読切小説
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誰かの為に
―討伐クエスト―
達成難度B

ギストゥヴァル自警団より

依頼内容
・ミノタウロス一頭の討伐
南側の街道で最近ミノタウロスによる略奪行為が目立ってきている。
このミノタウロスの捕縛、撃退または殺害を依頼する。

契約金
・銀貨5枚

報奨金
・金貨2枚




「これを受けるぞ、ラン。」

日も落ち夜になり、酒場が活気づく頃、ウェイトレスのワーキャット達が忙しそうにあっちこっち飛び回っている中、
リザードマンの女性、アリムはパートナーにそう言った。
パートナーの男、ワイシャツに袴という奇妙な出で立ちのランと名乗る男性は、

「…お前これ正義感から受けるんじゃないよな?」
「…。」
「ちゃんとお金の為に受けるんだよな?」
「…。」
「人助けしようとかそういうボランティア精神で受けるんじゃないよな?」
「…。」
「なんとか言えよ!」
「ひ、人助けしたっていいではないか!」
「もうすぐ路銀も尽きるというのに人助けなんてしてる場合か!?」
「人助けもできてお金も手に入るし一石二鳥ではないか!」
「なんでそういうとこで無駄な正義感発揮するんだよ!?」
「!?無駄だと!?無駄と言ったのか!?」
「自分のこともままならないのに他人の事考えてる暇なんてないだろ!冷静に考えてみろ!」
「…お前がそんな冷たい奴だなんて思わなかった!」
「…なんだと…。」
「もういい!私一人でこの依頼を受ける!」
「おい!待て!」

仲の良いやりとりをするとアリムはさっさと酒場を後にしてしまった。
取り残されたランは、

「…全く!」

怒り心頭に発した様子で彼女の後を追うように酒場を後にした。
酔っ払いが跋扈する喧噪渦巻く荒くれ共の聖域で、
そんな二人を気に掛けるような者は一人もいなかった。




街の南門から続く街道にて、
一人のリザードマンが体育座りで獲物を待ち構えていた。
そこへ、

「こんなとこにいると風邪引きますよお嬢さん。」

ばさっと後ろから何かを頭にかけられる。

「何しに来た。」

鬱陶しい、と言わんばかりの不機嫌な声、めんどくさそうに掛けられたマントを手で払いのける。

「一人で暴走して勝手に突っ走るから尻ぬぐいをしに来たんだよ。」

その横に少し距離をおいて座る。

「お前なんかに助けられねばならんほど落ちぶれてはいない。」

ふてくされてそっぽを向く。

「そう言うな。今日は野宿なんだから。」
「!?」
「宿なんて取ってねーよ。」
「何故だ?」
「別件の依頼の契約金を払ったら宿代無くなっちまった。」
「別件?」
「これ。」

依頼書とランタンを手渡す。



―護衛クエスト―

達成難度C

商人キャラバン〈ヘルメス〉より

依頼内容
・南街道を通過し、関所までの護衛
南街道を通過するが、最近物騒な噂が絶えないので、腕の立つ者に護衛して欲しい。
護衛は国家共同関所まで、商品や人員に被害が及ぶ場合、報奨金から補償費を天引きさせてもらう。

契約金
・銀貨2枚

報奨金
・金貨1枚



「こんなもの…何故受けたんだ!」
「怒るなよ。もう喧嘩はごめんだ。」
「これを受けなければお前は宿に泊まれただろう!?」
「略奪行為ってのは、こういう金持ちを狙ってやるもんだろう?」
「!」
「この依頼を受ければ、そのミノタウロスも効率的に釣れるってだけさ。」
「…すまんな…私のために。」
「気にするな。」
「…なあ…そっちに行ってもいいか?」
「…。」

すすすっと近寄る。
掛けられたマントを二人で一緒に羽織る。
するとアリムがぎゅっとランに抱きついた。

「…あったかい…。」
「…。」

無言でぎゅっと抱き返す。

「…そのミノタウロスの依頼…少し気になることがある。」
「何だ?」
「お前ら魔物にとって金とはどういう意味を持つか。」
「む。難しい話は嫌いだ。」

意味深長な問いかけに機嫌を損ね、そっぽを向かれる。
困ったように苦笑して、

「そのミノタウロスに金が必要かって話さ。」
「んー。要るんじゃないのか?」
「何故?」
「食べ物とか、宿とか…。」
「そいつは旅をしてるのか?」
「むむ…。」
「この辺を縄張りにしてるなら金の使い道がないだろう?」

草木も野生生物も豊富にいるこの地域では、娯楽品を必要としない種族にとって金などただの金属の塊でしかないのだ。

「たしかに…。」
「なのに金品を略奪するってことは、その金の使い道があるからだ。」
「…。」
「そもそもミノタウロスは食う寝るセックス以外に興味がない種族だ。ま、変わり者がいてもおかしくはないけどな。」
「そうだな。」
「なら商人を襲って金を集めているのは不自然じゃないか?」
「むむむむむ…。」
「あはは…まぁ当人から聞き出せばいいか。」
「聞き出す?襲ってくるかもしれないのにか?」
「動けなくすりゃ話ぐらいはできるさ。」
「むむ…。」
「反対しそうだな。」
「お前が怪我するくらいなら…そんな危険なことはやめて欲しい…。」
「…ありがとう。」

ちゅ

と唇を軽く触れあわせる。

「ん…ずるい…。」
「寝るぞ。明日は早いからな。」

ランはさっさと寝る準備に移る。
今日は寒いから二人で抱き合って寝ようと提案するアリムだった。



―南門前―
「いやぁ引き受けてくれる人がいて助かったよ。」
「関所までの護衛を務めさせていただくランです。こちらは妻のアリムです。」
「よろしくお願いします。」

二人が自己紹介をしているのは商隊キャラバン〈ヘルメス〉の隊長、ショーンである。高級服に身を包んだ人の好さそうな小太りのおっさんで、そこそこ名の知れた商人であるらしい。キャラバンのメンバーは4人、商人が3人で御者が一人。
所有している馬車が2台、馬が4頭であり、馬車は人がメンバーが乗る馬車と積み荷用に分けてある。

「いやぁこちらこそよろしく。実は誰も引き受けてくれなくて困ってたんだ。このまま誰も引き受けてくれなかったら。危険を承知で護衛無しで行こうと思ってたくらいだ。」
「この街道は最近ミノタウロスが山賊まがいの行為を働いていると聞きます。ほぼ確実にぶつかるでしょうから、成功率が格段に低くなると判断して依頼を避けていたんでしょうね。」
「いやぁそんな中依頼を受けてくれた君たちに感謝だよ。さ、出発しよう。」

〈ヘルメス〉のメンバーと合流したランたちは、挨拶もそこそこに出発することにした。

「キャラバンというとだいたい専属の護衛を雇っていると思うのですが…。」
「いやぁそれがミノタウロスになんて勝てるわけがないってみんなやめてしまってね。」
「なんて卑劣な奴らだ!戦士としての誇りはないのか!」
「落ち着け。」

そんなやりとりをしながら街道を進む。

ギストゥヴァル南門から関所までの距離は道なりに12km。
街道は左右山に囲まれていて、逃げ場、遮蔽物が少なく、山賊からしてみれば絶好の狩り場である。
もちろん南門―関所間を巡回している警備兵もいるが、人数が足りていないのが現状。
山賊に襲われた場合、自前の護衛でなんとかする、たまたま警備兵が通りかかるのを祈る、それぐらいしかない。
事実、ミノタウロスまで出てきて、警備兵だけでは如何ともしがたい状況になり、街道の人通りは激減している。
逆説的にいえば、この人が少ない時期に最短距離で南の国に行ければビジネスチャンスが増える、と考えミノタウロスとの遭遇に甘い考えだったと教えられる人物も少なくない。
それでも挑戦者が絶たないことを考えると、やはり競争相手がいないというのは商人からしてみれば相当魅力的な条件なのだろう。

おそらく街道を半分ほど進んだ時、

「止まれ!」

街道を通せんぼするように、一人のミノタウロスが立ちふさがった。
蹄のある牛のような下半身、ミノタウロス種特有の巨大な胸。
そして全身に漲る筋肉と背丈ほどもある大斧を軽々と担ぐ怪力。
まさしく山賊と言っていいミノタウロスであった。

「積み荷を全部置いてけ!そしたらお前らを見逃してやる。」

覚悟していたがやはり出てきてしまったか、と焦りの表情を浮かべるショーン。
対してランはまさか一発目で当たるとはな…と別の意味で驚いていた。
もともとランにしてみれば、このキャラバンの護衛クエスト自体がミノタウロスと出会う可能性を高める為のエサであるため、キャラバンの護衛は失敗することを前提としている。
嫁にばれたらきっと怒られるだろうな。と思い、一応キャラバン護衛の任務を果たすことにする。

「ショーンさん。手筈通りに…。」
「わ、分かった。」

すとっとランが馬車を降りる。
そのままミノタウロスへ向かって一気に駆け抜けそして、

シュッ

居合いの要領で腰の鞘からすばやく刀を振り抜く!
金属が擦れ合い甲高い摩擦音が響くと、

ギィン!

と金属通しがぶつかり合い刀と斧が交差する。

その瞬間、
馬車が急発進し二人の脇を通過した。

「!?逃がすかよ!」

ブンッ!
と大斧を一振りし、ランを振り払うと、獣人型の強靱な脚力で一気に馬車に詰め寄るミノタウロス。

そこへ、

ビュンッ!
とアリムが飛び掛かる。

「!?」

想定外の奇襲にミノタウロスの体が一瞬止まり、
ギィンッ!
と大剣と大斧が交差する。
その間に馬車は遠くに駆け抜けて行った。

「…。」
「…。」
「…。」

初対面なのでお互い話すこともなく沈黙する。

「お前ら…あたいがあいつらを襲う事を知ってたな。」
「護衛とはいついかなる状況にも対応できなきゃ務まらないぜ。」
「だとしたら護衛失格だ。この後あのキャラバンが襲われたらお前らの責任だぜ。」
「ミノタウロスは短慮だと聞いていたが…そんなことはないようだな。」
「…。」
「いいぜ。教えてやる。この先あのキャラバンが襲われることはない。何故ならこの街道に山賊は既にお前一人だからだ。」
「…そんな証拠どこにある?」
「まず一つがこの街道の盗賊被害報告は全てお前であること。そして山賊はリアリストであるということ。利益を全てお前が牛耳ってしまえば、食い扶持がなくなった山賊は狩り場を変える。必然的にお前以外の山賊が居なくなるってことだ。納得してくれたか?」
「…。」
「納得してくれたみたいだなじゃあ」
「ムカツクぜ。」

ギャリンッ!
とアリムを吹き飛ばすそして、

「あたいの邪魔をするなあああああああ!!」

ダンッ!
地面を思い切り蹴りつけ、ランに向かって突進する。
そして

「ランッ!!」

―ぐるん―

世界が反転した。

「なっ!?」
「動くな。」

そのまま俯せに押さえつけられ、手のひらをランの胸に押しつけられ、手首、肘、肩の関節を極められ拘束される。

「動けば腕を破壊する。」

一度アリムを拘束したときに使用した技、アリムは一切動けなくなったので、

(よかった…!これで…。)

と安心したのも束の間、

「あたいを…。」

左腕に力を込める。

「なめんじゃ…。」

下半身に力を込める。

「ねえええええええええええええええ!!!」

そのまま筋力による剛力で立ち上がり、

(なっマジかよ!?)

「ふんっ!!!」

右腕を思いっきり振り下ろす!

(やべぇ…死ぬ…!)

「らあああああああああああああん!!!!」

死に直面する。
初めて。
ジパングでの厳しい稽古で身につけた技術が初めて破れる。
そして、

(ユウ兄だったら…こういう時どうすんのかな…)

最期に技を叩き込んでくれた師を思い出す。



―ジパング―
二人の少年が向かい合う、片方は10歳前後、もう片方は15歳前後であろうか。
おたがいに両手のひらを開き、前に構えている。
そして、

『ふっ!』

短い呼吸とともに一歩で間合いに侵入しそのまま垂直に手刀を叩き込む。
腕を上げて手刀を受け止めるが、

ガンッ!

とガード諸共吹き飛ばされ、地面に尻餅をついてしまった。

『いってぇ〜。』
『だから避けろと言っているだろう。』
『でもそんなすぐによけられないよ〜。』
『はぁ…。いいか、藍。相手の力が明らかに自分の力より強いとき、力で対抗して押さえ込もうとしてはダメだ。』
『むぅ。そんなこといったって…。』
『相手の力を利用しろ。相手の速さを利用しろ。相手の体格を利用しろ。全ての相手の力は己の力になり得る。』
『ん〜。じゃあどうしろってゆーのさ!』
『そうだな…。こういうのはどうだ?』






すっと関節を解き、そのまま腕を胸に抱き込むようにしてくっつけ、そのまま自由落下に身を任せる。すると、

「なっうわあああああああ!?」

ミノタウロスは体勢を崩し、そのまま地面に倒れ込み、顎を強打した。
打ち所が悪かったのか脳をシェイクされたミノタウロスは、そのまま気絶してしまった。

「はぁ…はぁ…死ぬかと思ったー。」

どさっと地面に倒れ込むラン。

「ランッ!」

すぐさまランに駆け寄るアリム。
彼の全身をぺたぺたと触り、怪我の有無を確認する。

「大丈夫?どこか怪我してない?」
「心配すんなって、大丈夫だよ。」
「ホント?どこか痛いところない?」
「ああ、ないよ。それより、こいつを動けないようにしなきゃな。ロープ。」
「あっうん。」

自分達の荷物はランが馬車を降りる時に投げ捨てて貰ったため、街道に落ちている。
荷物からロープを取り出し、ミノタウロスをぐるぐる巻きにしてそこら辺に置く。

「ふぅ、これで一安心。」
「ラン!一応、傷薬と包帯。怪我無いか見るから、服脱いで。」
「ん〜、大丈夫だとは思うけど…。」

素直に服を脱ぐ。
アリムは怪我にうるさい。
隠そうものなら激怒するため、こういうときは素直に従った方が良いのだ。

「あ、膝擦り剥いてる。」
「あ、ホントだ。」
「もう!無茶して!」
「ごめんごめん。」

最後に着地したときに恐らく両膝を擦り剥いたのであろう。
血まみれで酷い有様である。
水で濡らした清潔な布で血を拭き取り、傷薬を吹きかけ、包帯を巻く。
アリムが「まったくいつもいつもこんな無茶して、死んじゃったらどうするの。人間は魔物と違って脆いんだから気をつけてよ。」などとぐちぐちと説教をしながら丁寧に治療する。
普段のクールなアリムはどこに行ったのやら。
かわいい。




「んっ…ぅ…。」

しばらくして、ようやくミノタウロスが目を覚ます。

「おはよう。」
「!?おまえら!あたいをどうしようってんだ!!」
「別にどうもしないさ。とりあえず、どうして山賊まがいの事をしたのか、それを聞きたいだけだよ。」
「私も気になるな。食う寝るセックス以外に興味のない貴様が、どうして金品収集などに走ったのか。」
(それ俺の言った台詞じゃん…。)
「…。」
「事実ミノタウロスの討伐なんて中々クエストに上がってこないぜ。ミノタウロスに襲われるなんてたまたまミノタウロスが起きてたときに遭遇する以外にありえないからな。」
「…あたいの旦那が…病気なんだ…。」
「病気?どんな?」
「わからない、体が動かなくなって、苦しそうで、あたいが呼んでも答えてくれなくて…。」
「医者には診せたのか?」

ふるふると首を横に振る。

「たびのしょーにんって奴が、薬をやるから金を揃えろって…。」
(あからさまに怪しいなそいつ…。)
「…いくら揃えろって言われたんだ?」
「…きんかごひゃくまい。」
「「金貨500枚!?」」
「!?」
「…お前この辺に住み始めたの最近か?」
「うっうん…。」
「じゃあ旦那と一緒に越して来たのか?」
「街が近くにあると便利だからって…。」
「うーん…。何から説明したものか…。」

野生のミノタウロスらしく社会常識というものが欠けているらしい。
商人と医者の違いが分からないのはやはり街の近くに住むには不便であろう。
とりあえず二人はそのミノタウロスの巣へ行くことにした。




ぐるぐる巻きのミノタウロスを連れてショーン一行へ追いついた三人は、まずミノタウロス―名前をミルと言った―にごめんなさいをさせてショーンから報奨金を貰った。
そして、そのまま引き返し山の洞窟にあるというミルの巣へたどり着いた。

「まずは医者に診せることだな。」
「そうだね。とりあえず街へ行こうか。」

アリムの提案に賛同し、ミルの旦那―名をコールという少年―を医者に診せる
ためランはコールを、魔物二人は金や宝石を詰めた袋を持ってギストゥヴァルに帰還した。
ギストゥヴァル自警団に詳細を説明し、奪われた金品を預け、ミルにごめんなさいをさせた後、急いで医者の所へ行き、

「どんな病気ですか?」
「う〜む、見たこと無い症状ですなぁ。」
「というと?」
「今の医術では治せない可能性が高いですなぁ。」
「どうしたら良い?」
「医術でできないことは魔術に任せるのが一番ですなぁ。サバトに紹介状を書きますからそこに行くとよろしいと思いますなぁ。」
「分かりました。ありがとうございます。」

ミルは終始おろおろしていた。
アリムとランは、サバトってこの時間やってるのか?年中無休でヤってるんじゃないの?とかいう話をしてサバトに向かうことにした。
辺りはすでに暗く、「アオーーーーーン!」と遠くでワーウルフの遠吠えがしていた。
ランは「お前の旦那なんだからお前が持て。」とミルにカールを押しつけた。
サバトの教会にたどり着き、こんこんとドアをノックすると、

「はぁい。新しいお兄ちゃんですかぁ?」
「違います。」
「お兄ちゃんはどのようなご用件で来たんですかぁ?」
「こいつの紹介だ。」

べたべたとランにお兄ちゃんお兄ちゃんと甘える魔女を見てアリムは不機嫌そうに紹介状を見せた。

「あ、はぁい。バフォ様の所へご案内しますねぇ。」

あの医者結構ここ通ってんな。とどうでもいい感想をランは抱いた。
そのままサバト教会の真ん中奥の一番大きい扉で魔女はこんこんとノックをして、「失礼します。」と部屋の中に入った。三人はそれに続き、部屋の中に入ると、巨大な机から頭だけをひょっこり出したバフォメットがいた。
三人は(もっと自分に適した机使えばいいのに。)と素直に思ったけど言わないでおいた。

「新しいお兄ちゃんがバフォ様におねだりしに来ましたよー♪」
「違います。」
「ほう。して、お兄ちゃんはなんの用じゃ?」
「実は…。」

コールをワーシープの羊毛でできたベッドに乗せる。
コールの症状をかくかくしかじかと話し、どうしたら治るのかと聞いた。
すると、

「ふーむ。妻の魔力に対する拒絶症状じゃな。」
「魔力に対する拒絶?」

そういうのもあるのか。

「魔物の魔力は夫の体を妻の好みに無理矢理作り替えるからの。稀にじゃが人間の方の体が抵抗するときがあるんじゃ。お主ら結婚してまだ日も浅いようだしの。」
「つまり相性が悪いと。」
「そういうことじゃな。お兄ちゃんとそこのリザードマンの小娘の相性は良いようじゃの。半分インキュバスになりかけておる。しかしサバトに入信すればもっとよくなるぞ。」
「後で資料下さい。それよりどうしたら治るんですか?」
「簡単じゃよ。無理矢理インキュバスにしてしまえばいいんじゃ。」
「つまり?」
「一日中セックスしまくればいいんじゃ。」

え?そんなんで良くなるの?と三人は思った。
しかし、とりあえず解決法は見つかったので三人はサバトを後にすることにした。
アリムはバフォメットがランをお兄ちゃんと呼ぶ度に不機嫌になった。
バフォメットはランにしきりに入信を勧めた。
ランはサバトの資料を貰い、後で捨てることにした。
ミルはバフォメットから「寂しくなったら使うといい。」と言われ、怪しい薬をもらった。


「と、いうわけで!」
「解決法は見つかったな。」
「ホントにそんな方法であたいの旦那は良くなるんだろうな?」
「なるんじゃないの?バフォ様がそう言ってたし。」
「…あのしつこい勧誘はともかく!バフォメットは魔術に関してはエキスパート中のエキスパートだからな。」
「なんでそんな不機嫌なの?」
「…。」
「けどあのたびのしょーにんが言ってたことは?」
「嘘だと思うよ。質悪い奴に捕まっちゃったんだね。」
「くっそ〜!今からでもあの野郎見つけてギッタギタに」
「その前にコールを治すのが先だからね!」
「…分かってるさ。」
「ともかく!解決して良かったじゃないか。」
「そうだな。お前らには感謝してる。」
「別に、俺たち金の為にやったことだし。」
「それでもあたいじゃこいつは救えなかったよ。ありがとう。」
「んじゃ、コールに命の恩人がいるとでも伝えてくれ。」
「お大事にな。」
「ああ、本当にありがとう!」

こうしてミノタウロスの略奪騒ぎは幕を閉じた。



「コール…辛いか?」

返事は無い。

「今楽にしてやるからな。」

そういうと服を脱がし、その小さなペニスを口に含む。

(まずは勃たせないと…。)

コールの為に一生懸命逸物を舐めしゃぶる。
唇で皮を少し剥いた後、カリの周りで舌をぬろぉ…と一周させ、そのまま根元まで口に咥え込む。
じゅるじゅると口内で舌で愛撫を続けると、小さなペニスがだんだんと勃起してきた。

(ん…このまま…。)

半勃起したペニスを解放し、胸の間に置き、そのまま乳肉で挟むように拘束する。
ぱちゅんぱちゅんと上下に揺さぶったりぐにぐにと左右にこねくり回したり、

「気持ちいいか?コール。」

懸命に逸物を弄び、やがて少年のペニスが完全に勃起すると、

「入れるぞ…。」

そのまま膣奥まで飲み込んだ。
腰を上下に振る。
ぱんぱんと肉がぶつかる音が響き、やがて少年が射精する。

返事は無い。

ただの肉体の反応。
今二人の間には愛も情も無い。
ただ機械的に性行為という作業をこなしているだけ。

「…なんでだよぉ…。」

涙が溢れてくる。
寂しさと虚しさが心を満たす。
自分ではどうにもできない無力感がこみ上げ、流れ出す涙を止められない。

『寂しくなったら使うといい。』

ふとバフォメットの言葉を思い出す。
ガラス製の小瓶に入ってる青い液体。
色も作った人物も怪しいので、できれば飲みたくないと思っていた。
しかし、

「これ…何の薬なんだ…?」

効果の説明もされず、ただ寂しかったら使えと雑な処方でもらった薬。
それを一気に飲み干す。

「んん。変な味…。」

特に体に変化は無い。
寂しさが紛れた分けでもない。
何の効果も無いじゃないか。
そんな苛立ちさえ感じるほどに何も起きない。
イライラを小瓶にぶつける。
壁に勢いよく叩き付けられた小瓶は粉々になってしまった。
物にあたって気を取り直したミルは、行為を続けようと腰を上げる。

「え…?」

コールが膣壁をずりずりと擦りながら出て行く感触に、

「んんんんんんんんんん!!」

絶頂感がこみ上げてイッてしまった。
唐突に虚脱感に包まれる。
全身から力が抜けて、そのまま倒れ込む。
するとペニスがまた膣奥までぞりぞりと壁を擦りながら侵入し、

「んひいいいぃぃぃぃぃ!!」

また絶頂する。
おかしい。
体がおかしい。
こんなにすぐイク体質じゃ無い。
それに体力自慢のミノタウロスが一回の絶頂で動けなくなるほどの疲労を感じることはありえない。

「はぁ…はぁ…。」

荒く息を吐き、呼吸を整えようとする。

「あの…薬だぁ…。」

バフォメットがよこした変な薬。
今の二回の絶頂で効果が分かった。
おそらく服用した者の体をイキやすい体に変化させる。
そして、絶頂した瞬間に、大量の魔力を発散させる。
きっとこの二つ。

「あいつ…変なもん…よこし…やがって…。」

このまま魔力を放出し続ければ、きっとコールを侵食した魔力が体を変化させる。
あとは腰を振るだけ。

「ん…。」

腰を持ち上げる。

「あっはあああああぁあああ!」

絶頂。
放出。

「いひいいいぃぃぃい!」

脱力。
絶頂。
放出。

このサイクルが繰り返される。
5分ほど経過した頃、

「ん…うぅ…。」

コールに変化が起きる。

「はぁ…はぁ…。コール…あたいが…分かるか…?」

ミルの呼びかけに、

「ミル…さん…?」

意識を取り戻した。

「コール…。」
「どう…したん…ですか?」
「コール…苦しく…ないか…。」
「体…動かないです…。」
「そうか…今…動いてやるからな…。」

ゆっくりと腰を持ち上げ、

「んひいいいいいいいい!」

一気に腰を落とす。
膣がぎゅ〜っと締まり、コールを抱きしめる。

「ふああああああああ…。」

天国にも昇るような心地で射精する。
どくどくと精液が子宮口に叩き付けられると、

「んっはああああああああああ♥」

ミルもまた絶頂する。

「ミルさん…!僕…変です…!」
「あたいも♥変だよぉ♥イキっぱなしになってるのぉ♥」
「あっ僕…また…あひいいいいい!」
「んあああああああああ♥」

久々の旦那の声に反応したのか、ミルの体がびくびくと震え、絶頂が止まらない。
イクたびにミルの秘所はコールの分身を抱きしめ、『愛してる。もうでてっちゃヤダ。』と快楽を塗り込んで、射精を促す。

「だめ♥ダメ♥おまんこ喜んでるの♥頭おかしくなる♥」
「ミルさん!」

コールがミルの豊満な胸に顔を埋めミルを力いっぱい抱きしめる。

「え…だめええええええええええ♥」

すると、
ミルの乳首から白い液体が噴き出してきた。
びちゃびちゃとコールの頭部を濡らし、甘い匂いを充満させる。

「ミルさん…おっぱい…。」
「だめだよ…♥のんじゃダメ…♥」

期待いっぱいに拒絶する。
飲んで欲しい。でも今乳首を吸われたらどうなるか分からない。
期待と不安が渦巻く。
そして、

「はぷ。」

コールが乳首を口に含み、

じゅるるるるるる!

思いっきり吸い込んだ。

「ああぁぁあああぁぁぁん♥」
「んーっ!んむーーー!」
「こーるのせいだからな♥ダメっていったのに♥もうとまれないからな♥」

ズパンッズパンッと勢いよく腰を叩き付ける。
体がもう止まらない。
無意識のうちに動いてしまっている。
コールの頭を抱きこみ、がっちりとホールドして母乳地獄から逃げられないように拘束する。

「もっと♥もっとのんで♥」
「んむむむぅ!んむうぅぅ!」

じゅるじゅる…ちゅううううう…ごくごく。

「せいえき♥いっぱいちょうだい♥」
「むむぅ!んんん!」

びゅるるるる…どくん…どくん。

薬のせいで止まらなくなった二人の情事は日が昇るまで止まらなかった。



「はぁーっ…はぁーっ…。」

ミルが苦しそうに息を吐く。

「ん…ぷぁ…はぁ…はぁ…。」

コールもようやく乳首から口を離す事を許され、肺いっぱいに空気を補給する。

「コール…よかった…!」

夫との久々の再会に愛おしそうにコールを抱きしめ、目一杯愛でる。

「ミルさん…どうしたんですか…。」
「そうだな…ここ1ヶ月の話をしてやらないとな。」

二人は抱き合いながら、お互いに愛しあい、また日が落ちて性欲が起き上がってくるまでずっとその体勢から動かずにいた。



13/02/21 13:33更新 / はっきんだま

■作者メッセージ
ミノタウロスがゲシュタルト崩壊する。

はっきんだまです。4作目です。

前作の感想でリクエストをいただいた娘達を無理矢理ちょい役でツッコミました。いつかちゃんと主人公として書きたいです。

ぶっちゃけサバトの下りは「山羊」って言われた瞬間に思いついた思いつきなので、理論が崩壊してるかもです。
リクエスト下さった方はありがとうございます。

ラン君は冷たい人間…というより自分の目的の為なら平気で他人を切り捨てられる人間ですね。サバトにも興味ありません。
金玉はサバトにすごく興味あります。

作中の「お金」という概念について少し説明が要ると思うので解説を、
僕がモデルにしたのは中世イタリアで使用されていた「フローリン金貨」です。当時の貨幣価値を現在の労働価値に変換して銀貨1枚あたり5000円、金貨1枚あたり10万円と考えていただければ分かりやすいかなと思います。
契約金はクエスト受注者が依頼者に払い、報奨金はクエスト依頼者が受注者に払うシステムになってます。
簡単に言うとモ○ハンと一緒です。

次作はいよいよドラゴンさん登場か!?はたまたアラクネさんのリベンジに出番を取られるのか!?

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