読切小説
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植物学者ラルネ・リアードの観察記録
名:ルーカスガダマ
別名:ラブホテルプラント モンスターハウス
分類:食人木・アルラウネ亜種 

このルーカスガダマと名付けられた宿根草は、極めて特殊な生態系を持つ。雌花しか存在しない球根を持つ食人花であり、スライムキャリアと共存し、繁殖には人間のオスを必要としている。
スライムキャリア共々知能が低く、男女無差別に襲い、魔物娘の中でも獲物に対する拘束力が高すぎて、虜にされた場合は社会復帰が不可能とすらされ、危険視されている。

生態
まず、この球根は水辺にあり、非常に浅く根を張り、地面から抜けやすくなっている。
スライムがこの球根の上を通ると、ルーカスガダマは抜けてスライムの体内に入り込み、その水分で発芽する。
寄生されたスライムは発芽と共に特殊な液を分泌されて命令を受ける。人里のある木造の家屋へと進む様になり、そこへルーカスガダマを運ばせる。
木造の人家の家屋を見つけるとスライムは人目のつかない天井や裏口、雨樋や床下などに潜り込み、ルーカスガダマを建造物に押し当てて木に根を張り、スライムの体と共に家屋に寄生して成長を始めるのだ。
最初の雨が降るまではスライムの水分で家屋にしがみつくだけの根を成長させつつ、スライムの体が雨で増えるのを待つ。

始めの雨が降ると、まずは分裂したスライムの一部が、中で暮らしている人物へと夜這う。
男性の場合は睡眠中に下半身をまさぐり夢精によって精液を奪い、女性の場合は女性器に入り込んでルーカスガダマから分泌された催淫毒を分け与えて発情させて、排卵した卵子を手に入れる。
家主の男性が病気であった場合は、病原菌を取ったり汗を舐め取ることで体調を良くさせたりする。その途中で発見された事例がある。
女性の場合は強く発情して、肌の張りや乳房の垂れがなくなるなど、男を惹き寄せる為に体調が良くなり、男性を惹きつける魅力が上げられる。
夫婦共生であった場合は女性器に寄生することで、媚薬と愛液の両方の機能を持ち男女の営みを激しくさせる。夫婦が眠ったあと、子宮から出て受精卵を持ち帰る。
こうして精子、卵子、受精卵のいずれかを読み取って理想とされるヒトの女性の体を学習する。遺伝子量が多い受精卵が一番魅力的であり、また成長が早いことが確認されている。
精子だけの場合、男性の求める魅力を十二分に表現する為、男性だけの家主の場合は特に本人のフェチズムに強い傾向がある。
卵子だけの場合、発情した女性と共に男性を惹きこむ為、家主の女性に足りない者を持つことが多い。
経歴を詰んだ球根の場合、男性を喜ばせる為に花弁の女性が増えてハーレム状態になることが確認されている。

一度読み取り終わると、雨が降る度に球根は急速に成長を始め、根は家屋の木の内側に潜り込みつつ家全体に寄生する。
太い根を張りあうことで木造の家の知らず知らずに強度は増し、みずみずしい根は衝撃と熱を吸収し、雨音や足音が極端に減る。中に居る人間は睡眠に快適さを覚え、歩く時の衝撃が和らぐ事で家での活動がストレスフリーになり、家で体を休めやすくなる。
これは性行為を快適に促す為のルーカスガダマの環境作りであり、人間を逃がさなくする為の工夫である。
始めは寄生されていたスライムだが、次は自分の体より大きく成長したルーカスガダマの茎に入り込んで、家中を自由自在に動き様になる。
そして雨季が近寄ってくると、ドアに根を張り、中に居る人間を閉じ込めてつるつるして柔軟かつ靭性のある真新しい根が侵食しだし、本格的な生殖行動に移るのだ。

男性のみの場合は、スライムが持ち帰った精子によって読み取られたルーカスガダマの花が開き、男性を閉じ込めた寝室に女性の雌しべが現れて誘惑する。
プレイ内容は男性のフェチズムの思うがままで、更に密室で催淫ガスを巻いたりすることで勃起を促すなどの行為がある為、失敗率は極めて低い。しかし、精子だけで生まれた雌しべは知能が低く喋る事が出来ない。
この時スライムは後手に回り、ルーカスガダマに必要な水分確保を中心として環境を整える。雨が降った時は顕著で、雨樋もない家なのに屋根から水が全く滴らない場合などは、スライムが水をありったけ吸収して保管しているからだ。
水分が十分に集まると、スライムもまた性行為に参加しだす。外に出られない男性の体の垢を消化して健康を促す他、精液を得る、ルーカスガダマから受け渡された催淫毒を体中に這いまわして男性の性感を高めたり、自身もペニスに絡みついたりする。
更に時間が経って精子が十分に溜まると、いよいよ家屋の外にも変化が見られる。
柔らかで音と衝撃の少ない屋内に比べ、外は硬い茨で覆われだす。また茨はモウセンゴケと同様に自らを食害しようとする虫を絡め取って消化する粘性の高い消化液を分泌し、トゲの生えた食虫植物の要塞と化す。
虫を消化して養分にすれば、それを蜜や果肉にして男性に食させ、長期に渡って搾精をする。その為、中の男性は言葉すら忘れてしまう程に虜にされてしまい、社会復帰が不可能とすらされてしまうのだ。

女性が混在する場合は、女性が仕事先などで男性を誘惑して家に引き込む。その為に待機時間が長く、男性が来るまでに十分な水分を確保していることが多い。
仕事先から帰って、女性が寝室に引き込むと、同様に二人を同じ部屋に閉じ込める。男性の時とは逆で、スライムキャリアが主体となる。
ここで初めてスライムキャリアは女性に侵食し、一体化する。そして卵子を得たルーカスガダマに精子を分け与え、受精卵を作り出すのだ。
受精卵で生み出されたクォリティの高い雌しべは、スライムキャリアに寄生した女性が母であり、また成長するので簡単な人語を解する様になる。
催淫毒塗れのスライムキャリア侵食された女性に加えて、受精卵で生み出された雌しべの魅力、環境のいい部屋に閉じ込められた男性の行く末は自明だろう。
言葉を解する為、男性のみの場合よりも搾精の期間が圧倒的に長く、母と娘達に囲まれて搾精される父親などのケースも存在する。
遺棄されて誰の目にもつかなくなった山小屋で発見された事例によれば、男性一人に対して雌しべとスライム含めると、配偶者が21人、親子3代にも渡り、実に60年も暮らしていた。
男性のみの場合でも同じだが、時間が経つほど雌しべもスライムも増えていく。

男性の知能は軒並み低下し、女性の体を喜ばすことだけに変質していた。催淫毒が体に染み込んでいる為か、他の女性に触れると感度を上げて、魔物娘も例外でなく撫でれば絶頂する程。
保護された彼は社会復帰が不可能とされ、パンデモニウムに送られたと言う。その後の消息は不明。

女性に誘い込まれた男性が、政治的な要人であった場合、急いで救助をしなければならなくなるが、これが特に困難で度々問題になる。
まず水分が多い為、火で燃やす事は出来ない。救助するにはドア部分を剣やハンマーで叩き壊す他ないが、茨についている消化液は腐食性が強く、短期間でやらねば、また茨に再生されてしまうのだ。
最悪、突入出来ても複数の部屋がある場合、蔦によって空き部屋に引きずり込まれて閉じ込められ、別の部屋で犠牲になるパターンもあるからだ。これが異名の一つであるラブホテルプラントの由来でもある。

救助されて夫が不在になっても、大体の場合は最低限の搾精が終わっており、繁殖可能の状態になっていることが多い。一度伴侶が居た花やスライム達は他の男性を襲うことなく素直に球根に戻り、元いた水辺へ戻る。
女性の姿をした雌しべを使って水辺に戻る為、行きよりも早く戻り、再び駆除しに来たとしても逃げられていることの方が多い。
救助の際に別の犠牲者が居る場合は、別の花を咲かせて続行するが、一度壊されて突破されると修理に要するエネルギーが多くなる為、余り派手に搾られることはない。
しかし、搾られた精子によって男性は住処や好みの女性を覚えられており、次のシーズンで狙いに来る可能性は非常に高い。

また、非常に稀なケースだが、迷い人が廃墟に雨宿りに来たところにバッタリ遭遇すると、木造でなくとも石造りの廃教会などでも巣を張りだすこともある。
廃墟は人間が居ないので、スライムキャリアが他の魔物娘を用いて虜にしている間に間に巣を作るなどのケースも存在する。その場合には受精卵を用いて、魔物娘の雌しべを作る場合がある。

世間が嫌になって駆け落ちしたカップルの理想のマイホームだとか巷では言われているが、狙って探すのはかなり難しい種である。
16/07/12 16:55更新 / 鳥のヅョン

■作者メッセージ
ヨーン君の翻訳著書ドキュメンタリーシリーズの第二段。
名前の由来はマダガスカル食人木が由来。逆に読んだだけです。イントネーションは「ルーカス・ガダマ」
ラルネ・リアード氏の由来はアルラウネとドライアド。安直。

ふと古い家を見て、壁周りにツタが張ってるの見て思いついてしまったので、こんなアルラウネ居たら理想のマイホームだってことで書いた。

勝手に新種の魔物娘を作ってしまってるので、二次創作のガイドラインとテーマから大きく外れてるわけでもないのですが、ちょっと大胆にやりすぎ感があるので、問題があれば削除もやむない姿勢ですし。
出来ることなら図鑑に正式に扱ってくれたらなぁとは思いますがね!
あらすじ文中の「眉唾かも」と言うのは、図鑑上未確認と言うメタ発言だったりします。

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