連載小説
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48 封印されし最強サボテン
さて…俺たちはようやくステンバイと呼ばれている地域に着いたわけだが…
そこには簡易テントが二つぽつんと置かれており、近くに小さなオアシスがあっただけだったんだ。
……さて、早くこの場所でメリィバスさんの依頼の手紙を渡さないとな…
でも、探さなくてもすぐに見つかるだろ!?
だって、テント二つしかないんだもん!どのように考えてもどっちかのテントだろ!?

そして俺はここでふと立ち止まった…ここですぐに当たりのテントを選んでしまったら…俺は空気が読めない奴になってしまうんじゃないのか!?
どうする…確立は二分の一…右と左のどっちを選べばいいんだ!?
俺は、夕飯を食べる前に風呂に入るか、風呂に入る前に夕飯を食べるか悩んでいた青年時代…まぁ、昨日なんだが…と同じくらい今悩んでいた!!

そして散々悩んだ結果、俺は右のテントに行くことにしたんだ!
そして俺が右のテントをそっと開けて中に入ってみると…そこにはリリムの女性が一人立っていたんだ!!
見る限りではここに来るまでに出会った、シュユさんと一緒にいたわがままなリリムの女性よりも若い感じか?
まぁ、そんな所だ……

で、ずっとその場で見ているだけの変な奴にはなりたくなかった俺は、その女性に依頼の話をしてみたんだ。
「あの…突然すみません…」
「…なにかしら?」
「この場所にいるローレライって人にこの書類を渡せって言われたんですが…」
「あぁ…それは私よ?ちょっと見せてくれない?」
皆…すまないが、俺は空気が読めていない男だったぜ…
俺はそう思いながらローレライって人に書類を渡したのだった。

そしてローレライさんは無言で書類を見ると、ちょっと含み笑いを浮かべて俺の方を向いてきたんだ。
……な、なんだ!?この変な寒気は!?
俺はローレライさんに見られただけで、強大な化け物の前にいる小動物のような気分になったんだよ!!
こ、これが…勝者と弱者の差という奴なのか…

だが、その後も何かコレといったイベントが起こることもなく…俺はたったの5分でここでやることを終わらせてしまったんだよ!!
ま、まぁ…やることが早く終わるってのはいいことだ…いいことなんだけど…
本音を言えば、少しくらいイベントがあってもいい気がする。

「……ここでの作業は終わったようね?でも、予定では3時前後までここにいる予定だったし…ここでのんびりと3時近くまでしましょう」
メリィはそういうと、さっきまで俺が入っていたローレライと言う人物が中にいるテントに入っていったんだが…まぁ、そんな事はどうでもいいことだよ?

で、ここに3時前後までいるといっても…やることが無いぞ!?
俺は心のそこでそう思ったんだよ!!あるのは小さなオアシスとテント二つだぜ!?他はもう明らかに砂だ!!砂なんだよ!!
今の時刻は…1時くらいか?つまり、2時間前後ここにいるという計算になるんだ!!2時間もこの場所で砂遊びなんて…出来るものかよ!!

俺はそう思いながら、他のモンスターラグーンのメンバーはどうするつもりなのかと思い、そっちを向いてみたんだが…
そこにはなんと、水着姿でオアシスに向かって走っている彼女たちの姿が!!
待て待て!!なんで水着なんて持っているんだ!?
……さて、オアシスから離れるとするかな…

え?なんでいいチャンスだししっかりと水着姿を見に行かないのかって?
ふっふっふ……じゃあ俺は逆に聞かせてもらおう!!
君たちは目で確認することが出来ないのに俺一人良い思いをしてうれしいのか!?嫌だろそんなの!!
俺にはわかるさ!!恨むなら…作者に画力を与えなかったこの世の摂理を恨むが良い!!
後…こっちの方が大きいことなんだけど、俺さぁ…6歳のときにプールで嫌なことが起こったから水辺で水着女性たちを見るのが怖くて怖くて…
そんな理由で俺はオアシスから徐々に離れていったんだ。

で、俺がこの物凄い日射を回避するために折りたたみ空き箱の中に入って砂の城を作ってみようと躍起になっていたときだった!!
何回やっても…この砂の城の門を開通させることが出来ない!!
ここの砂…さらさらすぎるんだよなぁ…
俺がそう思いながらも建てて崩れてを繰り返していると、俺が入ったのとは違
う隣のテントから青年が出てきたんだよ!!
しかも…後ろに女性をセットでな!!

……来るなよ?来たらまた複雑な嫉妬心に絡められてしまうからな…
などと思いながら念を発していると、その念に気付いてしまったのか青年がこっちに向かって歩いてきたんだよ!!
し、しまった…逆に呼んでしまったというのか…

「そこの人…どうしたんですか?」
ん!?まさか、こんな砂漠で空き箱の中に入って砂の城を作っている俺が変な存在だと思っていないか!?
俺は思わずそう思ってしまうような雰囲気をかもし出しながら、その青年の後ろをついていたエキドナの女性がこっちに向かってきたんだよ…
「…いや、仲間がオアシスに行って遊んでいる間…ここで一人砂の城でも作ろうと思っていまして…」
「そ、そうなんですか…」
……こ、この人絶対に俺がおかしな人だって思ってるよな…?
全く、こういったことだけはなぜか空気でわかるから複雑な気分だぜ…

俺がそう思っていたときだった。
「……僕…その…香っていいます」
いきなり青年が俺に話しかけてきたんだよ!!けっこう臆病者のような雰囲気だが…良い人だと思うぜ?第一印象的にはだけど…
「俺はデメトリオっていいます。香さんはここで何をしている人なんですか?」
俺は若干、そのことが気になっていてね…?
ステンバイと言う名前のこの地域は基本的には人が来ることは少ないだろうから物流的にもいいことは無いと思うし…
辺りを見てもオアシス以外には何も見つからないのにここにいるのはなぜなのかが知りたかったのさ!!

「サボテン作ってます……」
「さ、サボテン!?」
あまりに意外な答えが返ってきたので俺は一瞬だが言葉に詰まってしまったぜ…
サボテンだと…?聞いたことはあるけど一体サボテンって何なんだ?
いや…口コミで聞いた話だと、砂漠地帯にのみ生息する棘らしいんだが…
なんだか違う気がするんだよ俺は!!

「見てみますか?ここからそこまで離れていないんですよ?」
香さんの奥さんが俺に向かってこういって来るんだが…むやみにここを離れてモンスターラグーンのメンバーたちに後で文句を言われるのだけは嫌だぜ?
で、俺は悩んだ結果、ちょっとだけ好奇心が勝ってついていくことにしたんだ。
でも、少し時間が経過したら帰るぜ!?身の危険を感じ取っても逃げ帰るけどなぁ!?

で、俺はサボテンとやらがある場所までパッと移動したんだ!!
いやぁ…便利だなパッと移動って…道中の間にイベントが何も無い場合、すぐにその場所についた気分になるのがいいぜ!!
まぁ…実際には20分間無言で歩き続けたって事実があるんだが…

で、俺が当たり一面を見てみると、そこには見たことの無い植物が植えていたんだよ!!
こ、これが…サボテンなのか!?
初めて見た植物はなんていうか…大小さまざまな大きさだったが、変な癒しを俺は感じ取ったんだ。
「…どう…ですか?」
「これ…いいなぁ…なんていうべきなのかはわからないけどさ」
俺は正直な感想を告げたわけだが…一つ欲しいな…

俺がそう思いながらのんびりと見ていたときだった…
いきなりサボテンの後ろからサボテンとハニワが合体したような生き物が現れたんだよ!!
いや…率直にわかりやすく言おう!!あれは某ゲームに登場したモンスターじゃないのか!?
あの確実に1000ダメージ与えてくる固定技を持っているモンスターだが…
い、いや…わからなければいいんだけどさ?

「リポ?」

しかも泣き声が『リポ?』だと!?
俺は余りの衝撃に突っ込みをいれるタイミングを逃してしまったんだ。
いや…突っ込みを入れることには成功しているんだが…
まぁ、言葉のあやって奴さ!!
で、ただじっとしていることしか出来ない俺の横で、そっと俺の肩を叩いてくる香さん…
な、なぜそんな余裕があるんだ!?

「あの生き物…こちらから手を出さないなら安全…」
「そ、そうなんですか?いや…あのポーズは完璧に俺にサマーソルトを食らわせる構えじゃないのかってひやひやしていたんです…」
「…大丈夫…サボテンだし…」
……俺はこの香という人物は気弱なんじゃないかと思っていたが、実は違うかも知れないな…
もしかしたら…実はかなり強いし賢い人なのかも知れない…
俺はそう心の中では判断したんだ。
なんていったらいいんだ?オーラ…?
まぁとにかく、そういったものが俺とは違っていたんだ!!うん!

そして、そのサボテンが去った後、俺は香さんからサボテンを育てる秘訣とやらを教えてもらい始めたんだ!!
みんなも…役に立つ可能性が0じゃないからしっかりと聞いておいてくれよ!

「……といっても…僕も最近…はまったからプロにはかなわないけど…水をあげすぎないように注意して…」
……植物なのに水をそこまであげてはダメなのか!?なぜ…?
そう思った俺はそのことを香に聞いてみたんだが…
「……根が…腐っちゃうんだ。でも、根を腐らせることさえ抑えられたら…ちゃんと育ってくれるよ」
そういいながらちょっと顔を綻ばせてから、香さんは俺に小サイズのサボテンを渡してきたんだが……

「これ……立派に育てて…」
「…ありがとうございます!!腐らせないように…大切に育てますよ!」
そうして、サボテンを通じてここで俺は友達を作ることに成功したのさ!!
まぁ…結婚していなかったら完璧だったんだけどね?

で、俺がそろそろ戻ろうと香さんに言ってから、戻ろうとしたときだった!!
いきなり砂漠の俺たちがいた場所に青白い紋章のような何かが現れたかと思うと、いきなり地面が物凄く振動し始め、次の瞬間…
あのリポ?って泣き声を発するモンスターの超巨大版が現れたんだよ!!
大きさ…?そうだなぁ…8階建てのマンションとおなじくらいかな?

「……!?……」
どうやら香さんもこのモンスターの出現は予想外だったようで、驚きを隠せていないようだし…俺も驚きを隠すことが出来そうにないぞ!?
くっ…くそぉっ!!微妙にだが緩キャラなので憎もうにも憎めない表情じゃないか!!
そして…驚きを隠すことすら出来ない男たちの横で、香さんの奥さん(シャーリーさんというらしい)だけがやけに落ち着いていたんだ。

「あれは……時の砂漠でもめったに出会うことが出来ないモンスターのジャボテンダーじゃないの!?」
えぇ!?あの大きさで…めったに出会うことが出来ないなんて…そんな事がありえるのか!?
俺は別のところでも驚いたのだが、香さんはこの巨大モンスターの正体がわかると急に落ち着き始めたんだが…
す、凄い適応力だな…少し怖いくらいだぜ!?

で…数分後、俺は香さんやシャーリーさんと一緒になぜか、ジャボテンダーと戦うことになってしまっていたんだよ!!
どうして戦うことになっているのか…いつそんな話があったのかも俺には分かたないんだ!!
気がついたら…右斜め下にHPとMPと行動ゲージがあって、左斜め下にたたかう、まもる、こゆうわざ、あいてむ、にげるって書かれたコマンド表があったんだよ!!
そう…全部ご丁寧にひらがなでなぁ!?

そして、ゲージが溜まり俺の行動ターンになったんだが…
や、やはり…たたかわないといけないのか?個人的には逃げたいんだけど…
戦いの後で冷ややかな目で見られるのは嫌だしなぁ…
そして俺は…久しぶりに登場した相手をロリ化させる武器でジャボテンダーを攻撃したのさ!!

そして、次の瞬間、ジャボテンダーは俺たちよりも少し小さい程度のサイズまで大きさがダウンしたんだよ!!
ま、まさか…魔物娘だけではなく、サボテンのモンスターまで小さくすることが出来るなんて…我ながら、恐ろしい武器を手に入れていると思うぜ…
で、非常にどうでもいいことなのだが…
このロリ化ブレードで切られて小さくなった(ロリ化した)って事はすなわち…あのジャボテンダーは女だったということになる!!

そして…ジャボテンダーのターンになったんだが…ジャボテンダーは俺か香かシャーリーさんの三人のうち、誰かを攻撃しなければいけないはずだ!!
だったら、俺に攻撃が来る確立は…3分の1って事になるのさ!!
そう思って香さんとシャーリーさんのほうを見たが…なんと!!
【隠れる使用中なう】とかかれたメッセージ表がさっき二人がいた場所に浮いている…だと!?
なんなんだアレは!?というか、隠れるって何なんだ!?

などと動揺していたが…まて、俺は大切なことを見逃しているぞ…
三人のうち二人が戦闘対象に選択できなくなっているという今のこの状態…
戦闘対象に選択されるの…俺じゃないかよ!!
な…なんて事だ…これは物凄く…大変な事だぞ!!

俺がそうやって焦っていると…ジャボテンダーが物凄い速度でこっちに走って来たんだよ!!
そして…
サボテン姿の彼女…と呼んでいいのかはわからないけど、とにかく俺は腰をつかまれたのさ!!
そして次の瞬間…俺は思いっきり地面に叩きつけられ、その後掴まれて叩きつけられてを繰り返したんだ…
ま、待て!!この技は…虫同士が闘うじゃんけんゲームの…
サイドロックボムじゃないのか!?
果たして…何人知っているのか…気になるところだぜ…

……そして俺の残り体力は10…かすり傷で戦闘不能になってしまうLVなのさ!
もう…逃げるしかないだろ!!
【デメトリオはにげるコマンドを使用したなう】
うおぉぉぉぉ!!逃げて…明日を見たいんだ!!
【しかし、回り込まれてしまったなう】
そんなバカな!?な、なんてスピードなんだ!?
そして……

俺はそこで力尽きたのだった…
そして気がついたら、俺は自分の宿屋内部で水着姿のセムちゃんに看病されていたのさ…
って、あれ?いつの間に俺は…?
ま、まぁいい…命が無事だっただけでも…よしとするかな…

「よかった…気がついたんですね?」
「あ…ま、まぁ…」
俺がそう答えると、セムちゃんは若干だが目に涙を浮かべてこういってきたんだ。
「デメさんは…無茶ばかりする人ですね?」
……好きでしているわけじゃ…ないんだけどな…
本音、どうして主人公として旅をしているのかもわからないというのに…
なんて内心では思いながらも、俺はセムちゃんをまっすぐ見ることは出来なかったけどな?
だって…水着だったし…俺のようなゴミ屑野郎が拝む資格は無いって奴だぜ!
セムちゃんは良家の四女…いずれはいい人と結婚するんだろうし、俺はその時に結婚式の隅の方で嫉妬心に打ち震えながらもお祝いできればそれでいいって思うしな?

そしてしばらくの時間が経過して…俺たちはこのステンバイと呼ばれている場所を後にして、第二テント地域に移動し始めたのさ!!
そして、第二テント地域に移動しているときの俺の暇なこと暇なこと…
余りに暇だったから、頭の中で変な妄想まで考えてしまう始末だ…
え?変な妄想とは何かって…?ふっ…妄想の世界だけでは…人は幸せになりたいものだとだけ言っておこうかな?

そうして、無言ながらも確実に第二テント地域に近づいている俺たち一行…
ここで、不意に…本当に不意になんだが、ルタが変な箱を持ち出してきたんだよ!!
な、何なんだあの箱は!?

「…ルタ、その箱は一体何なの?」
「これはあたいの宝物が入った箱なんだーー!!」
ルタの宝…だと?またどうせつまらないものなんだろ?
心ではそう思う所もあった…でも、気になってしまうのは人の性って奴だろ!?
そう心でつぶやいて俺はそっとルタに近づいてみたんだが…

ルタの宝箱の中には、一人の俺と同じような冴えない青年の写真が沢山入っていたんだが…
誰だこいつは!?
「……この男性は誰なの?なんだか、デメトリオと同じようなオーラが出ているけど…」
「あ、リーダー、あたいもそれは思うぜ?なんていうか…いじめてくださいオーラだろ?」
す、スカニ…何なんだそのオーラは!?
というか…俺はそんなオーラを出していたというのか!?
だから…ここまで魔物娘たちに苛められている…そういうことなのか!?
つまり…今の俺に対する処遇は…俺のためだというのかーー!?
モンスターラグーンのメンバーたちは俺のことが嫌いなわけではなく…俺の為にあえて俺を苛めているのか!?
なんて心で思いながら、俺はまだ話を聞いていたんだが…
そんな勘違いはしなくても結構ですよ!?

「デメトリオなんかとは違うよ〜!!これはあたいが森の中で家族と一緒に暮らしていたときに、私を助けてくれた王子様なの!!」
……デメトリオなんかって言葉はなんか引っかかりを感じたが…ルタにも魔物娘らしいところあるんだなぁ…
などと以外に思ってしまう俺…
まぁ…俺のような存在でも好きだっていってくれる奴が来るまで…気長に待つとするさ!

そう思った瞬間…俺はどうでもいいことなんだが、昔の…少年時代のことを思い出したんだ。
ちょうど6歳の頃で…あの時は生意気なガキだったよなぁ…
フェルス興国に来る前で、友達どうしで秘密基地を作って…
今となっては懐かしい思い出だぜ…
あの時は…俺が引っ越す前日にあんな出来事が起こるなんて思わなかったけど…まぁ、くだらない話だから気にしないでくれって!!

あの時と今とでは……心境も違うしな?
なんて思いながら俺はルタの近くから離れたわけだ…
そうだよ!!昔も楽しかったけど…今、モンスターラグーンのみんなと一緒に旅が出来ているというこの事実だって…十分に楽しいじゃないか!!
まぁ…いろいろトラブルには巻き込まれているわけだが…

そして、第二テント地域が見え、ちょうど日も暮れてきたので俺たちは第二テント地域で俺の宿屋を展開し、眠ることにしたのさ!!
さて…この第二テント地域では…どんなイベントが起こるんだろうな…
なんて思ったら…体の震えが止まらなくなったんだけどな?
12/05/18 06:23更新 / デメトリオン
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■作者メッセージ
どうも!!

砂漠編に若干疾走感がありますが…
ようやく砂漠編も後半です!!

若干、砂漠編では主人公の過去に関する話題が出たりしますが…
華麗に流してやってください!!
ありがとうございましたーー!!

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