読切小説
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流れる日々のその中で
わたしと彼は幼馴染。
お互いに負けず嫌いなわたし達はいつも競ってばっかりで、その勝負を取り決めた時もケンカの最中だった。
『お互いのどっちが先に結婚できるか勝負しよう』
これからもこの関係を望む気持ちと、相手の事を異性と意識してしまう事への照れと悔しさ。
それは思春期に入ったばかりの二人の胸に育ち始めた、新たな想いの表れだったのか。
そしかしの後も、二人のいざこざは形を変えながらも長く続く事になる。
そう、それはあの時の勝負が引き分けに終わった今でも。
娘を呆れさせながら、家に響く仲のよいケンカは今日も絶えることを知らない。
                                     リザードマン・それさえも尊き日々に







綺麗な寝顔だね。
    ──月明かりに照らされたあなたの横顔
かわいい寝顔だね。
    ──大切な人を夢見て浮かべるやわらかな微笑み
やすらかな寝顔だね。
    ──その夢にわたしの姿がないのはわかっているけれど
幸せなそうな寝顔だね。
    ──あなたの想いがあの子に向けられていると知っているけれど
嬉しくなるような顔だね。
    ──この恋に幸せな終わりはないとわたしは誰よりも理解しているけれど
あなたの寝顔を見ていられるだけで、ただそれだけで、わたしは本当に幸せなんだよ?
                                        ナイトメア・けれどわたしの夢は







まったくだらしがない、あたいの旦那ともあろう男がなんたるざまだい……!
え? 相手は五人でこっちは一人? はんっ、それがどうしたってのさ。
そんな弱腰だから一人も倒せずいいようにのされちまうんだよ。
いいか、男は気合だ、根性だ。腹に力込めてふんばりゃあケンカってなあ負けやしないんだよ。
それとも何か? てめぇの股にぶら下がってんのはカスカスのお手玉なのかい?
あん? 男だって弱い奴は弱いだぁ? 笑わせてくれる。あんたが弱いわけないだろうさ。
お、おうよ、昨日も一昨日もあたいたちを倒したくせに、てめぇが弱いだなんて言わしゃしねえってもんよ……こっちも五人がかりだったじゃないのさ……
                                               アカオニ・男の強さ







音楽はいい。
己の思いの震えるままに、腹を、胸を、喉を、体の隅々までをも震わせ、その思いを響かせる。
或いは楽器を自らの肉体の延長として、滾る思いのままに己の内側を外へ外へと響かせる。
そしてそれは僕らを包む空気を震わせ、その振動が聞く相手の耳を、鼓膜を、脳髄を震わせ、その体と心を響かせる。
ジョン・ベンソン、ラリー・フォード、マイク・プレスリー、ディーン・リトナー。
数多のミュージシャンが僕の心を震わせ、彼らにあこがれるように僕はギターをかき鳴らす。
しかし、いくら僕の思いが胸の内で荒れ狂おうとも、僕の指はそれに追いつかない。
いつかこの思いを多くの人に響かせられるように、偉大なる彼らのようにこのギターを自らと一つにできる事を願い、今日もまた僕は一人で夜の海辺に放った歌に乗せて弦を摘弾く。
ふと、僕の歌にもう一つの綺麗な歌声が重なった。
気がつけば、僕の隣に岩場に腰掛けるようにして綺麗な人魚が姿を現していた。

『いい歌ね』

短いが心のこもったその一言に僕は嬉しくなる。
ありがとうと、でもよくあそこまで綺麗なコーラスが出来たねと僕は感心した。

『あなた、いつもここでその歌をうたうでしょ? だから憶えちゃった』

そう彼女は告げる。僕はちょっと恥ずかしくなった。
だって、まさか誰かに聞かれているなんて思ってもいなかったから。しかもこの歌は──

『素敵な愛の歌ね』

いよいよ僕は赤くなる。
そんな僕に彼女はすっとしなだれがかり、やんわりと僕の抱えていたギターを横に置いた。
そして、やわらかな体を僕にそっと押し付けると、首を伸ばして耳元に熱っぽく囁いた。

『でも、今夜は私を奏でてみない?』

その夜、海辺には愛の二重奏が響き渡った。
                                           マーメイド・え?下ネタ?







「にゃにゃ〜ん! これ以上先に行くにはここで問題です……ってニャンだお前か。随分久しぶりじゃないか」
「ああ、久しぶりだな」
「で、ニャンだ? また今回も答えずに逃げ帰るのかニャ?」
「ふん、今日の俺を今までの俺と思ってもらっては困る。なにせ今日この日のために修行してきたんだからな!」
「ふふ〜ん。たいした自信じゃニャいか。それじゃさっそく第一も……」
「ここで第一問!」
「にゃにゃ!?」
「『ファラオ』とかけまして、『女性』と解く。その心は!」
「ちょっと待つニャ! 問題を出すのはわたしの方だにゃ……」
「ほい、後十秒。九・八・七……」
「にゃにゃん!? えと、あと、っていうかニャンだその問題形式は……ってああ時間が……!」
「……二・一・ブブー! はい、時間切れ。正解は『したわれています』でした」
「にゃ、にゃるほど、そういうことか。てか君もなかなかエッチにゃね」
「お前に言われたくはないわい! では二問目!」
「ふにゃ!? まだあるの!?」
「『暴君』とかけまして、『夜中の墓場』と解きます。その心は!」
「え〜と、あ〜と、う〜んと。暴君、王様、墓場、お化け……運動会? いやいや、んん〜〜??」
「……三・二・一・はい、ぶぶ〜」
「にゃ〜ん! もうわかんないにゃ!」
「正解は『きみがわるい』でした」
「にゃるほど、『君が悪い』と『気味が悪い』ということね。くぅぅ〜悔しいにゃ〜」
「はっは〜、俺の勝ちだな。では、これを受け取ってもらうぞ!」
「これは……腕輪?」
「ああ、指輪のサイズがわからなかったんでな。その代わりだ」
「ははぁ。でもなんでにゃ?」
「言っただろ? 『君が悪い』って。俺を惚れさせた、君が悪いんだぜ?」
「──きゅん♪」
どっとはらい。
                                スフィンクス・山田君座布団全部持ってって
11/03/31 00:49更新 / あさがお

■作者メッセージ
読後に感じるだろう「お前は何をしたかったんだ」感。
正直すみませんでした。
リハビリ兼ねつつ、短文と会話分の練習をしたかったんです……

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