読切小説
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旅行初日脱落
「ねーえぇ、結婚しようよぉ〜!」
「えぇ……いや、あの…」

 普通、美人に身体を密着させられながら甘い声でそんなこと言われて、嬉しくならない男性は居ないだろう。

 たとえその下半身が魚のそれであったとしてもだ。

 
 ……。
 


 …だがちょっと待ってほしい。



 自分と彼女は、出会ってからまだ5分も経っていないのである。

 
 



 仕事で少し長めの休暇が貰えたため、以前から興味のあった観光地、コートアルフへやってきた。
 そしてここはその第一の島『アルマール』。島中が水路により接続された、水の街である。故に移動にあたっては水棲の魔物が操るゴンドラを利用するのが通例だ。
 と、そう聞かされていたため、入り口付近のゴンドラ+船頭斡旋所で手続きを済ませ紹介されたのがこの桃色人魚もといメロウであった。
 名をリアーネと言うそうだ。


 そして出発から3分程で求婚された。
 そのまま今に至る。

「ね〜え〜」
「急にそんな事言われても…この短時間で僕のどこに惚れたのさ?」
「ん〜?じゃあ一目惚れってことで。」
「じゃあって!?」
 
 そんなこんなで舟に揺られること約15分…最初の目的地に着いた。

「あ、水上レストラン。ここでお昼食べる?それとも私をたべる?」
「お昼食べるよ!こんなところで何言ってるの…」
「え?普通でしょ。ほら、個室席もあるよ?」
「……。」

 水路にせり出すようにして設けられたイートスペース。多くはテーブルと椅子、日除けのパラソルを1セットとした簡易なものだったが、小さな小屋状のものもいくつかある。
 それらに目を向けるとちょうど、水先案内人の一人らしきマーメイドが下半身を人型に変え、興奮した様子で観光客の男を連れ込むのが見えた。そして扉が閉まると程なくして、その男性のものと思われる悲鳴が小さく聞こえ始める。

「あーあ、あのお客さん、料理を食べる前に自分が食べられちゃったね。防音魔法が掛かってる個室でここまで中の声が聞こえてくるなんて、かなり激しい子に捕まっちゃったみたい。どう?まだ空いてる個室はあるし、結婚する前に身体の相性を確かめておくのもいいと思うんだけど…。ちゃんと気持ちよくしてあげるからぁ♥」

 そう言ってリアーネはここぞとばかりに身体を擦り寄せてくる。押し付けられる柔らかな膨らみと、至近距離で感じる艶やかな吐息が、体温を上昇させた。
 …というか、ちゃっかり結婚する体で話が進んでいる。油断も隙も無かった。

「…普通のテーブルでお願いします。」
「むう。」
 
 リアーネが小さく唸る。
 しかし彼女は気分を切り替える様に手慣れた手つきで係留用の桟橋に手早くゴンドラを繋ぎ止めると、下半身を人間のそれに変身させ、桟橋に飛び移った。そしてこちらへ手を伸ばしてくる。

「はい。掴まって♪」

 差し出された手に掴まり、桟橋へと上る。そこで彼女の表情に一瞬笑みが走った気がしたところで…

「あっ、足下気をつけて♪」
「えっ…」

 『何かに』躓いた。
 重心が前に崩れ、浮遊感に襲われる。桟橋とはいえ倒れ込めば痛い。予想される衝撃に目を閉じる。
 しかし顔面を襲ったのは、予想外に柔らかな感触だった。

「あん♪」
「…?」

 恐る恐る目を開けると飛び込んできたのは白の布地。そして…。
 
「んふふ。だいじょうぶ〜?」

 視線を上げるとにやにやとほほ笑む彼女の顔があった。
 転んだところを彼女の胸に抱きとめられたのだ。

「ご、ごめん!…んむっ!?」

 慌てて身体を起こそうとする。が、後頭部を押さえる彼女の腕に阻まれた。これまであまり直視しないよう意識して視界から外していた暴力的な大きさの柔肉が、顔面から側頭部までを包み、その感触に埋もれさせてくる。

「大丈夫?ケガしてない?慌てずゆっくりでいいからね〜♪」

 ケガなどしているわけがない。にもかかわらず腕が外れる様子もない。

 結局、たっぷり15秒ほどそうされていただろうか。ようやく腕が緩められた。慌てて顔を引き離し大きく息を吸いこみ、呼吸と精神を整える。

「もういいの?もっとおっぱいの感触堪能してていいんだよ?あとついでにもっと私の身体を見てね?」
「いや!もう大丈夫ですから!ありがとうッ!!」

 当然のように目的がすり替わっている。彼女の身体から意識して視線を外していたことに対する意趣返しだったらしい。
 そしてその肢体を強引に意識させられた訳だ。今だ顔に張り付いているように感じる先ほどの感触を思い出し、羞恥で耳が熱くなるのを感じた。
 そうは言われてもやはり直視は出来ず、思わずまた視線を逸らしてしまう。比較的肌の露出が少ないにもかかわらず、身体の凹凸をこれでもかと強調する彼女ら水先案内人の制服は、目に毒だ。

 「んふ。それじゃあ、ごはんにしよっか♪」
 
 そんなこちらの様子を見て暖かくほほ笑む案内人にエスコートされ、席に着く。
 昼食はふつうに美味しかった。



 食事が終わり、再びゴンドラに乗り込む。舟を係留していた縄を解き桟橋が遠ざかる。

「ねぇ〜、お腹いっぱいになったことだし、ちょっと日陰に舟を止めてお昼寝しない?」

 見れば水辺に生えた巨大な木の陰に同じようなゴンドラがいくつか止まっている。どうやら休憩所らしい。

「わたしの胸を枕にしていいから、ね?」
「……ッ!?」
 
 先ほどの感触を思い出し、顔が熱くなる。
 彼女の身体から目を逸らすようにその休憩所をよく見れば、止まっているゴンドラのいくつかではマーメイドなどの水先案内人がうつ伏せに寝そべっていた。そして更によく見れば、その下からは人間の足が伸びている。…魔物が人間に覆いかぶさっている。何をしているかは明白であった。

「いえ、先に進んでください…。」
「むむう…。」



 それからは一応コースの予定通りに主要な観光地・露店を巡る。途中幾度も危険で露骨な誘惑を掛けられたが、何とかしてやり過ごした。
 そして至る夕刻。
 後は出立地点に戻るだけである。

「夕方までのコース…。日帰りってことはないよね。夜は何か予定があるの?」
「え、いや…」
「もしかしてデ・リューア?」
「(ギクッ…)。」

 図星。
 そう、昼は観光をし、夜はそちらに行ってみようと思っていたところである。

「ふぅん、そうなんだ。んふふ、よかった♪」
「え…?」

 てっきり怒られるかと思った。最悪水路に突き落とされるかと思ったのだが、予想に反して彼女は嬉しそうに笑ったのだ。

「んん?怒ったりなんかしないよ?逆に魔物を抱く気があったんだって安心したとこ♪…むしろ最初から言ってくれれば色々とやりようがあったのに。」
「ねぇ。数日間はコートアルフに居るんでしょ?だったらさ…結婚とか、そういうのは一旦抜きにして、一晩だけわたしに身体を預けてみない?」

 提案。

「それで満足できなかったら、明日からデ・リューアに行けばいいじゃない。その時は私が連れて行ってあげるから。」
「テクニックは引けを取らないと思ってるし、おっぱいだってあそこの子たちと比べても大きい方だよ?」

 そう言ってリアーネはこちらの手を取ると、その純白の布地に覆われた膨らみへと押し付けた。 
「ちょ…」

 掌が、指が、柔肉に沈み込んでゆく。その様はまるで底なし沼を思わせた。触れているだけで指先から背筋へと甘い痺れが走る。
 魔性の感触。
 やがて取られた手はより深く、谷間の奥へと導かれ押し包まれ、そして…

「――ッ!?」

 慌てて手を引き抜いた。

「あん♪残念、もうちょっとで手だけでイかせられたのに♪」

 そう。信じがたいことに、いつの間にか射精感が沸き上がってきていたのだ。そこには全く触れられていないにもかかわらずである。下着が先走りの液で濡れているのが分かる。あと5秒も触れていれば、服の中で精を漏らしていたかもしれなかった。

「どうかな…?後悔させない自信はあるよ?すっごく気持ちよくしてあげるから……ね?」

 言葉を発しながらゆっくりとにじり寄ってくる彼女に、いつの間にか狭いゴンドラの上で追い詰められるような形となっていた。その彼女からは先ほどまでの水先案内人としての陽気さは消え失せ、ぞっとするほどの妖艶さを纏っている。

「…………はぃ。」
「やった!」

 断れる空気ではなかった。











 夕焼けのオレンジに染まる水路を少し複雑なルートで進むゴンドラは、しばらくして脇道に逸れる。舟一隻がかろうじて通れる幅のそれを少し行くと行き止まりにぶち当たった。が、

「…よし、空いてるみたい♪」

 彼女は壁面に一度手を当てるとそのまま舟を進ませた。白い石の壁にぶつかり大破するかに思われたそれは、少しの衝撃もなく壁をすり抜ける。衝突の寸前に壁が溶けるように消え、舟を通したのだ。抜けた先から振り返ると、やはり同じ壁が来た道を遮断していた。

「この街にいくつもある秘密の入り口だよ。中に誰も居なければ壁を抜けられるけど、誰かが使っている間は外からは入れないの。」

 壁の先の水路をまた少し進むと、また行き止まりに突き当たった。しかし今度はゴンドラを止めるための柱と白い石の足場がある。そしてその奥には上へ上る階段…

 下半身を人間のそれに変化させた彼女に案内され階段を上ると、今度は開けた場所に出た。石造りの建物の屋上に作られたスペースのようだ。
 白い石の床に深いプールが備え付けられ、岸には大きな椰子が生えている。その下には小さなベンチとテーブルが備え付けられていた。外へ目を向ければ水平線に沈む太陽が遠目に見える。輝き揺れる水面と星瞬く夜空のコントラストが美しかった。

「ここは…」
「秘密のミニプール。私たち水先案内人が仲良くなったお客さんを連れ込んで…イイコトするための場所。…の一つかな。…というわけで」
「しよっか♪」

 彼女の姿がかき消える。


 次の瞬間、空に衣服が舞った。
 
 見ればそれは自分の着ていた服で…

「なっ…」
「はい、つかまえた♪」

 背後から腕が回される。肌を晒された背中に重量感のある柔肉が押し付けられた。
 しかしその感触を意識できたのは一瞬、両手で優しく肉竿を包み込まれ、そちらに意識を持っていかれる。

「じゃあとりあえず、軽く一回イかせるね。」
「え、嘘…」

 背後の彼女がそう言い、絡みつく指が蠢き始めた瞬間、唐突に射精感が沸き上がった。そして抗う暇もないまま、脈うちが始まり精が漏れ出してしまう。
 そこを握られてから、わずか5秒程の出来事だった。

「えへへ、これでも一応デ・リューアで修行した事あるからね。あの頃の練習相手は魔法で生やした水棲魔物だったけど、本物の男の人にも通用したみたいでよかった♪ちなみに手技の合格ラインは10秒以内に1回逝かせる事だったよ。」

 さらりと、何でもない事のようにとんでもない事を言う。
 そしてあっという間に精を搾り取った両手が位置を変えた。左手で竿を固定し、右手の掌を先端に被せるような形…

「でぇ、この体勢だとこのまま先っぽ責めで潮吹きさせたり失禁させたりも簡単にできるんだけど…どうしよっか?」
「(ぶんぶんぶんぶん!)」

 必死に首を振る。そうしている間にも、彼女の右手は射精直後で過敏状態となった先端をスローペースで撫で続けている。反射的に腰が引けるが背後に密着する身体がそれを許さない。

「にひ。腰が引けちゃってるね?。わかったよ、じゃあそれは後にしよっか。じゃあ次は…」

 股間のものを掴む掌が一瞬じわりと熱を発する。そしてそれが収まった時には、割とたっぷりと搾られた筈の精液は消え去り、透明な汁のみになっていた。何らかの魔術により吸収されたのだろう。
 同時に背中に感じていた柔らかな感触が、一際強く押し付けられる。

「…こっちを味わってもらおうかな♪」



……、

…。



 椰子の下に設置されていたベンチに横になるよう促される。座ってみるとその上部は謎の柔らかな素材で出来ており、裸で寝そべっても全く痛くない。
 そして腰掛け上体を後ろへ倒したところで、彼女は制服の首元に付いている小さな宝石に触れた。その瞬間、制服の面積が縮小する。腹部は完全に露出し、胸も首と肩を覆う布地の延長として先端がかろうじて隠される程度となった。

「これ、変形機能のあるちょっといいやつなんだ。どうかな?サイズはデ・リューアの大きい子のお店に居る子達とあんまり変わらないと思うよ?」

 目の前に突き付けられたそれの存在感にしばし言葉を失う。片手ではとても収まらない大きさにも関わらず、衣服と言う支えを無くしてもしっかりと形を保っているのだ。月の光を受けて青白く輝く肌には染み一つなく、視覚的にもその手触りを主張してくる。今度は視線を逸らす余裕もなく、思わず凝視してしまった。

「よかった、期待してくれたみたい。じゃあ、食べちゃうね♪」

 そして、彼女はその露わとなった胸の谷間に陰茎を挟み込む。
 根元から先端までが完全に飲み込まれ、まったく見えなくなった。視覚的には何も見えない。しかし触覚は違う。柔らかな圧迫感と滑らかな肌の質感を絶えず味わわされている。
 夕刻、この胸に手を取られ危うく絶頂させられそうになったのを思い出した。この器官は危険である。このまま全く動かさないまま包み込まれているだけでも、遠くないうちに確実に射精に至るであろうことが実感できた。

「はい、動かすよー。」

 腰の上に乗るそれの両側に手が添えられ、捏ね上げが始まる。その瞬間、急激に射精感が沸き上がってきた。

「この刺激はねー、我慢しようと思っても絶対出来ないからぁ、気にせず出しちゃっていいよ〜♪」

 緩い刺激が逆に腰の力を奪ってゆく。程なくしてとろとろと、まるで失禁するかのように精が漏れ出す。射精ではなく吐精とでもいうべき感覚…、半ば放心しながら、その緩く、長い快感を味わうこととなった。
 
「はい、おもらし射精♪こういうのもいいでしょー?このまま何回か続けて〜、腰が抜けて動けなくなるまで蕩かしてあげるね♪」

 長い吐精が収まっても胸を捏ねる手は止まらない。夢見心地のまま、彼女の術中に嵌ってゆく…。


………、

……。





「……大きく息を吸って〜♪あ、口でしちゃだめだよ、ちゃんと鼻から吸おうね〜♪」

 視界が暗闇に覆われている。顔面に感じるのは柔らかな重み…。

 先程のあの漏らすような射精を3、4回程味わわされた後、今度は頭の方をその胸で覆われることとなった。上半身の制服はまた元の形状に戻され、独特の質感と肌触りを持つその生地越しに柔肉を押し付けられている。
 なお、今はベンチの背もたれを下げられ、ほぼ水平に寝かされている状態。そして彼女は位置を変更し、頭の方から回り込んでいた。
 ちなみに、胸の谷間にあったはずの大量の精液はいつの間にか吸収されたようで、その残り香ごときれいさっぱり無くなっている。代わりに今は甘く不思議な匂いを発しており、布地を通してそれを嗅がされている最中であった。
 最初は手を触れただけで絶頂に導かれそうになった魔性の器官だが、流石にこう何度も搾られた後では耐性が出来ており、そんな事にはならないだろうと思われた。…のだが、

「これはねぇ、水魔法の応用で、胸の中で淫気を含んだミストを発生させてるの。これを嗅がせながら胸の感触を刷り込むことで、刺激に慣れさせなくするとともに、より敏感に刺激を受け取ることができるようになるんだよ。さぁ、お顔をぱふぱふされただけでイッっちゃう身体になろーねぇ♪」

 しかし彼女にはそんなことを許す気はさらさら無いらしい。肉体改造に近いことをされているにもかかわらず、身体は先ほどまでの行為により完全に腰砕けにされており身じろぎ一つできない。なるほど、よく考えられている。
 嗅がされる淫気のせいか妙にふわふわとする意識の中で、どこか他人ごとのようにそう思った。
  
 と、そうこうしているうちに心なしか肌がぴりぴりと敏感になってきた気がする。
 
「気持ちよくなってきたかな?それじゃあ淫気を濃くするから、ゆっくり息を吸いながらお尻の奥の方を意識してみて?」

 声に誘導されるがまま、下半身の方へ意識を向ける。するとすぐさま腰の奥からじわりと鈍い快感が沸き上がて来た。そしてそれは何をするでもなく勝手に膨らみ始め、やがて弾ける。
 背筋が反り返り、腰が突き出される。肉体の不随意的な反応。

「はい、上手にイけたね〜。ついでにこっちも弄ってあげる。念入りに開発してあげるからねー。」

 不意に胸の先に刺激を感じた。
 互い違いになる位置でこちらの顔面に彼女の胸が押し付けられているということは、彼女の眼前にもこちらの胸が晒されているということである。そこに、彼女がその食指を這わせたのだ。
 表面を軽く擽るような手つきと優しく摘み転がす刺激を織り交ぜられ、意識が翻弄される。その刺激が異様に敏感に感じてしまうのは下半身の方で不思議な絶頂をした直後だからか、視界を塞がれているせいなのか、あるいは吸わされ続けた淫気のせいかその両方か…。なんとなく今の感度のまま、今後元には戻らないような予感がした。

「おさまったかな?それじゃ、今のを10セットくらい繰り返してみよっか♪」
「………。」

 訂正する。予感が確信に変わった。



………、

……。



「お疲れ様。そろそろいい時間だし、ちょっと夕食を用意してくるね。しばらくここで休んでいて♪」
「ぁ…ぁ………。」

 今、自分はさぞひどい顔をしているのだろう。
 しかし、取り繕う余裕はなかった。久々の淫気の混じっていない新鮮な空気を思い切り吸い込むので精一杯であり、他の事に気を向ける余地はない。

「でも、このまま放っておかれるのも寂しいだろうし、これ置いてくね。」

 彼女はプールから両手でひと掬い分の水を取ると、小さく呪文を唱えた。そしてその水を半分は股間に、半分は胸に掛けられる。
 水だったものは半固形の何か…スライムのような物体へと変じていた。それはまるで意思を持つかのようにそれぞれ陰茎と両胸へ集まると緩慢な動作で蠢き、緩やかな刺激を与え始める。

「じゃ、まっててねー♪」
「いやちょっと…!」

 行ってしまった…。局部をスライムのようなよくわからないものに取り付かれ、途方に暮れる。それは手で触れようとすれば水のように溶けて掴むことが出来ず、手を離せばまた粘度を増し刺激を続ける。しかしその刺激は優しく、絶頂に至るほどではない。
 ただし、ベンチから起き、立ち上がろうとするとそのスライム?は態度を豹変させた。股間に取り付いたものがその先端に集まり、高速で回転するように刺激を始めるのだ。しかも粘体の中にざらざらとした粒を作り刺激を高める徹底ぶり…。
 その容赦ない亀頭責めに腰は砕け、たまらず崩れ落ちる。とても立って歩くことなど出来そうにない。必死にベンチによじ登り元の位置に座ったところでようやくそのスライム?の動きは元の優しい焦らし責めへと戻った。
 リアーネは退屈しないようになどと言ったが、本当は対象を逃がさないための拘束具なのではなかろうかと疑いたくなる。


 ………。


 程なくして彼女が帰ってくる。
 しかし、スライム?は外してもらえず、そのまま食事をとることとなった。
 そして食休みもほどほどに、食後の部が始まる。


 

 まず纏わりついたスライム?ごとペニスを握られ、そのまま手で搾られた。食事中に焦らされていたこともあって、射精はあっという間だった。更にスライム?を纏いながらの手淫は先ほどのものとは全く勝手が異なる。粘液の滑りを利用するため、より強い力での刺激とより繊細な指の動きが可能となるのだ。そのまま2回目もあえなく搾り取られる。

 そして今回はそれで終わらなかった。
 射精後の亀頭部分へ掌が被せられ、磨かれるように擦られる。

「さっき言った通り、このままお漏らしさせてあげる。どっちを噴いちゃってもちゃんとキレイにしてあげるから安心してね♪」
「−―――――ッ!?」

 直後責めの激感に腰がのたうつが,
今は背後から抱きすくめらている状態の為身動きが出来ない。そうこうしているうちになぜか力が抜けてくる。
 妙な脱力感と強すぎる刺激に翻弄されつつ、やがて股間に放出感を伴う熱を感じた。
 意識が飛びかける。

「えへへ、こういう経験は初めてかな?あ、疲れちゃった?じゃあちょっと休憩しようか。」
「………。」

 声も出ない。
 そんな疲労困憊な状態を慮ってか、彼女の手は股間から離れ上半身へと移った。代わりに足には魚体が絡みつき、滑らかな鱗の感触を擦り付けてくる。
 しかし、彼女の手は先ほど淫気を使って開発された乳首を弄り、同時に口が片耳を吐息を交えながらしゃぶってくるため、性感は途切れない。ついでにいまだ緩く蠢き続けるスライム?も少しばかり残っている。


………。

 
 そしてそんな休憩時間も長くは続かなかった。

「ぉ………ぉ…」
「どう?ここも慣れると気持ちいいでしょお?」
 
 今度は体勢をひっくり返される。
 尻に浄化魔法を撃ち込まれたのち、尻穴から指で前立腺を愛撫され、長引く快感を味わわされる。繰り返されるうちに絶頂状態でいる時間の方が長くなっていくようで快楽とともにむしろ恐怖を感じた。


 その後は、寝かされた状態で正面から覆いかぶされ、密着する肢体と擦り付けられる鱗の刺激で搾られ…。

 再度スライム?を掛けられ、先ほどのような自動的な動作ではなく彼女自身が水の魔術で操る本気の粘液責めで搾られ…。

 底が見えない程深いプールの中で抱き抱えられ、物理的に身を委ねざるを得ない状況でしこたま搾られたり等々…そんな形で、ひたすら彼女の技巧により精を搾られたり、搾られずに射精を伴わない快楽を与えられたりしながら時間が過ぎた。
 気づけば月は上りきり、水面にその身を輝かせている。
 
「…どうかな?満足させられたかな?」
「…………。」
「まだ足りないならもう一回最初のから繰り返すけど…?」
「…!?ま、満足した!しま、した…」

 息も絶え絶えで何とか言葉にする。
 
「じゃあ…結婚してくれる?」
「…………。」
「やっぱりもう一回…」
「し、します…!しますから…!」
「やった!!あ、帽子あげるね。」
「…。」

 頭に彼女が今まで付けていた帽子が被せられた。

 なお、この後テンションの上がったリアーネによる本気の交合が朝まで続く事になるとは、この時点では知る由もなかった。












――同時刻、アル・マール連絡水路にて――

「やっぱりあの兄ちゃんは来れなかったか…」

 そう呟くのは一人の男。時計は夜の9時を回った。約束の時間である。

 彼は午前中、一人の青年をこの島に送り届けた船乗りであった。特に業として人員輸送をやっているわけではない。たまたまコートアルフへの生き方を尋ねられ、たまたま行き先が同じだったから乗せた。それだけだ。
 今回、彼はちょっとした物品の輸送の仕事を請け負っていた。そしてついでに夜はデ・リューアで遊んでいこうとも思っていた。彼にはもうお目当ての娘が居るのである。青年の予定を聞いて、それならばこの時間に舟を予約するから乗っていくかという話になったのだ。

「まぁ、相手がメロウじゃなぁ。押しに弱そうだったしなぁ…ま、お幸せにってこった。そもそもデ・リューアに行くなら寄り道しちゃダメさ、特に最初は。もしくは…」

…あらかじめ行き先を伝えておくか、だ。

 彼は積み荷の配送があったためこの時間になったが、青年は昼間は観光をしたいと言っていた。そして案内所にて宛がわれた案内人のメロウの様子を見て、ああ彼は夜には来れないだろうと、半ば確信したのである。そのため、「もし気が変わったら気にせず別の場所へ行っていい。時間になったらこちらは出発する」と、その旨伝えておいた。
 やはり予感は当たったらしい。

「あ!ジンドさん。いらっしゃ〜い♪今日も来てくれてありがとー!待った〜?」
「おお、ミランダちゃん!ちっとも待ってないさ、時間通りだよ。」

 と、予約した時間通りに一人のマーメイドが小さなゴンドラを操りやってきた。
 彼女はデ・リューアからの迎えである。そして彼のお気に入りの歌娘でもあった。
 ゴンドラの受付において、この時間に迎えが来るよう予約しておいたのだ。

「…あれ、ジンドさんひとり?もう一人乗るって話じゃなかった?」
「ああ、ごめんな。彼はちょっと予定が変わったみたいだ。」

 その一言でミランダと呼ばれたマーメイドは何が起きたかを察する。

「あら残念。あわよくばうちのお店に連れ込んじゃおうと思ってたのに。お店の娘も期待してたのになー。……まぁでも仕方ないよね。この街じゃ『惚れたが勝ち』だから。」

 しかし秒で納得する。これに関しては早い者勝ち。それがルールなのだから。
 一応、ジンドとしてはかの青年に忠告することはできた。しかしあのメロウが彼を見た時の眼が、あまりにも本気だったため言うに言えなかったのである。もっとも、伝えたことで同じ結果に終わっていた可能性は大いにあるのだが…


「…じゃあ、もうここから二人っきりって事だよね。」

 男をゴンドラに引っ張り込むと、ミランダは早速身体を寄せ、その豊満な肢体を絡み付かせる。そのまま手を男の下半身に伸ばし、まさぐり始めた。

「移動しながらもう始めちゃおうか。今日も私を指名してくれるんでしょう?」
「店に着いてもいないのに勝手に始めちゃまずいだろ。…指名するけど。」
「なら大丈夫大丈夫♪支払いはまた精払いでいいよね。」
「いや、それはまだツケが残ってるから今日は金を用意して…」「いいからいいから、精払いならいくらでも将来にツケを回してくれていいんだよ〜♪えい♪」
「おふ……!?」

 男が呻く。彼の下半身に忍ばされた手が瞬間的に神掛かり的な技巧を見せ、一瞬で射精に導いたのだ。男は膝から下を弛緩させると、崩れる様にミランダの肢体にもたれかかった。

「はい、一名様ご案内〜♪」

 上機嫌のマーメイドに操られ、ゴンドラは夜の明かりに照らされた水面を進み始める。男がため込んでいる精払いのツケは、この調子ならいずれ彼女を身請け出来る金額に相当する量まで嵩み続けるだろう。そうなったとき、彼女はその債権を店から買い取り、名実ともに彼を自らのものとするのだ。

 この街の人魚が、目を付けた獲物を逃がすことは決してない。
 
 




 
20/11/22 23:30更新 / ラッペル

■作者メッセージ
デ・リューアの歌娘は相手を一晩の客では終わらせないとのことですが、水先案内人もたぶんそう。きっとそう。

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