連載小説
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王宮へ
「ハインケルー?あんた確か言ってたわよね。話す相手は慎重に選ぶようにって」
 そォ言うベルの前髪あたりで電気がバチバチと鳴っている。
「あァ。それがどォかしたか?」
 オレがそォ言うと電気が髪全体がバチバチと鳴り出した。
「だったら何で初対面の女にバラしてんのよ!初対面の女に!!」
 何だ、いつものヤキモチかよ。最近魔力上がってるからシャレになってネェゼ。
「別に色香に惑わされたとかじゃネェから安心しろ」
 オレがそォ言うとベルは雷を引っ込めて顔を赤くした。
「あ、あたしが何を安心するって言うのよ。べ、別にあんたのことなんて好きじゃないんだからね!」
 相変わらずツンデレだな。もう慣れたけどよ。

「じゃあ何で話したんですか?」
「説明してくれるよねお兄ちゃん?」
 こんどはお前らもかよ。オレはいつフラグ立てたンだ?それとも単に面白がってるだけか?
「あいつらは主神に忠誠を誓ってネェどころか、生理的に嫌ってさえいる。騎士になった理由も弱者を守りてェって言う立派な理由だ。ンなやつらに教団が勇者として利用するために人々を殺してる可能性をほのめかしたらどォすると思う?」
「真実を確かめようとするか、仲間がそんなことをするわけがないと頭から否定するかのどっちかね」
 ベルの言葉にデビーとクリスが納得したよォな顔をした。
「多分あいつらなら聞きだそォとするだろォな。それで真実を聞いてすぐ裏切ることはネェだろォが、迷いは生まれるはずだ。そこを一気に落とすってわけだ」
 オレの言葉にデビーとクリスが呆れたよォな目で見てきた。

「よくそんなの考え付くわね。でもその騎士たちがあんたが疑ってたって言ったらどうするの?」
「あいつらにンなことできネェよ。オレが疑ってると教団に知られたら確実に両方に被害が出る。それにあいつを出さなけりゃいけネェことを知った国民の嘆きは相当なモンになる。最悪の場合孤児院にも手が伸びるかもしれネェ。誰かが漏らしたか、同じ境遇の子供たちに話した疑うだろォからな。あいつらはンなことができるほどバカでも非情でもネェよ」
 オレがそォ言うとベルは不機嫌そォな顔をした。
「ふーん。ずいぶん信用してるのね」
 ベルの髪が軽くパチッと鳴った。
「もちろんベルも信用してるぞ。オレの大切な幼馴染だしよ」
 オレが頭を撫でるとベルは目を細めた。
「うぅ。そ、そんなのでごまかれたりしないんだから」
 そォ言うベルは明らかににやけている。オレは構わず撫で続けた。
「うー。この卑怯者ー」
「はいはい」
 オレは何て言ってあいつらを裏切らせよォか考えながらベルの頭を撫で続けた。

「今日はお前たちに王宮に来てもらう」
 いつものクソ騎士がやって来てそンなことを言った。
「はァ?何でだよ」
「王直々の招待があったからだ。何でもフェールア殿との戦いを見て興味を持ったらしい」
 そォいやあのジャンクとの決闘を見にきてたンだっけか。どォでもいいからすっかり忘れてたゼ。
「そォ言うことなら仕方ネェ。これも勇者の勤めだからよ」
 オレの言葉に騎士は満足そォな顔をした。
「そうか。言葉遣いには気をつけろよ」
「大丈夫だ。これでも相手は選ンでるからよ」
 オレがそォ言うとヒルダ母さんが咎めるよォな目で見てきた。
「…ならいい。装備は用意しておいたからちゃんと着るんだぞ」
 騎士はそォ言って孤児院を出て行った。

「…これは本当に勇者の鎧なのか?」
 騎士が用意していたのは黒い鎧だった。呪文がかけてあって防御力は強ェらしいが、神々しさなンざ少しも感じネェぞ。
『それって光の鎧の対になっているっていう闇の鎧じゃない?実物初めて見たよ』
 シンカが興奮した声を上げた。
「闇の鎧?何でンなモンが教会に保管されてンだよ」
『勇者の鎧って持ち主の魔力を変換すると防御力や耐性が上がるみたいだよ。今までの勇者が偶然光が得意だっただけで、水の鎧とか炎の鎧とかもあるんだってさ』
 それで闇の鎧なンかがあるわけか。実際作ったやつはまさか誰かが着るとは思ってなかっただろォさ。
「ククッ。まァいつか裏切るオレにはふさわしい装備なのかもしれネェな」
『きゃははは。そうだね』
 シンカは高笑いを上げた。そこで同意されると少し複雑だな。

「それ本当に勇者の鎧なの?」 
「全く見えませんね」
「んー。勇者って言うより悪魔?」
 着替え終わったベルとデビーとクリスがひでェことを言ってきた。
「シンカはそォ言ってたぞ。だろォな。将来的には教団にとっては悪魔になるだろォさ」
 オレは質問に答えながらベルたちを見た。 
「な、何よ」
 ベルはやけに丈が短い青いローブに身を包んでいる。手には先端に鳥の飾りがついた金属製の杖を持っている。腕には魔力を増幅させる宝石がついた腕輪をしている。髪にはオレが昔プレゼントした花の形をした髪飾りをしている。
「似合ってるぞベル」
 オレの言葉にベルは顔を赤くした。
「べ、別にうれしくなんかないんだからね!」
 明らかに口元が笑ってるぞベル。
「私はどうですかハインケル殿」
「どうかなお兄ちゃん」
 デビーは黄緑色の騎士鎧を着て、腰にはバスタードソードを刺している。緑色の髪をポニーテールにまとめていて、教団の紋章が入った白いマントをしている。クリスは白いシスター服を着て、首からは水色の十字架を下げている。
「いいンじゃネェの?見た目だけは立派な教団騎士とシスターに見えるゼ?」
 オレの言葉にデビーとクリスはニヤリと笑った。
「確かに私たちは見た目だけですよね」
「本当に主神なんかに使えるわけないもんね」
 とんだニセ騎士にニセシスターだな。こんなやつらをわざわざ鍛え上げてくれる教団のやつらって本当にバカだよな。

「着替えは終わったのか?」
 しばらく話してるとクソ騎士がやってきた。
「あァ」
「なら早く馬車に乗れ。これ以上王宮の方々を待たせるわけにはいかないからな」
 こいつに指図されるのはかなりムカつくな。まァ言ってることは事実だから仕方なく聞いてやるけどよ。
「了解」
 さァて。この国の腐った上層部のツラを拝ませてもらうとしますか。

         つづく
11/04/16 23:09更新 / グリンデルバルド
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■作者メッセージ
更新遅れてすみません。中途半端なところで終わってしまいました。次から話が進む予定です。

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