連載小説
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蕩ける歌声
 露店船区画を抜ける頃には、太陽はすでに頂点の位置にあり、普段ならそろそろお昼ごはんにする時間だ。
 しかし、シーフードサンドをはじめ、露店の様々な食べ物をいくつか回ったせいか、フリッツのお腹はすでにパンパンだった。

 いや、パンパンなのはお腹だけではない。
 フリッツの下半身が今まで以上にみなぎってしまっており、体中の熱がまるで一か所に集中したかのようだった。
 いったい自分の身体がどうなってしまったのか…………助けを求めようと、無意識にエレオノーラ姉妹の顔を見上げると、彼女たちも頬が鬼灯に染まっており、その色っぽい表情は一瞬見ただけでも釘付けになりそうだった。
 心なしか胸も張りつめているように見え、薄い服に突起がぴっちりと浮いていた。

(もしかして…………お姉さんたちも、僕と同じ…………?)

 店で売られていた食べ物に毒が入っていたとは思いたくないが、食事を繰り返すうちに、明らかに興奮の高まりがおかしいと感じた。
 そしてそれはセシリアとマノンも同じのようで、彼女たちがフリッツを見る視線は、今まで以上にねっとりとしたものになって、それがさらにフリッツの興奮度合いを高めてしまう。

「うふ……うふふふ♪ やっぱり、フリッツ君がお客さんでよかった♪」
「こんなに楽しい食事は、私も初めてよ♪
「う、うん……僕もとても楽しかったし、食べ物も……とっても美味しかった」

 美味しかったという言葉に、もちろん嘘はない。
 特にサイーダ島特製のサイダーは、炭酸飲料を初めて飲んだフリッツには非常に衝撃的で、店売りの瓶を2本買って、露店の食べ物を食べながらすべて飲み干してしまった。

 効果の違いはあれ、どれもこれもが多かれ少なかれ性欲増強の効果がある魔界料理――――コートアルフに売られているものは、比較的危険度が低いものが多いとはいえ、あれもこれも食べていれば興奮してしまうのも当たり前と言えよう。

「それよりもフリッツ君……眠くなってない? 疲れてない?」
「ふふ、「休憩」したかったら、いつでも言っていいのよ♪」
「休憩……?」

 「休憩」という言葉に、フリッツは何となく嫌な予感と、正体不明のドキドキを感じた。
 理解していないのは彼の心だけで、体はすでに、ささげるべき相手にその身をささげたい思いでいっぱいになっているようだ。

「まだ疲れてないよ! だからまだ大丈夫っ!」
「あら、そうなのね。じゃあ、次のところに行こうか」

(随分と我慢強いわね……さすが、商人の家の子ってところかしら♪ でも、それがまた、いいのよね…………♪)
(おまたもじもじして、かわいい………っ♪ 私をここまで我慢させるなんて、いけないコなんだからぁ♪)

 一方で、セシリアとマノンは、思っていた以上にフリッツに惹かれてしまっており、そろそろ我慢の限界に近いことを悟っていた。
 色っぽいお姉さんに見える二人も、なんだかんだ言って本格的な恋愛は初めてなのだ。


 こうして3人は、またしばらく水路を進みながら、アル・マールの景色を解説し始めた。
 試しに大通りの運河から横道に入っていくと、そこから先は賑やかな住宅街が広がっていて、観光地だけではない生活空間の魅力も堪能する。

「アル・マールはね、見るだけじゃなくて、住むのにもすごくいいところなの。フリッツ君のお父さんとお母さんがここに引っ越したのは、本当に大正解じゃないかしら♪」
「コートアルフに住むなら第5の島『ミラ』ってよく言われるけど、やっぱり私たちはこの島が一番好きよ」
「なんだか陽気なところだね。あっちこっちから歌が聞こえてくるよ」

 フリッツはまだこの島に着て間もないが、数日もすれば新しく生活する場所が決まるだろう。
 水路に隣接するおしゃれな集合住宅は、バルコニーの広さから察するに、一軒家とほぼ変わらない生活空間がありそうだった。
 心地よい潮の香りとともに目を覚まし――3人で笑い合いながらのんびりと朝食を取り――そのあとは、水路を散歩するのもよし、大広場に露店を開きに行くのもあり、神殿に歌を聞きに行くのも――――

(って…………あれ?)

 ここでの生活を想像するフリッツだが、なぜか両親ではなく、セシリアとマノンとともに住むことを想像してしまった。
 両親が大好きで大好きでたまらなかったのに、いつの間にか一緒になるのが、エレオノーラ姉妹になっていたとは…………フリッツは訳が分からず混乱してしまった。

「ああそうだ! 実はね、私たち姉妹も歌娘っていうこの島に伝わる歌を継承する役目を担ってるの」
「ここに住んでる人たちも、歌が大好きな人が多くて、あっちこっちから歌声が聴こえてくるのよ。素敵でしょう♪」
「お姉さんたちも、歌を歌うんだ! お姉さんたち、声がとってもきれいだから、歌もすごく上手そう! 僕もいつか聴いてみたいな!」
「まっ♪ 声がきれいなんて……そんなふうに褒められたのは、歌姫のアーリアル様以来だわ♪」
「いつか………なんて言わずに、今から聴かせてあげるわっ♪ フリッツ君には、ぜひとも聴いてもらいたいもの♪」

 今はよく案内役をこなすエレオノーラ姉妹も、本業は歌娘と呼ばれる歌い子。
 特にセシリアとマノンは、双子の姉妹ということもあって、二人で歌う時の歌声は100人分の歌娘に匹敵する力があるとさえ言われており、複雑に絡み合う複数のパートも難なく歌いこなしてしまう。

「それじゃあ……フリッツ君への想いを込めて、歌うね♪」
「歌の力、甘く見ちゃだめよっ♪」

 アル・マールには島の歌姫に代々伝わる「祝福の歌」というものがあるが、それ以外にも時と場合によって、独自の歌を歌うこともある。
 ベテランの歌娘ともなれば、自分たちが得意とするオリジナルの曲をいくつも持っていたりするものだが、セシリアとマノンの愛の歌は、二人で別々の音色の声を奏でるという非常に独特なものだ。

 歌の題材は…………『はじめましてとよろしく』

 出会ってくれてありがとう

 見つけてくれてありがとう

 初めて会ったその日から、恋は始まっていた

 そして、この恋に終わりはない

 なぜなら、私とあなたが見つめ合うたびに、恋は始まるから


 歌をじっくりと聴いているフリッツの心には、たくさんあるゴンドラの中から、真っ先にセシリアとマノンの姿を見つけたことを思い出した。
 たった数時間前のことなのに、どこか懐かしくて、しかしその瞬間だけは一生忘れないと思えるほど、脳裏に鮮明に焼き付いている。

 きれいなお姉さんがいる。優しそうなお姉さんがいる。

 一目ぼれだった。

 歌声が紡がれ続ける間、まるで体を優しく撫でまわされているように感じ、一呼吸する度に、吐息が媚薬の霧となって、胸の奥深くまで入り込んでくるかのようだった。


 そして、二人が歌い終わった頃には、フリッツはすっかり「出来上がった」状態になってしまった。
 身体のほてりが激しくなりすぎて、一刻も早く鎮めたかった。

「うふふっ……どうだった、お姉さんたちの歌♪」
「ちょっと効きすぎちゃったかな♪」
「私ね、フリッツ君を見たその時から…………ずっと好きだったの」
「運命だって思った。絶対に私たちのゴンドラに乗ってほしいって強く願ったわ」
「君の手から、ドキドキが伝わってくる。それに、エッチな視線で私たちを見てくれる♪」
「お姉さんも……もっともっと、フリッツ君のことを知りたいの」

 俯いて、熱い吐息を吐くフリッツに、止めとばかりに二人の手が伸びて…………敏感な部分をまさぐってきた。
 優しく撫でられるたびに、脳が痺れて、頭が真っ白になりそうだった。

「すごぉい……乳首も、オチ〇チンも、服の上からわかるくらいピンッって硬くなってるわ♪」
「そろそろ、休憩する? お姉さんたちに素直に言ってごらん?」

「休憩……したいです」

 こうして場面は冒頭へと戻る。
 ゴンドラは向きを変え、大通りの水路から一本の路地へと進んでいった。
 その先にあるのは―――――――
20/05/09 16:37更新 / ヘルミナ
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■作者メッセージ
〜返信コーナー〜

上位者の婿 様
>おねサンドショタックスするんだよ、あくしろよ

おねサンドショタックスを書けば免許証返してもらえるのですか(なんの免許だよ)

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