Main Title:Human END SkullHearts

 どうしようかな。
 どうしようもないよね、どうしようもないんだ、仕方ないことなんだ、私は 悪くないんだ、私が悪いわけじゃない。
 コレは必要なこと、私は、もう、やめたんだ、夢を見るのも、まっすぐ走り続けるのも。
 そうだ、私は……。

……これは……     ……か。
やはり、止めることは出来たなかったわけか、残念だ。
だけど、墓は作ってやらないよ、君は、教会の名を、信用を、落としたんだ。
つまり、教会に対する反逆だね、だからこそ君はここで死ぬべきだったんだ、当然の結果だよ、これは。
神に背くなら、だれだって死んでもらうさ、魔物も、人間も、関係なくね。

 ……。
 ………。
 …………。
「……なにかある……。」

 水面から顔をひょっこりのぞかせた少女、黒く長い髪は水に濡れ、少しまぶたが落ちて常に半眼、だが陰鬱な雰囲気はなく、むしろ陰鬱さすら逃げ出しそうなほどの冷静さを感じさせる。
 体格はまさに少女と呼ぶにふさわしい幼い体つきでありながら、手足は思わず見とれてしまいそうなほどに白くきめ細かい肌。
 だが、少女には人間ではない、明らかに異形と呼ばれる、ひと目で判断できるような部位がある。
 白く伸びる手足には、ヒレが、濡れた髪が垂れる頭にも、ヒレが。
 そう、サハギン、魚人サハギン、川辺のハンターとも称される彼女達は、無感情、表情に現れることは殆ど無い、だが素直で、表情の代わりに行動で表される。

 そうだ、ゆっくりゆっくり、バラバラにならないように運ぶんだよ、落としたりしたら大変だからね。
 運び終わったら今度はパズルだ、間違えないようにね。
 そういう風にみんなで真っ白なパズルを組み立てていく、真っ白と言ってもホワイトパズルみたいなものじゃなくて、人骨。
 白骨、骨、ほね、Bone。
 前に釣り師が言っていた、人の骨を魔力の濃いところに持って行くと魔物になるよ、と ならば実践するしか無い、私はサハギンの中でも特に探究心が強い、と、自負している、周りにはよく怒られるけど、気になるものができると夜もまともに眠れなくなるのだ、私は。
 さぁ、あとは待つだけだ、魔力が流れこむのはそう遅い時間ではないはず、3日、遅くとも一週間、それだけあればきっと魔物になる、立派なスケルトンが出来上がるはずなのだ。

いちにち目
  まだスケルトンはいなかった、1にち目だし、しかたない。

ふつかめ
  なんだか、ほねが、うごいていた、少しちいさくなったようなかんじ。

みっかめ
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よっか目
  ほねが、きえた、ふうかしたんだってみんな言うけど、たったみっかでふうかするなっておかしい、きっとスケルトンになってどこかにいっちゃったんだ。
  そんなに遠くにはいけないはずだからきっともどってくる。


 彼女の予想は当たっていた、逃げ出した彼、いや、少女は困惑していた、なぜ、それは自らの身体が崩れていくからだ。
 まるで糸のほつれた人形のように、自分の体の中からワタが抜けていくように、身体がどんどん崩れ落ちていく、彼女は歯を食いしばって自分の体をしっかりと抱く、そうしないと、自分の心まで崩れてしまいそうだから。
 彼女は気付かない。なぜ身体が崩れるのか、それどころか、なぜ歩いているのかすら分からない、死んだはずなんだ、自分は、それがどうして歩いているんだ、生きているんだ、そして、過剰な疑問は少しの、とても小さな恐怖を生み出す、その小さな火種は、あっという間に丕きくなって。
 変わったばかりの小さな心は、揺さぶられ、捻じ曲げられ、悲鳴を上げる。
 多すぎる情報に、恐ろしすぎる自らの身体、そして、身体にも。
 涙がこぼれ、歯は震えて音を立て、喉からは細く声が漏れ、泣き出してしまう。
 そこに声をかける人物一人、少女、異形、魚人。
 サハギンの少女がここまで探してきたのだ、心配、ではない。
 自分が正しいとみんなに証明するためだ、あくまで証拠品なのだ、このスケルトンの少女は。

「何を泣いているの。」

 少女は驚愕し、絶望した。
 ここでまた死ぬ、サハギンは水辺のハンターと言われていると耳にしたことがある、ならば、ここまで来たのは、自分が目をつけられたからだ、おそらく、自分を狩って食らうために。
 とうとう腰が抜けて立てなくなった、もう随分座り込んでいたが、とうとう腰の筋肉が緩みきって、足に力を入れても立てなくなってしまった。

きっと完全に死を覚悟して、受け入れてしまったのだろう、乾いた笑いが出てくる、感情のこもっていない、ただ、笑う、涙を流したままに、笑う。

笑う、笑う、笑う、笑う笑う、笑う、嗤う、嘲笑われる、哂われている、誰に?誰かに、微笑われて、笑われて、微笑われて、泣きだした。

 ……目の前の少女は本当に謎だ、泣いていると思ったら、笑い出して、狂ったように笑い出したら、今度は涙を流して笑う、そしたら次は大声を上げて子供のように泣き出す。
 本当に謎だ、謎、とりあえず、抱きしめて、撫でて、落ち着かせる、出来る限り、優しく、語りかける、つもり、たぶん、優しい言葉、だった、はずだと、思う、きっと、願わくば、そうであってほしい。

「……大丈夫。」

 優しく抱きしめながら私を撫でてくれる、平坦な声で慰めてくれる。
 私の心は冷えきって地のそこについていたはずなのに。
 だけど。その一言だけで一気に暖かさを取り戻した。
 とてもやさしい言葉で、気がつけば私は彼女に抱きついて、お腹に顔を押し付けるようにして泣いていた、周りの目も気にせず、声を上げて泣いた、ありえないほどに、自分がまだ生きていた時すら、小さい時に大やけどした時よりも大きい声で、強く抱きしめて。
 私は、何を意固地になって歩いてきたのだろう、引き返せばよかったんだ。
 簡単にできることだったはず、無理だと思って、逃げていた、嫌だっただけなんだ、逃げていただけなんだ、甘えることから、頼ることから、引き返すことから。
 だから、私は、甘えた、大声で、泣いた。

 余計に泣かせてしまった、やはり恐ろしかったのだろうか、どうにもならない、どうしよう、とにかく引きずってでもつれていかなければ、嘘つきだと言われてしまうだろう、私がこの子を助けるのはあくまで証拠だから、そう、そういうことにしておこう。
 この胸の高なり、この安心感は、きっと証拠を手に入れられたから、だと思っておく。

 普通は表情が読み取れないような鉄扉面だが、今は少し違う、いきなり抱きついて泣きだしたものだから、きっと困っているのだろう、ずっとこっちを見たまま、動かない、おそらくは、心配してくれたのか、どうなのか。
 ただ、自分をずっと抱いてくれている、どうするべきか迷っている、のだろう。
 私は立ち上がって、手を握る、顔をゴシゴシと腕でこすって。

 どうしようかと迷っていれば、彼女は不意に立ち上がって、顔を擦って濡れた顔を拭き取ると、ぎゅっと私の手を握ってきた、じっとこっちを見てくる、その瞳はなんだか吸い込まれそうで、私の理性を引き寄せようとしているようだった。
 そんな瞳を見つめていると、彼女は少し赤くなった、なぜだろうか、すごく嗜虐心をくすぐられる行動をピンポイントでしているような気がする。あざとい。まじあざとい。
 そんな考えを払って、彼女の手を引いてきた道を戻る、ずっと戻っていく、彼女を作るために骨を置いた場所を過ぎて、私自身がいる水場へと戻ってくる。
 仲間はみんな思い思いの場所で泳いだり、魚をとったり、草をむしって船を作ったり、遊んでいた、他にやることもない、毎日こんなかんじで。
 積極的、というか我慢しきれない子は、自分好みの男性を見つけに街の近くまで下っていくこともある、だから呼んでも来るわけがない。
 つまり自分が来たというサイン、それは。

 水しぶきが舞って。しばらく潜って。思い切り飛び出して、また、しぶきを上げる。
 とても美しくて、つい、見惚れてしまう、2つの意味で、彼女をじっと見つめてしまう、そう、見惚れた、一目惚れ、すでに生きていた頃の記憶はないはずなのに、何故か彼女に惹かれてしまう。
 やはり、可憐で、愛らしく、美しい、サハギンの、少女。
 私の大好きな、大好きな、ともだち。

 みんなが一斉にこちらを見る、さぁ、証拠を見せてやろう、私がスケルトンだと言った人骨が、コレだということ。

「この子が、私の、スケルトン」

 みんな一斉に岸辺に座ってぼーっとしている少女を見る、そしてまた私を見る、こんどこそ私の勝ちだ、絶対に本物だ、たぶん、おそらくは、きっと、願わくば。
 そして、みんなは一斉に、こういった、静かな声で。

「「誰が本当に連れて来いって言ったよ。」」

「おまえたち。のうみそまでかびたか。」

 驚きのあまりぐうの音も出ないようだ、私は岸に上がって、彼女に近づく、ずっと私を見ていたから、なんで私を見るのかを問いただしてみよう、きっとコレまた被虐的なアクションをしてふるふる震えるんだろう、さぁ、どう質問してやろうか。

「あなたは、なぜ私を見つめるの?私、変?」

 そんなつもりで見ていた訳じゃなくて、なんて答えればいいのだろうか、私はただ君が綺麗で、可愛いなと思って、いやコレではなんか引かれてしまいそうだ、どう答えよう、人と接することなんて殆ど無いから、怖い、なんて言えばいいのか、分からない、どうしよう、どうしよう。

 予想通りに、ハッとこっちを振り向いたあと、急に俯いたりこちらを見たり、オロオロと言葉を探して、次第に泣きそうな顔に変わっていく、とてもかわいらしい、もっといじめて見たい、でも泣かれるとまた抱きつかれる、抱きつかれるとドキドキする、暖かくなる、ずっと一緒にいたいと思ってしまう。
 それは少し困る、私は魔物娘で、旦那様を見つけなければならい、女の子に恋してはいけないんだ、禁断、ということ。それなのに……この少女、スケルトンの女の子を見つめるたびに、胸が高鳴って、抱きしめたくなる、我慢しなきゃと、だめなんだと、自分に言い聞かせても、堪えられない、だから……!

 サハギンの女の子が抱きついてくる、突然のことで頭が回らなくなる、思わず抱き返してしまう、謎素材でできた服の上からでも伝わってくる、やわらかな感触、身体を密着させて、力いっぱい抱きあう、とても愛しい、この少女を。


―――――――



---金の月:---
---1日目---
 私は、幸せだぞ。
 私も、幸せです。

 大好きです。カイナ
 大好きだぞ。フィリーシア

----この後のページには、まだ何も書かれていません----

追記しますか?


  <♥>Yes  No


ねぇ、これ、どうおもう。

スケルトンって書いてるのに

ほとんどサハギンがめいんじゃないか。

いっぺん脳みそ洗ってこいお前。

いや、それだけはマジ勘弁して下さい。

ほんと、ごめんなさい

楽しんでいただければ、幸いでございます

13/03/09 00:45 八夢=ルスト

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