連載小説
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グレムリングライダー
最新鋭の旅客機が...。

「計器が全部死んだぞ、そんなバカな」

高度八千メートルで致命的なトラブルに遭遇する。

《こちらエア・メイプル143》
「エアメイプル143、どうぞ」
《両エンジンが停止しました》
「なんて事だ、もう助からないゾ♥」

成す術のないクルーに運命の時が迫る。
95トンの旅客機が急降下、何故こんなことに?



これは実話ではないし、公式の記録と目撃証言を基に構成されてるわけでもない。



モントリオールからエドモントに向かうB767は旅の後半に差し掛かっていた。
機内では副操縦士のアナウンスが流れ、よくあるフライトの日常がありました。
客席から同社の航空整備士が操縦席に見学に入り、新型機に心を踊らせていました。
143便の操縦士二人はベテランで、機長は一万五千、副操縦士は七千時間の経験を積んでいました。
整備士のディアスがよく見ると、グレムリン用の穴がありました。
イギリス系の航空業界では悪さをしないよう菓子を製造段階でいれることが慣例としてあります。(実話)
魔物娘のグレムリンの姿は見えませんでしたが、菓子を一袋入れると整備士は個人的に親交のある機長と雑談をすることにしました。
この時高度一万五千、マスクなしで外に出ようものなら10秒以内に死ぬ高さです。
勝手の違うハイテク機器に囲まれた空間は、機体の飛行時間も操縦士の経験にしても見知らぬ空間でした。
そして唐突にブザーが鳴り響き始めました。

「燃料ポンプ?」

燃料ポンプの圧力が異常なまでに低下した事を示す警告に全員が首を傾げます。
普通なら燃料が満タンではないですが、最適な分搭載されるのが常だからです。
燃料槽は左右両翼に一つずつ、長距離用の胴体に一つ、計3つ。
電気系統か何かのトラブルとして、彼らは特に危機感を抱いてません。
実際新型機は様々な小さなトラブルが起こるのが常です。
ですが薄々、一番恐ろしい事態がベテラン故に浮かんできました。

燃 料 切 れ 。

そして二つ目の警報が鳴り出しました。
管制コンピュータはそのような事態が起こる訳がないと言う記録があり、事実燃料関連はたっぷり給油されているはずです。
最悪なのは電子燃料計が故障しており、燃料の残存が分かりません。
整備士は給油バランスの都合か、片翼に偏ってるのでは?と推察しました。
しかしそれなら操縦に現れるはずです、機長は大事をとってウィニペグに向かうことを決意します。
そのとき、グレムリンがひょっこりと菓子を食べて言いました。

「にんげんさん、燃料ないけどそろそろ着くの?」
「え?片翼が?」
「どっちもないよ!」

事態が最悪な方向に降下しだしました。


18/10/27 03:37更新 / 拙歇セ洌!
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