連載小説
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33.それぞれの思惑
「ふぅ。とりあえずこんなもんか。後は勝手にやられてくれるでしょ」

軍事都市ゲヌア、指令室。
そこにいるのは、床に倒れ臥したシロと、ヴァンパイアの情報屋のイリス。

気を失ってからしばらく。イリスが偽情報を流し終えたところで、シロが目を覚ます。

「ん・・・んぅ・・・?」
「おはよう、破魔蜜くん。気分はどうかしら?」
「・・・どういう、つもりですか?」
「何のこと?」
「惚けないで下さい。どうして、教団に加担したんですか!?」

怒りを露にしながらも、シロは内心、疑念を抱いていた。

「もらうものもらったから、としか言い様ないわね。
 私はあんまり依頼者選んでないし」

この回答も、予想できた。
だが、問題はそこではない。

「イリスさん」
「何?」
「・・・僕の記憶が確かなら、イリスさんは釣り合わない仕事はしないんですよね?
 何でこの仕事、引き受けたんですか?」

彼女の性格上、魔物娘である彼女が教団と手を組むことは考えにくい。
どうしたって、リスクが高すぎる。

その答えは、非常にシンプルなものだった。

「リスクは確かにある。なら、それ以上の報酬をもらうだけよ」



長時間に渡る、激しい戦闘。その耐性はゲヌア軍の方が高い。
数で勝るといえども、ほぼ烏合の衆と変わらぬ教団軍は、ジリ貧の様相を呈してきた。

「一時撤退だ! 引き上げるぞ!」
「逃がすか!」

北方へと逃げる教団軍に追い討ちを仕掛けるエトナ。
しかし、その瞬間に連絡が来た。

『エトナさん、深追いは禁物です。一旦指令室に戻ってもらえますか?
 伏兵の迎撃をお願いします』

エトナの行動原理は、基本的にシロ優先。
この指示に背く理由は無い。

「分かった。今すぐ行く」
『お願いします』

踵を返し、街中心部へ。
シロを守るため、駆けてゆく。

(・・・これで、いいんだよな?)

胸騒ぎは、未だ止まない。
底知れぬ不安感を拭う為、風を切るように走った。



「早馬を送りました。道中、襲撃に遭ったりしなければ、10分程度で着くかと」
「よし。・・・くそっ、まさかこういう所攻めて来るとはな。どこで漏れた?
 信じたかねぇが、内通者がいるって線が濃厚だろうな」

デュークは、悩んでいた。
通信が乗っ取られたとなると、前衛・後衛の部隊の状況確認は、目視でしかできない。
加えて、この戦争における重要人物の一人、シロからの指示が通らない。

次の一手をどうするか。
悩みに悩みぬいた結果。

「指令室に行くか。幸い、向こうは軍を引き上げた。
 本当ならここを叩くべきだが、まずは通信の回復が先だ。
 それに、もしかしたらシロ自身がヤバイことになってることもあり得る」
「分かりました。兵はどの程度連れて行きますか?」
「2割でいい。何かいたとしてもそう激しい戦闘にはならねぇだろ。
 それじゃ、急ぐぞ」
「はっ!」

状況確認及び、通信の回復。
それらを最優先事項とし、一度引き上げることにした。



「殆どの兵が街の中央部に行くわ。少ししたら、正門と後門から同時に攻め込んで。
 全方向から囲うように攻めれば、相手がどんなに強くてもどうしようもないもの。
 ・・・えぇ。それじゃ。また何かあったら」

教団との通信を終え、椅子に腰掛ける。
足を組むと、視線をシロに向けた。

(ここには日光も、真水も、ニンニクもない。下手に動けば、また気絶させられる。
 ・・・どうすることも、できない)

インキュバスとはいえ、幼い少年と、ヴァンパイア。
戦闘能力の差は、言うまでもない。

「ねぇ、破魔蜜くん」

シロに、声をかける。
応答はない。

(・・・ふーん、それなら)

スッと立ち上がり、一瞬にして側に移動する。

「っ!」
「知ってるかしら?」

思わず身じろぎをしたシロの耳元に、唇を寄せて。



「精液って、血液から造られるのよ?」



僅かに震えるシロの耳たぶに、牙を立てた。



「あぁぁぁぁぁ・・・・・・」

首筋、太股、脇腹と、敏感な部位を溶かすように血液を吸われ、
意識を保つことすらギリギリの中、イリスは更にシロの乳首に舌を這わせた。

「んー・・・ちゅぱっ。ちゅちゅっ」
「ひゃあっ!? あっ、あぁ・・・」
「あむ・・・んんっ・・・ちゅーっ」

そのまま、薄い胸板に牙を立て、血を貪る。
心臓から直飲みされているかのような感覚がスパイスとなり、精神を侵す。

生物は生命の危機を感じると、自分の子孫を残そうという本能に基づき、生殖機能が活発になる。
非日常極まった極限状態、下がる血量に逆らうようにして血が集まったシロの逸物は、下着に大山を築いていた。

「・・・んっ。こんなに硬くしちゃって。いやらしい子」

左手の五指が、パンツ越しに亀頭をくすぐり、性感を煽る。
そのまま指を踊らせながら、囁く。

「綺麗な顔して、ココは気持ち悪いくらい大きいわね。
 お姉さんにキモチヨクしてもらえるの想像して、おちんちん思いっきり勃起させちゃって。
 皆が必死に戦ってる中、お姉さんにちょっと責められただけで、おちんちん大きくしちゃう。
 君みたいな子のこと、何て言うか分かる?」

ほぼ触れるだけの、弱い刺激なのに。



「変態」



「ひゃいっ!?」

先端から漏れ出した白濁液が、布地に紙魚を作った。

「・・・ぷっ、あっはっはっはっはっはっはっはっは! こんなんで射精・・・するの?
 罵倒されて? 変態って言われただけで? 射精? あっはっはっはっは!
 君、本当の本当に変態だったんだ! 本当っていうか、本物の変態!
 私も長いこといろんな男が無様に射精するとこ見てきたけどさ、君ほど情けないの初めて!」

高笑いをしながら、シロを罵倒し、羞恥心を煽る。
これまでの淡々とした口調・声色は、面影すら残っていない。

「ねぇ? 今どんな気持ち? お姉さんに無様にイカされるってどんな気持ち?
 彼女いるのに、彼女でもない女の人に精液漏らすのってどんな気持ち? ねぇ? ねぇ!」
「ひゃっ! あぁっ、あぁんっ!」

煽りは更に過激になるが、シロは言い返すことができない。
イリスはシロを罵倒しながら、手を中に滑り込ませ、陰茎を直接扱き始めていたから。
手で握り、我慢汁と精液でぐちゃぐちゃになった竿を上下に行き来する、基本的な手コキ。
だが、力加減・扱き方共に、シロのツボを押さえ込むようにしており、快楽のレベルは最高。
まともな思考ができなくなるようにさせる程度、造作も無かった。

イリスに寝取り趣味は無い。しかし、寝取り行為を行わないという信条がある訳でもない。
むしろ、普段の回りくどい言動から見て取れる中二病的思想や、
教団の人間を連れた時の調教発言などから推察するに、
彼女の性癖は中々に拗れている。
どちらかといえば、こういった他人の男を寝取るとは守備範囲に近い。

「あははっ! やっぱり男なんてみーんな一緒!
 ちょっとおちんちんいじめてあげればすぐ堕ちちゃう!
 頭脳派気取りで・・・くくっ、街を救おうなんて思ってたところで、
 おちんぽ握っちゃえばこっちのものだよねー♪」
「ひぐぅっ! ふぁぁぁ・・・ああっ!」

人間より上位の存在であり、人間を性的な意味で襲う。
年端も行かない少年が、敵うはずもなかった。

「さ、しばらくイキっぱなしになりなさいな。今度気絶する頃には、もう全部終わってるから。
 安心しておちんぽみるく、びゅーびゅーしちゃって♪
 私も君の血飲みながら、適当に時間潰すから」
「あぁぁぁぁ・・・あああ・・・」

何度目か分からぬ射精をしながら、首筋から血液を奪われる。
『首イキ』という、理解の範疇を遥かに超える絶頂を与えられ、シロは破壊の限りを尽くされた。


滅茶苦茶にイカされ、滅茶苦茶に精液を吐き出し、滅茶苦茶に血を抜かれた。
意識が戻った頃、時計の針は90度進んでいた。

現在地は、変わっていない。ゲヌアの指令室。
しかし、変化した点がいくつか。

一つ、辺りが不気味なほどに静か。
戦争中にもかかわらず、物音一つしない。

二つ、イリスがいない。
先程まで、徹底的に犯されていたが、今はどこにも見当たらない。

三つ、モニターに映像が映っていない。
指令室のモニターには街の様子が映るはずだが、どれ一つとして機能していない。

「・・・なに、これ」

予想外の連続で、流石のシロもお手上げ。
何が何やら、何から手をつければいいのやら。

途方に暮れていた所、ドタドタと足音が聞こえる。

「・・・えっ?」

それだけで、対象の特定には十分。
指令室の扉が開き、答え合わせ。

「エトナさん?」

予想通り、訪れたのはエトナ。
何とも形容しがたい、微妙な面持ちである。

「あの・・・」
「何も言わなくていい。イリスがやってくれた。・・・それより」

この状況の解明の為に上げた声は、遮られた。
そして、状況の解明の優先度は、一つ下がる。

僅かに、眉間に皺を作りながら発せられたエトナの言葉により、



「イリスと、ヤったんだって?」



事態をどう釈明すればよいかということに、挿げ変わって。
15/11/03 21:25更新 / 星空木陰
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■作者メッセージ
何とか1ヶ月以内にできました。第33話です。

イリスは一体何を考えているのか。そもそも、何か考えているのか。
そして、シロはこの場をどう切り抜けるのか。
・・・いや、それに関しては「詰んでる」としか言えないか。

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