読切小説
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女王だからといって高圧的とは限らない
なぜ上流階級には社交パーティーなんてものが存在するんだろうと自分は思う。
父(といっても義理のだが)は『これは貴族として必要な事だから』と言って、
事あるごとに自分を連れて参加するのだが、自分はそれが本当に嫌だ。

別に自分は対人恐怖症というわけではない。
親交の薄い人や初見の人に挨拶して回るぐらい苦痛でも何でもない。

後継ぎを残せないまま老年にまで差し掛かってしまった父。
(表向きは)それに拾われたどこの子とも知れない自分。
そういった事情を知っている一部の連中が向けてくる蔑みの視線。
顔にツバを吐きかけてやりたいそいつらに、笑みを浮かべて話さねばならないのがひたすら不快なのだ。

陽が落ちて始まった本日のパーティー。
この国屈指の商人が抱える楽団が曲を演奏する中、自分は来客に顔を見せて回る。

「君もずいぶん育ったものだねえ。
 どうだい、そろそろウチの娘とデートでもしてみるかな?」
領地が近く親交も深い貴族の男性。
自分を幼いころから知っている彼は、冗談交じりに笑いながら言う。

いやいや、自分ほど年上じゃあなたの娘さんにはとても吊り合いませんって。
彼の娘はまだ七歳。いくらなんでも十歳上の相手とデートはないだろう。
「そうかい? でもあと数年したら少しぐらい付き合っても良いんじゃないかな?」
遠回りな政略結婚の打診。
彼は悪い人ではないと分かっているが、娘を道具とする考え方はどうにも苦手だった。
自分は曖昧に笑い“まあ、考えてみますよ…”と返して彼から離れる。
その後見知った顔数人に挨拶をして回っていると、イヤミな声がかけられた。

「おや、久しぶりですね。お父上はご壮健ですか?」
自分より数歳年上の男性貴族。
彼の曾祖父は当時の王の弟で、母親もどこかの国の王女らしい。
己の血筋は高貴だなんだとやたら自慢し強調する嫌な奴。
そんな男だから、心の底では血統不明の自分なんて野良犬程度にしか思っていないだろう。
極力話したくないので“たいそうな怪我や病気もなく健やかです”と最低限のことを伝えてさっさと離れることにした。

一通りの挨拶が済んだ自分は、二階のバルコニーに出て外の空気を吸う。
涼しくて澄んだ外の風は、嫌な奴に応対して鬱憤が溜まった自分の頭をすっきりさせてくれる。
流石にパーティーの終わりまでここにいるわけにもいかないが、もうしばらくはこの心地良い風に当たっていたい。

自分は瞼を閉じてそよそよと吹く風を浴びる。
このまま眠れたらさぞかし良い気分だろうなあ…と考えていると背後から声がかけられた。

「ああ、もしそこの方。なにか気分がすぐれないのですか?」
耳に心地良い女性の声。それに目を開けて自分は背後に振り返る。

そこにいたのは屋内からの照明でやや逆光になった女性。
歳の頃は二十代前半といったところだろうか。
頭の後ろで結い上げられ、光を反射し輝く金髪。
身にまとった黒紫色のドレスは胸元が乳房が零れ落ちそうなほど大胆にカットされ、
左横に入ったスリットは腰の上まで伸び、白い肌を惜しげもなく晒している。
夜会の参加者は背や首回りの肌を晒す衣装を着ることが多いとはいえ、
彼女のドレスは娼婦と見間違うほどの露出ぶりだった。
それでもその衣装が下品に映らないのは、彼女自身の美しさと気品に満ちた雰囲気ゆえだろう。
自分はその美しさに目を奪われ、返答もせずただ彼女を見つめてしまう。
その様子に彼女は首を傾げると、コツコツとヒールを鳴らして近寄り再び話しかけてきた。

「大丈夫ですか? 調子が悪いなら部屋をお借りして横になった方が……」
まだパーティーが始まってそれほど経っていない。
宴もたけなわになった頃なら、酔いを覚ましにやって来る人もいるだろうが、
今の時間にたった一人でバルコニーにいるようでは、心配されてもおかしくないかもしれない。

あ……いえ、大丈夫ですよ。少し外の風を浴びたかっただけですので。
ハッと我に帰った自分は心配不要と彼女に伝える。
「あら、そうでしたか。それは余計な口出しを……」
『余計なことをした』と言いつつ自分の右横に立つ女性。
彼女はそのまま手すりに肘をかけると、首を向けてこちらを見た。
美しい顔に見つめられるのは悪い気分ではないが、こんな女性のことは知らない。
忘却するにしてもこれほどの美女、一度でも顔を会わせたなら絶対忘れるはずがない。
こんな近くで見つめられる理由も分からないまま自分は無言で佇む。

「……あなたはどちらからいらした方でしょう?」
何とも言えない沈黙を破るように、問いかけをしてくる女性。
自分はそれでまだ挨拶をしていないことを思い出し、慌てて家柄と名を名乗り頭を下げる。
「これはご丁寧にどうも。わたくしは―――」
初めて出会った女性。その名も家柄もやはり初耳だった。

自分が不勉強で恥ずかしいことですが、初めて耳にする家名ですね。
いったいどちらからいらしたのですか?
正直に“知らない”と言うと、彼女はフフッと笑って口を開いた。
「あなたが存じなくとも仕方のないことです。
 わたくしの国はここより遠く離れた地にありますので。
 今宵は偶さかの用件で知人を訪ねたところ、夜会に誘われたのですよ」
『たまたま知り合いに連れてこられただけ』と明かす女性。
なるほど、それなら自分が知らないのも当然だ。
だが、そんな立場の彼女がこんな所に居ていいのだろうか。
誘ったという知人と共に他の参加者と語り合い、人脈を広げておくべきではないのだろうか。

「素性を明かすと、誰もが驚き厄介なことになるのです。
 ここだけの話ですが――――実はわたくし、一国を統べる女王なのですよ」
己の正体は女王であると語る女性。自分はそれに失笑を浮かべてしまう。
今夜のパーティーは確かに貴族や富裕者が集っているが、
女王自身が参加するような格調高いものではない。
確かに彼女は国一つ治めていてもおかしくない気品を備えているが、女王云々はただの冗談だろう。
それにつられて自分も一つ“冗談”を口にする。

これは何とも奇遇なことですね。
内緒の話ですが、実は自分もこの国の王子なんですよ。
これは本当に内緒の話。
自分の実の父親はこの国の王だ。ただし母親は王妃ではない。
いわゆる隠し子というもので、お家騒動の原因になるとして後継ぎのいない今の父に預けられたのである。
この事実を知っているのは自分と父と国王、あとは隠蔽工作した関係者ぐらいのものだろう。
王子としての地位はないが、血筋は紛れもなく“王の子”なのだ。

「これは本当に奇遇なことですわね。互いが素性を隠した王族だったとは……」
こんな“冗談”を話された女性は、面白いことを聞いたように口元に手をあてクスクスと笑う。
「では二国間の友好を願って、もう少し親交を深めませんこと?」
女性はそう言うと左足を少し動かして、スリットから完全にはみ出させた。
血が通っているのか怪しいほど白い腰を左手でなぞり、淫靡な雰囲気を醸し出す。
左手がなぞった時に気がついたのだが、彼女の腰には布どころか紐さえなかった。
つまり……目の前の女性は下着を身につけていない。
彼女が“何をする気なのか”を理解できないほど子供ではないが、
常識外れの振る舞いに自分は身を引いてしまう。

あ、と……女王ともあろう方が、こんなおふざけは宜しくないのでは?
別に自分も本気で彼女が女王だなんて思ってはいない。
彼女だってこちらが王子だなんて信じてはいないだろう。
それでも初対面の相手といきなり性交に及ぶのは問題だ。

こういったパーティーでは親に連れられた婚約者同士が参加することもよくある。
酔った婚約者たちがその勢いでコトに及ぶこともそう珍しくはない。
ホスト側もそういった事情を考慮し、休憩用の部屋を幾つも用意してある。
しかし自分と彼女は何の関係もない赤の他人であり、そんな事をする仲ではない。

「……身持ちの硬い方でいらしますのね。ますます気に入りましたわ。
 ではいかがでしょう王子。わたくしと結婚するというのは」
突然の結婚申し込み。自分はあっけに取られ言葉を失う。
「わたくしは女王の位におりますがいまだ独身。
 伴侶を探している最中なのですが、相応しい男性はなかなか見つからないのです。
 ですがあなたはこの国の王子。女王のわたくしとも吊り合うではありませんか」 
自分の言った“冗談”を本気に受け取ってしまったのか、女性は婚姻を盛んに勧めてくる。
彼女の素性は全くもって不明だ。一夜の過ちで関係を持ってしまったら、
後々どのような騒動が起きるのか見当もつかない。
雰囲気ぶち壊しになるが、もう強引に話を断ってしまおう。

あはは、自分が王子だなんて冗談ですよ、冗談!
女王のあなたなら、より相応しい男性が見つかりますって!
“はい、お終い!”と会話を打ち切ろうとする自分。
だが彼女はそんな空気を読まずに話を続けようとする。

「そうでしたの? 王子を騙るだなんてずいぶんと不敬ですわね。
 しかしこの夜会に出席している以上、あなたも相応の家柄でいらっしゃることでしょう?
 それならばわたくしの伴侶として十分ですわ。
 いかがでしょう。夫となって共に国を治めては頂けませんか?」
コツッとヒールを鳴らして一歩身を寄せる女性。
あまりに濃い女の色香が自分を包み、脳の判断力が低下する。
この女性が本物の女王のように思え、彼女との婚姻が酷く素晴らしい物のように感じてしまう。
……いや、素晴らしく感じるのは婚姻そのものではなく彼女自身だ。
きっと首を縦に振れば、彼女は思う存分肉体を貪らせてくれるだろう。
未だ女を知らない自分にとって、その誘惑はあまりに強すぎた。
後でどんな面倒が起ろうが構わないと、彼女の求婚を受け入れてしまう。

しがない貴族で公にはできない王子ですが、それでも宜しければ……。
後ろめたい声で了承の意を返す自分。
求婚が受け入れられた彼女はにんまりとした笑みを浮かべ、満足したように頷く。

「あなたは嘘つきな王子さまでしたのね。でも、許して差し上げましょう。
 さあ、わたくしと夫婦の契りを交わし、親交を深めようではありませんか」
女性は左手をこちらの股間に伸ばし、そっと撫でる。
そして股間の膨らみを確かめると、嬉しそうに目を細めた。
「こんなに大きくするだなんて、あなたも早く交わりたいのですね。
 では、この場でしてしまいましょうか」
『この場で』という発言にのぼせていた自分の頭は少し思考力を取り戻した。

待ってください、ここにはいつ人が来るのか―――。
“わからない”と言おうとすると女性は右手の人差し指を軽く振った。
するとバルコニーに通じる扉が勝手に閉まり、邸内からの雑音が一切聞こえなくなった。
それどころか、庭園の木の陰で鳴く虫たちの声さえ消えてしまった。

「わたくし、邪魔者には一切容赦しない主義ですの。
 これでこのバルコニーはもう完全な密室。
 どれほど騒ごうと外に気付かれたりはしませんわ」
指の一振りで扉を閉じ音を消してしまう女性。
自分は魔法に詳しくはないが、かなりの腕前だと想像はつく。

……ずいぶんなお手前のようで。
「この程度、子供のイタズラですわ。それよりも早くわたくしと……」
女性はこちらに背を向けると、パルコニーの手すりに左手を乗せて尻を突きだした。
そして肩越しに振り向くと右手でスリットの端を握り、スカートを右へめくってしまう。
自分の目にさらされた彼女の尻肉は綺麗な白。
その美しい尻肉の下にはパクッと割れた女性器があり、粘液がポタポタと零れ落ちていた。
自分はゴクッとつばを飲み込むと、いそいそとベルトに手をかけて下を脱ぎ去る。
誰にも見せたことのない勃起した男性器。彼女はそれを目にすると目元を緩ませて微笑んだ。

「さあ王子、その硬くなったモノでわたくしと繋がりましょう。
 方法はご存知ですわね? よだれの止まない穴にちんぽを入れるのですよ」
そう言うと女性は右手をドレスから離し手すりに掴まった。
自分は頷いて返すと、美しく柔らかい尻肉に両手をかける。
そして男性器の先端を穴の入り口に当て――――腰を突きだした。

「んっ! お、お、ちんぽが、入っていますわ……!
 あっ、わたくしの…まんこ、広がってっ……!」
快感にトーンの上がった声で卑猥な言葉を喋る女性。
だがそれを聞く自分は恥ずかしいだの下品だのとは思わなかった。

熱くてねっとりとした肉ひだに覆われた女性の膣内。
ズブ…ズブ…と進むごとにヒダヒダがまとわりつき、男性器に快感を与えてくる。
自分は呻かないよう歯を食いしばり、より奥へと腰を進めた。
しかし肩越しにそれを見ている彼女は呆れたようにフゥ…と息を吐く。

「何を我慢するのです王子。ここにいるのはわたくしたちだけ、
 どれほど下品で変態的な事をしようと、誰も咎めませんわ。
 わたくしのまんこが心地良いなら、遠慮せず喘いでくださいませ。
 その方が交わりの快楽が高まりますわよ?」
『誰も見ていないのだから気にするな』と言う彼女。
自分はその言葉に従い口を開いて熱い呼気を吐き出す。
そして微かに声を漏らしながら、腰を動かし始めた。
彼女は満足したような顔になると、前を向いて喘ぎ声を漏らす。

「ん…それで、良いのですよっ! わたくしのように、騒がしくてもっ…! 
 わたくしはちんぽと口にするたびに、あなたが愛おしくなりますわ!
 ああ、もっとちんぽをくださいませ! 
 わたくしのまんこにちんぽの味を覚え込ませてくださいませっ!」
女王は女王でも、淫乱女王という感じに乱れる女性。
自分は彼女のように淫語を口にすることはできないが、
彼女が発する卑猥な言葉には欲情がかき立てられ、好意が湧いてくる。
腰を打ちつけるだけでは足らず、自分は彼女の脇の下から手を回してドレスの胸元を降ろす。

「あ、胸を触るのですね? いえ、よろしいですわ!
 この乳房もあなたの物になるのですもの!
 女王の乳房、好きなだけ揉みしだきなさいな!」
言葉に甘え、両手に収まりきらないサイズの乳房を握る自分。
初めて触れた女性の胸は思っていた以上に柔らかく、指が沈み込んだ。
自分はその感触を味わうように白い乳房をこね回し弄る。

「あはっ! あなたの手つき、とても良いですわっ!
 そんな揉み方をされたら、この歳でも胸が育ってしまいそう!
 これではドレスを新調せねばなりませんわね!
 あなたはどのようなドレスがお好みで!?
 スリットを深く? 胸元を広く? それともシースルーがよろしいかしらっ!」
乳房を弄られながら服の話をする女性。
彼女ならばきっと何を着ても似合うだろう。しかし最も美しいのは全裸姿だ。
今の自分はそう考えながらパシンパシンと腰をぶつける。
彼女の性器から溢れる体液で、お互いの股間はびしょ濡れだ。
そして液体の水源であり、最も濡れている彼女の膣内。
そこを彼女の肌よりも白く汚そうと自分の体液がこみ上げてくる。

「あら、ちんぽがビクビクしてきましたわね。そろそろ限界ですの?
 我慢する必要はありませんが、出すときはまんこの中にお願いしますわ!
 夫としてきちんと妻を孕ませてくださいませ!」
自分たちは結婚どころか婚約さえ交わしていない。ただ勢い任せで口約束しただけだ。
しかし彼女の肉体はこれ以上ないほどの快楽。膣外射精なんてとてもできない。
射精したら首を刎ねられるとしても、抜くことはできないだろう。
自分は胸から手を離し、再び彼女の尻を押さえて腰を前後させる。
その速度が上がるほど快感が高まり、彼女の嬌声も高くなる。
一突きごとに彼女の踵が浮き上がり、ハイヒールがコツコツと床を打ち鳴らした。

「ん…あっ! あなたのちんぽ、ますます硬くなってるっ……!
 素敵っ…! 素敵すぎますわ、わたくしの王子さまっ!
 もっとまんこをほじくり返してくださいませ!
 わたくしに子種を……わたくしと一つにっ……!」
髪を振り乱して背をのけぞらせる女性。
その瞬間“絶対抜かせない”と言わんばかりに膣内が男性器を強く締め付ける。
自分は誕生して以来、最大級の快感を受けながら彼女の膣内に射精した。
「んぁぁっ! ちんぽ汁っ! ちんぽ汁出てるっ!
 わたくしのまんこでちんぽが暴れてますわっ! あっ、あっ、まだ出るっ!
 わたくし、孕んでますわっ! あなたのちんぽ汁で身籠らされてますわぁっ!」
精液全てを搾り取ろうとするように蠢く膣壁。
自慰と違いなかなか収まらない射精に自分は目眩を感じ、
彼女は妊娠することに喜びの悲鳴をあげながら達した。

射精が終わった後、情けないことに自分は床にへたり込んでしまった。
快楽や精神的疲労で立っていることが億劫になってしまったのだ。
下半身丸出しで床に尻をついている自分はさぞかし見苦しい姿だろう。

一方、あれほどに乱れていた彼女は、呼吸こそ荒いが足元はしっかりしたもの。
手すりから手を離すと、優雅に振り向いて微笑ましい物を見るように自分を見下ろす。
もっともその衣服はへたっている自分以上に見苦しいものであったが。

ペロンと剥けて乳房を隠さないドレスの胸元。
膣から零れ落ちた精液が染み込んだスカートの布地。
体液でベタベタに濡れたストッキング。
いやもう、これじゃ広間に戻れないだろというありさま。

……ドレス、どうしましょうか。
彼女のドレスを汚した責任は半々だ。
このままほったらかしで、自分だけ中に戻るわけにもいかない。

「どうぞお気になさらず。この程度の汚れ、こうすれば……」
紫の布地をスッと撫でる女性。
すると青白い光が薄く走り、汚れが全て消え去ってしまった。
そして綺麗になったドレスの胸元を直し、彼女は初対面の時と同じ外見に戻る。
……いや、全く同じ外見ではなかった。
元から白かった肌は明らかに人外と分かるほどの色白になり、
変哲のなかった瞳の色は、鮮血のような赤色に染まっている。
人間は様々といえど、こんな風に体の色が変わるわけがない。
つまり――――。

なんだ、魔物だったんですか。
取り乱すこともなく、自分は彼女に向けて言う。
その反応に女性は『おや?』と言いたげに首を傾げた。
「ずいぶん落ち着いているのですね。わたくしは魔物なのですよ?
 もっと大きな反応があると思ったのですが」
自分が逃げたり慌てたりしないことを疑問に感じたのだろう。
しかし少しばかり魔物のことを知っている自分はそうはならないのだ。

自分の家なんですけどね、実は魔物との外交役なんですよ。
これは一応の国家機密だが、魔物相手なら良いだろうと自分はばらしてしまう。

この国は反魔物国家ということになっている。
どこの町にも主神教団の教会があるし、どんな田舎者に訊いても『反魔物だ』と答えるだろう。
しかし現実として魔物側は教団側をかなり押している。
『このまま教団べったりでは危うい』と考えた以前の王は、密かに魔物との外交も持ち始めたのだ。
もし教団が追い詰められ滅ぼされても、魔物側についてこの国は存続できるようにと。
当然だが、教団にそんな事がばれたら一巻のお終い。
なので魔物との外交は、本当に信用のおける一部の者だけしか知らないのである。
自分が父に預けられたのも、こういった役割を負わせられるほどの信用があったからだ。
また父が老いて亡くなっても、後継者の自分は王の血筋。
国の不利になることはしないだろうという、最低限の信用があるのだと思う。

「まあ、それはなんという奇跡でしょう!
 女王のわたくしと外交役のあなた、これはもう運命なのでしょうね!」
こちらの素性を知った女性は感動したように声をあげ肩を震わせる。
それはどうでもいいのだが、その設定はまだ引っ張るのか。
「設定? 何のことでしょうか?」
いやだから、女王とか冗談を「わたくしは女王ですわよ。正真正銘の」
こちらの言葉を遮り、至極真面目な顔で彼女は女王だと語る。
「わたくしが治めるのは、徒歩でなら数年はかかる所にある不死者の国ですの。
 表立って外交できないこの国の方では、遠い我が国をご存じなくとも仕方ないのでしょうね」
遠い国の女王さま。冗談だと思っていたその肩書が急に現実味を帯びて肩にのしかかる。
もしかして、かなりの大事をやらかしてしまったのではないだろうか……。

「さて、王子さま。あなたのお父上にお目通りを願ってもよろしいでしょうか?
 我が国との外交からあなたとの婚姻まで、片付けねばならないことが山積みですわよ」
国交がないとはいえ、一国の女王と結婚の約束をし交わってしまった。
これは冗談では済まされない重大事案だ。
父にどう説明したものか…と考えながら、自分は彼女に肯いた。



身を正してバルコニーから出た後、自分は父に女王のことを紹介した。
彼女を見るなり『何とも美しい方で』と頬を緩ませた父も、
事情を聞かされると外交役としての真剣な顔になった。
そして自分を連れて三人で休憩室へ入ると、後は政治的な話。
二人は国の代表として自分そっちのけで込み入った話を繰り広げた。
もうすぐ夜会も終わりという時間まで二人は話し合い、暫定的に父が出した結論は。

「良い話だと思うぞ。おまえが女王陛下と結婚すれば、我が国の王家とも縁戚関係だ。
 遠隔地なら魔物と強固な同盟を結んでも発覚の恐れは低い。
 最終的には王次第だが、まず却下はしないだろうな」
とのことで、父は『良い縁談だ』と結論付けた。
そして結論を出した後は父親としての顔に戻り、渋い顔でお説教をしだした。

「おまえもいつかは結婚すると思っていたが、まさかこんな形でとはな。
 相手方が魔物だったから良かったものの、
 企みのある人間だったらどんな面倒事に巻き込まれたか分からんのだぞ?
 貴族としてもっと自制心と警戒心を持たんと」
全くもっての正論。父の説教に自分は“う……”と恐縮するしかない。
父は何も言えない自分の頭を小突くと、女王に向かって言葉を発した。

「御覧のように我が息子は思慮の足りていない若造です。
 貴女様に多大な迷惑をおかけするでしょうが、
 なにとぞ深い慈悲と寛容をもって迎え入れてくださいませ」
腰を折って深く頭を下げる父。
女王も父ほどではないが、頭を下げて礼を返す。

「迷惑でなど決してありませんわ、お義父さま。
 あなたの御子息を選んだのはわたくし自身ですもの。
 女王の名にかけて彼を愛し受け入れると約束いたします」
楽しそうに微笑んで父に言う女王。
自分はその美しい顔を見ながら“そういやまだキスしてなかったな…”と場違いな事を思った。



他国の王族同士が結婚するとなれば、大々的に周知されるのが普通だ。
それはお祝いごとだからという理由ではなく、国際情勢に影響を与えるから。
例えば、小国のお姫さまが大国の王子さまと結婚すれば、
いままで小国を軽んじていた周辺の国も認識を改めねばならなくなるだろう。

しかし自分は公にできない王子であり、結婚相手の女王は魔物。
この国で大っぴらに周知することなどできない。
自分の結婚は『どこぞの貴族の息子が遠い国に婿に行ったらしい』程度の話で片付けられることになった。

そうして女王が治める不死者の国へと嫁いだ自分だったが、
長距離用のポータルを抜けた時“うわ……”と驚きの声を漏らしてしまった。

時差を考慮したとしても、まだ太陽の沈まない時刻。
だというのに、王城の庭から見上げた空は月の無い闇夜の色をしていたのだ。
話には聞いていたが、実際に目にするとそのスケールに飲まれてしまう。

そして女王に連れられ城の尖塔から見た城下町。
そこは故郷など比較にならないほどの大量の光に満ちて照らされていた。
色の付いた無数の街灯で区分けされた街並みは、それ自体が一つの芸術品のよう。
感動のあまり体が震え、涙さえ出てきた。
すぐ隣にいる女王は頬をつたう涙を優しく指で拭い、囁くように言う。

「ここがわたくしの国、これからあなたが生きる場所。
 いかがでしょう? お気に召しました?」
彼女の問いかけに自分は何も言えなかった。
雑音にも等しい自分の声を出したらこの感動が壊れてしまう。
ただそう思い、彼女の背に腕を回して柔らかい体を抱きしめた。

不死者の国は時計の針がどれほど回ろうと夜のまま。
それでも人と魔物が生活している以上、便宜的に昼夜は定められている。
朝になれば人々は起床するし、昼頃になれば料理店は混雑する。
陽が沈めば上流階級の間で夜会が開かれるのも同じだ。
謀略や政治工作ばかりの故郷と違い、魔物の夜会は純粋な交流や情報交換の場。
おかげで自分も構えることなく魔物やその夫たちと話すことができる。
魔物に対して広く浅い知識しか持っていなかった自分は、
彼らからアンデッドについてのより深い知識と助言を大量に頂いたのだった。



小さな部屋程度の広さがある女王のベッド。
最高級のクッションが効いているその上に自分は裸で仰向けに横たわる。
その横にはウェーブの効いた髪を下ろして膝立ちになっている全裸の女王。
彼女は勃起した男性器を好ましく眺めると、膨らんだ腹を微かに揺らしながらその上を跨ぐ。

「もう、いつ産まれてもおかしくないですわね……」
そう言って女王は胎児が眠る臨月腹を愛おしそうに右手で撫でる。
毎日彼女と交わり体の変化を見てきた自分も感慨が湧き、腹に左手を当てた。

美しい女王の胎内で眠る子供。
それが自分の娘であることに、男としての達成感と征服感を感じる。
その感情は彼女への欲望に転化し、ねとついた女性器の入り口を男性器でツンツンと突っついてしまう。
「んふ……分かっていますわ。この子がより美しく淫らになるよう、精をくださいませ」
『この子が』と言っているが、その目は明らかに自身に与えられる快楽に期待していた。
彼女は腹を撫でていた右手を股間にまで下げ、ニチャリ…と指で穴を広げる。
ずいぶん使い込んだのに全く爛れていない女性器。
膣液を垂れ流すそれを見せつけると、彼女は腰を下げて男性器を咥えこむ。
妊娠して引き締まった膣は男性器をより強く締めつけ、肉ひだをからませてきた。

「あ…入ってますわ……! わたくしを孕ませたちんぽがっ…!
 もっと…来てくださいませ…! わたくしの…奥までっ!」
彼女と散々交わったおかげで肥大化した男性器は、簡単に膣の最奥を突いてしまう。
しかし彼女は膣だけの性交ではとても満足できない体なのだ。

「さあ、開きますわよ…! あなたのちんぽでわたくしと娘を愛してくださいませ!」
そう言って彼女が少し力を込めると膣奥がグバッと開き、先端が子宮に侵入する。
毎回のことだが子宮口を通過する際のゴリッという感触に、自分はビクンと反応してしまう。
だが、彼女はそれに構わず腰を動かして子宮口と膣で男性器をしごき立てる。

「ああ、コレですわ! やはりコレが一番いいですわっ!
 子作りは子宮で交わるのが最高ですわぁっ!」
いくら魔物でもすでに胎児がいる子宮では妊娠しない。
それでも彼女はさらなる妊娠を求めて激しく腰を振り嬌声をあげる。

魔物は誰も彼も子を欲するが、アンデッドは特にその傾向が強い。
それは己が死体であるという事実に虚無感を感じるからだという。
故に彼女たちはひたすら伴侶と交わり子を成そうとする。
男性と繁殖行為を行い、子を孕んでいる間だけが生を感じられるのだから。
自分はそんな彼女を喜ばせようと下から腰を突き上げる。

「んぁっ! ちんぽで胎児が喜んでますわ!
 もっと突いてくださいませ! 子宮を抉ってくださいませっ!」
ブルンブルンと激しく上下に揺れる胸。
跳ねあがるその乳首からは白い母乳が飛び散り周囲を白く染める。
孕んだ子宮で男性器を咥えこみ、よがり声をあげながら動く女王。
その乱れっぷりは、もはや気が狂った痴女にしか見えない。

「今更ですわあなた! わたくしはとうに痴女ですのよ!
 寝ても覚めてもあなたのちんぽのことを考えているんですもの!
 わたくしはあなたのちんぽに狂った痴女ですわっ!」
『すでに狂っている』と自ら口にする女王。
そこまで愛され求められていることに、自分は幸せ者だと実感した。
その幸福感に射精を耐え難くなり、自分は男性器で彼女と胎児を強く突く。

「あっ、あっ、もう、出しますのねっ! この痴女のまんこでイきますのねっ!?
 どうぞ子宮にちんぽ汁を注いでくださいませ!
 わたくしが妹を孕むのを、娘に見せてくださいませっ!」
粘ついた精液が陰茎の中を進む快感。
自分はそれを受けながら羊水に満ちた女王の子宮へ精を放った。
「んくぅっ! 出てますわっ、熱くて粘ついたちんぽ汁っ!
 これならきっと孕めますわ! この子を産んだ後も身籠って――――ぎっ!」
いきなり声を詰まらせる女王。
それと同時に子宮内が蠢き出し、男性器を外へ追い出そうとする。
いつ産まれてもおかしくない彼女の胎。何が起きたか自分でもすぐに思い当たる。

「はっ、破水…しましたわね……っ!」
腰を上げて深く咥え込んでいた男性器を解放する女王。
開いた穴から精液混じりの羊水がドロリと落ちこちらの腰を汚した。
そのまま彼女は後ろに寝転がり、膝を立てて羊水を排出している女性器を見せつける。
「わたくしたちの娘がもうすぐ産まれますわ…!
 女王のまんこから子供が出るところ、見ていてくださいませ……!」
生物が命を繋ぐに際して重要な過程である出産。
それはアンデッドにとって最大の生を感じられる時だ。
女王は生者と同じように息み腹に力を込める。

「んっ…! 胎児の頭が、子宮口にっ…当たってますわ……!
 わたくしの、子袋から出ようと……んぁっ!」
人間ならば苦痛の色が濃く含まれたであろう声。
しかし彼女の口から出るのは快感に満ちた喘ぎ。
「おぉっ! 子宮を抜けましたわ! まんこがミチミチいってますっ!
 娘があなた用のちんぽ穴を通ってますわぁっ!」
白い肌を汗だくにし、シーツを掴んで快感に頭を振る女王。
彼女は力みすぎて腰が浮きあがり、下半身だけブリッジのような体勢になっている。
持ち上げられてより見やすくなった女性器からは産道を進む胎児が目視できた。
「見て…くださってますか、あなたっ…! 頭…がっ、出ますわよっ…! 
 死体のまんこから、赤ん坊が、出ますのっ…!」
一見すると『自分は死体である』と自らを卑下している女王。
しかし心中では『そんな自分が出産している』ことに幸福を感じているのだろう。
何故ならその赤い瞳から汗混じりの涙がポロポロ落ちているのだから。

限界まで引き延ばされた膣口からヌププ…と滑り出てくる胎児の頭。
出産の終わりが近づき、女王はより気を昂ぶらせる。
「ひぅっ…もう、出てしまいますわっ! どうか、見てくださいませっ!
 わたくしが母になるところを…! 死体が子供ひり出すのをっ!
 く…ああっ! 出るっ! まんこから子供出ますわぁぁっ!!」
ブチュッと水の弾ける音。
子供は少し勢い付いて産み出され、柔らかいベッドに受け止められた。
女王も気が抜けたのか腰を落とし、ハッ…ハッ…と呼吸を荒げたまま快楽に浸る。
そして自分はあまりに淫らな出産に性欲を再燃させてしまった。

娘と女王を繋ぐへその緒。
自分はそれをズルズルと手繰りよせ、用済みの胎盤を引きずり出す。
その行いにこちらをチラリと見た女王は、勃起している男性器に目を細め言う。

「ん、もうわたくしと交わりたいのですか。ええ、結構ですわよ。
 もっとわたくしに生の実感をくださいませ……」
胎内から子供がいなくなり、再び虚無感に襲われた女王。
快楽と生の喜びを得るために、彼女も自分との交わりを望む。

「少し汚れていますけど……よろしいですわよね?」
髪は散々に乱れ、汗と体液で全身がベタベタ。
そんな状態でも彼女の美しさは損なわれない。

自分はそっと肯くと、両腕を差し伸べる女王に覆い被さった。
13/08/19 21:42更新 / 古い目覚まし

■作者メッセージ
死体とか無機物とか子供産みそうにないものを孕ませるのが大好きです。


ここまで読んでくださってありがとうございました。

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