連載小説
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舞踏曲第4節 ヴィーナスの調べ&ハルカズの調弦
家族として敵軍である筈のブルームをなりゆきで保護する事になってしまったハルカズ。そのハルカズは今も二人の女性から強烈なアプローチを受けている。

「あの、ハルカズさん?これから貴方の事「パパ」と呼んでも・・」
「ちょっとハルカズぅ?今から私に付き合ってくれないかしら?とにかく・・」
「・・はぁ・・・俺の意見は無視なのか・・?」
右からはブルームが呼び方の変更の承諾を得ようと、左からはヴィーナスの攻撃的なアプローチを受けていたハルカズ。しかし、ため息を吐いて頭を手で押さえて呆れたようなポーズをとって二人に聞くと、双方共に体を硬直させてしまった。

「・・えぇっと〜・・・ハルカズぅ?怒って・・る?」
「ごめんなさい!気を悪くさせちゃいました?」
「お前達はいい加減に・・」
呆れ気味に両脇から掛けられる声を適当に流していたハルカズだったが、不意にポケットに入れていた小型連絡モジュールが通信を受けた。

『アストレア兵士全員に次ぐ!我がコロニー入り口付近にて、ホ―ネットの物と思しき無人機動兵器を多数確認!至急これの駆逐に当たれ!尚、今回は弾丸の使用制限を解除、得意な物や効果的な物を選び・・』
「行くわよ!ハルカズ!」
「分かっている!」
「あの・・私は・・」
「ブルームは危険だから此処で待機だ!いいな?」
少し表情を険しくしながらブルームに是非を説いたハルカズだが、ブルームも自分の非力さを弁えていたのが幸いして、無理矢理に付いて行こうとはしなかった。そしてハルカズとヴィーナスは家を飛び出した。

「・・・こいつは酷い・・」
「・・『身の池地獄』って奴ね・・」
「『血の池地獄』だ・・」
戦場であるコロニー入り口近辺地区に到達したハルカズとヴィーナスは、あまりの残酷さに顔を引き攣らせていた。そこら中に獣や小動物の物と思しき体の断片が見受けられる。そして地面に残された銃痕。大きさから推測すると弾丸の大きさはざっと見積もっても10cmはある事になる。大砲とまではいかないが銃にしては大きい気がする。

「・・いた!奴か!」
「そうみたいね・・それじゃ、私のヴァイスちゃんで・・それっ!」
暫く辺りを歩いていたハルカズだったが、前方で機械の稼働音を聞き付けたハルカズが足音を潜めて近付いた。そこには案の定ロボットの様な箱の様な形をしている物が銃口を振り回しながら辺りの様子を伺っていた。そこでヴィーナスが遠方から狙い撃つべく、腰にぶら下げてある「ヴァイスストライク」と呼ばれる彼女専用の遠距離狙撃ライフルで狙いを定めて引き金を引いた。その弾丸は、狙い通りの場所に寸分違わぬ位置に着弾して爆ぜた。そして機械も爆ぜたのを確認した二人はその機械の確認に向かった。

「これは・・!危ない!」
足元でバラバラになっている機械の塊の一つを拾おうとしたハルカズ。しかし、遠くから何かの稼働音が聞こえて、物を捨てて横っ跳びに飛んだ。その直後にはその場所が5,6ミリ弾の集中砲火を受けていた。

「こんなにも居たのか・・」
「わぁお♪倒し甲斐があるってもんじゃない?」
「くっ・・ただ、打ち貫くのみ!」
横に飛んでそのまま戦闘態勢に入った二人。目の前に居るのは数十機にも及ぶ無人殺戮マシンの数々。此処をみすみす通してしまえば多大な犠牲が産まれる事になるのは必須だ。そんな事にはさせないためにも、ハルカズは機械相手の弾幕をかわしてステークを打ち込み、バズーカの一撃を喰らわせている。今回は無人兵器が相手と言う事で、ステークの弾丸はゴム弾から鉄鋼弾へと換装していた。その為、ステークを打ち込んでトリガーを引くと機械は完膚なきまでに粉々になった。元々人とそこまで変わらない大きさなのだ。当てることは容易いことだった。しかし、やはり二人だけでは限界があった。その内に数基の無人兵器を通してしまった。悔しくて歯を食いしばりながら他の相手をしていたハルカズ達。しかし。

「・・・ダブルチャクラム、シュート!」
唐突に背後から聞き覚えのある声が聞こえて抜け出し組みのマシン達を、光る輪の様な物で切り裂いた。

「ハルカズさん!ヴィーナスさん!増援に来ました!」
そこに居たのは、元気にチャクラムと言う輪を振り回しているフォールだった。その後ろには数人の兵士たち。どうやら応援部隊が到着したらしい。

「ふっ、頼もしいな。」
「ハルカズ、ハルカズぅ!」
「どうした?」
「トドメはラブラブアタックで決めるわよん♪」
「了解した。インビシブル・ブロウで決める!」
「んもぅ!その名前カッコ悪いんだからラブラブアタックにしたのにぃ・・」
「遊ぶんじゃない!行くぞ!」
二人が特定のポジションに着いた。ハルカズは兵士に貰ったガトリングを両肩に装備している。その状態で一気に走って的に近づいた。そしてハルカズはそのガトリングを、弾が無くなるまで撃ち尽くすとそれを捨てて右手に力を込めた。ヴィーナスはその間、敵の関節部分に的確に弾丸を放って動きを止めている。ついでにカメラも破壊しているらしい。

「俺達二人が力を合わせ・・」
「一つとなったこの力ぁ♪」
「貫く敵への手向けにも・・」
「なるのかどうかは分からないぃ♪」
『行けぇぇぇ!』
二人で掛け声を掛け合った後、ハルカズがステークで機械を貫き、そして持ち上げた。そのまま反対方向を走って来るヴィーナスに突き出した。それを正確に狙い撃っているヴィーナス。そして最後に、ヴィーナスのゼロ距離射撃とハルカズのステークフルパワーで滅多打ちにした。

「すごい!これが二人の愛の力か・・」
「そのとぉりよん♪フォール君も分かって来たじゃなぁい?」
「何が愛の力だ!」
破壊工作に愛と言う言葉を付けて可愛らしく飾ろうとしたヴィーナスに感動したフォール。それに上機嫌なヴィーナスも乗って来た。その隣では呆れた顔をしてハルカズがため息を吐いていた。

「やったのよん♪ハルカズ!ハグして?ハグ♪」
「帰ってからな・・」
「・(ブッ)・・(えっ?帰ったらハグ・・してくれるの・・)」
勝利の感動に浸っていたヴィーナスは、上機嫌なままハルカズにハグを求めた。しかし、ハルカズに一蹴されてしまう。だけれどここで挫けないのがヴィーナスだった。「帰ってから」の一言で興奮のあまり鼻血を出してしまった。必死になってそれを隠すが、兵士の一人に見つかって今はティッシュを鼻に詰めている。

「此処の掃除は済んだ。他のポイントの援護に当たるぞ!」
「おぅ!」
全ての敵機の爆散を確認したハルカズは、その他にも襲撃地区があるとフォールから聞いてその地へ全員で行く事にした。こんな激しくも刺激的な毎日がハルカズとヴィーナスには付いているのだった。
10/10/31 07:20更新 / 兎と兎
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■作者メッセージ
今回のでだいたい分かったかと思いますが、この舞踏曲編は「スーパーロボット大戦○G」をモデルに書いているんですよ。

次回:舞踏曲第5節 全ての蟻たちの讃歌
次回でラストになります!

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