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ロスト*ラヴ*クロニクル

- *石は転がり始める*辿り着いた砂の国* -

この日も、2人は行動を始めた。
アデルに付けられた指輪を外すために。

現在2人がいる街は - プレイルート - と言い
教都からはそう遠くない所にある親魔物領です。

ここには酒場や宿屋がとても豊富で
情報を集めるのには事欠かない場所でした。


〜*〜*〜*〜


"最近、教都の人間が出入りしている国を
いくつか目星を付けてみたのだけれど
まずはその場所に向かうのはどうかしら?"


"それはいいと思う
いつまでもここには居られないしね"


"なら決まりね。それならまずは…
ここよ。- レクィーム - という街ね"


"そこはどんな街なのかな"


"そうねぇ…詳しい事はわからないけど
だけど…砂漠の民などがいるらしいわよ"


"近くに砂漠でもあるってこと?"


"街の詳細は全然わからないわ
砂漠の民が住みやすいのかしらね"


"なんだか少し不安だね
ノエルは大丈夫?旅はした事ある?"


"あらっ❤心配してくれるの?
全然大丈夫よ❤まかせて頂戴ね"


"そりゃあ…ノエル女の子だし…
まぁ…それなら心配はいらないかな"


"安心してね❤むしろこれは…
新婚旅行なんじゃないかしら❤"


"僕らは結婚どころか
まだ付き合ってすらいないよ"


"あら残念。ツれないわね
簡単に振り向かないのは覚悟の上よ"


"振り…向く…?
僕はノエルしか見てないけど…?"


"アデル。それ以上はイケないわ"


"ごめんなさい…?"


〜*〜*〜*〜


これから向かうレクィームは
砂漠の王と縁のある国の1つです。

昔から交流もありますが、その街の1つ
レクィームに怪しい男が出入りしているようです。

男は猟師を名乗ってはいますが
言動がとても怪しく軽薄な不審者と
街の人々から見られているようです。


"その人は指輪について
何か知っている感じなのかな"


"少なくとも無関係ではないわね"


"とりあえず、行ってみよう"


"そうね。それからねアデル
移動の事について聞いて頂戴

ここからは手探りで全て行うわ
私も魔力消費を抑えておきたいの

だからあまり転移魔法は使えない"


"わかった。なるべく歩くんだね"


"そうよ。魔力補給薬は持つけれど
これもそうそう手に入らない代物よ"


"ノエルには迷惑ばかりかけちゃうね"


"アデルから貰えたらいいんだけど、ね?"


この指輪を付けた人間の男の人は
精を魔力に変換し続けるがために
生殖機能がまったく反応を示さなくなります。

しかし。その効力は爆発的なモノで
1人で国を滅ぼせる程のチカラを得ます。

魔物娘であっても歯が立たないチカラです。


〜*〜*〜*〜


ざくざくと2人の足音が砂を踏みしめ始めます。
気温が上がりつつ辺りには何も見当たりません。

ノエルは平気な様でしたがアデルは驚きます。
初めて向かう場所だからこそ興味が湧きます。

砂漠までは行かずともその周辺国
ましてや交流が深いともなると近しく感じます。

現在レクィームは親魔、反魔どちらにも属さない。
1人1人の意志を尊重する国のようです。

その近くには魔物も良く来ており
街の人々と時折、仲良くするそうです。


"そろそろ街の入口が見え始めてきたわね
きっとあそこが砂漠周辺国レクィームよ"


"あそこ…あっ、あれだね?"


2人の目にはまだ少し遠くに見えるが
そこには確かに砂の国レクィームがありました。

そこまで砂漠化の進んでいる環境でないので
近くには森もありオアシスも存在していました。

街が見えた途端、ぐぅと子気味良い音が鳴りました。


"あはは…ごめん。僕お腹空いちゃった"


"えぇそうね。どこか探しましょうか"


"ごめん。空腹には慣れてたのに"


"大丈夫ヨ。、ガマンは良くないもの
それに街の中を見ておかなきゃだしね?"


ようやく2人は砂の国レクィームへ足を運びます。


〜*〜*〜*〜


がやがや…ざわざわ…がやがや…

街の中はそれなりに人で溢れていました。
所々から流れてくる良い匂いを辿ります。


"アデル。あそこへ入りましょう
丁度中が空いているみたいらしいわ"


"ノエルにまかせるよ
ノエルはこの辺の食べ物は詳しいの?"


"まったくわからないわ
せっかくだから味を盗んでみようかしら"


"そんな事ができるの?
ノエルはいいお嫁さんになるね"


"あら?自分のお嫁さん候補に
今からそんなに褒めても何も出ないわよ

私はもうアデルしか考えられないから❤"


"・・・。ごめんくださ〜い"


"待ってよ。1人で行かないで
お詫びになんでも頼んでもいいから"


「よぅ!お客さん達いらっしゃいっ!!
ここはレクィームのはずれ料理店だぜっ

とりあえず頼んでみとくれぇい!がっはっはっ」


ここは小さな料理店。店主は1人のようです。
気前の良いおっちゃんが1人で経営しています。


"すごい元気なおじさんだね"


"そうね。まぁ、頼んでみましょう"


"あっ これ美味しそうだな"


"この料理ね。私は…これかしら"


「おっ!きまったかぁ?
美味く作ってやるよ!なんだい?」


"それじゃあ。品名はわからないけど
左から2つ目のこれ、右から3つ目のこれで

頼んでもいいかしら?"


「おぅよ!まかしとくれよっ!!
腕によりをかけて作ってやるぜぇ」


"すごい気迫だ。楽しみだねノエル"


"・・・。何が出てくるのかしらね"


〜*〜*〜*〜


「おぅ!またせたなぁ
これが頼まれた料理になる

ゆっくりしていってくれやぁ」


"ありがとうおじさん。
それじゃあ、頂きます"


"どうもありがとう。
さっそく頂いていくわ"


店主はどこか悪いのか杖をついていて
そのまま厨房近くのカウンターへ戻りました。


"あの人…大変そうね"


"どこか身体が悪いんだろうね"


「うん?おふたりさん。気になるかぃ?
まぁわからなくもねぇがまずは食べなぁ」


"うん。おじさん。美味しいよ
凄く美味しい。とってもいいよ"


"えぇ、とても美味しい料理ね
でも…なんだか作り方が雑な気もするわ"


「おふたりさん静かに食べれぇかぃ?
あぁ入ってるモンは男の料理だからなぁ

ま、サービスの1つさぁ?勘弁しとくれやぁ」


"そうなの?美味しすぎて気にならないよ"


"それでいいのかしら…いい事にするわ"


「ところで…おふたりさんは旅行かぃ?
ここには馴染みがない感じがするからなぁ」


"そんなこともわかるの?
確かにここには探し物をしにきたけど"


"新婚旅行だもの❤新天地を回っているの❤"


"ただの旅人です。
この人はただの旅の連れです"


"本当に。ツれないわ"


「がっはっはっ!仲良しなんだな!
詳しい事はいいさぁ。よくある事だしな!!

しっかし、おふたりさんは羨ましいなぁ
俺にも息子みたいんがいるんだが

コイツがそういう話まったく無くてなぁ」


"おじさん息子さんがいるの?"


"心配しなくても私達魔物娘が
その息子さんをお婿さんにするわよ"


「う〜ん…んだといいんだけどよぉ
コイツがなかなか可愛くなくてなぁ

そんなの願い下げだ!だのぬかすんだよ」


"おじさんも大変なんだね
(なんか雰囲気は似てるんだろうな)"


"それは大変ね。早めに誰かが
息子さんと出会ってくれるといいわね"


「おぅよ、お嬢さんの言う通りだなぁ
お嬢さんも魔物とやらだったのかぃ?」


"えぇ…見ての通り。魔王の娘が1人
今更で申し訳ないけれどリリムのノエルよ"


"僕はアデルって言います"


「ノエルさんにアデルさんだな
よっしゃっ覚えとく。息子にも教えてもいいかぃ?」


"息子さん幸せものだね"


"素敵な親父さんだわ"


「これも何かの縁だろうしなぁ
おふたりさん泊まる所はあるかぃ?

まだ無ければウチの空き部屋貸すかぃ?」


"いいんですか?"


"親父さんはそれでもいいのかしら?"


「元々は飲み友のための空き部屋なんだが
今は持て余してるしなぁ。ウチは構わないぜぇ」


"おじさん!どうもありがとう"


"親父さん。ありがとうございます。


「がっはっはっ。いいってことよぉ」


こうしてレクィームに辿り着いた2人は
料理屋の親父さんにお世話になるのでした。


〜*〜*〜*〜


砂の国レクィーム近辺の森林の中で
何かを観察している人影が口を紡ぎます。


"さ〜てっと〜…アイツらはおっちゃんとこかぁ
いよいよオイラも仕事しにゃあいけねぇからなぁ"


"おっちゃんには散々お世話になったがぁ
オイラはオイラのためにもやらなきゃならねぇ"


"さぁ…狩りを始めっかね"


弓矢を携えた青年は不敵に笑みを浮かべ
-ぱちり- と指輪を付けた方の指を鳴らします。


合図と認識した指輪が輝きを放つ
その輝きはまるで深い闇夜に浮かぶ月の色の様です。


青年の身体から魔力が吹き出し辺りを侵蝕します。


今宵の月を背に。彼が為の戦場が作られていきます。


【作者より。】

ようやく役者の本領を発揮できそうです。
この作品において主人公は1人ではありません。

だからこそ、それぞれの人生をどう描こうか
とても難しい場面ではありますね。

もうしばらくお付き合いくださいませ。
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33