連載小説
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43 船とクリーンなエネルギー
そして昨日祭りが終わって次の日の朝…俺は今日もいつもと同じように終わるものとばかり思っていたんだ。
だから、何の疑いも無くのんびりと朝の食事を取っていたんだからな!?
……俺がこういう言い方をしたって事はだ…多分察してくれているんだろうけど、そうだよ!!何かあったんだよ!!
でも…何があったかは内緒だぜ?

え…?内緒にせずに教えろって?だって…俺も知らないから教えようがないんだよ…メリィに朝、食事をしていたらいきなり呼ばれて、今メリィの後ろを歩いているんだからさぁ…
いや…それ以上に俺が言いたいことは…俺の宿の地下は今どれくらい改造されているんだ!?
ぞ、ゾーネの奴…俺が改造はするなとあれほど言っているのに気にも止めていないなんて…俺、少しだけど悲しいぜ?

そして日が経つに連れて大きくなっているんじゃないかとも思えるこの地下通路を通りぬけると、そこにはいつもどおりのゾーネの部屋の扉のすぐ真横に変な鉄製の扉があって、そこにメリィが入っていくじゃないか!?
あ、あの扉…前来たときは無かった気がするんだが…
ま、まぁ、細かいことは気にしないほうがいいな…うん。

で、鉄の扉を潜り抜けると…!?
な、何だあれは!?
その場所にはまだ完成していないが、完成間近の大きな船があったんだよ!!
ぞ、ゾーネはこれほど大きな船を一人で造っていたのか!?って本気で驚ける程にこの船は立派だったんだ!
しかも…大砲っぽいのついているんだよ!!たとえるとしたら…
重火器を沢山搭載した船…といったところか…
本音を言えば…マストの旗以外は全部完成しているみたいなんだが…これ、今日には出発できるようになるんじゃないのか?
それに、本音を言えば旗を取り付けるためだけにそれほど時間がかかるとは思えないなぁ…

…いや、地下室に船を造っても意味は無いんじゃないのか!?
俺は旗をじっと見ているときに、船の決定的弱点を見つけてしまったんだよ!
船というものは本来、海に浮かべて使用するものであって、決して空中を飛んだり陸地を移動できたりする必要は無いだろ?
でも…ここは地下だから水がないんだよ!!つまり、この船はずっとこの場所にあるって事!!
ここの部分は…ちゃんと考えているのかなゾーネは…?

などとくだらないことを想像しながらのんびり過ごしていると、船の内部からゾーネが若干顔に炭をうっすら被った状態で現れたんだ!
多分、さっきまでは船の中を見ていたんだろうなぁ…
俺がそう思いながらずっと黙っていると、ゾーネが大きな書類を取り出して話し始めたんだ!!

「みんなもわしが船を造っているということは知っていると思うが…今日、ようやく完成しそうなのじゃ!!じゃが…貴重な動力源がまだ見つかっておらぬのじゃ!!みんなに集まってもらったのは他でもない…わしが探している【ステイテーションエンジン】を探すのを手伝ってもらいたいのじゃ!!」
なんてゾーネが言っているわけだが…
ステイ…なんだっけ?とにかく、そのエンジンは俺、初めて聞いたぞ!?

俺がゾーネにステイテーなんたらが何か聞こうとしたときだった。
メリィの方が俺よりも先に聞くって言うね…こうやって毎回毎回出番を取られていくってのは非常に複雑な気分だぜ…うん。
「…ステイテーションエンジンって何なのゾーネ?」
「ステイテーションエンジンとは、今までのエネルギーとは全く異なるタイプのエネルギーで造られたエンジンなのじゃ…そのエネルギーというのがクライタッドで、最近科学者や研究者の研究の対象になっているエネルギーなのじゃ!」
……どうしてそんな最先端のエネルギーが必要なんだ?普通に電子モーターか何かを船につけていけばいいじゃないか…
などと夢の無いことも俺は内心思っていたが…絶対に口には出さないからな?

「……どうしてステイテーションエンジンじゃないといけないの?他のエンジンなどを使っても別に構わないと思うけど…?」
「他のエンジンを使うと…少々プラグ系統に影響が出てしまうのじゃ…じゃがエンジンを使わずに出航すれば、特殊な形状のこの船はだんだん沈んでしまうのじゃ…ちょっと無茶して改造してしまったからのぅ…」
だから改造はそこまでするなって思ってたんだ!!
俺の宿屋の地下も勝手に改造して…まだ足りないのか!?
……旅が終わってフェルス興国に戻ったとき、この地下が元のように戻っているって事は…果たしてあるのか?

まぁ、そこから先の話は頭が痛くなりそうだったから俺はひとまず先に上の階に戻ってのんびりと待っておくことにしたんだ…が
俺が上の階に行くと、そこには俺が今まで成り行き上引き取ってしまった子供たちがいたんだよ!
そうか…ゾーネの奴、大切な話があるとかいって上の部屋に行くようにでも言っておいたんだな…?
俺がそう思って無言で自分の部屋に行こうとしたときだ…
「あ、デメトリオさん…どうも」
そう、皆さんお察しの通り、俺は気付かれちゃったんですよ!!
あぁ…のんびりと仮眠でもとろうかと思っていたのに…

俺に話しかけてきたのが、昨日型抜き屋で特級をクリアしてしまった為にしばらく家で面倒を見ることになった…
あぁっ!?そ、そういえば名前を聞いてないぞ俺!?
俺はここで、昨日名前を聞くことなくゾーネにこの子を預けたのを思い出したんだ…
ゾーネがまるで子供達の保護者のような扱いで、俺がゾーネに子供を預けて人生を悠々と過ごしているダメな親父って感じがして…複雑な気分だぜ…

俺は、これから先名前を知っておかないと困る…って事で、名前を聞いてみることにしたんだ。
まぁ、全員の名前を聞いてみるんだが…な?
「君は…名前なんて言うんだい?」
「…私の名前は志賀原 狸巳っていいます!これから…お願いします!」
いや…そこまで礼儀正しくされたら困るっていうか…
給料も仕事も多くないのにキラキラした目で見られると罪悪感があるというか…
本当に…俺が10歳のころは仕事を自分でやろうなんて思いもしなかったから…時代は変わりつつあるのだろうか?
せめて、大人の汚い部分を知らないまま大きくなっていってくれ…
大人になってから、人間の汚い部分をよく見てきて、自分も嫉妬に染まっている俺から狸巳ちゃんにいえることはコレだけだった…

そして、まだ二人…俺が成り行きで預かってしまった子が残っているんだが…
二人とも名前…あるのか?
あのスライムの女の子…後になってぬれおなごという種族だとわかったのだが、あの子はまだ自分の名前をもしも聞いていたとしても忘れてしまっている可能性があるし…墓場で偶然出会ったあのスケルトンの子供は自分の記憶があるのかも怪しい…
しかも、ぬれおなごのあの子は3歳くらい…スケルトンのあの子は6歳くらいっていうこの幼女率…まさにカオスって言うべきなのか…?
ま、まぁ…俺は一応、彼女達の名前も聞いてみるぜ!!

「き、君たち二人は…名前あるのかい…?」
「エルナー♪」
……あ、あのぬれおなごの女の子の名前があったというのか!?
「エルナっていうのかい?いい名前だね…」
「ゾーネたまに教えてもらったー♪」
ぞ、ゾーネ!?あ、あいつ…勝手に名づけ親になるなんて…でも…
いい名前だから文句を言おうにも言えないじゃないか!!
しかも…本人が気に入っている…だとぉ!?
俺はこの…子供の無邪気さに一瞬だが泣きそうになってしまったんだ…
なぜかわかるかい…?多分、わからないだろうなぁ…

この子はこれから先も、俺のことを父親だと思い続けると思うんだ…
でも、俺は本当の父親じゃないんだよ!!そして、エルナちゃんはその事実に気がつかずに人生を過ごすんだよ?つらいじゃないかそんなの!!
それに…俺にその事実を告げる勇気なんて…ないんだ!!
だが、俺はこれ以上そのことは考えないことにしたんだ。
俺…昔から顔に出やすいみたいでさ…

で、最後にスケルトンの彼女だが…
「…リビング」
……ぞ、ゾーネ…この子にも名前をつけているなんて…
しかも、名前がリビングだって!?
もし…もしも名前のことで近所の子供達にバカにされたりしたらどうするんだよ!?
奥手そうな雰囲気だし…何を言われても言い返せないんじゃないのか!?
そして、こういった子に限って内心にこういったことをとどめたりするんだ…
せめて…大きくなったらメンタル面で心配できるようにならないと…
え?俺がなんだかいい奴にみえるって?違うさ…これは偽善さ…
俺はいい奴なんかじゃない!!偽善者なのさ!!

そうしてのんびりと過ごしていると、紅緒さんが俺の宿屋の扉を、ようやく学んでくれたのかゆっくりと開けて入ってきたんだ。
早速、メリィがある話を紅緒にしはじめた…
いや、どんな話なのかは具体的にはわからないんだけど…今回の依頼でジパングを離れるって事と、そのためにクライタッドという素材が欲しいのでそれ系の依頼を受けたいって事を聞いたんだよ!!多分…

「そうなのか…悲しくなるなぁ…その依頼なら、JAXAの依頼だな…ほら!」
あっ!!ち、違いますよ!?決して日本の宇宙関連の組織の名前じゃありませんからね!?
俺は必死で、日本という国も知らないのにそんな事を思ってしまったり…
いやぁ、結構きついんですよ…勘違いされないようにするのって…
これが、俺がさっき子供たちと会話していたときに思っていた大人の汚い部分…そして、俺が偽善者である証…だよなぁ…

で、今回は一番最後の依頼って事もあって、みんなで行くことになり俺は依頼を見ることなく目的地に出発したのさ!!
で、目的地についたんだけど…こ、この見たことのない技術の建物は一体なんなんだ!?
勝手に動く扉に…機械的な雰囲気の扉…まさに時代の経過を感じるぜ…
さすがはジパング…俺がみたことのないものが多いよなぁ…
「デメトリオは適当に中でもうろついておいて頂戴…私達はちょっと担当者 に話しかけてくるから…」
「あ…うん…」

そう言ってメリィはそのまま行ってしまったんだが…
で、適当にうろついてくれって言われてもなぁ…俺、この場所の全容知らないんだけど…
ま、まぁいい…適当にうろつくとしよう…それが妥当だって!!うん!
というわけで…俺はこの曲がり角を曲がって行こうと思うんだ!
そう思い、俺は曲がり角を右に曲がったのだが…まさかの行き止まりっていうこの現実…正直、ショックだぜ…
ほうきが一本だけ立っているこの光景がまた…いい味出しているって言うね?

で、上下に動く箱の中に入って俺は…体が一瞬浮いたような感覚に襲われてその後、若干薄暗い部屋に出たんだ…
そこには意味ありげな扉が一つ…こ、怖いな…
俺はその扉を開けるべきなのか…それとも…開けないべきなのか…?
俺がそう悩んでいると、俺が来た箱が上に…!?
あれは…リフトの原理なのか?なんて、そんな事はどうでもいい!!
俺には…もう扉の奥に行くことしか出来なくなってしまったじゃないか!!
そして俺は…この扉を開けたのだった…

な、なんだかカーンカーン!って音が聞こえて来るんだが…!?
そ、それに…壁に反射して赤い何かが見える…
そして俺がもどるかどうか本気で考えていたときだった…
「あの…何かごようですか?」
「ひぃっ!?だ、誰ですか!?」
後ろからいきなり話しかけられ、俺は一気に前のめりに倒れこみ後ろに下がっていっていたんだ!

そしてしばらくして…この場所が鍛冶場だって事がわかったんだよ…
ま、まぁ…はじめからわかっていたんだけどな?
う、嘘じゃないぞ!?本当だぞ!?
くっ…し、信じるか信じないかはあなたしだいです…
「こっちの方に人が来るのは珍しいなぁ…僕は村正って言うんだよろしく!」
「あ…はい…俺はデメトリオっていいます」
明るい人だなぁ…えっと、こっちは奥さんか?
「あ、私はレインっていいます…ここでは村正と一緒に他人を傷つけない武器を作っているんです」
と、サイクロプスのレインさんが言っているんだが…他人を傷つけない…か…
いや、いい考えだと思うよ?でも…他人を一番傷つけるものが果たして…剣や槍…はたまた弓だったりするのだろうか?
いや…ふと思っただけだし、大した話でもないからスルーしてくれ?

で、その後戻ってきた箱に乗って、俺は食堂って看板が置かれた場所に行ってみたんだ…
いや…お腹がすいて…久しぶりにバランスの取れた食事を取りたいと思って…
でも、モンスターラグーンの皆がいたら食事に集中できないだろ?
ルタって名前の盗賊が俺の食事を取っていくし…おかげで俺はビタミン不足だってねぇ!!

「いらっしゃいませ〜!」
店員さんが来てくれたか…って、あれ?レベッカじゃ…えぇ!?
レベッカはメリィと一緒に行ったと思ったんだけどなぁ…?
ま、まぁいいか…飯が食べられることに変わりはないしな?
「あぁ、レベッカ…何か適当に食事を作ってくれ…出来れば、ビタミン豊富な奴でよろしくお願いします」
「……お客さん、姉を知っているんですか?」
不意に店員の格好をしているレベッカが俺にこういってきたんだが…
あ、姉!?って事は、この子はレベッカじゃないというのか?
で、でも…どこからどう見てもレベッカじゃないか…
そ、そうか!!わかったぞ!!双子だな!?双子って奴だな!?

俺は自分で勝手に納得していたわけだ…
「あぁ、レベッカは俺の宿屋で専業コックとして働いていて…今、ここに来ているよ?」
「ね、姉さんがここにいるのかぁ…あ、料理作ってきますね!」
そう言って奥の調理場に行って料理を作ってくるのを俺はずっと待って…
「お待たせしましたぁ〜!!サラダタワーです!!銅貨4枚いただきます」
…はやくないか!?調理場に行って瞬時に料理を持ってくるなんて…
だ、ダメだ!!一瞬だけど、前から作っていた余りモノを持ってきたって考えてしまったじゃないか!!

そして俺は、反省しながら食事を始めたのだった…
おっ!?結構味もはっきりしているし…おいしいじゃないか!!
さすがはレベッカと同じ血を引いているということはあるな…
そうだ…久しぶりに姉が近くにいるんだし、感動のご対面でもさせてあげようかな…
「あの…レベッカ、もし良かったら呼んで来ましょうか?」
「け、結構です!!僕…姉がちょっと苦手で…ほら、考えたらすぐに動くところとか…口も軽いし…」
ど、どうやら昔、あんまりいい出来事が無かったみたいだな…
俺はそれ以上その話を振るのも酷かと思い、ここで話題を切ったんだ!!

で、しばらく食堂でのんびりしていたんだけど、やることもなくなったので、俺は始めにメリィたちと別れた入り口付近でメリィたちを待つことにしたんだ。
で…そう決断して早2時間が経過し、俺は隅っこで体操座りをしてじっと待っているのさ!!
い、一体何をしているんだあいつら!?ちょっと遅すぎないか!?
俺がそうやって内心、文句を連発しているとようやくメリィたちがこっちにやってきたんだ…
横に二人…見たことのない人たちを連れているけど…一体誰だ?

「メリィ…おそかったじゃないか…何をしていたんだ?」
「依頼をこなしていただけよ…で、この二人がゾーネが言っていたクライタッドや、他の未知のエネルギーの研究をしている和彦と詩織さんよ…」
な、なるほど…白衣が似合っているぜ…
などとそんな事はどうでもいい!!
二人がここにいるって事はそれ即ち、この場所での任務の終わりを意味するんじゃないのか!?
「デメトリオっていいます…よろしく」
「あぁ、君か…何回か見たことがあるよ…和彦だ…」
俺と和彦さんはここで無言の握手を交わしたんだ…
ま、まさか…このタイミングを上手くつかめる奴がいるなんて…さすがだ。


で、和彦さんと詩織さんは俺の宿までついてきたんだよ…
なんでも、エンジンとして使用するとき、若干だが核反応とやらが関係して順番どおりにしないと危険らしいんだ…
ゾーネだったら取り扱いに関しては大丈夫な気もするけど…
「では…早速作業にとりかかるのじゃ!!」
「了解…メインエンジンは起動停止しておいてください?」
「ふっ…大丈夫じゃ…」

……あぁっ!!専門用語が飛び交ってて俺にはぜんぜん理解できない!!
こ、これ以上この空間にいると俺はおかしくなってしまいそうだ!!
そう思えるくらい、ゾーネや和彦さんは専門的な台詞を言い合っていたんだ!
「デメトリオー…この空間、頭痛くならないー?」
「ふっ…ルタ、珍しく俺と意見があったようだな…俺も…そう思うよ」

そしてそれから更に数分後…遂に、ついに作業が終わったんだ!
この数分はまさに…何時間も経過したと勘違いするほどの長さだったけど…
無事に終わったようでひとまずは安心だな…

で、俺達は今…ジパングで俺達が漂流していた場所に船と一緒にいたんだ…
なんとあの船…大きさが俺の宿と同じように小さくなるんだよ…
どうやってもって行くのか本気で悩んでいた俺がまるで…バカのようだぜ!
でもまぁ…いいかな…
こうやって船にのって、ジパングを見回してみると…結構いろいろなことがあったなぁ…ここには長居した気がするぜ…
でも…俺がここに来た事に変わりはないし…結構たくさん物も買ったし…
悔いはないぜ!!

ありがとうジパング!!俺達は…次の大陸に旅立つぜ!!
「デメトリオ…どうするのじゃ?」
…へ?
「どうするって…何が?」
「パッと移動するのか…船が動くエフェクトをのんびり楽しむのか…どっちじゃ?」
ぱ…パッと移動ってなんなんだ!?
す、凄い興味があるぜ…よし!!
「ここは…パッと移動でお願いします!!」
こうして俺達はジパングを後にしたのだった…
12/05/03 10:08更新 / デメトリオン
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■作者メッセージ
どうも!!

さて…次は砂漠編です!!
ようやくメガロス帝国がある大陸に降り立ちました!!
これからデメトリオたちにどのような出来事がふりかかるか…
楽しみにしながら見ていただけるとうれしいです!!
ありがとうございましたーー!!

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