連載小説
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悪意を止めろ3:内乱の不発
この日は騒然としたものとなった。
突如、特別クラスの校門に前面に衝角を取り付けたダンプカーが突っ込み、轟音とともに校門を破壊したのだ。
さらには十人ほどの男がダンプカーから降りてきた。後部の荷台に伏せていたのだ。
ダンプカーの修理費用と土地の譲渡を恫喝しながら請求し、一方的に帰っていったのである。

「此処までやるとはな。もうこちらも黙って耐えとるわけにいかんのう」
「これだけの土地を有してますもの。土地を得ようと躍起になってるのではなくて?」
「ボクねぇ、こっそり……覗いてきちゃった」

朱鷺子がさも当然のように言い放つ。

「特別クラスだけじゃ無くて……、この寮の土地も……中等部と高等部で分けるべきだ……って、言ってて。そのためには、ガイを追い出して嬲り殺しにすべきだ……って榊原って女教師と、瀬川って奴が……言ってたよ」
「……成程な。わしが調べてたものと一致したわ」
「……どういう、こと?」
「構成員や応援のクノイチ部隊には教師どもの動向を、わしと兄上は中等部と高等部の教師の履歴の詳細を調べてたんじゃ。そうしたら兄上の母校・静鼎学園を卒業した教師が数人いたんじゃ。そして、これを学年主任共が主導しておった。川澄と二ッ森が生徒をまとめ、裏では榊原が瀬川と組んで小細工をしておった。そ奴らをマークしたら、まあ予想通りじゃった。兄上の悪口を生徒に吹聴して回っておったんじゃ」
「わたしの一件で、お兄さんが用務員として来てたことを知ったのね」
「それだけではない! その連中、目星をつけた生徒を男女構わず密かに洗脳し、提携先の企業や性風俗店に送り込み、男子には雌化なるものを施し、性奴隷に改造しておった。しかも邪魔、もしくは不要と判断した生徒を、結託した金持ちの生徒を使って追い出しておったんじゃ!」

エルノールは憤怒の形相で話を続ける。

「奴らめ、生徒を男女構わず性奴隷に仕立て上げるばかりか、政官財や法曹界の大物どもに売り飛ばしておった。生徒として在籍しておる部下から、特定の生徒の様子が日に日におかしくなっていると報告があってな。見張らせてたんじゃ」
「何て……奴ら!」

朱鷺子も珍しく怒りを露わにする。

「あの間抜け共め、わしらが動いとるのに気付きもせず、愚かにも密談を録音されとるのにさえ気付きもせんかった。証拠を残さぬ手腕は評価しても良いが、その驕りが仇になった訳じゃな」
「それで、生徒たちはどうしたんですー?」
「無事だった生徒は今、退学させられた者と一緒に地下基地に収容してある。奴らが生徒をバカどもに引き渡したり、誑(たら)し込もうとするタイミングを狙って保護した。今は薬物や洗脳を解いている最中じゃ。下手に入院させてしまえば、奴らは病院を虱(しらみ)潰しに探り出し、また拉致するじゃろうて。じゃから失踪のままにしておる。ん……? ということは……、成程、奴らが兄上の追放を声高に叫んでたのに、納得がいったぞ」

エルノールは自身の告白と朱鷺子の証言から、点と線が結び付いたと確信する。

「取引する商品を失っても、連中は証拠を残していない。そして、教師であることの信用と権威を武器に、失踪の原因を兄上に押し付けて体良く追放し、それを口実にわしからこの学園を奪い取って……、奴隷牧場にしようと計画しとったんじゃろうなぁ!」
「クーデターを起こして、お兄さんだけじゃなく、わたしたちも消そうとしてたのね!」
「ならば、作戦開始じゃな。まずは、あのアホ《教師(ガキ)》どもに出てって貰うとしようか」
「エルノールさま、そうなればもう少し証拠が必要かと思います。私が中等部か高等部の寮母になって、探りを入れて来ます」

ロロティアが内偵に力を貸す旨をエルノールに示す。

「確かに寮母は皆キキーモラにしておるが、お主のその格好では却って目立つぞ。行って貰うとしたら中等部の方になるが、それでもよいか?」
「服のことは心配に及びません。瑞姫さまがご用意して下さいますので……」

瑞姫の名前が出た途端、「あぁ……」とため息交じりに納得するエルノールだった。

翌日、ロロティアは瑞姫が用意したロングタイプのメイド服を身にまとい、中等部の学生寮を訪れていた。
そこの本来の寮母と話し合い、二人態勢で寮の管理を行う事で話を合わせ、実行する事になった。

中等部に潜入している構成員からの連絡を受け、ロロティアも確実に証拠を集めていく。

そして、対決の日がやって来た。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

対決当日。中央塔・会議室にて――

「じゃあ、これはどうだ? 蛆虫ども」

特別クラス廃止とエルノールの退陣を訴える中等部と高等部に対し、凱がパソコンを介してICレコーダーを起動させた。
流れ出る音声に、教師たちは唖然となる。

◇◇◇◇◇◇

『準備は出来てるな?』
『はい。中等部1−C長谷川知佳。13歳であの体付きはなかなかですよ』
『ああ。資料見せてもらったが、かなりの上玉だな。折角だし、俺たちで調教しちまおう』
『いいっすね! たっぷりと仕込んで肉人形にしちゃいましょうぜ』
『僕も先輩に賛成っす。これも特権って奴ですね、あはは!』
『これ、バレないんでしょうかね?』
『そうなった時の策はある。この学園に特別クラスってのがあるのは知ってるな?』
『はい。あの忌々しい龍堂、いや竜宮のガキが働いてるって言う……』
『そうだ。犬畜生以下のクソゴミ野郎に罪をおっ被せればいい。俺は教師だから、信用も権威もあるし、お前らの関与なんか簡単に隠せる。それにあの方が後ろに付いてんだ、何怖がる必要があるんだ? 安心しろ、あのゴミが何を言おうが無駄に終わるだけさ。信用ないしな、ハハハハハハハ!』
『そうっすね! アハハハハハハハ!』
『(一同大爆笑)』

*****

『おい聞いたぞ、お前ら。奏のことイジめてんだって?』
『うわ、誰だよチクりやがったの』
『お前らなぁ……、そういうのは俺の耳に入らんようにやってくれよ』
『あれー? やめろっていわないんすか?』
『おいおい、誰がこんな面白れぇ事やめれっていうんだよ。いじめってのは社会の潤滑油だぞ。もちろんどこの学校にだってあるさ。みんなの不満のはけ口としてクラスをまとめさせてやってんだから、むしろ感謝しろってのよ。俺も弱い者いじめ大好きだからな。シュンジもアミも遠慮いらねぇぞ。ははは』
『ホント!? お墨付きじゃん!』
『うっわ、ひでぇ』
『先生、よろしくたのんますよ』
『おう、偽善者気取りのバカに、無力さってもんをたっぷり教え込んでやるさ。期待しててくれよ。奏を精神壊して性奴隷にするんだからな。麻薬を使わないんだから合法だ。俺が保証するさ。成功したら内申点もたっぷり上げてやる』
『『『『『うぇーーーい!』』』』』

◇◇◇◇◇◇

音声という確か過ぎる証拠が教師たちの眼前に晒される。
声もハッキリと川澄当人のものであった。これに彼は猛反発する。

「ざけんじゃねぞ、竜宮のガキがぁ! ここにお集まりの教師の皆さん! こんな愚にもつかない一用務員が、己の分も弁えずに堂々と捏造を行いました! 皆さん! この場でこの詐欺師を裁くべきではないでしょうか! そして永久に、人間社会から追放しようではありませんか!」

中等部と高等部の教師たちの大半から割れんばかりの拍手と歓声が起こる。
若くして才能とカリスマを持つ、川澄ならではの戦略だ。
彼はさらに畳み掛ける。

「学園長、これが我々の総意です。オラァ、竜宮のガキィ! てめーは今すぐ人間社会から出てけ! 二度と俺たち人間様の前にツラぁ見せんじゃねえ! 分かったかコラァ!」

教師の大半の支持を得ている川澄の勝ち誇った顔から吐き出される言葉は、尊大かつ傲岸不遜。
自分の行いを捏造と放言し、あまつさえその罪を凱に被せたのだ。
だが、凱は全く怯まないどころか、呆れと溜息を交えた返答で川澄を憐れむ。

「ほんっっと、変わんねぇなぁ。テメェも」
「あぁ?! おいてめー、今、俺のことをてめーっつったなあぁ!」
「だから何だよ。テメェをテメェと言って何か問題あんの?」

凱と川澄のやり取りはまさに水と油。口を開けば互いに罵り合うだけの、犬猿の仲だ。
そこに高等部教頭の浜本が参戦する。

「いい加減にしろ、このクソガキが! そもそも貴様のような雑魚がここにいる権利は無い! さっさと社会から出てけ! 警察呼ぶぞ!」
「ブタ本の脂身デブ野郎と国家権力に媚びる、アホで派手なパフォーマンス、まさに『アホーマンス』だな。あはははは!」

凱の嘲笑が教師陣の怒りを煽る。
怒りが臨界に来たのか、川澄と浜本が凱に掴みかからんと靴を踏み鳴らして近付こうとするが、そこまでだった。

「双方そこまでじゃ!」

エルノールの怒声が響くと、会議室は水を打ったように静まり返る。
彼女は周りを見回し、厳然たる口調で宣告する。

「高等部一年主任・二ツ森正士! 同じく二年主任・榊原薫子! 同じく三年主任・川澄純一! 及びこれに従い関与した全教師は本日、現時刻を以て六ヶ月の停職処分とする! 専門機関に証拠は提出済みじゃ! さっさと家に帰って大人しく沙汰を待つが良いわ! そして高等部教頭・浜本美耶! クーデターを計画・実行した罪でたった今を以て解雇する!」

だが、浜本らは真っ向から反発した。

「明らかな不当解雇だぞ、エルノール! 貴様は静鼎学園どころか、警察と夏目会、笹川グループまで敵に回した。地獄に落としてやるから――覚悟しろ!」
「その通り。後でたっぷりと後悔させてやる」
「まったく、これだから規律と無縁な馬鹿は嫌いなんです」
「静鼎の学長様は怖いぞぉ〜?」

浜本と萩原は明確な報復を宣言し、榊原はあからさまな厭味を垂れ、二ツ森は後悔してももう遅いとばかりに吐き捨てて退室していく。これに合わせ、同調者も大挙して会議室を後にし、浜本も冷酷な眼差しを向けながら、一番最後に出ていった。

残った教師は上芝佳蓮、白川美月(しらかわ・みつき)、野宮楓(のみや・かえで)の三人だけ。
この三人は、教師としての業績と評判がずば抜けて悪く、それを揶揄して「高等部三バカ女教師」とまで呼ばれている。
どう言う訳か大事な場面に限って懲戒処分級の失態を演じるため、評価もすこぶる悪く、特に上芝はかつて凱を停学に追い込んだ前科がある。因みに上芝以外の二人も現在、減給処分中だ。

「上芝佳蓮! 特別クラスの厨房に毒物をばら撒いた貴様も、たった今を以て解雇じゃ! 出ていけ!」

エルノールはそう言い捨てると、上芝は目を見開いて驚くが、上芝には何も言い返す権利は無い。鬱陶しいものを見る目をしながら、エルノールは三人に向かって手を払って追い返し、三バカ女教師はとぼとぼと出ていく。

川澄たちは同調した教師らと団結し、翌日から街頭に繰り出して抗議デモを行い始めた。
デモを起こす事で悪評を広め、エルノールたちに頭を下げさせる策を実行したのだが、彼らの取った策は明らかに悪手であった。
自分たちに勝てる者はいない、との慢心から起こしたからだ。

エルノールはその反抗を逆手に取り、すぐさま教育委員会に事の次第を通報。
提出した証拠に加え、凱たちが密かに集めていた証言の録音、さらにはマルガレーテが被害に遭った生徒から得た証拠を元に、教育委員会や政財界との癒着を調べ上げ、その日の内に委員会に面会をゴリ押ししたのだ。
この証拠集めはエルノール・サバトだけでなく、サバトの総本部である魔王軍サバトが全面協力していた。

面会に赴いたのはエルノール、凱、ロロティア、マルガレーテ、亜莉亜の五人。
その後に瑞姫と朱鷺子が被害生徒を連れ、エルノール・サバトの援護で現場に合流した。
直接の証言と記録された音声を突き付けられ、始めはのらりくらりとかわしていた職員も、自分が関わっているのを知られた事で、恐怖のどん底に落とされたのである。
結局、保身に走らざるを得なくなった教育委員会は川澄たちを停職処分から免職処分に切り替え、その沙汰はわずか二日後に発せられた。
その事由は淫行だけでなく、副業の禁止と団体行動権の禁止を定めた、地方公務員法違反だった。
つまり、川澄や二ツ森、その同調者たちは地方公務員法で禁止されている副業、それも人身売買に加え、ストライキを起こした――とされてしまったのである。

教師たちが慌てて取り繕うもすでに遅く、エルノールの反撃によってクーデター計画は瓦解した。
彼らが学校や自宅に残していた資料で明確な犯罪の証拠は押収され、浜本もすでに叩き出されていた。
風星学園も教師が大量に抜けたため、一週間の臨時休校を設け、教員の補充に奔走。
サバトを通じていた関係上、教師の大半が魔物娘となったものの、一週間後には通常の授業を再開できるまでになった。
だが、この間に川澄たちに感化されていた生徒が次々と退学・転校届を提出し、人間の生徒は三分の一程に減少。
中等部では人間の生徒が男女合わせて20人弱になってしまった。

そして――

「ブタ本の脂身野郎は人並み外れて執念深い。自分の思い通りにならない存在を、とにかく粘着質に攻め立てて社会的に抹殺し、自殺に追い込むクソデブ野郎だ。必ず俺を狙いに来るぞ」

凱は憎悪を込めた声で警告し、そして断言する。

「誰かが悪を為さねば、邪悪を滅ぼせねえんだ」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

予想もしない反撃に激怒した浜本は、秘かに協力関係を築いていた市民団体に依頼。
依頼を受けた市民団体は、特別クラスの校門前に押しかけ、大規模デモ集会を開いて、授業妨害を仕掛けてきた。
この市民団体が曲者で、彼らはサバト撲滅をスローガンに、かなり過激な草の根活動を行っているのだ。
しかも、密かに魔物娘を持ち上げ、男をひたすらに扱き下ろすフェミニズム団体としての顔も持っている。
これを平然と使いこなしているのだから、ダブルスタンダードと呼ぶよりも性質が悪い。

「……何ともテメェ勝手でカッコつけたがりだな」

凱はデモ集団を窓から見ながら、憎々しげに吐き捨てる。
瑞姫が横で宥めるも様子は変わらない。

所変わって、静鼎学園学長室では――

「バカどもがあぁ!!」

部屋の主は風星学園を追放された「元」教師達に向けて凄まじい怒声を放ち、机にあった分厚い硝子の灰皿を川澄の顔に投げつける。
川澄は避けずにあえて顔に灰皿を受け、額が割れて出血した。もしも避けた場合、倍以上の鉄拳制裁が待っていたからだ。
なお、榊原と二ツ森は出身校が違うため、この場にはいない。

「《性奴隷(コンパニオン)》を一人も送れなかったばかりか、よりにもよって竜宮のクソガキに証拠押さえられただぁ? しかもこの俺の許可も無しに抗議デモまでやりおって! 恥を知れドアホがぁっ!」

ドスの利いた怒声を張り上げるその男は、体格が良いのと同時に尋常ならぬ肥満体だった。
顔には幾条のもの青筋が浮き上がり、根っからの短気であることも如実に示している。

「お言葉ですが伯父上、我々が立てた作戦は完璧でした。それをあのガキが独りで嗅ぎつけたと言うには……話が出来過ぎています」
「あんな失態を演じておいて、言い訳すんなあぁ!」
「野本(のもと)先生! 洗脳した生徒が、政・財・官のお偉方に引き渡すか、我々が調教を施す段階になると必ず行方不明になるんです。どれだけ我々が恥をかいたか……」
「――おい、それはどういうことだ」
「どういうこと、と言われましても、今言ったのが全てです。我々も原因を探っているところで……」

浜本が助け船を出すと、他の教師からも声が上がる。
野本と呼ばれた肥満男は怒りから一転、冷静になり始める。

政・財・官の大物と繋がりが深いこの肥満男は、取引相手から「あんたが風星にやった《教師(手下)》は使えない奴ばかりで困る。別の《学校(ところ)》から調達して貰うよ」と呆れと溜息の混じった苦情を最近受けていたのを思い出す。
自信を持って教師として育成した者は皆、有能な者たちであるし、実際に功績も残している。
野本は好悪による贔屓が甚だしいが、人物に対する鑑識眼に相当優れた男でもある証拠だった。
彼は点と線が結び付くように感じ、気を鎮めて考える。

「《大物共(れんちゅう)》の苦情とお前らの証言。……何かあるな」

奴隷となるはずの生徒が、「必ず」行方不明になる――

きちんと考えれば、確かにおかしい。
秘密裏に進めている行動がすべて読まれ、先手を打たれているのだ。
残るはずの無い証拠が抑えられたり、密談の音声を記録されていたのも、一人でやったにしては確かに出来過ぎている。
野本は魔物娘たちとの協力を取り付けたと考え、同時に「なんで竜宮のクソガキ如きが」と違和感を覚えずにいられなかった。

「……文科省と教育委員会には俺がナシつけてやる。その間に竜宮のガキと生意気なチビ、その周囲の奴らの背後を洗い出せ。くれぐれも慎重にな」
「「「「「はい!」」」」」
「今日はもう休め。明日から早速やってもらうぞ。美鶴、お前は明日の朝一番で、歌舞伎町の夏目会総本部に行ってもらう。夏目に話は通しておく。――行け」

野本は姪と教え子たちを退出させると、椅子にどっかりと腰を下ろし、机を平手で力任せに派手な音を伴って叩きつける。

「舐めた真似しやがって、竜宮のクソガキがぁ! 卒業式の時に放校にしてやりゃよかったぜ、クソが! 委員会も委員会だ、あの腰抜け連中め!」

怒ったと思えば、今度は吐き気を催すほどの邪悪な笑みを浮かべ、能本はつぶやく。

「こうなりゃ徹底的に叩き潰して、風星を土地ごと奪い取ってくれるわ! ついでに竜宮のクソガキは魚の餌じゃ! 法と権力と暴力、そして金! 人間の力を思い知らせてくれる! ダーハハハ!」

*****

「っかあぁ〜〜〜……相変わらずうるっせえなぁ、ブタ本の野郎……」

凱は顔をしかめつつぼやく。
彼はエルノール・サバトに要請して、特製の盗聴器を静鼎学園の学長室、理事長室、会議室、さらには職員室に仕込んでおり、概ねの情報をそこからも得ている寸法である。
盗聴器はサバト製なので、電池切れを起こす事は無い――と言うかそもそも電池式ではない。

「それで、どうだったんじゃ?」
「動くよ、ブタ本の野郎。法と権力と金を惜しみなく使って、《学園(ここ)》をすべて奪い取るって言ったから」
「成程。ならば不本意じゃが、外壁を強化するしか無かろう」
「それに、俺を魚の餌にするって言ってたね」
「どういう意味じゃ、それは?」
「俺を殺して、海に沈める――って意味」

ため息をついて答えた凱の言葉がエルノールを怒りを爆発させる事になったのは言うまでも無かった――
20/06/28 19:17更新 / rakshasa
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■作者メッセージ
アホーマンス(正式には「ア・ホーマンス」)

狩撫麻礼原作、たなか亜希夫作画による日本の漫画。
『漫画アクション』(双葉社)にて連載された。

この同名の作品が1986年、故・松田優作の主演で映画化された。
同時に彼が監督を務めた最初で最後の作品。
ア・ホーマンスとは、阿呆 (Aho) とパフォーマンス (Performance) をかけた造語。

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