パラフェリア〜壊し愛

とある国のとある戦場
今ここでは戦争の真っ最中
聖国と名乗る国が、魔物と共存しようとしている、および共存している国へ次から次へと攻撃を仕掛けてきたのです
この戦場もまた、その聖国によって襲われたとある国の荒野でした

ガン!ギン!ドゴォォン!

鳴り響く金属の擦れる重低音
精霊により奏でられた大地の呻き
そして歌声のごとく鳴りやむことのない兵士たちの怒号と断末魔
それらは幾重にも重なり、さもオーケストラのごとくその場に存在するものに響き渡りました

生と死の飛び交う戦場、そこに立つ一人の男と人間の戦場には明らかに似つかわしくない、白銀の翼をもつ乙女

男は剣を、乙女は戦斧を手に戦場を駆ける
男の名をエルフィ
乙女の名はエネスといいました
彼は勇者、いえ、元勇者と言った方が良いでしょうか

「はぁぁぁぁッ!!!」

魔物を狩り、魔王を滅ぼす、ただそれだけを考え、鍛練を積み、15の誕生日、神の祝福を受け、生まれ育った村を出たのは数年前
魔物を滅ぼすための勇者の誕生に合わせやってきたヴァルキリーの彼女とも最初に会ったころと比べ随分打ち解け、幾度か肌を重ねるほどの仲となりました

「ぅわぁぁ!!」
「ギギぃ!」

しかし彼は世界中を旅して、見たのです
魔物が悪ではない事を
魔物を愛し、魔物と家庭を気付き、幸せを得ている者達を
彼は途端に、バカらしくなりました

「ぅおおおお!!」

何のために剣を取るのか
悪とはなんなのか
何を嫌い、何を愛せばいいのか
そんな迷いの時、そばにいてくれたのは、他でもない彼女、エネスでした

「イグニス!」
「遅い!!」

そしてエルフィは気付きました
人と人でない者が交わるのがなんだ
自分はこんなにも彼女が好きなのだ
人間である自分が、天使であるエネスを愛するのと、人間である者が魔物を愛すこと、そこに何の違いがあるというのか

「ぁ、ぁぁ・・・」
「・・・すまない」

エルフィはそんな幸せを守るために戦う事を決意しました
国単位で魔物との共存を図り始めたところも出てきたのです、いつか魔物と共に住める平和で幸せな日常が来るのもきっと遠くない未来の話
人と人でなければ幸せにはなれないというそんな偏見が消える、いつかその日まで、そんな未来が来るまで闘い続けると、エルフィは誓いました

「エルフィ!よそ見するな!!」
「・・・ああ!いくぞエネス!」

そして今日もエルフィは戦い続けました
いつ来るともしれない終りの時まで

「でぁぁぁぁ!!」

ガッギーン



「ってて・・・」
「ちょっと!じっとしててください!」

とある魔物と共存している国の宿
一端聖国を追い返した戦士たちは一度街に戻り休息を取っていました
この街の人間ではないエルフィでしたが、戦争に参加してくれた代償として宿代は気にしなくてもいいと言う事
そんな宿の女将は半人半獣の魔物
やはり、魔物の全てが悪いわけではないと実感し、部屋に入ったエルフィはエネスに傷の手当てをされていました

「無理しすぎですよ、まったく」
「仕方ねぇだろ、闘っている時は無自覚なんだから」
「そう言われると仕方ありませんが、こんなかすり傷も放っておいたら大変なんですから、気を付けてくださいね」
「はいはい」

ぶつくさと言い合う二人でしたが、顔は今日の闘いを生き残る事が出来た喜びで彩られています
エルフィはそんなエネスの表情が何よりの薬だと感じていました
エネスも、そんなエルフィの安堵した表情が大好きでした

「はい、手当終わりです」
「いつもありがとうな」
「ええ、私の・・・主人の、怪我ですから」

少しエルフィ以外は気付かない程に頬を赤らめるエネス

「エネス・・・」

男としては、そんなエネスの姿に、色々と感じてしまうのも無理ありません
知らず知らずのうちにエルフィはエネスの肩をがっちりと掴んでいました

「エルフィ、今は、ダメです・・・」
「え、どうして?」

困ったようにエネスは顔をそむけます

「今は戦の真っ最中、更にはいつ敵が来てもおかしくない時、そんなときに淫らな行為に勤しんでいることなどできません」
「はぁ・・・エネスはまじめだな」

エネスはそう言いながらも、ぷるぷると体を震わせ、我慢しているのは明らかでした
ですがその言葉も、彼女の本心でしょう
そこでエルフィは少し考え、さっとエネスの唇を奪いました

ちゅっ・・・

ほんの触れるだけのようなキス
でもエネスには十分すぎたようでした

「な・・・な・・・」

頬を真っ赤に染め目を回しだします

「も、もう!エルフィはバカなんですか!?今そういうのはだめと!!」
「ちょっとぶつかっただけだって、そんな怒んなよ?」
「ぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

恨めしそうにエネスはエルフィを見つめます

「じゅ・・・じゅ・・・」
「じゅ?」

なにやらぶつぶつと言い出したエネスを心配するように下から覗き込もうとすると、エネスは思い切りエルフィを指さし叫びました

「十倍返し!!いえ、それじゃ足りません!!ひゃ、百倍!!そう、この戦いが終わったら、今のを百倍にして返しますから!!!」

言いたいことを全部言ったからか、それとも恥ずかしくなったからか、エネスはおやすみなさい!!とベッドに潜り込んでしまった
当のエルフィはぽかんと口を開けていたが、エネスがベッドに入ったのを見て我に返ります

「あぁ、おやすみ、エネス」

明かりをけし、エルフィもベッドに潜り込みます
口では平静を装っていましたが、内心はエネスの態度があまりにも可愛らしくて、興奮し、その夜はよく眠れなかったそうです



そして夜が明けました
体勢を立て直したとはいえ聖国もそうとう消耗しています
恐らく今日が山場となるでしょう

覚悟の中、敵の軍勢が押し寄せる荒野へとエルフィとエネスはやってきました

エルフィは魔物と共存する国の側ですが、決してその国に属しているわけではないので、あくまで遊撃のように戦況を見て戦場を移動します
そのため最初に彼らは見晴らしのいい高台へと登るのです
そしてそこから見た戦場は何やら異様な雰囲気を醸し出していました

両国ともまるでそこだけ大地がないかのように荒野の真ん中にぽっかりとすきまをあけ、両端で戦いを繰り広げています
これでは真ん中から攻められれば一気に防衛ラインまで到達されてしまうでしょう

「おい、こりゃどういう・・・」
「エルフィ、あれだ」

困惑するエルフィの横でエネスがその人のいない部分の中央辺りを指さす
エルフィが目を凝らして見ると、そこには白いなにかがゆっくりと移動していました

「あれは・・・」
「人間、だな、それも単騎、馬も兵もつれずただ一人で戦場を歩いている」

そうただ一人の人間が人の海を裂いていたのです
見ればその兵の前には何もありませんが後ろには、多くの犠牲となった者の骸が積み重なっていました

「敵味方関係なし、まさに狂戦士、バーサーカーといったところか」
「あれじゃ、確かに兵を向かわせても無駄死にってわけだ」

二人は顔を見合わせ一つ頷くと、その場から駆け出しました
一直線にその狂戦士の下へ

「「じゃまだぁぁぁ!!」」

途中、幾重もの敵を切り裂いて歩を進めます
そしてちょうどそいつが中腹辺りまで来たとき、エルフィ達はそいつの前に立ちはだかりました

背はエルフィより頭一つ大きく二メートルはあるでしょうか
右手に両刃の大剣、左手にハルバードと呼ばれる先端に突起のついた大斧をもち、引きずるように歩いていました
頭の先までを甲冑で覆ってはいましたが、とてつもない気迫を全身に受けます
他の兵とは明らかに異質、殺意を肌で感じるほど、ただただ血に飢えた獣のような、狂戦士の気を全身にまとっていました

「・・・・・・」
「・・・・・・」

一瞬の沈黙
それは本当に一瞬の出来事、その場にいたバーサーカー、エルフィ、エネスはその場から一瞬姿を消し、その直後お互いのちょうど中間あたりの大地がへこみ、岩片が舞いました
正確には目に見えない程の速度で距離を詰め切りかかったエルフィとエネスを一瞬にしてバーサーカーが弾き距離を取ったのです

ただの人間にはそれを確認することなく、受け止めた衝撃でへこんだ地面の破片が舞うところしか見ることはできません

「まいったな・・・片手で防がれるなんて・・・」
「不覚です・・・渾身の重みを込めたつもりでした・・・」

両手の武器で一人ずつを支え切ったバーサーカーはじゃらっと一瞬の金属音と共にエルフィの眼前まで移動し剣を振り上げます

「!?」

とっさにエルフィは自らの剣で防御しますが、あまりの重みに膝をついてしまいます

「きさまぁぁ!!」

エネスはそこへ向かって戦斧を振りおろします
が、それは奴の斧によって軽々と止められてしまいます

片手で振り下ろした大剣で一人をしとめようとしつつも、死角から攻めよる新たな一撃に片手の斧で対応する
あまりにもむちゃくちゃな動きと強さ、それはさも戦闘の天才と呼ぶにふさわしかったのです

「ぐぅぅ・・・ぁぁぁああ!!!」

エルフィは無理矢理体制を変え大剣を弾き返します
それを感じ取ったエネスはその場で一端戦斧を離して回転しながら跳躍、その遠心力で横からの一撃へと移行、更にエルフィも下から剣を突き上げ攻勢を変えます

しかしそれも読まれていたのでしょう
エルフィが動くほんのわずか早く、バーサーカーは剣を離し腹の横に刃が来るように防御の姿勢を変え始めました
そして防いでいた戦斧の重みがなくなったのを認識するやその防いでいた斧を下向きに持ち替え下の方へと向けたのです
両手をクロスさせ、それぞれの動きを完全に読むという、人間業とは思えないその行動、それをエルフィ達は読み切れませんでした

ザクッ!

嫌な鈍い音です
下からの攻勢に転じていたエルフィの動きは完全に読まれ斧にその攻撃を阻まれただけでなくその防ぎの勢いのまま突き下ろされた斧は、エルフィの左目へと突き刺さりました

「っがぁぁぁぁ!!」
「エルフィ!?・・・ッ!?」

エルフィの悲鳴が響き渡ります
それを聞いて一瞬困惑したエネスは、まるで紙クズのように吹き飛ばされてしまいます

肺から空気が押し出されるような思い音
それがエネスから発せられたものと解った時エルフィは本能的に理解します

(このままでは二人とも殺される)

強い、強すぎるのです
あまりにもこの化け物は人間離れしていました
今のままで戦い続けたら、自分だけでなくエネスまで殺されてしまう

それだけは絶対に阻止する

その信念が彼を動かしたのでしょう
痛みを忘れ、がむしゃらに薙いだ剣は奴をよろめかし、一瞬のチャンスを作りました
その隙に奴の下から抜け出したエルフィは狂戦士との開いた距離を詰め直そうと駆けます

バーサーカーはそれにたじろぐことはせず、まだ完全に立ち直っていない体勢のまま大剣を振り上げました
しかし、それを今度はエルフィが読んでいます

振り下ろされる直前、エルフィは奴の下をスライディングですり抜けると、奴を羽交い絞めにします

「エネス!!!」

その瞬間を待っていたかのように、エネスは大きく飛び上がりそのまま戦斧を構え抉るようにバーサーカーへ斬りかかります

「はぁぁぁぁぁ!!!」

彼らのコンビネーションは完璧でした
数々の死線をくぐって来た彼らはこのような手段をとることもありました
勇者らしくはありませんが、勇者をやめたあの時から、闘い方へこだわることはしなくなりました
むしろ、こういう戦い方こそが彼が勇者をやめた実感を沸かせるのかもしれません
そう認知するほどに、この方法は何度も取られてきました

だからこそ、そこで慢心したのでしょう

今回も大丈夫だと
いつも通り自分の刃が相手をとらえた瞬間、彼はサッとその場を飛んで、避けてくれるに違いない、そう思っていたのでしょう

ですが現実は違いました
バーサーカーはあろうことか、自分ごと背中のエルフィに向かって斧を振り下ろしたのです
斧を通じてエルフィとバーサーカーが繋がります
ですがエネスはもう止まりません

彼女の戦斧は二つの血に塗れました




戦は終わりました
かの狂戦士が敗れたと見るや、聖国は逃げ出したのです
戦争は魔物と共存する国が勝利を収めました

勝利の美酒に酔いしれる者も多い中、夜の帳の降りた古戦場で、独りの少女が泣いていました
声も上げず悲鳴も漏らさず、その様はまるで人形のように、魂が抜け落ちてしまったように、ぺたんと座り込んで手はだらんとし瞳は何もとらえてはいません

聡明な戦乙女であったエネスの姿はそこにはなく、亡骸の荒野の一部と言っても差し支えは有りませんでした





「エ、ネス・・・よか、た・・・」
「エルフィ!!」

バーサーカーは肩口から腰までをバッサリと切られ絶命しました
そしてその横、その死体と同じようなありさまとなったエルフィをエネスは抱きかかえます

「おま、え、が・・・し、ななきゃ・・・いいん、だ」
「もう喋るな!!・・・頼むから・・・」
「も、すこ・・・だけ・・・だから」
「エルフィ!!!」
「エネ、ス・・・い、きて・・・生きて!!幸せに、なれ!!」
「エルフィッ・・・!!」
「・・・ごめ・・・がッハ・・・こんな、あり、ふ・・・たこと、しか・・・い、なく・・・て」
「・・・ッく・・・ひっく・・・」
「あ・・・して・・・ぜ・・・・・・エネス、じゃぁ・・・な・・・」
「エルフィ・・・?エルフィ・・・ッ!!エルフィィィ!!」





彼女は動けませんでした
現実の重さに
彼の言葉の重さに
自分の犯した罪の重さに

彼の言葉によって彼を追い死ぬこともできず、かといってそんな気力も最初からなく、彼女はただ茫然とそのエルフィだった肉を血に塗れながら抱きしめ、叫んだ

そして叫ぶ気力もなくなると今の状態へとなりました
生ける屍のようなこの状態に
これからどうするかなんて、考えていません
エルフィのいない世界は、彼女には色あせて見えるからです

(・・・無理だ、生きても・・・エルフィ、あなたが、いないのなら・・・幸せには・・・到底なれない・・・)

彼女は思いました
例え魂を、肉体を、誇りを、何を使ってでもエルフィが生き返るのなら、なんでも差し出すと

そんなことをぼんやりと考えていると、その古戦場の遠くに青白い炎が見えました、それはじょじょにエネスの方へと近寄ってきます

「・・・やっぱり、戦争のあと・・・大量ね・・・ふふ♪」

ぼんやりとそれを見つめているとその正体がなんとなく見えてきました
少女です
フードをかぶり白い肌をした、少女が荷馬車を引いています

「・・・あら?」

少女がこちらに気付き近寄ってきます
青白い炎に照らされた顔は愛らしくも生気がありません
瞬時に魔物だと理解しました
理解しましたが、エネスは動けませんでした

「ふふ・・・こんばんは、こんなところで・・・何をしているのかしら・・・?」
「・・・・・・」

エネスは口を開きません
もはや自分以外の事に興味なんてないのです

「・・・私はフィア、死霊使いのリッチ・・・」
「死霊・・・使い、だと・・・?」
「・・・ええ、そこのたくましいお方の死体を、頂きたいの・・・譲ってくださいな・・・?」

そういいフィアと名乗った少女は近くに横たわる狂戦士の死体を指さします

「・・・好きにしろ、私には、関係ない・・・」
「あら、あなたが殺したんでしょう・・・?なら関係ない事はないわ・・・」
「好きにしろと言っただろう・・・・」

もはや受け答えにも覇気のないエネスを、憐れむような目で見るフィア

「そう・・・あなた、そこの勇者サマを殺してしまったのね・・・」
「!?」

エネスは驚愕に目を見開いた

「何も不思議がることはないわ・・・だって、そこにいるもの・・・彼、エルフィ、かしら」

フィアは不気味にほほ笑むと、エネスの隣をさします
もちろんそこには誰もいません
だが、フィアはじっとそこを見つめています

「ま、まさか・・・」
「えぇ・・・死霊使いと言ったはずよ、会話とかはできなくとも記憶を読み取るくらいできるわ」
「ぁ・・・ぁ・・・エルフィ・・・」
「ずいぶん、つらい経験をしたようね・・・彼の魂は強いけれど、あなたがそんな状態だから、彼は成仏できないわ・・・そこの彼は取らないで上げる・・・私はそこの彼と実験があるから、もう行くわね」

そういうと巨漢の死体をマジックのように浮かせ荷馬車に載せると、その場から立ち去ろうとします

「ま、待ってくれ!!」

エネスはそれを呼び止めました

「ん・・・?まだなにかよう?」
「・・・エルフィを、生き返らせれないか?」

わらにもすがる思いでフィアに尋ねます
そうすると、少し考えて不気味に笑います

「・・・今の私の研究なら、時間はかかるけど、理論上はできるわ・・・」
「ほ、ほんとうか!?魔物にこんなこと頼むのも申し訳ないが・・・たのむ・・・時間はいくらかかってもいい、金もいくらでも出すし、望むなら私の魂でも何でも持って行っていいから、エルフィを・・・助けて・・・」

必死に頼み込むエネスの姿をやれやれといった感じで見るフィア

「魔物にって・・・あぁ・・・気付いてないのね・・・ウフフ・・・お金なんて、いらないわ・・・でも、そうね・・・じゃあ、まず、私の死体運び、手伝ってもらおうかしら・・・」
「助けて、くれるのか・・・?」

エネスの目に希望の灯が戻ります

「ええ・・・要は、彼の魂に生きた肉体を与えればいいの・・・よ」

そういい彼女はどこからか空き瓶を取りだし、さきほど指さした場所でおもむろに振り始めました

「なにをしているんだ・・・?」
「彼の魂を取っておくの・・・生ものだから、長持ちはしないけれど・・・」

そういい空き瓶のふたを閉めます

「そんな瓶に魂が入るのか・・・?」
「空き瓶を舐めてるなんて、まだまだ甘いわね・・・」

彼女はそう言い、ふたたび荷馬車を引き始めました

「さぁ、死体集めを手伝ってちょうだい、なるべく屈強で強そうで、あとおちんちん大きそうな男の死体・・・」
「は、はぁ・・・」

エネスとフィアはとりあえず強そうな死体を集めていく
本来、天使はこのようなことはしないでしょうが、今のエネスにはこれしか手がなかったので、気にしないことにしました



そして、闇夜の中を死体とともに馬車で揺すられ、いつのまにやらフィアの家へたどりついていました
暗い森の中のそこそこに大きな家です

「はい、到着」
「それで・・・エルフィを助けるにはどうすれば」
「とりあえず、そこの死体、中の保存室まで運んでおいて、中に案内してくれる娘がいるから・・・」

そういうと、中に魂が入っているらしい空き瓶を持って、さっさと家に戻ってしまいました

エネスが仕方ないなと死体を運び込もうとすると、中からつぎはぎだらけの少女があわただしく出てきました

「あぁ・・・わぁ」
「・・・?」
「ほ、保存室、こっち、です・・・」
「あぁ・・・ありがとう」

つぎはぎだらけの彼女の案内と協力でささっとすべての死体を保存室にしまうと、今度はその少女に、フィアの部屋へと案内されました

「・・・ごゆっくり」

そういって彼女はどこかへ行ってしまいました
気にせず、中に入ると、フィアは机に向かって何か作業をしていました
更に質素なベッドとは別に、実験ベッドとでもいうべきか無機質な板のようなベッドの上にエルフィの死体が乗っています

「あぁ・・・来たのね、そこの彼、とりあえず勝手に連れてきた・・・」
「それは構わないが、いったいどうすれば、彼が助かるんだ」

もう待ちきれないと言わんばかりにエネスはフィアにせめよります

「まぁ、まちなさい・・・最初にいくつか確認しなきゃならないことがあるから」
「なんだ?早くしてくれ・・・」
「まず最初に・・・あなた処女?」
「は?」

ズビシッっと指をさし無表情のまま聞いてくるフィアにすっとんきょうな声を上げてしまいます

「だから、処女かきいてる・・・」
「そ・・・それは・・・」
「はやく、魂も死体も生ものなんだから」
「ぅ・・・ひ、非処女だ・・・」

フィアの言葉におずおずと答えるエネス、その頬は羞恥に染まっていました

「そう・・・なら都合がいいわね・・・じゃあ次の質問だけど、あなた・・・身体と魂捨てる気はある?」
「彼がよみがえるなら、魂くらいくれてやると最初に行ったはずだが?」
「そう・・・別にとったりしないわ・・・ただちょっと、あなたの意識がしばらくなくなると思うから」
「どういうことだ・・・?」

不気味ににやけるフィアにエネスは問いました

「じゃあ、手順を説明するわ、まずは、あなたの肉体に、彼の魂を入れるわ・・・」
「なに?それってつまり・・・」
「ええ、一時的にあなたは眠り、その身体を彼に明け渡すことになる」
「それにいったいどんな意味があると・・・?」
「じゃあ聞くけど、あなた、死体で中身が別のあの男に抱かれて耐えられる?」

指でわっかを作ってそこに指を通すジェスチャーをするフィア
考えるまでも無くエネスは答えます

「絶対に無理だ」
「そうでしょうね・・・あなた、自分では気づいてないかもだけど、魔物みたいなものですもの、そのエルフィって子以外にもう興味は持てないと思うわ」
「そ・・・そうなのか・・・で、でもそれとこれと何の関係が?」

少し戸惑うようなことを言われたましたが気にせずフィアは続けます

「・・・さっきも説明したわよね、要は彼の魂に生きた肉体が必要って、後は入れ物に入れるだけだもの、簡単よ」
「まぁ・・・言っていることは解るが話は見えないな・・・」
「・・・ここにはね、私やさっきの案内の娘も含めて死体しかないの、生きた肉体なんて、よほどの事がないと手に入らない・・・だから、産んでもらうわ、あなたに」
「・・・え?」

フィアの言葉に耳を疑うエネス

「聞こえなかったかしら・・・あなたに子供を産んでもらうわ」
「な・・・な・・・」

やはりフィアの発した言葉は事実でした

「混乱しているようね・・・順を追って説明するけれど、まず彼の蘇生には生きた肉体が必要、でもそんなものは手に入らない、なら産むしかない、でもあなたはエルフィしか受け止められないという、だから、あなたの中に彼の魂を入れる、そうすれば、子供が生まれるまでの間、彼の魂は朽ちることも成仏することも無くとどまる事ができ、さらに他の子を受け入れることもできる・・・完璧な作戦ね・・・」

うっとりと虚空を見つめる・・・仕草を無表情でフィアは行います

「・・・わ、わかった、仮にそれで何とかなったとしても、疑問が残る」
「なに?」
「まず、子を孕むにしてもそれは私の身体、魔物化した体なら結局他の男は受け入れられないと思うが・・・」
「あら・・・何のために、彼の身体を持ってきたと思うの・・・?目隠しすれば、身体がおぼえてる彼の物をすんなり受け入れられると思うわ」
「お前がするんじゃないのか?」
「私の本番は、いつか来る愛しの人とのためにとっておいているから」
「・・・」
「そんな目で見ないで、興奮しちゃうわ・・・それにね、もう空っぽなこの身体、そのうち腐るんだから、今のうちに何とかしないとだめなんだから」
「・・・解った、エルフィを助けるため、しょうがない・・・」
「物わかりが良くて助かるわ・・・」

そういい彼女が魂入り瓶をエネスに渡します

「それを開けて中身を飲み干しなさい、次目を覚ますのはあなたが孕んで出産したあと、十か月後くらいかしら?」
「・・・わかった、最後にもう一つなぜ貴女はそこまでしてくれる?」
「なぜって・・・実験結果のためよ、理論は組み立てたけれどこんな実験死体じゃできないもの、協力者がいるなら、どうなるか見たいもの」
「そうか・・・」

エネスは空き瓶のふたを開け、口を付けました

「それじゃ・・・まぁせいぜい良い夢をね・・・」

すると、するすると何かが入ってくる感覚と共に彼女の意識は途絶えました



「ん・・・?」
「あら、お目ざめのようね」

暗い部屋
彼 が目を覚ましたのはそんな場所でした
薄青い炎だけがゆらゆらとその空間を照らしています

そこにたたずむ青白い肌の少女が語りかけてきました

「おまえは・・・?」
「私は、フィア・・・死霊使いのリッチ」
「俺・・・死んだんじゃ・・・」
「ええ、死んだわ、でもね、貴女の愛しの人が生き返るチャンスをくれたのよ」
「なに・・・ってうぁ・・・」

体が上手く動きません
全身が痺れているような感覚
重心もおかしい気がします

「だめよ、まだ、魂が体になじんでないんだから・・・」
「どういう・・・こと・・・ッ!?」

そこでエルフィは気付きました、自らの胸部があの鍛えた胸板でなく豊満な母性の象徴であるおっぱいになっていることに

「さ、たって、これをみなさい・・・?」

そういうと彼女はエルフィの腕を取って立たせ鏡の前へと連れて行きました
その鏡を見るとそこには見慣れた自らの姿でなく、全裸のエネスが立っているではありませんか

「え・・・あ、え・・・?」
「あなたは、今、このエネスになっているの、そしてあなたには自分を生んでもらう・・・」
「な、なにいってんだ・・・」
「これを決めたのはエネス自身、彼女の意思なの、大丈夫よ、ちゃんとあなたの身体とやらせるから、ね」
「そういう問題じゃねぇだろ・・・」
「あら、自分で自分を気持ち良くするのだからオナニーとなんら変わらないわよ?」
「だから、そういう問題じゃ・・・」
「なら、あなた一生そのままよ?それどころかエネスは一生眠ったまま、あなたが自分自身を生まない限りは、ね」
「ぅ・・・」
「それでもいいのかしら?」
「・・・・・・わ、わかった、事情は分からないが、お、俺が自分と、その・・・子作りをして子供を産めば、俺は生き返れるし、エネスも元に戻るんだな?」
「ぴんぽーん、正解・・・」

なんだかうまく口車に乗せられたような気がしてならないがエルフィは決心したようです

「解った、じゃあ、しよう・・・」
「物わかりが良い子ね・・・ルーサ」

フィアが呼ぶと全身継ぎはぎだらけの少女が現れました

「彼女に目隠しをなさい」
(こくこく)
「おい、なんでそんなもんが必要なんだよ」
「あら、あなた、自分に抱かれてる所を見て興奮できる?」
「・・・確かに」
「さ、ルーサ準備して」

すっと視界が闇に包まれます
目隠しをされたのです

「あ、最初に言っておくわ、あなたのその身体には今、排卵剤を飲ませてあるから
「排卵剤?」
「そう・・・赤ちゃんができやすくする薬、媚薬みたいなものね、だから―」

フィアは言葉を一端区切りました
視界を奪われたエルフィには何をされるかわかりません

もにゅ

「んん・・・!?」

だからこそ強烈な快感を制御しきれなかった
口からとっさに出た甘い声に驚きを隠せません

「うふふ・・・だから媚薬みたいなものって言ったじゃない・・・ほーら・・・もにゅもにゅ・・・」

ふにふに・・・たゆんたゆん

「ぁ・・・ふわぁ・・・」

背後から胸を弄ばれている感覚がする
とてつもなく心地よい感覚に脳が痺れる
それと同時に甘い声が漏れていく

「さっすが男の子、こんなに乳首勃起させちゃって・・・」

ぎゅぅぅ

「うっわぁぁぁ・・・や、やめろ・・・そこはぁ・・・」
「あらあら、女の子みたいに弱弱しい声出しちゃって・・・しこしこしてあげるわ、この勃起乳首・・・」

だらしなくピンと勃ってしまった乳首をつねられ、ますます甘えたような声が出てしまいます

「や、やめろ・・・ほんとに、へんになるから・・・」
「・・・・・・だ・め♪」

しゅっしゅっしゅっしゅっしゅ!

「ぅぅううういいいい!!だ、だめだっればぁぁ!!」
「あらあら、男の子なのに乳首シコシコされてイッちゃったかしら?」
「そ・・・そんな・・・わけ・・・」
「じゃぁ・・・なんで、女の子のところびしゃびしゃなのかしら?」

歯を食いしばって耐えるももはやその秘部はびしゃびしゃにまるで失禁したかのように濡れてしまっています
そしてそこにまで手を伸ばされてしまいます

「あぁ・・・そこは・・・」
「そこはだめよねぇ・・・だって、女の子になっちゃうものね・・・?」
「あ・・・ぁぁ・・・」
「大丈夫、あなたは今女の子ですもの・・・ゆっくり感じなさい・・・?」

つぷぅ・・・

「んぅぅ・・・く、お、俺は・・・男だからな、これだって、エネスのために、仕方なくしてるんだ・・・指入れられたくらい、どうって事あるか」
「そ・・・なら、もっと女の子感じさせてあげる」

くちゅ・・・ちゅくちゅくっ

「・・・っく・・・」
「どう?体の中を出入りされちゃってる感覚・・・気持ちいい?」
「そ・・・そんなわけ、ないだろ・・・ッ」
「ま、そうね、私じゃダメよね・・・やっぱり、あなたじゃないと」

そういってフィアの気配がすっと引く
そしてそのかわりにさっきの物よりごつくて大きい指が中に入ってきた

「あ・・・あぁ〜〜ッ!!」
(な、なんだよ・・・この感覚ッ・・・すごい、馴染むっていうか・・・さっきのより・・・いい?)
「お気に召したようね、それもそう、その身体の愛している腕ですものね、ほら、身体で解るでしょう?」
「く・・・くそ・・・」
「どうやら、解るみたいね・・・よかった・・・」

これで、第一段階は成功ね・・・フィアは聞こえないようにそうつぶやく

「ほら、あなたの愛しのエルフィの指よ、味わいなさい?」
「あ・・・んん・・・エルフィは・・・俺だっ・・・」
「あら、そうだったわね」

れるぅ・・・

「ひゃっ!」
(今の声・・・俺が出したのか・・・!?)
「首筋弱いみたいね・・・ほらもっとしちゃいなさい・・・」

れろぉ・・・

「やめ・・・ろってぇ・・・」
(くそ・・・なんだよ、この舌の感覚・・・すげ・・・きもちい・・・)
「よだれなんて垂らしちゃって・・・はしたないこね」
「ふえ・・・?」

いつのまにやら快感で体液が垂れ流しの状態になっていたエルフィ
凛々しいヴァルキリーの姿はそこにはありません

「それじゃ・・・いよいよね・・・」
「ほ、ほんとに、やるのか・・・?」
「あら、あなたもさっき仕方ないって言ったじゃない」
「そうだけど・・・」
「大丈夫よ、その身体なら―」

ぴとっと、股間部に強烈な熱を感じた
すると次の瞬間

ぶちゅうぅぅずぷずぷずぷ!!!

「〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」
「―すんなり受け入れてくれるから」
(イッた!!今!すごいのキタ!なんだよ、こんなの反則!女!反則!!)
「・・・・・・どうやらイッてしまったみたいね・・・ほら、動いてあげなさい」

フィアの一声で、体内の強烈な異物感が動き始める

「あ、は、あぁ・・・っくぅ・・・んひぃん!」
(ダメだ!声!抑えられない!気持ちいい!!)
「あぁ・・・んくぅ・・あん!!」
「あらあら、女の子みたいに喘いじゃって、恥ずかしくないの?」
「くぅ・・・しかたっない、だろぉほぉぉ〜♥」
「そうね、愛しのエルフィの生孕ませオチンポだものね・・・気持ち良くて当たり前よね」
(あぁ・・・そうか、この身体は、俺の身体に、悦んでるんだ・・・今俺がエネスで・・・俺が俺に犯されてて・・・これが、女のセックス・・・)

じゅぶぅぱんぱんぱんぱん!!

「んあぁん♥き、きもちぃ!もっと、もっとくれ!!もっと奥までぇ♥」
「・・・あらあら・・・まだ射精もしてないのに、堕ちちゃったの・・・ちょっと興ざめね・・・ちょっと刺激してみようかしら・・・」

ぼそぼそとフィアが呟いたのち、エルフィの視界が戻る

「はえ・・・?」
「ほら・・・あなたの相手、良く見なさい?」

エルフィの身体が光に慣れてくると薄ぼんやりとその姿が露わになる
それは、継ぎはぎだらけの彼女だった

「・・・え?」

とたんに襲い来る嫌悪感
今まで感じていた体の満足感は残っているのに、頭が嫌な警報を上げる

「そして、あれをみなさいな・・・」

フィアの指し示す先、そこにはエルフィの身体
腕と舌と男性器をもがれた、エルフィの身体

「うふふ・・・大丈夫よ、あなたはちゃんと愛しのエルフィの身体でよがっていたのよ・・・エネス?」
「あ・・・あ・・・」
(あれ・・・俺、あんな・・・え・・・)
「お・・・おぇ・・・」
「あらあら・・・はいちゃダメよ・・・ごめんなさいね、刺激が強すぎたみたいね」

そういうとさっと目隠しをかけなおしてくれる
だが、時すでに遅し
彼の頭の中には、もうあの光景が焼き付いてしまった

(お、おれ・・・あんな・・・姿に・・・い、いや・・・そんなわけ、ない・・・だって、俺は生きてる・・・いまだって・・・こんなに、きもち・・・ほら、こんなにきもちぃ・・・だって・・・私はエネスだもの)

彼、いや、彼女は壊れてしまった
自らのあの姿を受け入れられず、今の身体に甘えてしまった

「んはぁぁん、もっと・・・もっとぉぉ!!」
「あら・・・急に積極的ね・・・いいの?本当に女の子になっちゃうわよ?」
「いいのぉ!だって私、女の子だもん!!」
「あら・・・こう、なっちゃうのね・・・可愛いじゃない・・・」

フィアは錯乱状態のエルフィを見てどうしようもない興奮を覚えた
壊れた人間がたまらなく愛おしく感じ胸が高鳴る

「も、もういいわ、出しちゃいなさいルーサ!」
「んへぁぁ!!きてきてきてぇ!女の子にしてぇ♥♥」

どっびゅる・・・どくどくどく・・・どぷぷ・・・

「ぉぉぉ!きらぁぁ!!」
「あぁ・・・なんて可愛いの・・・」

フィアは実験のためとエネスに言ったが、実は違う
彼女は壊れていく人間の精神を愛してしまう、そんな少女だったのだ
壊れゆくものを見る、この瞬間彼女は最高の絶頂感を迎えるのだ

「あ・・・あぁぁ・・・もっろぉ・・・もっろぉ・・・」

うつろにただただ、愛している男の身体を求める天使の姿はもはや皆が抱いている凛々しくも聡明な姿ではない
それはもう本能に忠実な獣だ

「やっぱり、この瞬間たまらないわ・・・やっぱり私も、自分の番の人間のオスが欲しいかも・・・でも、その人が壊れちゃうのも嫌だし・・・でも、あぁ・・・もっと壊したい・・・だから、待とうっと・・・壊れたがりの王子様がくるまで・・・」

うつろな瞳の天使に向かって彼女は語りかけた
だが、当の 彼女 は聞いていない
なぜなら、腹の奥底で感じたその暖かな感覚
女性だけが感じることを許されたその感覚に酔いしれていたから

「にんひん・・・にんひんんぅ・・・」
「幸せそうな顔しちゃって・・・大丈夫よ、この子が産まれたら返してあげるわ・・・そしたら、ちゃんとあなたの魂は出産の衝撃で転生すると思うから・・・そしたら、元通り・・・私もまた元通り・・・またあなたみたいなのを探す生活に・・・元通り・・・」

そしてその天使の腹を撫でる

―それまでは、存分に壊れてね・・・エネス

えっと・・・いるか解りませんが、もしいたら、最後までお目汚しにお付き合い頂き、ありがとうございました!!!

正直こいつ戦闘かけねぇな?とか思いましたか?その通りです!!
なかなか本気で描く機会がないので描いて見たのですが、暴走しすぎて雰囲気は滅茶苦茶だわ、色々がたがただわで、大変なことになってしまいました・・・本当に申し訳ありません・・・
ただただ謝罪しか出ないのでここら辺で終わります、ありがとうございました


15/09/09 00:45 シュウザキ

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