連載小説
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冷酷な雨
……全く、我ながらなんて見っとも無い……あんなに取り乱してしまうなんて……!

「クソッ!」

自室……いや、正確には貸してもらってる部屋の端に設置されてるベッドの上に寝転んで、先程の失態を晒した自分自身を毒づいた。
メアリーには……本当に申し訳ないことをしてしまったと反省してる。だが、あいつに俺の過去を覗かれたと思うと、思わず手が出てしまった。



あいつにだけは……見られたくない過去があると言うのに……!



「……クソッ!」


やり場の無い怒りを頭の枕にぶつける。力いっぱい枕に拳を振り下ろすと、ボフッっと力を吸収する音が小さく鳴った。
傍から見れば不貞腐れてる子供も同然の姿だろう。それは俺自身もよく分かってる。だが、このどうしようもない感情が俺を支配して……何とも言えないでいる。

クロノスの過去鏡……と言ったか。あの鏡は人の過去を見る事が出来る秘宝とのこと。仮にもメアリーに、あの惨劇を見られたと思うと……胸が痛くなる。
俺のあの醜い様は……メアリーにだけは一番見られたくない。あの姿を見られたと思うと……どうも落着けない。


……頭の中に……とある少女の顔が浮かんだ。
その少女は……俺にとって大切な存在でもあった……!




「……ジャスミン……」




本当に優しい子だった。とても良い子だった。
なのに……なんであんな目に遭わなければならなかったんだ!

「……ジャスミンとは誰ぞ?」
「ああ、俺の……ん?」

……ちょっと待て?俺は一体誰に答えたんだ?この部屋には俺しかいない……ハズ……。
俺は恐る恐る、体を起こして振り返ってみると……。


「俺の……何ぞ?」


そこには、仁王立ちで俺を見下ろしてる黒ひげが……って、いつの間に!?

「ちょ!?部屋に入るのならノックくらいしたらどうだ!?」
「我はきちんとドアを叩いたぞ?だが貴様が返事をしないので勝手に入った」
「勝手にって……いや、それ以前に何故入って来れた!?俺は確かに鍵を閉めた筈なのに……!」
「このダークネス・キング号は我のものぞ。船を操っておるのも我だ。個室の鍵を開けるくらい容易いことよ」
「……要するに、魔術の類を使って開けたのか」
「そうなるな」
「……はぁ……」

体中の力が一気に抜けて、俺は再びベッドに横たわる姿勢になった。
迂闊だった……まさか黒ひげに聞かれるとは思わなかった。以前から侮れない男だとは思ってたが、本当に油断出来ない。

「全く、いきなり飛び出たもの故にメアリーも心配しておったぞ」
「……そうか……」

黒ひげはベッドの近くに立ってる椅子に腰かけた。
メアリー……あいつも心配してくれてるみたいだが、今はどんな顔をして会えば良いのか分からない。俺のあの過去を見られたと思うと尚更会い辛い。
仮にも俺はメアリーの旅の仲間なのに……なんてザマだ。

「……で、何の用だ?俺はさっき一人にしてくれと言った筈だが?」
「見るからに不機嫌よのぉ。己の過去がそんなに見られたくなかったのか?」
「……誰にだって知られたくない過去の一つや二つはあるだろ」
「まぁ、そうだな。だが、貴様の言う『知られたくない過去』とやらは、単なる赤っ恥の類ではない。もっと深刻な話だと見受けるが……どうだ?」
「…………」
「ジャスミンと言ったな……その者と関係があると思うが、どうだ?」
「…………」

年の功とでも言うべきか、黒ひげには何でもお見通しのようだ。どんどん話の核心を突いてくる。
この男には……敵いそうもないな。周囲の人から恐れられてる理由が少しだけ分かってきたような気がする。

「……あんたには隠し事なんて出来そうもないな」
「貴様のような若造の数倍以上は生きておるからな」
「そうだったな……」

こんな会話を交えてるうちに……俺は全てを話すべきなのかもしれないと考えるようになった。
自分の事を誰かに聞いてもらえれば、少しは気が楽になるかもしれない。特に黒ひげのような年配の人に聞いてもらえれば、何か助言を与えてくれるかもしれない……そう思えてきた。

「まぁ、どうしても話したくないのであれば聞かないが……」
「……さっき、あんたが言ってた通り、俺の知られたくない過去にはジャスミンが関係してるんだ」
「……話す気になったのか?」
「ああ、そうした方が楽になるかもしれないからな……」

俺は上半身を起こし、改めて黒ひげに向き直って過去の話を始める事にした。

「俺がガスタリ村の出身だって話は聞いただろ?当然、ジャスミンも同じ村で生まれ育った。あの子は優しくて、愛嬌があって、本当に良い子だった」
「ふむ……」
「だが……ジャスミンは突然消えてしまったんだ」
「消えた?」



俺は……あの日に起きた……とても辛くて悲しい事件を思い出しながら話し続けた…………。




〜〜〜数分後〜〜〜




「……と言う訳だ……」
「そうか……帰郷を躊躇うのも、それが原因か……」
「ああ……」


今まで俺の過去の話を黙々と聞いてた黒ひげは自分の顎鬚を撫でながら真剣な表情を浮かべていた。
……不思議なものだ。俺自身にとっては悲しい過去の筈なのに、人に話した後になると気が楽になってるように感じる。
話した相手が黒ひげの様に信頼できる人だと言うのもあるが……それ程自分一人で抱え込んでいたのも理由の一つなのだろう。現に黒ひげに全てを話した時点で気分がスッキリしている。人に自分の話をするのも悪くはないか。


「……今、俺から聞いた話……他のみんなにも言うのか?」
「いや、己の過去は己の口で話すべきよ。我は他の者に言い触らす様な真似はせぬ」
「そうか……まぁ尤も、これからも話す機会は無いだろうな。特に、メアリーには……」
「…………」

黒ひげは今聞いた話を他の人たちに伝える気は無いらしい。それは俺にとっても有り難い事だ。
特にメアリーには……あいつにだけは絶対に知られたくない。あいつにだけは……。

「……我にはともかく、何故メアリーには知られたくないのだ?」
「……怖いんだ……俺の過去を知られて……あいつに避けられると思うと……」

今まで薄汚い欲望しか頭にない海賊ばかり見てきた俺にとって、メアリーの様な海賊は……良い意味で異質に見える。

メアリーの旅の仲間として、共に同じ時を過ごす内に、俺が知らないメアリーの一面も垣間見る事が出来て……少しずつメアリーがどんな女なのか分かってきたような気がしてきた。
あいつは、海賊とは思えないほど純粋な心を持っている。子供のように無邪気で明るくて、誰よりも優しい女だ。


そんな彼女に……俺は心から惹かれていた。
俺自身、メアリーと一緒にいると楽しいと思える。メアリーの笑顔に癒されてる自分がいる。


だが……いや、だからこそ……メアリーにだけは知られたくない。純粋な彼女が俺の過去を知った途端……急に俺を避けるような気がして……それが本当に怖い……。


「……バジル……辛い過去は誰にでもある。それを知られて人から避けられるのを恐れるのも分かる。だが、何時までも自分一人で抱え込んだままでは何の解決にもならんぞ」
「……そうは言っても……抱えるしかないだろう?あいつに避けられない為にも……」
「メアリーは本当に貴様を避けるのか?あの女は……人の過去を知った途端に自ら遠ざかる程、弱い存在なのか?」
「弱いって……そんな訳……!」
「なぁ、貴様もそう思うであろう?メアリーは弱くなどない。それは貴様がよく分かっておる筈だ」


黒ひげは……ジッと俺の目を力強く見つめながら話続けた。


「どんなに辛い過去でも、人に話せば自分にとって良い事になる時もある。どうしても話したくないのであれば別だが、仮にも貴様がメアリーを想っておるのであれば……全て話してみるのも一つの手ではないか?」
「…………」
「人は……互いを知れば知る程、距離を縮める事が出来る。メアリーに自分の過去を話せば距離を縮めると思えば……話せる気になるか?」


……互いを知るか……確かに大事な事だ。
だが、今はどうしても自分から話す勇気が出ない。メアリーに避けられる事への恐れが未だに残ってる。


全く、何時までもウジウジして……我ながら情けない…………。


「……どうだ、バジル?一つ、我に提案があるのだが……」
「……提案?」


躊躇ってる俺の様子を見かねたのか、黒ひげはいきなり提案があると言い出した。

「本来なら、貴様の口から話すのが望ましいのだが……今回だけは特別に良い方法を授けてやろう」
「良い方法?」
「うむ、己の口を開かずに話を伝える方法がある」

……口を開かずに?それって、言葉を発する事無く相手に話の内容を伝える……と言う事か?でも、そんな事が本当に……。

「……我の秘宝を貸してやろう」

と、黒ひげはニヤリと不敵な笑みを浮かべた…………。




***************



「うぅ……どうしよう……」
「メアリー殿、そう気落ちするでない」
「メアリーさん、元気出してください」
「…………スマイル……」


黒ひげさんがバジル君の下へ出向いた後、一人ダイニングで椅子に腰掛けてショボくれてる私を囲む様に、エルミーラさんと姫香さん、そしてセリンちゃんが集まってきた。
どうやら三人とも黒ひげさんから事情を全て聞いたらしく、心配して来てくれたらしい。

「はぁ……バジル君、怒ってるかな……もう口利いてくれなかったらどうしよう……」
「メアリー殿、幾らなんでも考えすぎじゃ。メアリー殿は何も悪くないのじゃ」
「そうですよ。メアリーさんに故意が無かった事くらい、バジルさんだって分かってる筈です」
「…………あの人……優しい……だから怒ってない……」

エルミーラさんたちは励ましてくれるけど……どうも心配で仕方ない。
過去を見られたと知ったバジル君のあの様子は普通じゃない。あの姿を思い浮かべると、やっぱり不安になってしまう。故意は無かったとは言え……私はとんでもない事をやらかしてしまった。

……ふと、さっき見たバジル君の過去の世界が頭を過ぎった。
無抵抗の男の人を容赦なく痛みつけるバジル君。何の理由も無くあんな事をするとは思えない。それに……あのバジル君の怒りに満ち溢れた表情から見て、何か事情があるのは確かだ。
ただ、その事情とやらは一体何なのか……それが分からない。本人に訊いたところで答えてくれそうもないし……。



ガチャッ!



「おお、此処におったか」
「おお、父上!」
「黒ひげさん……バジル君は?」



一人で思い悩んでると、ダイニングのドアが開かれて黒ひげさんが入ってきた。


「うむ……事情は全て聞いてきた。あいつの過去の話も……全てな」
「そっか……って全てって、過去も!?」
「あぁ、心配するな。無理強いはしておらぬ。あやつから進んで話してくれたわい」

そう説明しながら黒ひげさんは私の向かい側の席に座った。
バジル君の様子からして、過去の話なんて聞けそうもなかったのに……流石黒ひげさん!
……と言いたいところだけど、今はバジル君の様子を知りたい。何よりもバジル君の過去が凄く気になる!

「ねぇ、バジル君の過去って?一体何があったの?」
「……我の口からは答えられぬ。他の者に言い触らさぬよう誓った故にな」
「……そうか……」

どうやら黒ひげさんは、バジル君の過去の話については話す気が無いらしい。でも、それでバジル君の気が少しでも救われるのなら仕方ないか……。

「……メアリー、我から一つ提案がある」
「え?提案って……私に?」
「うむ、貴様にしか出来ぬ事よ」

黒ひげさんは真剣な眼差しで私を見ながら話を切り出した。
でも……私にしか出来ない事ってなんだろう?どうもピンと来ないなぁ……。

「バジルの背中を……押してやる気は無いか?」
「え?背中を押すって……こうやって後ろから両手d」
「違うわ!!」ビシッ!
「……冗談だよ……」
「冗談など言っとらんで真面目に聞け!」
「はい……」


ちょっとした冗談なのに……黒ひげさんって意外とノリ良いね。


「……ゴホン!要するに、バジルが抱えておる心の雲を振り払ってやる気は無いかと訊いておるのだ」
「……ごめん。心の雲とか抽象的に言われてもピンと来ないんだけど……」
「では……バジルを救ってやると言えば分かるか?」
「え?」

咳払いの後の説明を聞いて、思わず首を傾げてしまった。
バジル君を救うって……どういう事?まさか、バジル君は今、絶体絶命のピンチに追い込まれてるの?

「黒ひげさん……今の、どう言う意味?」
「あやつは己の過去に関して深い傷を負っておる。恐らく我がどれだけ言い聞かせても、バジルは本当の意味では救われぬだろう。だがメアリー……貴様ならバジルの心の傷を癒す事が出来るであろう」
「心の傷……」

バジル君は心の傷を負っていて、それを癒せるのは私だけとの事。という事は、バジル君は過去に何か辛い出来事があったって事になるのかな。
確かに、バジル君の過去には何かありそうな気がするけど……私には何が出来るのかサッパリ分からない。


……でも……バジル君の為に何か出来る事があるのなら……!


「黒ひげさん、バジル君を救うにはどうすれば良いの?」
「……提案に乗る気になったか?」
「うん!私に出来る事なら頑張るよ!」

私は黒ひげさんの提案に乗る事にした。
私にもバジル君の為に出来る事があるのなら、それを一生懸命頑張ってやってみせる!それでバジル君が救われるのなら、私も嬉しいからね!

「そうか……まぁ、頑張ると言っても、それ程苦労の無い事だがな」
「え?どう言う事?」
「うむ、貴様がやるべき事は至って簡単でな……」

黒ひげさんは……私の目を見ながら静かに言った。



「バジルの過去を見るのだ……」



===========




黒ひげさんから一通り説明を聞いた私は、バジル君がいる部屋のドアの前で立っていた。これから私はバジル君に会う為に、バジル君の部屋に入るつもりだ。

「……なんでこんなに緊張するんだろう……」

それにしても……普通に会うだけなのに、自分でも分からない位に緊張してる。これからバジル君と二人っきりになるのが原因なのだろうけど……。

「……誰かに付いて来てもらった方が良かったかな……」

私は此処まで来て、何故一人で来たのだろうと疑問に思ってしまった。
黒ひげさんは『一人で行かせろ。同行するような真似は禁ずる』なんて言って、エルミーラさんたちには同行しないよう釘を刺したけど……此処まで来た途端に変な緊張に包まれてしまった。こんな事なら、誰か一人でも一緒に来てもらった方が……。


「……ええい!乗りかかった船よ!女海賊メアリー、行きまーす!」


そうよ!クヨクヨしてる場合じゃない!私は必ず、バジル君を救うんだから!
と、意気込んでドアをノックしようとしたら……。



ガチャッ



「何を一人で騒いd」



ゴンッ!



「ゴホッ!」
「……あ……」


……気付いた時には遅かった。緊張してた所為で余計に力の篭った握り拳が、急に部屋から出てきたバジル君の身体に直撃。私の拳で強く叩かれたバジル君は一瞬だけ痛みで怯んだ。


「ご、ごごごごめん!だ、大丈夫!?」
「あ、ああ……」


バジル君は大丈夫そうだけど……。
あ〜、もう!こんな時に何をやってるんだか!私のバカ!


「全く、外で何を騒いでるのかと思ったら……」
「え?全部聞こえてた?」
「ハッキリとな」
「うぅ……」

自分でも気付かないうちに部屋の中から聞かれてたようだ。
もう……私ホントに何やってるのよ……。

「……黒ひげから話は聞いたか?」
「あ、うん。バジル君の部屋に行けって、さっき言われたところ」
「よし、それじゃあ中に入ってくれ」

一人で自己嫌悪に苛まれてると、バジル君に部屋へ入るように促された。それに従い私もバジル君に続くように部屋の中へ入っていった。


「おぉ……これがバジル君の部屋……」


初めて入るバジル君の部屋。私は思わず部屋中を見渡した。ベッド、タンス、テーブルと椅子……生活に必要不可欠な家具が揃っている。
意外と質素な感じだなぁ……って、よく考えたら、本はと言えば貸し部屋だから仕方ないか。

「……あ!」

私は、ベッドの端に立て掛けられてる物を見つけた。
それは……!


「……クロノスの過去鏡!」


宝物庫にて、私にバジル君の過去の一部を見させた原因……クロノスの過去鏡だった。
でも、なんでこんな物がバジル君の部屋にあるの?あの鏡は私が宝物庫を出る際に片付けた筈なのに……。

「バジル君、これは……」
「ああ、これから必要になるから、黒ひげに頼んで借りたんだ」
「必要って……何に?」
「それは……まぁとりあえず、その椅子に座ってくれ」
「え?あ……うん」

バジル君に言われた通り、私はすぐ傍にある椅子に腰を下ろした。
……ベッドの端にあるクロノスの過去鏡が私の姿を映していた。鏡面はピカピカで綺麗だけど……あれで他の人に過去を見られると思うと背筋が寒くなる。バジル君は何故あんな物を借りたのだろう?

「さて、此処へ来たと言う事は……黒ひげから一通り話を聞いたのだな?」
「うん、バジル君の過去を見てくれって……」

バジル君はゆっくりとベッドに腰掛けて話を切り出した。

「そうだ。これからお前に俺の過去について知ってもらおうと思ってる。その……クロノスの鏡を使ってな」
「え?この鏡を使って?」
「ああ、その方が内容をよく分かってくれる。それに……情けないかもしれないが、自分の口から話すのは少し辛くてな……」

そう話すバジル君の表情は……どこか寂しげなものを漂わせていた。

この様子からして、とても辛い経験を経たのだろう……口に出したくない位に。でも、何時までも知らないままでいたら、それこそ何の解決にもならない。そう思えてならなかった。
そう思ってると、バジル君は傍に置いてあるクロノスの過去鏡を手にとって話を続けた。

「黒ひげから聞いたのだが、このクロノスの過去鏡は映されてる者の意思によって、相手に見せる過去を自由に選べるらしい」
「選べるって……そんな事が出来たんだ。てっきりランダムに見せられるのかと思ってたけど……」
「ああ、映されてる者が何も頭に想像していなければ、その時こそランダムに見せられると聞いた」

クロノスの過去鏡は、映されてる者の意思によって見せる過去を選べるらしい。宝物庫に居た時は鏡の性能を色々と聞く暇が無かったから、そんな器用な真似が出来るなんて知らなかった。

「今から俺はこの鏡で、お前に俺の過去を見てもらおうと思うが……良いか?」

バジル君は真剣な表情で私に判断を委ねた。
それは勿論……!


「うん!是非とも見せて!」
「よし、それじゃあこれを……」


そしてバジル君は私にクロノスの過去鏡を手渡した。


……なんだろう……これからバジル君の過去を見ると思うと、ちょっとだけ緊張する。恐らく、これから見るバジル君の過去は壮絶なものなのだろう。
でも、どんなに壮絶な光景でも、私がちゃんとこの目に焼き付けないとバジル君の心の傷を癒せない。さっき黒ひげさんが言った通り、バジル君を救えるのが私しかいないのなら、全力で尽くすまで。


それなら話は早い。私は……バジル君の過去を全て受け入れる!


「それじゃあ……鏡で俺を映すんだ」
「うん……」

バジル君に言われた通り、私は鏡面をバジル君へと向けた。
そして……バジル君の過去の世界へと入り込んだ!





バシュッ!





「……此処は……?」


気付いた時には、私は見知らぬ土地に立っていた。あの時と……宝物庫の時と同じ様に、さっきまで持ってた鏡が無くなっている。
ただ……此処はあの時見た廃墟とは全く違う場所だった。


「……とても綺麗で長閑ね……」


青い空に白い雲、辺り一面に広がる草原、穏やかな風、川のせせらぎ……自然豊かで心地の良い場所だ。

「あれは……風車?」

そして遠くには風車らしき物が幾つか見えた。更に木造の建物が点々と建っており、そこから人が出入りしている光景が見れた。
どうやら此処はどこかの村のようだけど……。




「フンフンフフ〜ン♪」
「……ん?」




ふと、川の傍で鼻歌を歌っている声が聞こえた。思わずその声の方向へと視線を移してみる。
そこには……。


「……女の子?」


そこには薄茶色の短い髪の少女が川の水で衣服を洗濯していた。何やら茶色い民俗衣装のような服を着ていて、頭にはピンクの花飾りが付けられている。
見たところ年齢は十七歳位だろうか。それにしても、何とも可愛らしい笑顔を浮かべているなぁ……。

「おーい!ジャスミン!」


突然背後から誰かの声が聞こえた。洗濯していた少女が振り返るのにつられるように、私も背後を振り返ってみる。
そこには見覚えのある人が……!


「バジル君!?」


そう……バジル君がこちらに歩み寄って来た。


「あ、兄さん!」



そしてジャスミンと呼ばれた少女はバジル君を兄さんと……って、えぇ!?



「兄さん!?てことは……兄妹!?」


なんと、バジル君とこのジャスミンちゃんは兄妹らしい。でもバジル君に妹がいたなんて初耳だ……。

「ジャスミン、洗濯は終わったか?」
「ええ、今丁度洗い終わったところよ」
「よし、そろそろ昼ご飯にしよう」

私が呆気に取られてるのを他所に、洗濯物を籠に入れたジャスミンちゃんはバジル君と一緒に村の奥へと進んで行った。


待てよ……そうか……分かった!此処はバジル君の故郷、ガスタリ村か!
そう言えばガスタリ村には大きな風車が幾つか建てられてるって聞いた事がある。此処にバジル君とその妹のジャスミンちゃんがいるのなら、そう考えても不思議ではない。


「兄さん、今日のお昼ご飯は?」
「キノコのジパング風パスタだ」
「おぉ!兄さんの得意料理だね!」
「得意と言う訳ではないが……」
「でも兄さんが作る料理はどれも美味しいよ!」
「……煽てても何も出ないぞ?」
「えへへ」


と、バジル君とジャスミンちゃんは何気ない会話を交えている。でもこうして見ると、仲が良くて微笑ましいなぁ……。
……ん?と言うか、バジル君って料理作れるの?それも初耳だけど……。






バシュッ!





「……あれ?場所が変わった……」


突然、私の周りの光景が瞬時に切り替わった。石造りの壁に囲まれた訓練場のような場所だ。



キィン!



「もっと踏み込め!武器のリーチに頼りすぎだ!」
「クッ……!」


剣戟が響き渡る。背後を振り返ってみると、バジル君は二本のランスを、ジャスミンちゃんは長い薙刀を持って互いに組み手をしていた。



キィン!カンカンッ!カキィン!



「振り下ろした直後に守りの姿勢に入れ!傍から見れば隙だらけだぞ!」
「はい……せりゃあ!」


互いに一歩も引けを取らず、組み手とは思えない程迫力のある戦いだ。どうやらバジル君がジャスミンちゃんに稽古を付けてるようだけど……ジャスミンちゃんもそれなりに戦えるようだ。

「……よし、今日はここまで」
「ふぅ……ありがとうございました」

そして稽古が終わったのか、バジル君は背中にランスをしまい、ジャスミンちゃんは衣服の袖で額の汗を拭った。

「兄さん、明日もよろしくね」
「やれやれ……俺としては、お前には危なっかしい真似はして欲しくなかったがな」
「か弱い女に武芸なんて以ての外とでも言いたいの?もう、またそうやって女だからって理由だけで……私は守られてばかりのお姫様じゃないのよ」
「いや、そう言う意味じゃ……ジャスミンは戦う必要なんて無いんだよ。村を守るのは俺の仕事だし、第一この稽古だって父さんには内緒でやってるんだから、見つかったりしたら大変だ。俺だって最初は反対だったのに……」
「そう言ってる割には何時も武術を教えてくれるよね?」
「そりゃあ、ジャスミンが本気でやりたいって言うから……」

そこで始まったのは、さっきと似たような他愛も無い会話。どうやら昔から本当に仲の良い兄妹だったみたいだ。
でも話の内容を聞くところ、バジル君はジャスミンちゃんに武術を教える事に気が乗らないらしい。まぁ、兄としては妹に危険な真似をさせたくないのだろう。

「……ねぇ兄さん、急にこんな事言って悪いんだけど……」
「ん?どうした?」

すると、ジャスミンちゃんは薙刀の端の部分を地面に着けてバジル君に話しかけた。


「……そのマスク、何時まで付けてるの?」
「え?これか?」


ジャスミンちゃんはバジル君の口元を覆ってるマスクを指差した。
と言うか、バジル君のマスクってこの頃からあったんだね……。

「別に口元に怪我を負ってる訳でもないし、何時も付けてる必要も無い気がするけど……」
「まぁそうだが……俺としては付けておきたいんだ。ジャスミンが俺の誕生日に作ってくれたからな」
「……え?バジル君のマスクって……ジャスミンちゃんが作ったものなの!?」

私も前から何故マスクなんか付けてるのだろうとは疑問に思ってた。バジル君自身は素顔を見られる事に抵抗は無かったけど……あのマスクはジャスミンちゃんが作ってくれた大切なものなんだね。だから何時も身に付けてたんだ。

「お前が何時も母さんの形見である髪飾りを付けているのと同じ様に、俺にとってもこのマスクは大切な物なんだよ」
「気に入ってくれてるのは嬉しいけど……素顔を隠すなんて、ちょっと勿体無いよ。兄さん、イケ面なのに……」
「そうか?でもこのマスク、村の友達たちの間でも評判が良くてな。みんな口揃えて『俺にも欲しい!』なんて言って……」
「……言っとくけど、どんなに頼まれても作らないから。あのマスク、作るのは簡単に見えるけど本当は結構難しいのよ」
「分かってる。お前に無駄な苦労はさせないさ」
「……フフフ……」

そう言うバジル君は温かくて穏やかな表情を浮かべていた。それを見たジャスミンちゃんもつられて明るい笑みを浮かべる。
……本当に仲が良いんだね。何度も同じ事を思うけど、本当に微笑ましい。ジャスミンちゃんも可愛いなぁ……。

「……ねぇ、兄さん……」
「ん?」

ふと、ジャスミンちゃんが明るい笑みから一変、どこか寂しげな表情を浮かべた。

「兄さんは……突然消えたりしないよね?」
「……は?突然何を言ってるんだ?」

唐突に言われた言葉が理解出来ないのか、バジル君は呆れた表情を浮かべた。

「この前、兄さんが何も言わずに私の目の前から去っていく夢を見たの。私が必死に追いかけても、全然追いつけずに兄さんは何処かへ行ってしまって……」
「…………」
「一々夢なんて気にしてたら切りが無い事くらい分かってる。でも……それでも不安になるの。特に根拠は無いけど、兄さんが突然消えてしまうような気がして……」

こう話すジャスミンちゃんの様子を見て、ジャスミンちゃんは心からバジル君を大切に想っているのだと実感した。こんなに良い妹がいて……バジル君は本当に幸せ者だね。


「……何を言い出すかと思えば……」


すると、バジル君はジャスミンちゃんの頭にポンと手を置いた。

「居なくなったりしないさ。俺はお前の兄だ。妹であるお前を放っておく訳ないだろ?」
「……そうね!考えすぎたわ!」

ジャスミンちゃんは元気を取り戻したのか、再び明るい笑みを浮かべた。

「さて、早く帰って飯にしようか」
「ええ!」


……なんか、良いなぁ……これぞ家族愛ってやつかな?
ジャスミンちゃんって、今でもバジル君の故郷にいるのかな?だとしたら、一度会ってみたいなぁ……。


「おーい!バジルー!大変だー!!」
「ん?その声は……セージか」


突然、セージと呼ばれた男の人が慌てた様子でバジル君たちの下へ駆け寄った。濃い緑色の短髪で、少し背が低めの男の人だけど、見たところバジル君と年齢差はそれ程無いと思われる。

「どうしたんだ、そんなに慌てて?」
「はぁ、はぁ……聞いてくれ!大変な事に……!」
「だから、どうしたんだ?落ち着いて話せ」

全速力で此処まで走ってきたのか、セージ君は激しく息切れをしつつも話を続けた。


「本当に大変なんだ!もうすぐ此処に海賊が来るんだよ!」
「海賊!?本当なのか!?」
「ああ、この目で見たから間違いない!あいつら、これから村を襲うつもりなんだ!」


なんと、海賊がこの村に攻めてくるらしい。それでバジル君に急いで伝えに来たんだ……。


「だが、ただの海賊なら村の精鋭たちが簡単に倒してくれるだろ?」
「いや、それが……海賊の人数が多すぎて、見たところ百人以上はいるんだ!」
「ほぅ、百人か……って、百人!?多すぎるだろ!」
「本当だって!それで、村の警備員だけじゃ対処しきれないから、他の戦士たちにも出向くように要請が出たんだ!バジルのお父さんも既に戦いに行ってるよ!」
「父さんが……!」

海賊の数は百人……確かに多い。バジル君のお父さんも戦いに行ってると言う事は、相当激しい戦闘になるのだろう。
……ん?待てよ……百人?なんだろう……この百と言う数、何故か心に引っかかるような……。

「と、とにかくバジル!僕たちも早く出陣しよう!なんとしてでも村を守らなきゃ!」
「そうだな……ジャスミン!お前は一足先に避難場所へ向かえ!」
「兄さん、私も一緒に……!」
「お前は来るな!」

同行しようとするジャスミンちゃんをバジル君は大声を上げて止めた。

「海賊は俺たちに任せて、お前は大人しく待ってろ!」
「でも……!」
「大丈夫だ!すぐに戻ってくる!それまで待ってろ!」

バジル君とセージ君は駆け足で訓練場を出て行った。
そしてジャスミンちゃんは、走り去るバジル君の背中を静かに見送った。

「……なんで……私は行かせてくれないの……?」

心なしか、ジャスミンちゃんの表情が少しだけ寂しく見えた…………。







バシュッ!





「……あれ?また変わった……」


またしても周囲の光景が切り替わった。夜空に三日月が浮かび、周囲には木造の建物が並んでいる。見たところ、夜のガスタリ村のようだけど……さっき見た長閑な光景とは明らかにに違う。


「それで、負傷者はどれくらいいる?」
「重軽傷者はおよそ二十人います!」
「よし、怪我が大きい人を優先的に治療するんだ!」
「はい!」
「おーい!誰か薬草を持ってきてくれ!」
「あ、ほら、少しだけで悪いが俺のを分けてやる」
「おお、かたじけない」


どうやら海賊との戦闘が終わったようだ。幾多の声が周りに上がり、数名の人たちが負傷者の手当てをしている。
そうだ……バジル君は何処に?


「お願いお父さん!行かせて!」
「ジャスミン!少しは頭を冷やせ!」


急に声が聞こえたので振り返ってみると、ジャスミンちゃんが一人の無精髭を生やした黒髪の男の人と話をしていた。その傍ではバジル君が静かに見守ってる。でも、なんだか話し合ってる様子がおかしい。互いに睨み合って喧嘩に近い言い争いをしている。
そして……ジャスミンちゃんの頭に付けられてる筈の髪飾りが何時の間にか無くなっていた。

「でもあれは……私にとって大切な宝物なのよ!父さんだって知ってるでしょ!?」
「命の危機を脅かしてまで行く必要は無いだろ!」


……父さん?ジャスミンちゃん、あの男の人を父さんって……。
もしかして、あの人がバジル君とジャスミンちゃんのお父さん?あんな感じの人なんだ。でも、ジャスミンちゃんの大切な物って……一体なんだろう?


「ただでさえあいつらは暴れるだけ暴れて、女子供にまで手を上げて、挙句の果てには村の金品を盗んだ!あんな暴挙を許す訳にはいかない!」
「確かに村の金を盗られたのは悔しいが、死者が一人も出なかっただけマシだ!」
「あんな奴らを野放しにしたら、何の罪も無い他の人たちまで被害を被るかもしれないのよ!」
「だからと言ってお前一人で戦う気か!?無謀と勇気は別物だぞ!」

互いに険しい表情で言い争ってる。話の内容からして、ジャスミンちゃんは自分の村を襲った挙句に宝物を奪った海賊が許せなくなり、これから敵討ちに行きたいのだろう。でもお父さんは断じて許可を与えずに頑なに止めている。

「ジャスミン!気持ちは分かるが馬鹿な真似はよせ!」
「兄さん……それでも盗られた物を取り返す為に行きたいの!」

バジル君もジャスミンちゃんを宥めるが、一向に耳を傾ける気が無い。

「ジャスミン……もう良いんだ。村の皆が生きているのならそれで良い。もう何もするな」
「……なんで……」


ジャスミンちゃんは一呼吸置いてから怒号を上げた。


「何故あいつらを許すの!?お母さんの形見の髪飾りを奪ったあいつらを何故許せるの!?」


髪飾りって……ジャスミンちゃんの?そう言えば、ジャスミンちゃんは頭にピンクの花の髪飾りを付けていた。まさか、海賊たちはあの髪飾りを……?


「許した訳ではない!俺はただ、か弱い女を危険な目に遭わせたくないだけだ!」
「……またそうやってか弱い女だからって……!」

すると、ジャスミンちゃんは見る見るうちに怒りの表情を浮かべた。ギュッと拳を握って、自分より背が高いバジル君を睨みつけている。

「どれだけ私を貧弱者扱いすれば気が済むのよ!雑魚呼ばわりもいい加減にしてよ!」
「そんな事言ってないだろ!」
「言ってるようなものよ!女だからダメだ、女だから行くな……もうそんな理由で拘束されるのはウンザリ!私だって戦えるのよ!毎日兄さんに鍛えてもらってるし……」
「あんなの、ただの防衛術でしかならない!お前は本当の戦いの怖さを知らないんだ!」
「怖くなんかない!私だって薙刀を振り回せる戦士よ!守られてばかりの役じゃないんだから!何時かは兄さんみたいに強くなって……」
「それが余計なんだ!お前は考えてる事が単純過ぎる!」
「……もう良い!もう良いわよ!」
「ジャスミン?」

ジャスミンちゃんはバジル君に背を向けてゆっくりと歩き出した。

「ジャスミン、何処へ行く?」
「……取り返す」
「は?」
「私一人で髪飾りを取り返す!」


ジャスミンちゃんは一旦立ち止まり、バジル君へと振り返って大声で叫んだ。




「あいつらから髪飾りを取り返して……私が貧弱じゃないのを証明してみせる!!」




そしてジャスミンちゃんは、バジル君に呼び止められる前に全速力で駆け出した。


「お、おい待て!ジャスミン!」
「来ないでよ!」
「うわぁ!?」

バジル君が慌てて走り出し、ジャスミンちゃんを止めようとした瞬間、ジャスミンちゃんは偶然傍に置いてあった樽を蹴り飛ばしてバジル君を足止めした。幾つもの樽に行く手を阻まれ、バジル君は咄嗟に立ち止まって次々と樽をかわす。

「……ジャスミン?どこだ、ジャスミン!?」

そして樽を全て避けきった時には、ジャスミンちゃんの姿は何処にもいなかった…………。







バシュッ!



「……あ!此処って……!」


……もう周りの光景が変わるのに慣れてしまった。さっきのガスタリ村から一変、またしても場所が切り替わった。
でも……今此処にいる場所は私にも見覚えがあった。


「この廃墟は……さっき見たのと同じだ!」


空には禍々しい黒雲、周囲には崩れかけてる石造りの建物。そう……初めてバジル君の過去の世界に入った時と同じ場所だ。
あの時は確かバジル君が怒り狂った状態で、男の人を何度もランスで刺して……。


「此処があの海賊の拠点か。ジャスミン……一体何処にいるんだ!?」


横を見てみると、バジル君が思い詰めた表情のまま周囲を見渡していた。
……あの時と違う。男の人を襲ってたバジル君は怒りに満ち溢れていたけど、このバジル君は至って普通の状態だ。
でも、今バジル君の口からジャスミンちゃんの名前が出たと言う事は……此処にジャスミンちゃんがいるって事になる。さっき見た二人のいざこざを考えると……あくまで推測だけど、バジル君は海賊の下へ向かったジャスミンちゃんを追って此処まで来たのだろう。

「手遅れになってなければ良いが……!」

と、バジル君がゆっくり前へ進もうと一歩踏み出した……その瞬間!



ドカァァァァァァン!!



「なんだ!?」

突然、大きな爆音が辺りに響き渡った。私とバジル君は同時に爆音が上がった方向へと振り向く。

「はぁ、はぁ……」

そして、爆音が発せられた方向から誰かがこちらに向かって必死に走って来た。よく見てみると……!


「ジャスミン!」
「え……兄さん!」


そう……必死の表情でジャスミンちゃんが薙刀を持ってこっちに走って来た。でも、その姿はあまりにも酷い状態だ。頭から血を流し、衣服はボロボロで、すぐにでも息絶えてしまいそうに見える。

「ジャスミン!大丈夫か!?」
「兄さん……私を追ってきたの……?」
「当たり前だろ!」

バジル君は慌てて駆け寄って、今にも倒れそうなジャスミンちゃんの身体を支えた。

「兄さん……私、上手く髪飾りを取り返したけど……海賊たちに見つかって、此処まで必死に逃げて……」
「そうか……とにかく、早く此処から出て行くぞ!」

と、バジル君がジャスミンちゃんを支えて此処から出て行こうとした時……!

「おっとぉ!あそこにいたぞ!」
「ん?なんかもう一人いるぞ?」
「こいつは良い!二人纏めて身包み剥いでやる!」

ジャスミンちゃんが走って来た方向から三人のガラの悪い男たちが現れた。三人ともサーベルを持ってこっちに迫って来てる。
そうか……あいつらはガスタリ村を襲った海賊の仲間ね!

「おのれ……!ジャスミン、此処で待ってろ!」

海賊が迫ってくるのを見たバジル君は、ジャスミンちゃんを慎重に地べたに座らせてから前方へ突き進んだ。

「貴様ら、よくもジャスミンを……覚悟しろ!」

そしてバジル君は走りながら背中のランスを引き抜いて戦闘の姿勢に入った。

「ひゃはは!覚悟するのはテメェdぎゃあ!」
「黙れ、雑魚が!」

まずは一人の男がバジル君に襲い掛かったが、瞬時に腹部をランスで突き刺されてあっけなく返り討ちに遭ってしまった。

「こ、この野郎!調子に乗るんじゃゴハァ!?」
「……フン」

続いて二人目の男が斬りかかったが、バジル君はもう片方のランスを横一線に振って男を斬り倒した。

「あわ……あわわ……」
「逃がすかぁ!」
「いや、ちょ、うぎゃあ!」

最後の男はバジル君の強さに怖気づいてる。しかし、バジル君は最初の男の腹部を突き刺さしてるランスを勢い良く抜き取って、怖気づいてる男を突き刺した。

「が……は……!」

ランスで突き刺された最後の男は力なくうな垂れ、そのまま気絶してしまった。そしてバジル君はランスを抜き取って、こびり付いてる男の血を振り落とした。

「凄い……これが……兄さんの実力……!」

地べたに座り込んでるジャスミンちゃんはバジル君の実力に見惚れていた。
この頃からバジル君って強かったんだね……!



「……ん?」


ふと視線を横に移すと、石造りの建物の屋上に何か鉄製の筒のような物が……って!


「あれは……まさか!?」

その筒の正体を見た瞬間、私の背筋が一気に寒くなった。
間違いなかった……あの筒は……!


「大砲!?」


そう、建物の屋上から移動式の大砲がこちらを向いていた。その大砲の傍には、ニタニタと不気味な笑みを浮かべてる痩身の男がいる。
まさか、あの男も海賊の仲間!?


「バジル君!逃げて!あそこに大砲が!」
「やれやれ、大したことなかったな」
「ねぇ!聞いてるの!?大砲が……って、そうだった……!」


すぐにバジル君に呼びかけたが、私の声に反応せずランスを背中に掛けるバジル君の様子を見て、呼びかけるのは無意味な事だと気づいた。
そうだった……これはあくまで過去の世界で、私はただ立体映像を見せられてるだけに過ぎなかった。幾ら呼びかけても反応されないし、触る事も出来ない。

「あぁ……どうなるの!?もうすぐ大砲が……!」

何も出来ずに焦っていると、建物の屋上にいる男が照準をバジル君に合わせる。
あの男、確実にバジル君を仕留める気だ!バジル君、お願いだから気付いて!


「兄さん!危ない!」


すると、地べたに座ってたジャスミンちゃんが咄嗟に立ち上がり、薙刀を投げ捨てて全力でバジル君の下へ駆け出した。


「え?うわっ!?」

その勢いを保ったままバジル君を突き飛ばすと同時に……!




ドォン!!



大砲の弾が放たれた!ジャスミンちゃんは急いで避けようとするが、身体の負傷が大きい為か思うように身動きがとれないでいる。
それでも逃げようと試みるが…………遅かった……!











ドカァァァァァァァァァァン!!




「ジャスミーーーン!!」


砲弾の落下地点から砂煙が巻き上がり、ジャスミンちゃんの姿が見えなくなった……。


「……貴様ぁぁぁ!!」


砲弾が放たれた方向へと視線を移したバジル君は大砲の男の姿に気付いた。そして怒りの叫びを上げながら……雷の鷹を生成して男へ飛ばした!


「サンダー・ホーク!!」


ビリビリビリビリビリ


「ぎゃあああああああ!!」


ドォン!


雷の鷹の直撃によって感電した男は、悲痛な叫びを上げながら建物から落下した。


「ジャスミン!」

バジル君はすぐにジャスミンちゃんがいるであろう、砲弾の着弾地点へと駆け寄った。湧き上がってる砂煙が徐々に消え失せていく。


「う……うぅ……」
「ジャスミン!待ってろ!今助ける!」

そこには、砲弾で身体を圧しつけられてるジャスミンちゃんがいた。バジル君はジャスミンちゃんの身体に乗っかってる砲弾を持ち上げて無造作に投げ飛ばし、ジャスミンちゃんを砲弾の重みから解放した。

「ジャスミン!大丈夫か!?」
「……兄さん……」

バジル君は仰向けになってるジャスミンちゃんの上半身を起こして必死にに呼びかけるが、ジャスミンちゃんは目が虚ろになってる上に呼吸もあまりしてない。口から血も吐いてる……これはかなり不味い。ただでさえ危険な状態だったのに、大砲の弾を真正面から受けたら……!


「ジャスミン、少しだけ我慢してくれ!今俺が助けるから!」
「……兄さん……私……もう、ダメ……」
「何言ってるんだ!すぐに手当てしてやるから!」
「ごめん……もう……本当に……ダメ……みたい……」


息も絶え絶えで弱りきってるジャスミンちゃん。その様子を見て……私は察してしまった。
ジャスミンちゃんはもう……助からないと……。


「兄さん……勝手な真似して……迷惑掛けて……ごめんね…………」
「……良いんだ……もう良いんだ!」
「いっぱい我が侭言って……ごめんね……嫌いな野菜も……押し付けて……ごめんね……」
「……急に何を言い出すんだ!?気をしっかり持て!お前を死なせはしない!」
「…………せめて……父さんと……母さんにも……会いたかったなぁ……」
「……頼む……これから死ぬような言い方は止めてくれ!死なないでくれ!」


少しずつ生気が薄れていくジャスミンちゃんの顔を見続けるうちに、バジル君の顔から悲しみが露になった。その目からは、一滴の涙が……。


「生きろ!死なないでくれ!俺より先にあの世へ逝くなんて許さないぞ!」
「ごめんね……もう……ダメ…………」
「ダメじゃない!もっと生きろ!もっと……もっと武術でも勉強でも教えてやるから、もっと生きろ!」
「……ありがとう……私も……もっと兄さんと……一緒に居たかった……」

苦しみに苛まれながらも、そう話すジャスミンちゃんは本当に幸せそうな笑顔を浮かべていた。

「一緒に居たいのなら、そうしろ!この前、俺が目の前から消えるのが不安だって、お前言っただろ!?そのお前が消えてどうするんだよ!」
「……そう……だね……でも……もう……」

バジル君は……ジャスミンちゃんの死を絶対に認めたくないのだろう。
大切な家族の死は何よりも辛いもの……すんなりと受け入れられる程安易なものではない。


「……兄さん…………私ね……」


ジャスミンちゃんは……温かい笑みを浮かべながら……涙を流しながらバジル君に言った。




「兄さんの妹で……幸せだったよ…………」
「……あぁ……俺もジャスミンが妹で……本当に幸せだ!」


バジル君は……ジャスミンちゃんの手を強く握ってハッキリと言った。しかし……ジャスミンちゃんの瞳が少しずつ閉じられていく……。



「……………兄……さん……」
「……ジャスミン?」



ジャスミンちゃんの微かな声が……徐々に小さくなっていく。
そして、瞳が完全に閉じられて…………。




「…………大……す…………き……」




ジャスミンちゃんは温かい笑顔を浮かべたまま……静かに息を引き取った…………。


「……嘘だろ……嘘だと言ってくれ……!」


バジル君は絶望の淵に突き落とされた表情で……ジャスミンちゃんの顔を見つめている。バジル君の腕の中で安らかに眠っているジャスミンちゃんは、とても温かい笑みを浮かべている。
でも……その閉じられてる瞳が開けられる事は……もう二度と無い……。



「なぁ……起きてくれ……ジャスミン……ジャスミン!!」
「………………」


何度も呼びかけるが、ジャスミンちゃんはもう起きてくれる事は無い。目の前で起きた悲しい出来事に、私は涙を堪えながらただ視線を逸らすしかなかった。
……まさか……バジル君の過去にこんな事が起きてたなんて……。


「おーおー、こんなところに居やがったか」


すると突然、バジル君の背後から聞きなれない声が聞こえた。その方向へ視線を移すと、三人のガラの悪い男が武器を携えて立っていた。
この人たち……まさか、さっきの海賊たちの仲間!?よりによってこんな時に!

「しっかしまぁ、折角手に入れた花の髪飾りを盗みやがって……」
「あれ、結構金になるんだぞ。傷でも付いたらどうしてくれるんだ?」
「……何故だ……」
「あぁん?」
「何故……花の髪飾りを盗んだ……?」

バジル君は息絶えたジャスミンちゃんを支えたまま……海賊たちへと振り向かずに言った。すると、海賊たちは下賤な笑みを浮かべながら答えた。

「あぁ!あのピンクの花の髪飾りか!あの花の中央部分に使われてる宝石は希少価値の高い代物でな、安物のルビーやダイヤモンドより高く売れるんだ!」
「宝石に詳しい俺らの仲間の一人が偶然にも見つけちまってな、それを奪って大金を貰おうと思ってたのさ!」

海賊たちが言うには、ジャスミンちゃんの髪飾りの宝石はかなり高額の値段が付けられているとの事だけど……。


でも……そんな理由でバジル君の村を襲った挙句、ジャスミンちゃんの髪飾りを奪うなんて……許せない!出来る事なら、今すぐ殴り飛ばしてやりたい!
私の中に、ガスタリ村を襲った海賊たちに対する怒りが沸々と込み上げられてきた。


「つーか、そんな事テメェには関係ねぇだろ?んな事より、イテェ目に遭いたくなかったらとっとと髪飾りをよこしな」


すると、海賊の内の一人がズカズカと大股でバジル君の背後まで歩み寄った。
すると……!



グサッ!


「がぁっ!?」


一瞬の出来事だった。バジル君は片手で一本のランスを抜き取り、振り向きもせずに男の身体を突き刺した。


「……そんな……そんな理由で……」

ランスを握ってるバジル君の手は震えていた。この様子を見ればすぐに分かった。
バジル君は……もう怒りを抑えきれないのだと…………。


「そんな理由でジャスミンを巻き込んだのかぁ!!」
「ぐぁあ!」

そしてバジル君はランスを引き抜き、その引き抜いた腕の肘で男を突き飛ばした。突き刺された上に突き飛ばされた男は、あまりの痛みに転がり込んで顔を歪ませる。

「…………」

バジル君はジャスミンちゃんをそっと寝かせてから、その場で立ち上がり背中からもう一本のランスを抜き取った。そのランスからは、明らかに殺気を感じた……。


「……俺は……人を殺める修羅となる……!」
「な、なんだ!?」
「許さない、許さない、許さない…………!」
「こいつ……狂ってやがる……」
「殺してやる……殺してやる……!」


バジル君から怒りの波動が放たれ、その瞳にはジャスミンちゃんの仇である海賊たちへの憎しみが溜められている。


……そうか……あの時見たのは……この状態のバジル君だったんだ……。
私は、初めてバジル君の過去の世界に入った時の事を思い出した。あの時のバジル君は怒りに満ち溢れていた。今私の目の前にいるバジル君と同じ様に。
と言う事は、あの時バジル君に何度も突き刺されてた男の人は……この海賊たちの仲間だったんだ。


「……貴様らの仲間は、確か船長も含めて百人だったな……」
「そ、そうだが……それがどうした!?」
「貴様らだけは許さない!復讐だ……復讐してやる!」
「まさか、百人纏めて殺す気じゃないだろうな!?たった一人のガキにそんな真似が出来るものか!」
「……殺してやるさ……一人残らず……殺してやる!」


そしてバジル君は怒りの表情を浮かべ、腹の底から憎しみを込めた怒号を上げた…………。



「殺してやるぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」








バシュッ!


「あ!また変わっ…………てない。さっきと同じ廃墟……」
「ひぃぃ!ば、化け物!」
「……逃げられるとでも思ったか!」
「え!?」

瞬時に周りの光景が変わったが……土地そのものは変わってないようだ。さっきの様な崩れかけてる建物は遠くに見えて、私のすぐ後ろには海が広がってる。
そしてすぐ傍では、バジル君が一人の恰幅の良い血塗れの男にランスの先を向けていた。男の背後には、無残にも血まみれになって倒れてる数十人の男たちが……。

「なんて事だ……まさか、百人纏めて一人の男にやられるなんて……!」
「正確には九十九人だ。船長である貴様を殺せば百人に達成する」
「ひ、ひぃぃ!助けてくれぇ!死にたくねぇよぉ!」

どうやら、この男が船長らしい。そしてこの男で百人目になる……と言う事は、バジル君は本当に……!

「命乞いなど無用!ここで死ね!」
「や、止めろ!止めてくれぇ!!」

そしてバジル君は……男の身体にランスを突き刺した!


グサッ!


「ぐぁあ!!」
「……地獄へ堕ちろ!」
「が……は……!」

バジル君がランスを引く抜くと同時に、止めを刺された海賊の船長は身体に血を流しながらその場で倒れこんだ。

……バジル君の百人斬りの噂は……本当だったんだ……!
バジル君が過去に百人の海賊を一人残らず斬った噂は前に聞いた事がある。本当か嘘かは分からなかったけど……どうやら本当だったようだ。
これは、実際にバジル君の過去に起きた出来事……疑う余地も無い。

「………………」

バジル君は……死に絶えた海賊の船長を何も言わずに見つめ続けた。その表情は……憎しみとも、怒りとも言えない。ただ、虚ろな目だけは船長の死体を捉えていた。


「……俺は……確かにジャスミンの仇を討った」


バジル君は静かに……そして寂しそうにポツリと呟いた。

「喜んで良い筈だ。笑って良い筈だ。なのに……」

バジル君は……ゆっくりと大空を見上げた。お世辞にも良い天気とは言えず、禍々しい黒雲が空一面を覆ってる。今にも雨が降り出しそうな気がした。


「何故……こんなに虚しいんだ……?」


ジャスミンちゃんを殺された復讐を果たしたバジル君は…………とても虚しい表情を浮かべていた。
怒りのままに海賊たちを殺した結果、バジル君に残されたもの。それは喜びでも、達成感でも、嬉しさでもない……ただの空虚。本人が自ら言った訳ではないけど、バジル君の様子を見れば自然と分かってくる。恐らく、バジル君自身も気付いたのだろう。復讐は、とても残酷で虚しいものなのだと……。

「……俺は……何の為にこんな事を……」

バジル君の身体は海の方角へと向かれて、やがてその視線は自分の足元へと下ろされる。


ポツ……ポツ……


そんなバジル君の様子にもお構いなしと言わんばかりに、無情にも大粒の雨が降り始める。
この世界においては私に何の影響も無いから、雨で濡れる事も無いし、雨の冷たさも感じない。でも……この時のバジル君にとっては、とても冷たかったのだろう。そう思うと……。


スッ……


「やっぱり……ダメか……」

触れない事は分かってた。分かっていても手を出してしまう。それでもやっぱり触れない。
……こんなに歯痒く思うのは初めてだ……触りたいのに……触れない……。

「……う……うぅ……」

泣き始めるバジル君の両手からランスが落とされた。そして間髪入れずにバジル君自身もその場に跪いて泣き崩れる。
更に酷い仕打ちとばかりに、黒雲から振る雨が一層激しさを増した。

「うっく…………ジャスミン……」
「…………」

静かにジャスミンちゃんの名前を呟いたバジル君は、とても悲しい表情を浮かべていた。冷たい雨でずぶ濡れになりつつも、その場から動く事無く涙を流し続ける。


……今すぐ抱きしめたい……バジル君を支えたい……!
咄嗟に湧き上がった感情が私を駆り立てた。


スッ……


「あ……」

でも……抱きしめる事も出来ない。抱きしめようと伸ばした私の腕はバジル君の身体をすり抜けてしまう。

「ジャスミン……ジャスミン……!」
「……バジル君……!」

悲しみに包まれるバジル君に激しい雨が降り注ぐ。髪も衣服もビショビショに濡らされるにも関わらず、バジル君が未だに泣き続けた。そんなバジル君を抱きしめようとするも……やっぱり腕が身体をすり抜けて抱きしめる事が出来ない。


……初めて知った……大好きな人に触れないのが……こんなにも辛いなんて……!



「う……うぁあああああああああああ!!」



ついに限界まで達したのか、バジル君は雨空に向かって大声で泣いた。自分の内にある悲しみを全て吐き出すかのように、とても辛そうに……!
恐らく……気付いたのだろう。復讐を果たしたところで、ジャスミンちゃんは自分の前に戻って来ない。もう永遠に会えない運命は避けられないのだと……。

「ああ、ああああ!うぁあああああああ!!」
「バジル君!バジル君!」

大声で泣き続けるバジル君を、私は何度も抱きしめようとする。その度に、抱きしめようとする腕がすり抜けてしまう。

……気付いた時には、私まで泣いていた。
すぐ傍に好きな人が泣いてるのに、ずぶ濡れになってるのに……抱きしめる事も出来ない。言葉も届かない。
なんて……辛いの……!

「ジャスミン!なんで……なんでこんな事になったんだぁ!あの子は優しい子なのに!何の罪も無いのに!生きていてほしかったのに!何故!何故だ!何故なんだぁぁぁぁ!!」

両手で頭を抱えて喚き散らしている。すぐにその冷たくなった身体を抱きしめたいのに……何も出来ないなんて……!


「俺は……俺は……ああああああああああああ!!」


……バジル君……バジル君……!


「バジル君!」





バシュッ!



「……大丈夫か?」
「……は!」

……過去の世界から戻って来たようだ。そこは何時も通りのバジル君の部屋で、私の手元にもクロノスの鏡が持たされてる。
ただ……涙を流していたのは変わってなかった。

「……バジル君……!」

私の目の前には現実の……本物のバジル君がいる。心配そうに私の顔を伺っている。
……さっきの光景が頭に浮かんだ。すぐ傍にバジル君が居たのに、何も出来なかった。声も届かないし、触る事も出来ない。
でも、今目の前にいるバジル君は……!


「バジル君!」
「ちょ、メアリー!?」


衝動に駆られて、私は鏡を手放してバジル君を抱きしめた。腕に力を込めて、離れないように。
良かった……ちゃんと触れる。バジル君の身体の温かみも伝わってくる……。

「目の前でバジル君が泣いていたのに……何も出来なくて辛かった……」
「メアリー……もう全部知ったんだな……」
「うん……バジル君、もう少しだけこのままでいさせて」
「え?」
「もう少し、もう少しだけ……お願い……」
「……ああ……」

バジル君は抵抗もせずに、私を受け入れてくれた。
バジル君の身体の温もりは、とても心地の良いものだった……。
12/12/28 00:19更新 / シャークドン
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■作者メッセージ
はい、と言うわけで今回はバジルの過去の話でした。中途半端な終わり方になってしまった……(汗)

バジルの百人斬りの裏にある事実……実は結構前から設定されてました。事情を知らない周囲の人から見れば武勇伝とも言えるのでしょうけど、彼にとっては悲しい過去の一つに過ぎないのでしょうね……。

さて、次回は最終回となります。バジルの過去を知ったメアリーはどう動くのか?エロは次回になりますが……期待しないでくださいね?

では、読んでくださってありがとうございます!

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