連載小説
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外伝その6 束の間だった平穏
「…まだ痛い。」
「何か…すいません…。」
「へうぅ…。」

起きてもう20分は経っただろうか、俺は何故かさっきの首の正体である忍び装束でどうやってるのかは分からないが天井に足を付けて歩くデュラハン――刹那さんと一緒に廊下を歩いていた。
何故騎士なのに忍び装束なのかとか例の如く天井歩きしてるのかとかは気にしてはいけない(らしい)。
そして何故俺の部屋に入ってきたのかと言うと、親父に頼まれたからだそう。

「…貴方もユーモアと言うものが…分かってない。」
「はぁ…。」

いやいや、あの究極の精神的ブラックホラーがユーモアだと思えるのは世界中を探してもうちの親父位だと思いますが。
刹那さんは半ば呆れたような口調に半目で俺を見ながら呟く。
というか、『も』って事は他の人達にもやってるのか?

「あうぅ…。」

因みに唯が俺の服の裾を掴みながら涙目になってずっと隠れているのも、この刹那さんが起因する。
まぁ、詰まる所刹那さんの生首見てそのまま気絶。すっかり怯えて刹那さんを警戒しまくっているのだ。
無理もない、普通の人間なら一生のトラウマレベルの衝撃を幼心にクリーンヒットしたのだから。

「よう、陽介。あれから大丈夫か?」
「あ、卓さん。」

いつの間に現れたのか、目の前に卓さんが立っていた。
卓さんの姿を目に止めた途端、刹那さんはビシッと直立して敬礼をした。…逆さのままで。

「…おはようございます、卓特務長。」
「ああ、おはよう。楽にしてくれて構わないよ。」

それを気にする風でもなく、卓さんは刹那さんに優しく笑いかける。
卓さんの言葉を受けて、刹那さんはゆっくりと手を下ろした。

「刹那君、さっき聡世さんと星君が呼んでいた。急ぎの用らしいから、早く向かってあげなさい。」
「ハッ。」

刹那さんは短く返事をすると、目にも留まらない程速く移動したのだろう、フッと消えた。

「…さて、陽介。暇なら少しいいか?」
「え、あ、はい。」
「君が剣道の師範代をやっていると聞いたが…。間違いないか?」
「はい。親父が作った流派ですが…。」
「そうか…。実はな…。」

急にそんなことを訊いてきて、一体どうしたんだろうか。

「いや、ここじゃ何だな。訓練場へ行こう。実力を見てやる。」
「へ?」

卓さんは言いかけた言葉を隠してわざとらしく話を代えると、踵を返してさっさと歩きだした。

「どうした?」
「い、いえ!うわっ!?」

立ち止まって振り返った卓さんに追い付こうと急ぎ足で歩こうとした時、唯が必死にズボンにしがみ付いていたらしく、つんのめってしまった。

「ゆ…唯…ッ!?」
「あ…あう…あ…。」
「唯!?な、何だその焔!?」
「あうっ!?いたっ…ににさ、いた…!」

唯の方に向くと何故か唯の身体を蒼白い焔が覆っており、その中で唯が息を切れ切れにさせながら苦しそうにズボンの裾を掴んでいた。焔を消そうと足元にある唯の身体を叩くが、一向に消える気配がない。

「…?おい、どうし…!?」
「くそ!消えろ…!」
「待て。」

不意に叩く腕を掴まれたので振り返ってみると、いつになく真剣な顔つきで卓さんが立っていた。

「は、離して下さい!このままじゃ、唯が…!」
「落ち着け。」

いやに冷静な卓さんの声で我に帰る。
足元の唯を見てみると、先程の刹那さんの時よりも酷く怯えたように涙を流しながら俺のズボンに抱きついていた。勿論、唯を覆っていた焔なんか何処にもない。

「ううっ…ひぐっ…いたぃ…いたいよぅ…。」
「ゆ、唯!ごめん、大丈夫か!?」
「…この気配…強力な幻惑と錯乱魔法か…。チッ、既に手遅れかよ。」

唯を慰めている俺を余所に、卓さんは黒衣の内ポケットからトランシーバーを取り出した。

「…聡世さん、予定変更だ。作戦を今すぐ実行に」

ズバン!

卓さんが言葉を紡ぎ終えるよりも先に、嫌な音が廊下に響き渡った。

「……………。」
「す、卓さん…?」
「ガフッ…!?」

突然、卓は口から血を吐き出して崩れ落ちた。

「卓さん!?」
「…ターゲット発見。」
「!?」

倒れた卓さんの後ろに、いつの間にか一人の男性が腕に付いた鎌に血を滴らせて立っていた。
12/05/21 01:28更新 / 一文字@目指せ月3
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■作者メッセージ
最近、筆が進みにくい…。
スランプでしょうか?

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