連載小説
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『シロガネツムギ』
『シロガネツムギ』は名前の通り、濃い白銀色をした草である。
地面から真っ直ぐに伸びる葉が特徴的で、鋭利なものになれば指を切ってしまうこともあるだろう。
しかも葉の繊維は細かく硬いため、食用には適さない。

シロガネツムギは高山地帯の岩場に自生していることが多い。
岩場の隙間からちょこんと伸びるその様は、まるで研ぎたてのナイフが岩に突き刺さっているようである。
私がはじめて見たときには、薬になりそうとは考えもしなかった。
しかし、この草を好んで持ち帰る種族の魔物がいた。
「ゴブリン」である。

私はこの草を持ち帰るゴブリンの後をそっとついて行った。
シロガネツムギをどのように使うのか、少し興味があったのだ。
私は彼女達に気づかれないよう、ゴブリンの巣の近くにある茂みに身を潜めた。

ゴブリンの巣には、一人の男性が大の字で倒れていた。
顔も股間も粘液にまみれ、ここからでもわかるほどの青臭い香りが漂ってくる。
どうやら、彼はゴブリンに捕まってお楽しみを受けていたようだ。
しかも、ゴブリン達は代わる代わる彼のイチモツを貪っている。
少しぞっとした私は、手を合わせて男の不幸を嘆いた。

この時、私はシロガネツムギを割くゴブリンがいた事に気づいた。
シロガネツムギを繊維に沿って割いていく。
そして、繊維ごとに割かれたシロガネツムギを釜に入れて煮立てた。
釜の中では、まるで蛇のようにシロガネツムギが揺れている。

ここで、お楽しみを終えたゴブリン達が汗を拭きながら、釜の周りに座り始めた。
愛液と精液で見るも無残になった男の方は、足を震わせている。
ゴブリン達は、大きな木の実でできた容器に釜の中身を移すと、男の元へ運んでいった。
倒れる男の枕元にゴブリンが座ると、男に口移しで飲ませていく。

ふむと一人、したり顔になる私。
ひとしきり男に飲ませ終わった後、今度はその釜の中身を競い合いながら飲み始める。
この時点で、私はシロガネツムギに何らかの薬効があるのではないかと考えた。
男には申し訳ないが、私はこっそりその場を離れて高山地帯へ駆け戻る。
目的はもちろんシロガネツムギだった。

こうしてシロガネツムギを持ち帰った後、ゴブリン達の行動の意味を理解した。
シロガネツムギは熱を通すと、粘度の高い組織液を外に放出する。
この加熱された組織液には、高い栄養価が含まれている。
疲労回復、血行促進などにはもってこいであろう。

味は苦味が強く、ところどころ渋みと酸味がある。
また、臭いは青臭く、好んで飲みたくなるようなものではなかった。
しかし、ゴブリン達はそれをわかって飲んでいるようなので、彼女たちにとっての栄養剤なのかもしれない。

以上より、シロガネツムギの組織液は滋養強壮に大変効果的である
ただし、ひとつ注意点がある。
この組織液を薄めずに飲んでしまうと、精力過剰になり不眠の症状が出る。
そのため、病人や老人に処方する時は薄めて使わなければならない。

また、後にわかった事だが、組織液を取った後のシロガネツムギは、ゴブリン達が作る装飾品の材料として使われるようである。
シロガネツムギの硬い繊維を糸にして、ブレスレットやネックレスを作っているそうだ。
このように素材を有効利用する姿勢はゴブリン達らしいと記述し、今回の調査結果の締めとする。
17/11/30 23:57更新 / アカフネ
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