読切小説
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不思議の国クエストー寄り道ホワイトミストー
 草原に一本走る道をゆく途中、奇妙なものが見えた。

 遠目に見たところ草むらから生える白い饅頭のような何か…妙に興味を惹かれ、近づいてみる。
 おそらく巨大な茸か何かだろうとは思う。この世界に来てすぐ、身の丈を超えるような巨大なそれを見つけたことを思い出した。確か元の世界で見た茸図鑑に、白いボールのような形をした珍しい種類のものがあったはずだ。


………、


……、


…。




「えぇぇ………」

「おやこれはいいところに。そこな方、少しばかり助けてはくれまいか?」

 果たしてそこには、一人の少女が仰向けに倒れていた。




 ……身の丈以上に膨張した、自身の乳房に押し潰されながら。



――――――――――――――。







「一体何があったんですか…」
「いやー、少し前にとある勝負に敗れてしまってね。これはそのペナルティみたいなものかな。あはは。」
 僅かに桃色がかった白く艶やかな髪…それに覆われた頭から、大きく丸い耳を生やす少女。この世界に来てから聞いた知識によればドーマウスという種族だったように思う。まるで身動きの出来ない状態であるにも関わらず、さも大したことではないかのように彼女は宣った。

「まぁ、ここじゃあ稀によくある事だからね。それにこれでなかなか寝心地がいいんだよこの身体。」
「さ、さいですか……」

 ドーマウスとはよく寝る種族だそうだ。しかし自分の身体の一部を掛布団にしてでも寝るというのは中々に気合が入っている。



「それで私に何をしろと?言っときますけど貴女をどこかへ運べと言われても無理ですからね?」

 今の彼女の体重はその体積から推定するに数百キロに達しているだろう。現代日本で力仕事とは無縁の生活をしてきた自分にとっては、明らかに荷が勝ちすぎていた。

「いやいや、流石にそんな無茶を頼む気は無いよ。もっと簡単な事なのだよ。」

 そう言うと彼女は一度身体に力を入れ、起き上がろうとするような動作をする。しかしのしかかる柔肉はまるで持ち上がらず、その身をぶるりと震わせるのみであった。

「見ての通りぼくの手はこの肉塊の下だ。」
「はい。」
「で、ぼくの身体をこんなんにした攻撃の副作用か追加効果か何か知らないけど、妙に胸の先が疼くんだ。」
「はぁ。」
「でも手が届かないので…」
「ので。」
「代わりに揉んで欲しい。」
「ふええ!?」

 思わず変な声が出た。

「先ほどはああ言ったが、最近はこの疼きのせいで14時間くらいしか寝ていられないんだよ。これを鎮めない事にはそのうち満足に眠ることも出来なくなってしまうだろう。ああなんと恐ろしい、これは種族的アイデンティティの危機だ。…という訳なので頼むよ、先っちょだけでいいから。どうかぼくの上質な睡眠の為に!」

 そう懇願する少女の眼は真剣だった。
 睡眠に対する意識が高すぎる。…というか寝過ぎだろ。起きた後頭痛くなるわ。

「…いいじゃないか。減るものでもなし。」
「私の理性と正気度が減りそうなんですが……わかりましたやりますよ。」
「わーい。」

 意を決してそびえる双丘の前に立つ。
 改めて非現実的な光景だった。それの高さは自分の腰よりも少し高いくらい。手を伸ばしその先端に触れようとすれば膝が柔肉にややめり込む。

「うっ……」

 その感触に意識を取られ手が止まった。

「早く早くー。あ、届かなかったら抱きついてもいいよ?」
「いやそれは…」

 やめておきたかった。
 一応膝を少し埋めれば手は届く。しかしその膝に感じる感触が問題だ。大きさからして割と固そうに見えるそれは、しかし悪魔的な柔らかさで触れた個所を包み込む。触れた個所から力を吸い取られるかのような脱力感が拡がり、気を抜けば膝から崩れ落ちそうになる。もしこれに抱きつき埋もれてしまえば、二度と起き上がれなくなるような気がした。

 膝に力を入れ直し、再び手を伸ばす。真っ白な服に包まれたそれは、しっかりと形で位置を主張していた。本体に合わせてミカン程の大きさまで肥大したそこに掌を合わせ、握り込む。

「ひゃっ…!?」

 ドーマウスが声を上げたため、反射的に手を離した。

「ああ…ごめん。続けて続けて?」
「あ、ああ…うん。」

 再度手を伸ばし、恐る恐る握り…

「ふぅっ…!!そう、そのまましばらく揉み続けて…」

 意を決し、強くその突起を揉みしだいた。

「あ˝ぁ˝〜〜」

 可憐でありつつもどこか知的な雰囲気を漂わせていた彼女の表情が、崩れる。
 思わず手を止めそうになるが、しばらくそのまま続けろと言われたのを思い出し指を動かし続けた。独特の硬さと柔らかさを併せ持つその突起がぐにぐにと形を変える。

「ほああぁぁぁ〜!きもちいい〜〜」

 目に前に鎮座する巨大な白饅頭のその先で、少女は恍惚に蕩けていた。
 気付けば、あたりに甘い匂いが満ちている。不思議な匂いだった。嗅いでいると意識がふわふわとしてくる。腰の奥に鈍い快感が生まれ、それが重く、膨らんでゆく。性的な欲求が沸き上がり、目の前の少女がどんどんと魅力的に思えてきた。
 白くきめ細やかな肌と柔らかそうな白い髪は見ているだけでその触り心地を想像させ、幼い美貌は今はだらしなく快楽に蕩けているが、それもまたこちらの情欲を煽ってくる。それどころか、異形とも言うべき状態となっている首から下さえも、今は性欲を掻き立てる女体の一部として映っていた。
 そして

「あぁ…出る……」

 少女が小さく呟くと、掌に感じる布地が湿り始める。同時に漂う先ほどとは別種の甘い香り…。見れば、手に握った乳首からは母乳が染み出していた。
 それはみるみると少女の胸を包む衣服を濡らし、やがて地面へと吸い込まれていゆく。乳汁を染み出させる際には一際強い快感が伴うのか、彼女は口を突き出すようにして声にならない叫びを上げていた。
 
……。

 
 数分程そうしていただろうか…乳液の分泌が収まり、少女の呼吸が満足げなリズムに変わってきたところで、ようやく手を放す。周囲では少女が放つ甘い体臭と後から追加されたミルクの香りが交じり合い、吸い込む空気に甘みを感じる程に濃厚なフェロモンの坩堝と化していた。
 それを至近距離で摂取させられ続けた結果か、気づかぬうちに股間のものは今にも下着の中で暴発しそうなほどにいきり勃っている。あと少し、ほんのわずかな刺激が加えられるだけで下着を濡らすことになるのが自分でも分かる。意識した時には身体の方はもうそういう状態になっていた。あのまま手を離さずにあと少し意識を向けるのが遅れれば、気づかぬうちに射精に至っていたかもしれない。
 一方頭の方はというと、現在強烈な眠気に襲われていた。気を抜けばこのまま目の前の肉双丘の谷間に倒れ込みそうな状態である。
 どういうことなのだ。
 請われたとおり胸の先を揉んでいただけなのに気づけばこちらが満身創痍。頭が上手く働かず、立っているだけで精一杯な状況に追い込まれている。

「はぁ―――ッ、はぁ―……どうもありがとう…久々に満足できたよ。これでぐっすりと眠れそうだ。」

 呼吸を整えたドーマウスが言う。絶頂から降りてきたらしい。しかしこちらはそれどころではないのだ。

「ふふ、眠そうだね。ぼくの身体には眠りの魔力が流れていてね。それがミルクと一緒に外へ漏れてしまうみたいなんだ。」

 やはりこの眠気は彼女の母乳の…

「しかしぼくらが本来放出しているフェロモンは嗅いだ者の性欲を掻き立てるものだ。で、その二つが混じり合った空間に君は居る。つまり今君には強力な催眠と催淫の両方が掛かっているという訳だね。…どうだろう、ここは一度眠ってしまっては?ぼくの身体をきみのベッドとして提供しようじゃないか。なにも考えずそのまま正面に倒れ込んでくれればいい。夢精を伴う最高の眠りを約束するよ。」

「性欲と睡眠欲を同時に満たすことができる。素晴らしい事だとは思わないかね。さぁ、おいで。」
 
 甘い、甘い睡魔の誘惑。その声に引っ張られるかのように、身体が前へと傾いてゆく。
 両の足から力が抜け、ついにその白く深い谷間の底へと倒れ込んでしまった。乳液で濡れた純白の布地は予想以上によく伸び、ほとんど抵抗なく身体をその内へと沈み込ませてゆく。そして辿り着いた先、そこは一際濃厚なフェロモンと、染みついたミルクの匂いに満たされた牢獄であった。

「はぅ……」

 呼吸をした瞬間、肺と鼻腔を通して快楽が身体へと浸透してゆくのを感じた。
 同時に、一際強まった眠気に身体の支配権を奪われ、身動きが出来なくなる。  
 まぁ仮に催眠の効果を受けていなかったとしても、頭から腰までを全方位から柔らかな質量に拘束されているこの状態では同じことであったであろう。しかし、それに加えて眠りの魔力が作用することで、わずかな身じろぎすら許されない状態となっていた。そして身動きが出来ないまま興奮は閾値を超える。
 僅かな衣擦れの刺激が呼び水となり、下着の中で精が漏れ出す。併せて全身に染み渡る快楽と脱力感。そして射精の快楽と疲労感は更なる眠気を呼び、意識は急速に暗闇へと落ちてゆく…。



「ふふ、ようやく眠ったね。では、すばらしき淫夢の世界へようこそ。歓迎するよ。」

 自らの胸の間で眠りに落ちた男に対して、ドーマウスの少女は慈しみを込めてそう囁く。

「………スヤァ。」

 そしてその3秒後に寝た。







………、


……、

…。







「ふあぁ…よく寝た。」

 どれほどの時が経ったのか、この場に居る者は誰も分からない。しかしとりあえず先に目覚めたのは少女の方であった。彼女は自らの上でいまだ眠る男性を優しく脇に横たえ、『起き上がった』。

 起きる前までは身の丈を優に超えていた少女の胸は、今は彼女の頭と同程度のサイズにまで縮小している。しかし彼女の動作には妙な重量感があった。

「…ふむ。貰った精をもとに部分変身の魔術を覚えてみたが…どうやら姿を変えても体重は変わらないようだね。しかも、変身を掛けている間は魔力を消費し続けると…。これなら重力操作や転移の魔法を覚えた方が良かったかな。」

 ちなみに元々のサイズ(ほぼ平坦)まで戻さなかったのは彼女の欲望故である。


「………。」


 少々考え込む。

 そして彼女はおもむろに片足を振り上げ、…地面に落とした。

 足裏が接地した地点から、草原の大地に一本のひび割れが生まれる。それは少女のつま先が向く方向へと真っすぐ伸び、数十メートル先に鎮座する大岩まで至るとそこで爆発。それを粉々に粉砕し打ち上げた。

「威力が上がっている…。まぁ、増えた重さも使いようだね。」

 力に指向性を与え操る技術。元々何をするよりも寝ていたい彼女が、戦いすらも寝っ転がりながら出来るよう習得した術である。
 この技術を応用すれば、体力あるいは魔力さえあればあの身体でも一応は移動することができたのだが、彼女がなぜコスパの悪い変身魔術を取得したかと言うと…

「で、このサイズなら自分でも…」

 両の手をその胸の双丘に這わせゆっくりと揉みしだく。薄い布地を突き上げ位置を主張するその先端を指先が転がす。

「ふあぁ……」

 途端、少女の表情が蕩けた。あまりの快感と多幸感に思わず口端からよだれが垂れる。甘い、絶頂手前の快楽が永遠に続くような感覚。作り替えられた少女の双丘が生み出す快楽は、時間を忘れて酔い痴れたくなる魔性のそれであった。

「あ˝〜〜……と、いけないいけない。これでは永遠に続けてしまう。…しかしそれでも自分でするより人にしてもらった方が気持ちが良いね。」

 ちらっ。

 まだ草むらで寝ている名も知らぬ男性の方を見る。
 先ほど彼に彼に胸の先を揉まれた時は、今の快感に加えて謎の充足感があったのだ。そして

「この満足感と充足感。いやぁ、精を摂取しながらの睡眠がこれほど心地よいとは。新たな発見だ。彼には感謝とお礼をしなければなら……おや?」

 摂取した精の味を反芻しながら、彼女は気づく。
 その味わいがあまりにもピュアな事に。

「おやおやおや?」

 しゃがみ込み、彼の身体をまさぐる。
 契約の証が、どこにも見つからない…。少女の眠気が完全に吹き飛んだ。

「まさか…こんなところで未契約者だと?ああ何たる僥倖!素晴らしきかな素晴らしきかな!!これは何としても精神誠意、ぼくの生涯をかけてお礼をしなければ!!」

 横たわる男性を抱え上げ、彼女は家路を急ぐ。
 彼女にしては珍しく、急いだ。








………、


……、


…。






 まどろみの中、意識が戻ってくる。
 水平に横たえられた身体、顔面に何か暖かく、柔らかな感触が押し付けられていた。

 甘く、いい匂いがする。

 ふと、何かが唇の間を割って差し込まれた。
 無意識にそれを咥え、軽く吸うと、咥内に温かな液体が分泌される。甘い、味わいが拡がる。それは飲み込む前に粘膜から浸透し身体を巡り、やがて快楽となって下腹部に蓄積される。
 そしてそこに何かが触れ…

「……んん!?」

 意識が完全に覚醒した。

「んあ、起きちゃった。…でもせっかくだからこのまますっきりしようね。」

 顔面に押し当てられていたモノ…少女の白い乳房が一際強く押し付けられる。同時に、股間にあてがわれた彼女の手がゆっくりとそこを揉み込んだ。
 それは表面張力により零れずに済んでいたコップの水に指を触れるような行為。結果、それはひとたまりもなく下着の中で決壊する。

「ふふふ…お漏らし、気持ちいいね。ゆっくりするといいよ。」

 絶頂の感覚を最大限に長引かせる彼女の手技は心身に一切の抵抗を許さない。故に、その赤子をあやすかのようなその物言いにも羞恥や怒りを感じる事も出来ず、ただ快楽に流され為すがままとなるしかなかった。


……、


…。




「ほう、つまりきみはこの世界へ飛ばされてすぐあの近くへ転移してきたと。」
「ええ、まぁ…。」

 起きがけに一度精を搾られた後、円形の壁からせり出した段差に腰かけ問答を受けていた。どうやら眠っている間に彼女の家(?)に連れていかれたらしい。
 奇妙な家だった。
 まず異様に狭い。狭いのに天井は高い。部屋は円形のこの居室のみ。中心に床から生えたようなテーブルが備え付けられ、それを取り囲むように壁から段差がせり出している。その壁もテーブルも天井も純白の磁器のような素材で出来ており、まるで巨大な壺か何かの中に居るようだった。
 そして床には一面に白いクッションが敷き詰められ、強烈な甘い匂いを放っている。それらに遮られて確認はできないが、おそらく床も同じ素材で出来ているのだろう。

「なるほどなるほど。その時足下に魔法陣などは?」
「魔法陣…?かは分からないですけどそういえば何か光ったような…」
「やはり転移の罠だね。不幸にも来てさっそくそれを踏み抜いてしまった訳だ。あ、お茶が沸いたね。どうぞ。」
「はぁ…。あ、どうも。」
「ミルクは入れるかい?」
「いえ、このままで結構です。」
「そうかい…。」

 なぜか残念そうにされた。


「ところで、チェシャ猫からもう説明は受けたのかな?」
「一応…女王の城を目指すとか仲間を見つけてだとか、あと主な種族の説明を少々。説明中に飛ばされたのでたぶんさわりの部分しか教わってないと思うのですが。」
「けっこうけっこう。ならば話は早い。だったらぼくと契約しようよ。」

 そう嬉々として言うと彼女は自分の隣へと擦り寄ってきた。目線が重なる。重なっ…
……ん?

おかしい。

なぜ彼女と目線の高さが同じなのだ。
 
ふと、自分の手を見る。
…小さい。

 白磁の壁に反射する自分の顔を見る。…子供時分のそれである。

 目が覚めたら、身体が縮んでしまっていた。

「私に何をしたんですか…」
「どうやらぼくの欲望がミルクに溶け出したみたいだね。」
「なんですかそれは……」

 わけが分からない。

「まぁそれはいいとして…」
「いくない。…というか自分の身体の事といい状態変化に無頓着過ぎませんかね?」
「ん?んー、……まぁなんとかなるさ。」
「何とかて!」

 だめだ。そもそも思考が楽観的過ぎて会話が通じない。

「それよりそれより、契約の件なのだけれども。」
「それよりて…」

 もはや抗議する気も起きない。

「女王の城を目指すのだろう?だったらぼくと組めば楽が出来るのだよ。」
「楽とは?」
「ちょっと窓から外を見てておくれ。」

 言われた通り壁面に備え付けられた丸窓からガラス越しの景色を見る。一面の草原にまばらな木、岩、茸…。ここに来るまでによく見た光景であった。
 が、それらが軽い振動とともに急に横へと動き出す。

「家が…動いてる?」
「そう。可動式ポットハウス。ここからじゃ見えないけど外に車輪が付いていてぼくの力を動力に移動できるんだ。以前とある茶会で備品になった時に参加賞として頂いてね。この中に居ればただ寝ているだけでいつかは目的地に着くという寸法だよ。」

 家が動きを止めた。

「どうだい?きみはここでぼくのおっぱいでも揉みながらのんびり眠っていればいい。それでいつかは目的地に着くだろう。」

 そう言いつつ彼女は更に身体を寄せると、こちらの手をとりその胸の膨らみへと導いた。掌にずっしりとした重みを感じさせられる。外に居た時と比べればまだ常識的なサイズになっているとはいえ、彼女の体格を考えればいまだ不釣り合いなそれは嫌でも視線を引き寄せる。

「そういえば身体は元に戻ったんですね。」
「いや?戻ってないよ。今は変身魔法の応用で一時的にこの大きさに変えているだけだからね。術を解けば、このとおり。」
「どぅあっ!?」

 急激に膨張したそれに突き飛ばされ、下敷きにされた。
 質量の暴力。全く身動きが出来なくなる。
 床に敷き詰められていたクッションのおかげで痛みは無いが、テーブルに身体をぶつけなかった事は幸運であった。

「ああごめんよ。大丈夫かい?」
「もが…」

 顔面はクッションに埋まり、返事はくぐもって言葉にならない。背中にのしかかる質量に肺を押し潰され呼吸するにも一苦労だが、かろうじてクッションを通して空気を取り込む。

 しかしそれがいけなかった。


「――――――――――――ッ!?」

 衝撃が背筋を貫く。
 会陰の奥で爆発したかのような快楽が発生し、背中が不随意的に反り返った。

「あ、そういえば下のクッションにはぼくの寝あs…フェロモンが染み付いてるからあまり嗅がない方が……ごめん、遅かったね…」

 嗅がない方がと言われても位置が悪すぎる。上からの重さにより身動きが取れず、クッションに顔をうずめさせられている状況から脱出できない。外で彼女の胸に溺れた際に感じた甘い匂い、それを強烈に煮詰めたものが呼吸するたびに鼻腔を犯す。それはそのまま体の中で性感に変換され、下腹部に蓄積してゆくのだ。

「もが……‼」

 しかも皮膚感覚がみるみると敏感になってゆくのが分かる。肌に擦れる衣服の感触がくすぐったい。そしてそれは性感へと変わってゆく。
 このままではいずれ服を着て歩けない身体にされる…そんな危機感があった。

「それでその…契約、してくれるかい?」
「もが――――ッ!!」

 それどころではない。契約でもなんでもするからとにかく今は一刻も早くこの状況から脱出しなければならない。刻一刻と全身を性感帯に作り替えられてゆく実感が、気持ちを焦らせる。

「え、ほんと!?やったぁ!」
「む―――ッ!!」
「あ、ごめん。すぐに引き上げるね。」
「ぶはっ!!」

 どういう力か、のしかかる柔肉が波打ち上へと引っ張り上げられた。首から下を胸の谷間に囚われたまま、少女の眼前へと引き出される。
 そして、少女の両の手が頭の後ろへと回され、唇を奪われた。同時に左手の指に何かが嵌められる感触…。

「ぼくはドーマウスのアルベッセンス。ふふ、これからよろしくね。」
「ど、どうも…」
「…ということでおやすみぃ。」
「いやちょっと待て。」

 この状態のまま寝る気か。

「なんだい?」
「なんだい?じゃなくて。体、戻さないんですか。」

 いまだこちらは身動きできない状態なのだ。このまま寝られても困る。

「ん?戻ってるよ?さっきまでは魔法で変身していただけ。どちらにしろ眠ったら魔法は解けるんだから寝るときはこの状態だよ。」
「あぁ…なるほど…。でもとりあえず一度縮めてここから出してくれませんかね?」
「えー、いいじゃないか。若返って足の先まで包み込めるサイズになったことだし、このままきみもぼくの胸の中で眠りなよ。あったかいよ。」
「『胸の中で』って表現からこの絵面は普通想像しないと思うんですがねえ!?…それにトイレとか着替えとかどうしたらいいんですか。」
「んー服はとりあえず脱いでもらうとして」
「えっ…?」

 彼女がそう言うと同時に、着ていた衣服が消えた。首から下が見えないので確認しようがないが、この感触は間違いない。全裸の状態で全身が彼女の胸に包まれている。

「で、お尻用のワームを一匹召喚」
「何を…アッー!!」

 何かが尻穴に入ってきた。

「あとは1日2回浄化の魔法が発動するように設定して…これでよし。」
「これでよし。じゃなくて!!」
「…( ˘ω˘)スヤァ」
「寝たァ!?」

 こちらを文字通り手も足も出ない状況にしておきながら、その目の前で彼女は眠りについた。もういくら声をかけたところで起きる気配は無い。

「もう一体どうしたら……ひっ!?」

 ぞわりと。不意に全身を咀嚼されるような感触に襲われる。
 下方向から感じる振動。家が動き出したのだ。揺れ自体はそれほど大きなものではない。しかし、そのわずかな揺れが小さくなった身体を包むこの肉布団を震わせ、摩擦刺激となって襲い掛かっていた。しかも、先ほどクッションのフェロモンにより触覚を鋭敏化され、衣服を奪われたこの状態でである。
 
「と、とめ……あふ…」

 あっという間に精を搾られる。だが、家の移動による振動はそんな事には関知しない。故に止まらない。少女の身体は家と一体になることで、無慈悲な搾精機関と化していた。

「んん…」

 そして目の前からは甘い声が漏れる。同時に漂う先ほどとは別種の甘い香り。濃い、ミルクの匂い…。
 家の振動は眠る少女自身へも快楽を与え、床に擦れる彼女の乳頭から白い液体を搾り取っていたのだ。同時に、彼女の危険な催淫成分を含んだフェロモンも分泌され始める。それらが混ざり合い揮散し部屋に満ちるとなれば、この後の展開は想像がつくではないか。

「まずい…ねむ…」

 外で起きた事の再現、しかし今度は風の無い部屋の中である。空気中の成分はその濃度を上げ続け、かたやこちらは物理的に逃れる術はない。既に目の前の空気はうっすらと靄が掛かって見える。
 次目を覚ますのは一体いつになるのか。催淫による興奮を保ったまま寝かしつけられる奇妙な感覚を再び味わいながら、意識は今一度淫夢の世界へと落ちて行った。







――不思議の国のとある平原にて。

「さて皆々様方、本日はお集まりいただき大変どうもありがとう。それではこれより茶会を…」
「…南方よりこちらに向かってくる白い霧を発見。ホイール・オブ・ホワイトミスト。」
「…始めようと思いましたが延期します。これにて撤収!!」

 野外で今まさに開催されようとしていた茶会。司会のマッドハッターがやけくそ気味にそう述べると、参加者たちは無言で持ち寄ってきた品々を片付け、逃げる様に消えていった。

 ただ一人、椅子の上で居眠りをしていたドーマウスを残して…


………。


「んみゅ……あれあれ、みんなどこいったの…………あっ」

 只ならぬ雰囲気に目を覚ました彼女はきょろきょろと周囲を見回し、自分が深い霧の中に居ることに気づいたところで『やっちまった』という顔をした。
 しかしその顔もすぐに急激な眠気と快楽に蕩け、再び深い眠りにつく。眠る少女の薄い胸は、心なしか先ほどより厚みを増していた。



 不思議の国を走り回るとある車輪付きの巨大なティーポットは、いつからか白い霧を吐き出しその身に纏うようになった。
 その霧は吸い込んだ者を深い眠りに誘い淫夢を見せるという。そして眠っている間に被害者の身体を作り変えてしまうのだ。それが男性ならば子供の姿に、女性であれば乳房を膨張させ感度を引き上げる。
 霧に晒されている時間が長ければ、目を覚ました頃には赤子に近い姿になっていたり、身動きが取れなくなるほどに膨張してしまっていることもあるという。

 なんだか、ちょっとした災害として認知されるようになっていた。






「やぁ、そこのキミ。ちょっと助けてはくれないかな?」
21/04/24 04:08更新 / ラッペル

■作者メッセージ
解除不能のバステも使い方次第で武器になったりするかも?

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