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第10章 白蛇の独り言 後編
「有妃ちゃん…。ねえ、有妃ちゃん。ちゅーしていいかな?」

あ…。いけない!また物思いにふけってしまいました。
いつのまにか佑人さんが、うっとりとしたご様子でキスをねだっておられました。
私の事を心から求めて下さっているのがよく分かります。
その呆けた様な眼差しが嬉しくて、私は満面の笑みを浮かべました。

「はぁ〜い。いいんですよ…。お好きなだけどうぞ!」

佑人さんにそっと口づけします。舌を絡め、親鳥が雛に餌を与えるように唾液を注ぎ込みます。
私達はお互いに夢中になって柔らかい舌と唇を吸い続けました。

「んっ…。ちゅっ。んく…んく…。」

夢中になって私の舌を吸い、唾液を飲む佑人さんです。
いつもの事なのですが、佑人さんはこういった倒錯プレイが好きなのです。

もう!本当にいけない変態さんですねぇ…。

そこまで求めて下さって白蛇冥利につきます。でも、変態さんにはお仕置きですよ………。
私は佑人さんの頭が動かないように抱きしめると、長い舌を佑人さんの喉に侵入させます。

「むっ!んん〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」

 驚いて呻く佑人さんですが、私は構わずに喉奥を舐めまわします。
私のニオイを擦り付けるように激しく凌辱します。

「ぐっ…。むっ…。うっ…。」

私は舌をおチンチンのように何度も何度も抽挿させます。呻く佑人さんの喉を犯し続けます。
佑人さんの喉ま○こは温かくぬるぬるしていてとっても気持ちいいのです。

佑人さんが苦しくならないように気を付けてはいますが…大丈夫でしょうか?
様子を伺えば、恍惚としたようすで私の舌おチンチンを受け入れて下さっています。
良かった…。佑人さんも気持ちよさそうですね。

今にも蕩けそうな眼差しの佑人さんです。
あらあら…。私にこんな乱暴されてうっとりしちゃって…。
被虐的にもだえる佑人さん。とっても素敵です。

恥かしがって全部打ち明けては下さいませんが、佑人さんが相当のMなのは承知しています。
大丈夫ですよ…。私だったら佑人さんの全てを喜んで受け入れますからね!
そして佑人さんがお望みの事も全てかなえて差上げますから…。
うふふっ…。やっぱりこのお方の面倒をみられるのは私だけですねぇ…。

やがて舌を抜き、唇が離れても佑人さんはそっと頭を寄せて下さいました。

「大丈夫ですか佑人さん?苦しくなかったですか?」

「ううん。全然…。すごく良かった…。」

「よしよし…。可愛いですよ佑人さん…。」

私に甘えるお姿に気持ちが抑えきれず、頭を胸に抱いて差し上げます。
蛇体を優しく巻き付けると、佑人さんはあえいで喜んで下さいました。

可愛いお方…。本当は浮世の事は忘れてずっとこうして抱きあっていたい…。
二人だけの爛れた日々を送っても、全く困らないように準備は出来ています。

でも…佑人さんはやっぱり、それだけでは物足りないと思っていらっしゃる…。
ご家族やご友人。社会人としての日常。それらを大切にしておられるのは良く分かります。
わかっています。もちろん私も佑人さんの日常を壊すつもりはありません。

佑人さんでしたら私と二人きり。半ば監禁状態になっても笑って受け入れてくれるでしょう。
でも、内心ではやっぱり息苦しいと思うのです。あたりまえですが…。
大切なお方がつらい思いをされるのは絶対に避けねばなりません。

そうはいっても、いつの日か私も佑人さんだけを見つめる日々を送りたいのです。
佑人さんも乗り気なので、私の故郷の魔界に連れて帰って一緒にのんびりと暮らしたい。
何年後?いいえ。もっと先になることは間違いないとは思いますが。

とはいえ佑人さんは長男ですので、やっぱり親族の事は心配でしょう。
もし望まれるのなら、お義姉さんご夫婦にも魔界に移住して頂くのが良いですね。
そうそう!お義母さんとお義父さんも魔物化すれば魔界に来て頂くことが出来ます。
もちろんお二人が自ら魔物化したいという、その意思が必要なのは当然の事です。

こうして私達家族は魔界で生きて行くのです。
魔物には嫁姑等煩わしい問題は無縁の話ですので、その辺は大丈夫でしょう。
平和で安らか、エッチで気持ち良い日々を送ればみんな幸せになれます。

そうなるとお義姉さんの旦那さんと佑人さんの仲、まずこれを修復する必要がありますねえ。
事情が事情なので当然なのですが、佑人さんはあの方を大変に嫌っていますので。

さすがにお義姉さんも、二人が仲良くなれないのは仕方がないと思われています。
でも、顔を合わせたら挨拶する程度には交流して欲しいなあ。とおっしゃるのです。
無理をして余計に仲がこじれても困るので、少しずつでも何かしていきたいと。

ちなみにあれからお義姉さんとは良いお友達になれました。
可愛らしくて妙にほっておけない所は佑人さんと同じですね。
平日昼間、魔物喫茶でよくお会いして、一緒にお茶を飲んでおしゃべりします。

一生懸命お仕事されている佑人さんには申し訳ないです…。
でも、魔物になられて間もないお義姉さんに、私なら色々アドバイスが出来るのです。
お義姉さんへの手助けと思って許して下さいね。佑人さん。

それとお義父さんとお義母さんにも、それとなく勧めていきたいですね。
魔界の生活での素晴らしさと、魔物化する事のメリットの大きさを。
その結果魔物化に前向きになられればよいと思いますけれど。

うふふっ。これから忙しくなりそうですね。私達の未来の為にやる事は多いのですから………
















「ねえ有妃ちゃん。大丈夫?」

「………………え?あ、はい。ご心配なく!何でもありませんから。」

「本当に?なんかぼーっとしていたけど…。有妃ちゃんこそ無理しないでね。」
 
 「ごめんなさい。本当に大丈夫ですよ!なんといっても私は佑人さんをこうして抱っこしているだけで、すぐに元気になるのですから。」

気が付けば佑人さんが心配そうに見つめていました。
どうやらひどい顔をして考え事をしていたようですね。お恥ずかしいです…。
まったく…。私とした事がいけませんね…。今日はいつも以上に妄想を逞しくしてしまいます。
佑人さんを安心させようと私は笑顔を見せました。
そのまま顔をぴたっと付けて、すりすりと頬ずりしてあげます。

「あっ。もう有妃ちゃんったら…。くすぐったいよ。」

「うふふっ。だめですよ〜。佑人さんをすりすりするのが元気の秘訣なんですっ!」

恥ずかしがりながらも佑人さんは頬ずりを受け入れて下さいました。
ぷにぷにと柔らかい佑人さんの頬は温かく心地よいです。
さらに私は巻き付けた蛇体の力を少し強めて、両腕で上半身もぎゅっと抱きしめてあげます。

いけない。またやってしまいました…。

私ったらいつも気が付けば佑人さんを抱きしめて、蛇体でぐるぐる巻いてしまいます。
旦那様がいる同族やラミア属の方に話を聞くと、皆さんそうらしいですけど。
佑人さんはそんな私を喜んで受け入れて下さるのですが、やっぱり少し不安です…。
いつもこうで邪魔ではないかな…。鬱陶しくないかな…と。
様子を伺うと心から穏やかな笑みを浮かべていらっしゃいました。

よかった…。もっとも私の蛇体布団で包まれないと、夜は寝付けない佑人さんです。
私の抱擁を嫌がるなんて事ありえないのですが、でも時々気になるのですよね。

あっ…。

いつしか佑人さんが私の手を握って下さっていました。まだ不安なのでしょうか?
大丈夫。何も心配いりませんよ!
私は佑人さんを安心させる様にぎゅっと手を握り返してあげます。

「何でかな…。有妃ちゃんに手を握ってもらえるとすごくほっとする。」

「そう言って頂いて嬉しいです…。心配しないで佑人さんの事は、全部私に任せて下さいね…。」

すっかり落ち着いた佑人さんです。
蛇体の中で安らいでいる様子を見ると私も安心しました。
でも佑人さんだけではありません。私だってあなたと手をつなぎ合うと癒されるんですよ。

佑人さんを蛇体で包み込み、手をつなぎ合って、お互い一つになったかのようです。
温かく満ち足りていて平和な心持…。佑人さんと一緒。もう他には何もいりません。
願わくば佑人さんもそうであって欲しいのですが…。
いいえ…。もし違うのならば佑人さんがそうなるように仕向けたい。最悪、力ずくでも…。

このごろ、少し不安です。

お義姉さんが私達の家にいらっしゃった時の事です…。
佑人さんのお心は明らかにお義姉さんの方に向かれていました。
もちろん大切なお身内の事を心配されるのは当然です。それは良く分かります。
でも、その時私の心の仲に、言いようのない憂いと焦りが産まれてしまったのです。
もし佑人さんのお心が、このまま私から離れてしまったらどうしようと…。

佑人さん。色々不安なのはあなただけでは無いのですよ…。

こうして考えるとお義姉さんが結婚されていて本当に良かった…。
独り身の時のあの方は、佑人さんに強い想いを抱かれていた事は間違いありません。
でも、今のお義姉さんにとっては、なによりも旦那さんが一番大切のはずです。

佑人さんをめぐって魔物二人が争いあい、最終的には妥協して共有の夫にする…。
そんな想像するのも恐ろしい、最悪の展開は避けることが出来ました。
優しいお義姉さんと良好な関係を持つことも出来ました。

でも………。もう手遅れです………。

私の心にはすでに、昏く青白い炎が燃え上がってしまいましたので…。
もうこれを消す事も、抑えておくことも出来ません…。
この炎は私のみならず、いつしか佑人さんをも焼き尽くすでしょう………。
ああ。佑人さんにはこんな私を見せたくない!ずっと優しいお嫁さんでいたいのに…。

でも我慢する事なんか無い…。このまま佑人さんの身も心も堕としてさしあげようか…。
結果的には間違いなく幸せにできるのだから…。
















私が重苦しい澱んだ感情を抱いた時です。
それを察したかのように佑人さんがそっとおっしゃられました。

「えーとね。これも前に言った事だけど。有妃ちゃんがつらいなら、俺の事は君の好きなようにしてほしいんだ。時々有妃ちゃん思い詰めたような顔しているから、正直心配なんだよ。」

「あ、いえ佑人さん!本当に何も心配いりませんから…」

「あのね有妃ちゃん。有妃ちゃん程じゃないけれど、俺も君の事は色々わかるんだよ…。」

とっくにばれていたのでしょうね。佑人さんは優しく諭して下さいます。
労わる様な愛情を込めた眼差しです。その眼差しを受けて、暴走しそうな想いが正気に戻ります。

そうです。佑人さんはいつもこうおっしゃってくれるのです…。

嬉しい…。このお言葉で私は心から安心できるのです。
私が一緒に堕ちて行きましょうといっても、佑人さんは優しく受け入れてくれる…。
その信頼が私の衝動を思いとどまらせているのです。

「そのお気持ちはとても嬉しいです……。でも、よろしいのですか?」

佑人さんの深い愛情に目が潤んでしまいます。
嬉しいのですが、こんな事を真正面から言われるのはあまりにも照れくさいです…。
私は照れ隠しにからかうような事をいってしまいました。

「私は佑人さんの身も心も食らう醜い蛇の魔物なんですよ…。そんなことおっしゃられたら本気にしちゃいますが…。覚悟は出来ておられるのでしょうねぇ…。」

私はわざと視線を強めて嫌な笑顔を見せちゃいます。
うふふっ。びっくりしますか?怯えちゃいますか?
もちろんどんな状況になっても、佑人さんには絶対に酷い事はしません。

でも、マゾの佑人さんは私にちょっぴりSっぽく振る舞われるのが大好きなのです。
そんな時はとっても可愛い反応をするので、私も楽しみにしちゃっています。
いつも佑人さんを弄ぶような事をしてしまって、申し訳ないとは思いますけど…

どんな反応をするのかうずうずしていた私に、佑人さんはかぶりを振られました。

「そんなこと言わないで。有妃ちゃんはいつもとても綺麗だから…。それに、有妃ちゃんだったら…何をされても幸せになれるってわかるんだ。」

「いや。あの、佑人さん…。」

「ほら、前に有妃ちゃん言ったじゃないか。好きになるのに理由はいらないって!俺もそうなんだ。有妃ちゃんを信じられるのに理由はいらないんだ…。」

佑人さんは先ほどと同じような思いやりに溢れた笑顔を見せて下さいました。
予想もしなかった反応と素敵な笑顔です…。

ずるいです。これは反則ですよ佑人さん…。
こんな事をされたのでは私はもう限界です。

「佑人さあん…。」

思いが抑えきれずに涙となって溢れ出ました。
喜びを露わにして佑人さんにしっかりと巻き付きます。

「うわっ!有妃ちゃん!」

佑人さんは突然の事で驚かれたようですが、私を落ち着かせる様に愛撫して下さいます。
さっき私が目を覚ました時と同じような…そんな優しい手触りですね。

「有妃ちゃん。泣かないで…。」

「佑人さんごめんなさい。あ…あの。さっきのはちょっとからかっただけというか、佑人さんに酷い事したりなんて絶対に無いですから…。」

バカな悪戯が申し訳なくて何度も頭を下げる私ですが、佑人さんは優しくおっしゃってくれました。
そのお心遣いがとっても嬉しいのです。

「大丈夫!有妃ちゃんがそんな事をしないのはわかっているから」

「ありがとうございます。やっぱり佑人さんでなければ駄目です…。私の方こそお願いします。これからもずっとそばにいて下さいね…。」

私の心からのお願いに、佑人さんは笑顔でうなずいて下さいます。
やがて我に返った佑人さんは、恥かしいセリフを言ってしまったと、私の胸に顔を埋めました。

ふふっ。佑人さん可愛い…。そんな佑人さんは蛇体でぎゅーってしてあげますねっ!

そのまま抱き合ってお互いの温かさだけを感じあいます。
お互いの想いだけを確かめあいます。

「有妃ちゃん温かい…。」

「ああ…私の佑人さん私の佑人さん私の佑人さん…。」

私は愛するお方に何度もその名を呼びかけます。
大切な宝物のように最愛の人を抱きしめます。

自慢する訳では無いのですが、とても温かく柔らかい私の蛇体です。
全身を包まれて佑人さんはまた眠くなられたのでしょうね。
私の腕の中でうつらうつらし始めました。

「ふふっ。おねむですか佑人さん。」

「………ん。」

「まだ朝まで時間ありますから、ゆっくりお休みなさいね…。大丈夫。嫌な夢を見ないように、いい子いい子してあげますから。」

私は佑人さんを労わるように優しく撫で続けます。何度も何度もそれを繰り返します。
やがて佑人さんは穏やかな寝息を立て始めました。
可愛い。もっとなでなでさせて下さいね…。しばらくそのまま私は佑人さんを愛撫し続けました。

















本当に素直なお方…。もっとずるくてもよいぐらいなのに…。
ああ…このお方をこのままにして置けない。いつ他のメスに騙されるかもしれない。
それを防ぐ為には、もっともっと私のものにしないと…。
急激な焦燥感が襲ってきます。

佑人さんには私の匂いはたっぷりとつけてあります。
他のメスに横取りされることはまず無いでしょう。
でも、それではやっぱり心配なのです。人魔問わずいつ襲われるか分からない。

そんな事は絶対に許せない………………。

仕方がないですね。もう、これしかないです。
ごめんなさい佑人さん。出来ればこれは使いたくなかったのですが…。

私の手から青白い光がゆらゆらと発せられました。
以前見た佑人さんのお義姉さんが身にまとう炎。
それに似ていますがもっと青黒く、心中の苦悩を表すかのような重い色の炎…。

白蛇の炎とも呼ばれる私の魔力です。これを佑人さんに注ぎ込もう………。
そうすれば佑人さんは、今まで以上に私に依存して、私だけを見つめてくれます。
私が抱いている不安や悩みも全て晴れるのです! 
佑人さんも白蛇の炎の事は存じております。
その上で私のしたい事をして良いと言ってくださっているのです! 
 
とてもありがたいお言葉。喜んで甘えさせて頂こう。最近では何度もそう思います。
魔力を入れても健康には全く影響はありません。
もっともそれは、佑人さんは私が居なくては生きて行けない体になるという事ですが…。
でも私は佑人さんから絶対に離れるつもりは無いのです。別に気にする事では無いですねぇ…。 

魔力を入れて佑人さんのお心を無理やり捻じ曲げる事。
その行為には少なからず罪悪感があります。
私も今のままの佑人さんと、仲良く幸せに暮らしていきたい思いもあるのですから。 

そうですね…。出来るだけ我慢しましょう。でもそれもいつまでもつでしょうか…

ほんの少しの誤解や行き違い。
ささいな切っ掛けさえがあれば、私はすぐにでも魔力を入れてしまうでしょう。
確信ともいえる予感がひしひしと襲ってきます。

思わず一つため息を着きました。
歓喜と不安が入り混じった複雑な思いが心を押しつぶしそうです。
佑人さんはそれでも私を受け入れてくれる。疑いようがないのですが………。

ふと見れば、佑人さんはすっかり私に身を預けてお休みになっておられます。
私に抱き着いて、すやすやとお眠りになっています。
その可愛らしいお姿を見ていると、自然と笑みがこぼれました。
私は佑人さんの髪を撫で、額にそっと口づけします。

近い将来、私は佑人さんのお心を焼き尽くすでしょう…。
佑人さんの中から私以外のものを焼き尽くしてしまうでしょう…。
でもその代り、この愛しいお方は絶対に幸せにする。後悔なんてさせない。
私はその思いを新たにするのでした。










17/03/12 23:01更新 / 近藤無内
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初の有妃視点でのお話、いかがだったでしょうか?
今回もご覧頂きありがとうございます。

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