりと納まってしまうような小さな体が、自らの剛直を飲み込み善がっているという、あまりにも背徳的な光景。
行綱はそんな膣を隅々まで堪能するようにゆっくりと腰を動かしながら、可愛らしい嬌声を上げるその咥内に指を滑り込ませた。

「ぁ、ふぁ…………♥」

温かな唾液。狭い口内に小さな歯と舌。指でその咥内の全てを愉しむ。
ヴィントはそんなミリアと顔を寄せ、まるで幼い妹の食べこぼしの世話をするように、開いた口からだらだらと垂れる唾液を舐めとっていた。

「ん、行綱…………♥」

ミリアの体温に肉棒が馴染めば、再びヴィントへ。ヴィントの体温に馴染めば、今度はミリアへ。
限界は、すぐに訪れた。

「……………っ!」
「ん………………♥」

ヴィントの膣内へ、精液が放たれる。冷たい死人の子宮に熱が灯り、その唇から甘い吐息が漏れる。魂ごと引きずり出されるような勢いの射精。
そんな射精の半ばで男はヴィントから肉棒を引き抜き、ミリアの膣内へと挿入した。

「あ、おにいちゃ……っ、っっ♥」

止まらない。水風呂から温泉に移った時のような心地よさ。
尿道が弛緩し、どこにこれほどの量が残っていたのかという程の精液が小さな子宮へと注がれてゆく。

「えへへ、すごーい ミリアのお腹、たっぷたぷになっちゃったぁ……♥」
「……食べ比べ、気持ち良かった……?」
「……ああ……」

ゆっくりと後ろに倒れ込む行綱の身体を、アゼレアが優しく抱き留めた。

「ふふ。お疲れ様じゃ、行綱。……じゃが、まだまだ出来るじゃろう?」

情欲と僅かの嫉妬に濡れた淫魔の声が、行綱の脳を刺激する。
その指は悩ましく円を描くように男の胸板をなぞり。周囲を見れば、その瞳に妖しい光を灯らせた仲間達が周囲を取り囲んでいた。
一歩進み出た舞が男の足の間で三つ指を付くように身体を丸め、白濁に濡れた肉棒を口に含む。

「ん、っ……………♥」

くるくると、亀頭から肉竿までが洗われるような舌使い。
自らの肉棒が清められていく心地よさに身を委ね委ねながら、行綱はアゼレアの手に自らの手を重ねた。

そうだ。
まだまだ、抱き足りない。
もっと、もっと。

「あ、っ……………♥」

ーー行綱は、ひたすらに彼女達と交わった。
時折指を鳴らすアゼレアが呼び出した果実や酒を貪り、ヴィントから手渡された薬を飲み干しながら。
その肌を。口を。胸を。性器を。足を。人間にはない角や尻尾を――何十、何百と交わり、その全てを味わい尽くした。


そうして……いつしか泥のように深い、深い眠りについたのだった。




――――――――――――――――――――





目を開けると、ここしばらくですっかり見慣れた病室の天井があった。

「…………」

こんなに深く眠ったのは、いつぶりだろうか。

「おはよう、行綱」
「……おはよう、ございます」

横を見れば。自分の腕を腕枕にしたアゼレアが、少し意地悪そうな笑みを浮かべて自分の顔を覗き込んでいた。
いや、彼女だけではない。自分の全身を枕にした仲間達が、まるで自分が目覚めるのを待っていたように微笑ましげな表情でこちらを見ている。

「楽しかったかの?」
「……………」

眠りに着くまでの事を思い出すまでもなく、今なお極上の布団のように全身に絡みつく柔らかな女体。
何が、とは聞くまでも無い。

……なんと答えればいいのだろうか。
行綱は少し考えて。
そして、正直に答える事にした。

「……はい」
「ふふ、そうか。……良かった」

嬉しそうに。抱き着いてくるアゼレアの体を、抱きしめ返す。

彼女たちには自分が思っている事を。したいと思った事を正直に言ってみよう。
その上で、彼女達に愛想を尽かされないよう頑張ろう。

自分が間違っていれば怒ってくれると。喧嘩をしてでも止めてくれると。
そう、言ってくれたのだから。

「…………」

部屋を見回すと、いつの間にかその針が止まっていた、壁掛けの時計が目に入った。
時折気になってはいたが……一体自分はどれだけの間、皆と交わっていたのだろうか。

「ん……気付いたか。この部屋は今、妾が時を止めておる」
「…………」

……時とは、止められるものだったのか……。
静かに驚く行綱の頭の中に、同時に一つの考えが浮かぶ。

――ならば。まだ、あの少年は。

そんな行綱の顔を見て、アゼレアは聞いた。

「……行くのか?」
「はい」
「そうか」

そうして彼女は微笑んで、指を一つ鳴らす。
ベッドの横。部屋の中に現れたのは、見慣れた一振りの刀と――見た事の無い、黒塗りの鎧。

「…………」

行綱はベッドから身体を起こすと、刀を手に取り鞘から抜いた。
驚いたことにあれ程の相手と打ち合って尚、その刀身には傷一つ付いていない。
そして――部屋に充満する魔力に反応したように、刃に怪しい光を灯し始めていた。

「槍と弓は、回収された時点でもう修復すら難しいような状態での。……無事だったのは、刀だけじゃ」
「…………」

そして、もう一つ。黒塗りの鎧に目を向ける。
手足の草摺りや袖は自分が着ていた鎧とよく似ているが、その兜や胴の造りはむしろ、こちらの大陸のものに近いように見える。
そして刻まれた文様は安恒家の家紋である細桔梗ではなく、別の花。

「この、花は」
「魔灯花じゃ」

アゼレアが言う。

「妾が、何時かいつか作る国の旗印。それをこの鎧にはあしらっておる。……いつかお前にプレゼントしようと思って彩に頼んでいた、特注品での」
「……私、に」

魔灯花。
あの花畑で聞いた彼女の夢。
そこに住むもの達が自らの意思で守りたくなるような――その、象徴。

「有難く、頂戴します」
「うむ。……さて、他の皆は――」
「勿論、私達も同行させて頂きます」
「……聞くまでもなかったかの」

隊を代表して答えたクロエに、苦笑して振り返る。
皆一様に、当たり前だと言わんばかりの表情を浮かべていた。

「……では、行こう」

行綱は妖しい輝きを灯した刀身を鞘に納める。

絶対に誰にも負けない。
決して傍を離れない。

「出陣だ」

あの日交わした約束を――今度こそ、守るために。

21/06/28 20:57更新 / オレンジ
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